ハードウェア

HDD内にヘリウム充填で容量が40%増加、HDD業界に構造的転換が到来か


大手ハードディスクメーカーWestern DigitalグループのHGSTが、HDD内にヘリウムガスを充填させた新製品を制作したことを明らかにしました。ヘリウムを充填することによって電力消費量が減り、また、容量も増加させることが可能になります。

HGST Announces Radically New, Helium-Filled Hard Disk Drive Platform | 2012



Helium-filled WD drives promise huge boost in capacity - Computerworld

これまでの50年間、HDDの内部には特別な気体が封入されていたわけではありませんでした。しかし、Western Digitalは今後、ヘリウム充填HDDの生産ラインを始動させることになります。

「ヘリウムを充填する」と「容量が増加する」とはどう繋がっているのかがわかりづらいですが、ヘリウムを充填することによってHDD内部の摩擦や抵抗をなくすことで、現在よりも多くのプラッタを内蔵できるようになり、容量が増加する、というわけです。

業界ではここ10年間、ずっとこの技術の研究が行われてきており、ヘリウムを漏らすことなく効率的にHDDを生産する点にはHGSTの特許技術が鍵になっている、とHGST製造販売担当副社長のブレンダン・コリンズ氏は語っています。

もともとHDDの容量は内部のプラッタ枚数で決まっており、そのプラッタの枚数はプラッタ振動によって制限を受けています。これは、プラッタが毎分何千回も回転することで内部で気流を生みだし、プラッタ自身と読み取りヘッドに影響を与えてしまうためで、TMR(track misregistration)問題として知られています。

プラッタ上の容量は1インチ当たりのトラック数(TPI)で決まっており、10年前は10万TPIでしたが、現在の技術では50万TPIまで来ていて、ヘッドでトラックを読み取らせる限界に達しています。しかし、ヘリウム充填HDDは、7200rpm(毎分回転数)の環境で内部気流をほぼ発生させることがなく、TMRという障害を乗り越えることに成功しました。IDCのアナリスト、John Rydningさんは、TMRが減少すればメーカーはより薄いプラッタを使用できるようになると解説。

今回HGSTの制作した7プラッタのHDD(5.6TB)は、従来の5プラッタのHDD(4TB)に対して容量が増加した一方、重さは同じ690g。1TBあたりで比較すると29%軽くなっています。また、回転に必要な力が23%減少するので、アイドリング時の消費電力も従来の6.9Wから5.3Wへと落ちています。価格自体を比べると、3.5インチのヘリウム充填HDDは、2.5インチHDDに比べてGB単価で50%安くなります。プラッタの抵抗が減少することで、温度も4~5度低い状態になり、より厳しい環境下でも動作するようになります。

このヘリウム充填HDDがターゲットにしているのは、公的なクラウドコンピューティングシステムや、企業のデータセンター。ヘリウム充填HDDを使用すると、たとえば1PB(ペタバイト)分のデータだと、現在は4TB HDD搭載のサーバ20個が必要ですが、5.6TBのヘリウム充填HDDを搭載していればサーバ14個でOKとなり、省スペースになります。つまり同一のスペースであれば、容量を増加させることができます。

コリンズ副社長は「この技術は10年先までにデータセンターのクラウドストレージの基盤になるでしょう。」「構造的転換が今、訪れているのです」と語っています。

アナリストのJohn Rydningさんは、この技術が長い間研究されてきたものであることを誰も知らないのではないか、ヘリウム充填HDDが実際に出てきたときに人々がどのような反応をするのか興味がある、と語っています。

ちなみに、来年には実用化されるとのこと。これからのストレージはHDDからSSDになっていくのかと思いましたが、そうではないのかもしれません。

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in ハードウェア, Posted by logc_nt