サイエンス

「ワープ航法」は以前よりも現実の領域に近づいたとNASA研究者が語る

By Gwyneth Llewelyn

SFではそんなに珍しくもない「ワープ」ですが、実現するには膨大なエネルギーを必要とするため実現は不可能であろうとみられてきました。しかし、NASAジョンソン宇宙センターの研究者がいろいろ実験を重ねた結果、「現実的ではない」から「調べる価値はある」へ、少し希望が持てるレベルへと近づいたことがわかりました。

Warp Drive More Possible Than Thought, Scientists Say | Space.com



「ワープ航法」はA点から遠く離れたB点までを超光速で移動する航法のことで、「宇宙戦艦ヤマト」や「スタートレック」のように宇宙を舞台にした作品で用いられています。

1994年にメキシコの物理学者ミゲル・アルクビエレが発表したアルクビエレ・ドライブはまさにこのワープ航法のこと。その基礎理論はWikipediaの「ワープ」の項目に記載がある通り、スタートレックのワープ航法をヒントにしたもので、物理学の法則の“抜け穴”を利用して宇宙船を超光速で移動させるというものでした。しかし、この理論の通りだと、ワープ航法には尋常ならざるレベルのエネルギーが必要であることがわかり、現実的なものではないと考えられていました。


しかし、NASAのジョンソン宇宙センターで研究を行っている物理学者のハロルド・ホワイトさんは、必要なエネルギーを著しく少なくすることで、ワープ航法をSFの領域から科学の領域まで引き戻すことができ、「希望はある」と語っています。

アルクビエレ・ドライブは、超巨大なリング型装置の中央にラグビーボールのような楕円形の宇宙船を配置。宇宙船の前方の空間を収縮、後方の空間を膨張させる時空を生み出し、宇宙船は平坦な時空の泡の中にいることでワープさせるというもの。恒星間宇宙飛行の実現を目指すエンジニアと科学者のグループ、Icarus InterstellarのRichard Obousy氏は「宇宙のすべては光速度によって制限されます。しかし、真にクールなことは、時空と呼ばれる宇宙の骨組みは、光速度による制限を受けないということです」と語っています。アルクビエレの概念に基づけば、宇宙船は光速の約10倍を達成することもできるはず。これまでの研究では、このワープ航法の実現には最低でも木星の質量エネルギーに等しいだけのエネルギーが必要になるとみられていました。

ホワイトさんは最近、宇宙船を包むリングの形が水平な輪っかではなく、丸いドーナツ状なら何が起きるかを計算しました。この場合、ワープ航法に必要なのはNASAが1977年に打ち上げたボイジャー1号ぐらいの質量エネルギーであることがわかりました。さらに、空間歪曲の強さが時間と共に変動するなら、必要エネルギーをより減らせると、ホワイトさんは気付きました。

ホワイトさんが示す、リング状のワープ航法装置。装置といっても宇宙船をぐるりと包み込むほどの大きさです。


SPACE.comに対して「私の示した調査結果は、ワープ航法を非現実的なものからもっともらしいもの、さらに調べる価値があるものへと変えたのです」と語ったホワイトさん。現在はジョンソン宇宙センターのラボに「ホワイト&ジュデー ワープフィールド干渉計」という卓上サイズの装置を作り、1000万分の1という時空の揺らぎの小さな事例を生み出せるかどうかを確かめようとしているとのこと。

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in サイエンス, Posted by logc_nt