取材

卒業してもやめなくていい永遠の「大人の部活動」がオンラインコミュニティ成立のためには必要


昨年の「オンラインゲームを「オカンでも説明無しで楽しめる」ように作るためにすべきこと」に続き、CEDEC2012にて、「オンラインゲーム時代における、 ゲーム内コミュニケーション設計の基礎知識」のタイトルでDropWave本城嘉太郎さんが講演をしました。オンラインゲームの課金設計の次に立ちはだかる壁である、コミュニティ設計の悩みを解決するための「オンラインゲームにおけるゲーム内コミュニケーションの考え方の基礎」と「オンラインゲームで絶対必要なコミュニケーション機能」を成功タイトルを参考に学べる内容となっています。

【Drop wave】cedec2012『オンラインゲーム時代における、 ゲーム内コミュニケーション設計の基礎知識』
http://www.slideshare.net/yhonjo/drop-wavecedec2012-14039814


司会:
皆様お待たせいたしました。これよりセッションを開始させて頂きたいと思います。株式会社DropWave本城嘉太郎様よりご講演頂きます。よろしくお願いいたします。

本城嘉太郎:
よろしくお願いします。


本日の講演は「オンラインゲーム時代における、ゲーム内コミュニケーション設計の基礎知識」です。まず、自己紹介をしますと、もともとコンシューマーゲームのプログラマーをしていましたが、ずっとオンラインゲームの開発がしたいと思っていました。そこで、DropWaveという会社を7年前に起業し、その流れに乗ってオンラインゲームとソーシャルゲームの開発をしている会社を経営しています。主にブラウザ向けのオンラインゲームとMobage(モバゲー)いわゆるソーシャルゲームなど、有名なものを開発・運営しています。1番有名なのは日テレさんとDeNAさんと共同で開発した「脱出ゲームDERO!」というもので、スッキリ!!等の番組で紹介されて100万人が1週間ぐらいで集まったとういうゲームを運営しています。


もともとエンジニアということもあり、オンラインゲームのサーバエンジン等を自社で作り、オンラインゲームをサーバからクライアントまで全部作ることができる会社を経営しています。


本日、1時間のセッションで申し込んでいたんですが、30分のセッションとなってしまい、コンシューマーゲーム開発者の方に必要なチャットツールからの説明をしたかったのですけど、基本的な説明を省き、成功しているタイトルを中心に取り上げていきます。本講演の趣旨について、コンシューマ開発者の方は、オンラインゲームを作ったことがない方が多いので、どうしてもゲーム内コミュニケーションの作り方が分からなかったり、重要性が分からなかったり、どういうふうに組み込めばいいのか分からなかったりすることが多いと思います。実際に作ってみると、オンラインゲームのはずなのに、オフラインゲーム(コンシューマーゲーム)っぽいものなってしまって、コミュニティが盛り上がらず、失敗してしまうということがあります。私も初めて作ったオンラインゲームで同じ失敗をしてしまいました。これからオンラインゲームが増えていくと思うので、みなさんが同じ失敗をしないように、「コミュニケーションって大事ですよ」かつ「こうやってゲームに組み込むんですよ」というお話をしていければと思います。本講演の対象は、コンシューマーゲームを作られてきたプランナー・ディレクターの方、オンラインゲームを作ろうとしているけれど、「オンラインゲームなんて、チャット・掲示板・メッセージ機能・宅配システム・ギルドシステムを入れておけば、コミュニティが適当に盛り上がるんじゃないの」と軽く考えてる方を対象にしています。目次としては、「オンラインゲームにおけるコミュニティ形成の最終目標」と「成功タイトルのコミュティ設計分析」をして「まとめ」に入りたいと思います。


まず、「オンラインゲームにおけるコミュニティ形成の最終目標とは?」というお話からしていきたいと思います。


なぜオンラインゲームには、コミュニティが必要なのかというと、それがオンラインゲームが数ヶ月から数年という長期間のプレイを前提としているゲームジャンルだからです。一人用のゲームを10年間遊び続けることは、よっぽどマニアでないと難しいと思いますけど、実際に10年以上遊び続けられているオンラインゲームのタイトルはかなりの数があり、現在も遊んでいるユーザーさんが大勢いて商業的にも成立しています。そのオンラインゲームとオフラインゲームの違いを3つにまとめると、1つ目が「ゲーム内容が定期的に更新されているかどうか」、アップデートがあるかどうかです。2つ目が「ゲーム内に友達と呼べる存在がいるかどうか」です。そして3つ目が「ゲーム内に資産と呼べるものが形成できているかどうか」。この3つがオフラインゲームとオンラインゲームの大きな違いとなっています。今回はコミュニティ形成のお話のため、「ゲーム内に友達と呼べる存在がいるかどうか」という内容が中心となります。


まず、「ゲーム内に友達と呼べる存在がいるかどうか」とはどういう意味かというと、オンラインゲームをやっていると抱く感情なんです。「あの人にお世話になったから、恩返しをしなくっちゃ」「他のプレイヤーに負けたくないから今日も頑張ろう」「みんなと約束があるからログインしないと」「ギルドの仲間と話しているときが一番楽しいから、今日もおしゃべりに行こう」「正直ゲームとしては飽きたけど、ゲームを起動すれば仲間に会えるから、やっぱりまだ続けよう」といった感情を抱く状態が「ゲーム内に友達と呼べる存在がいる状態」になるということです。あなたの作成したゲームに対して、プレーヤーが今まさに説明した感情を抱いてもらえるかどうかということになります。ところで、過去にこれと似た感情をあなたは感じたことはないですか。


それは部活です。例えばバスケ部の場合だと、インターハイで優勝したいという達成すべき明確な目標があり、共通の目標を共有している仲間がいます。目標を達成するためには、仲間と協力する必要があり、一緒に練習をしたり、試合に出たりして、仲間と協力しないと、目標の達成ができません。また、他校のライバルチームや負けたくないアイツの存在があり、1つの特技が仲間から認められ、必要とされる自分自身がいます。そして、部活が終わってもいつまでも話しをしていたいと思う同じ境遇で何でも話せる友達がいる。こうゆう部活って、本当に楽しかったですよね。この楽しさは、大人になっても、部活がゲームになっても、同様です。オンラインゲームにおけるコミュニティ形成の最終目標とは、この章の議題なんですけど、それは、あなたのゲームを「大人の部活動」にしてしまう、ということです。学校を卒業してもやめなくてもいい。永遠に活動していられる大人の部活です。これが、あなたのゲームをプレーヤーが長期間遊んでくれる必要条件であり、コミュニティ設計の目標となります。


KPI(重要業績評価指標)の話しをするといろいろあるので、あまり話したくはありませんが、少しだけお話すると、運営的にはやっぱりゲーム内に友達がいてくれると継続率が上がって、商業的にも成功する可能性が高まります。だから、なるべくゲーム内でコミュニケーションをとってもらい、その中で友達をいっぱい増やしてもらえれば、ゲームの成功する確率がグンとアップするということです。


では、どうすればゲームを大人の部活化ができるのか。ただゲームにコミュニケーションツールを導入しただけでは、コミュニティは生まれません。ゲームシステム内にコミュニティが生まれやすい仕組みを丁寧に組み込むことによって、はじめて深いコミュニティが形成されます。今回の講演では、ゲームデザインの中に、非常に優れたコミュニティ設計が組み込まれている2本のタイトルをサンプルとして取り上げながら、アナタのゲームを「大人の部活動」化させるためのポイントを探ります。


余談ですけど、先ほどのバスケットボール部の話しは架空のリア充をモデルにした妄想です。実際のところ、スポーツ音痴の僕は、中学時代に間違って運動部に入ってしまい、運動できるヤツなんて全員死ねばいいのにと思いながら、暗黒の青春時代を送りました。その教訓を生かし、高校では部活動と距離を置き、放課後には毎日ゲーセンに通い、対戦格闘ゲームに明け暮れ、拳で語り合える本当の仲間と一緒に楽しい青春時代を送りました。


では、成功タイトルのコミュニティ設計分析に入ります。


特に優れたコミュニティ設計を持つゲームとして、以下の2タイトルを例として解説していきます。1つは、「ファンタジーアース ゼロ」。通称FEZと呼ばれているゲームです。もう1つが「伝説のまもりびと」というゲームです。みなさんあまりご存じないかも知れませんが、、モバゲーで配信されているソーシャルゲームです。両タイトルとも、商業的に大成功し、今なお、多くのプレイヤーに遊ばれ続けられているタイトルです。それではまず、FEZ(ファンタジーアース ゼロ)から見ていきましょう。


ファンタジーアース ゼロの概要からです。少し詳しく説明しますと、FEZは50対50による対人戦を主題にしたオンラインアクションRPGで、何十人もの人が画面上に入り乱れるので、MMORPGかと思いますけど、結局は50対50のMORPGです。ファンタジー世界のプレイヤーたちが、魔法とか剣とか使いながら、50対50で戦争をする、そういうゲームです。ゲーム内では、国家が5つに分かれています。ゲームを始めると、5人のキャラクターの中から好きな国を選んで、その国の王様に仕える1人の兵士として、地獄の戦争に勝利するために戦うというゲームです。一応シミュレーションゲームみたいにマップがあり、陣取り合戦みたいに、こっちのマップはあの国に所属している、といった陣取り争いになっているんですけど、全地域を支配しても、大きなメリットは存在しないんです。また、全部の陣地を取られても、滅亡しません。と言う意味で、エンドレスに戦争が行われるゲームになっています。アクションゲームは50人ただ倒し合うだけではなく、よくあるFPSの対戦ゲームのように、相手を殺し合うだけではなく、「相手の陣地を破壊すれば勝てる」といった結構シミュレーション要素の強い対戦ゲームで、独特のゲームになっています。


FEZのエラいところ。まず、ゲームが非常に面白いというところです。やってもらうとわかるんですが、ストラテジーゲームとしても、対戦アクションとしても、非常にレベルの高いゲームです。アバターもかわいくてです。ゲームも本格的で、やりごたえのあるゲームです。まずコミュニティ設計の話しをする前に、ゲームが面白くないといけません。いくらコミュニティ設計がうまくできていても、ゲームがクソゲーだと誰も継続してくれません。深いコミュニティが形成される条件として、ゲームそのものが面白いことが大前提です。それではFEZのコミュニティ設計分析を始めていきます。おことわりとして、この分析は制作者にインタビューしたものではなく、第三者の「僕の勝手な分析」ですので、ご了承下さい。


まず、FEZのコミュニティ設計分析その1。「最初からギルドが成立している」、ということです。ゲームの目的が国家間での領土の争いとなっているため、キャラクターを登録した直後から、国家=ギルドに所属し、同じ目的を持った仲間がたくさんいる状況になっています。これは学校で部活に入ると、先輩や同級生がいて、かつライバルの高校があり、インターハイという目標があると、そういった同じ目標を持った仲間が一気にできる状況と似ています。まずあなたのゲームに活かせるポイントとして、最初からギルドのようなコミュニティをプレーヤーに感じさせることはできないかというところを1つ検討してみて下さい。


その2。「国家間の戦争で勝利すること、『ギルドの目的』=『ゲームのメインディッシュ』となっている」ところです。これにより、ゲームを進める目標がギルドの目標と完全に一致し、ゲームを進めているだけで、ギルドに貢献し、仲間を助け、協力するというコミュニティ育成行動を自然と行うことになります。あなたのゲームへ活かせるチェックポイントとして、ギルドを作るのはいいが、とってつけたようになっていませんか。結構ありがちなんですけど。あまりゲームシステムと関係なくギルドをポンっとくっつけても、あまり盛り上がりません。ギルドの目的と、ゲームの目的が完全に一致しているかどうかが一番大事なポイントです。ギルドシステムを作るときには、このポイントは外さないように。


分析その3です。「リアルタイムでの協力プレイが大前提のゲーム性」です。ゲームの目的は敵国との戦争において勝利することですが、そのために50人以上の味方プレイヤーとの協力プレイが必要になります。まるで11人で戦うサッカーの大規模版です。そのため、ゲームの目的を達成するためには、事前に味方プレイヤー同士での意思疎通や作戦会議が必要となり、ゲーム中でも頻繁に会話をしながら連帯をとっていく必要があります。1回プレイするだけで、必ず複数の味方プレイヤーと会話して、連携して遊ぶシチュエーションが生まれます。同じ目標に向かって、同じ時を共有した仲間同士には、かけがえのない連帯感が生まれ、関係性もより深化します。あなたのゲームに活かせるチェックポイントは、ゲームのメイン部分が、仲間達との協力プレイが前提になっているかどうかというところです。


最近「ディアブロ3」をやっているんですけど、評価できない部分として、全く仲間と協力しなくてもゲームが進めてられてしまうんですよね。個々のプレイヤーが強すぎて、全然分からない人とマッチングしたら、無言でバーっと進まれて、ボスも勝手に倒されて、いきなりデモが始まってしまって、何の達成感もないと、でも話しは進んじゃっている、という状況になってしまいます。ディアブロ3はオンラインゲームなんですけど、NPC(ノンプレイヤーキャラクター)の代わりに人がいるだけで、会話もへったくれもない。こちらのFEZはサッカーのように、全員が連携して、こっちに回りますとか、あっちに回りますとか、いいながら、進めないと勝てないゲームになっているので、ちゃんと仲間とコミュニケーション取らなきゃならない。ただ単に同じフィールドに、ギルド同士の人を放り込めばいいだけでなく、ゲームの目的を達成するためには、作戦会議が必要というところも結構なポイントになっています。

分析その4。「上級者が新入りの面倒を見る動機が提供されている」ことです。FEZの戦争は、国家に所属する全プレイヤーの総力戦になるため、ゲームの目的を達成するためにも新入部員の育成と定着が必要になります。よって、本気でゲームの目的を達成したいと思っている上級者にとっては、目的達成のための初心者をサポートする動機が生まれます。実際、上級者が独自で初心者向け講習会を開催したり、上級者が初心者に使わなくなった武器をプレゼントしたり、ということが自然に行われる文化が形成されています。FEZというと、アクションゲームなので、わりと地形を登ったり、いくつか難しいアクションがいくつかあるんです。初心者には難しいアクションを教えるために、「本日22時からなんとかフィールドで坂登り訓練を実施します」と掲示板に書かれるんですね。本当に上級者の人が初心者の人を5人ぐらい引き連れて「こうやって登るんですよ」、みたいな話しをしながら教えるんです。そういった文化が形成されています。これはFEZ独特の文化だと思います。初心者には、お世話になった先輩プレイヤーの恩に報いるために、もっと頑張ろうというモチベーションが生まれます。ただ、ゲーム性として、ここまで組み込むにはハードルが高いという場合、ソーシャルゲームの「怪盗ロワイヤル」では、自分よりレベルの低いプレイヤーにプレゼントを贈ると「あしながおじさん」の称号がもらえる手法を使っています。こういった施策を行うだけで、称号をコンプリートしたい上級者は、とりあえず初心者を見つけて半端なものを贈りつけるんですけど、初心者は「何かくれた」「うれしい」「ありがとうございます」とコミニュケーションが発生します。こういったものを組み込むといいわけです。アナタのゲームに活かせるチェックポイントとしては、一人で目標達成できてしまうゲームになっていませんか。あとは、初心者を助けることに対するインセンティブが用意されているかという2点を是非参考にして下さい。


分析その5。「コミュニティに対して、共通の話題が常に提供されている」。ギルドの目標がシンプルで、なおかつゲーム本編の目的とも一致しているため、全てのプレイヤーが「どうやったら戦争に勝てるのか」という共通の話題を持っています。そのため、掲示板でいろいろなレベルのプレイヤーが共通の話題で盛り上がることができます。その話題がゲーム内容によって提供されています。MMORPGはできることが多すぎて、掲示板で何を話したらいいかよく分からなくなり、ある特定のことが好きな人は、それが好きな者同士でチャットで盛り上がったり、攻略組は攻略組で盛り上がったり、結構バラバラなんです。FEZはゲームが非常にシンプルにできているため、全員がどうやったら戦争に勝てるのかという話題で盛り上がれます。ここが他のゲームとFEZの大きな違いです。ゲームの目標がシンプルであり、全員が共通の目標を持っていることが非常に素晴らしいポイントとだと思っています。部活で、先輩と後輩が部活動の内容について議論するのと同じです。テニス部とかバスケ部とか割とゲームとしてはシンプルじゃないですか。それを全員でやって、お互いがレベルを上げていこうという雰囲気に似ています。その内容がシンプルであればあるほど、話題は共通になりやすくなります。あなたのゲームに活かせるチェックポイントは、ギルドの目標がシンプルに定義されているか。それと上級者と初級者で教え合えるゲーム性になっているかというところです。


分析その6。「初心者でも貢献できる仕組みがある」。FEZのアクションパートでは、初心者が前線にいると非常に大きいプレッシャーを受けます。格闘ゲームをむちゃくちゃやり込んでいる人たちに、初心者が挑んでボコボコにされるのと同じで、初心者にとって前線は恐ろしい場所です。とはいえ、これをやっていかないと初心者を育成できないので、前線にいかなくても、座っているだけで人の役に立てる「クリスタル掘り」という仕事があります。クリスタルを掘ると、召喚獣を呼び出することなどができるようになります。敵はやってこないんですが、自分の陣地にボーっと座り込んでいるだけで10秒に1回、チャリンチャリンってクリスタルがイベントに入ってきます。それを前線から帰ってきた人に「クリスタル10」とか言ってポッて渡すんですよ。そうすると「ありがとう」「悪いな」っていって戻って行くんです。そんな感じで、クリスタルもらった人は前線で召喚獣を出し、初心者の人は自分の陣地に座り込んでいるだけで、「あり、あり」と言われながら、初心者は感謝されるというゲームなんですね。初心者にとって、戦争に入るだけでもすごく勇気がいるんですけど、「最初は座っているだけでもいいよ」ってみんなが言ってくれる。そういう初心者救済システムがあるんです。あと、クリスタルが貯まると呼び出せる召喚獣は非常に強力になるんですが、操作が簡単であるという特徴を持っています。だから、操作に慣れていない初心者でも、前線で戦うことができます。召喚獣は圧倒的なので、初心者が召喚獣を使って腕が立つ前線プレイヤーと対戦しても、倒すことはできなくても負けはしないというバランスになっています。このように、ゲームに慣れるまでの敷居を下げて、スムーズにコミュニティに参加できるような施策が打たれているのが特徴的です。あなたのゲームに活かせるチェックポイントは、初心者救済の仕組みが組み込まれていますか。初心者でも、いきなりベテランと組み合ってもちゃんとゲームとして成り立つバランスになっていますか、というところですね。


まとめ。FEZのサービスは開始されてから6年以上経過しているんですが。「WebMoney Award 2011」で「BestGames賞」を受賞するなど、いまだ第一線のオンラインゲームとして人気を保っている大成功タイトルです。長期におよぶ成功の秘訣は、ゲームの面白さもさることながら、プレイヤーにとってゲーム自体が「大人の部活動」化した結果だと思います。見事なゲームデザインと、スクウェア・エニックス社とゲームポット社の運営努力のたまものだと思っています。コミュニティ設計において、大変参考になるタイトルですので、ぜひプレイして研究してみて下さい。


次は、「伝説のまもりびと」を分析します。今、モバゲーで運営されているソーシャルゲームなんですけど、これがゲーム画面です。ここにキャラクターが4人いるとおもうんですが、これが見方のキャラクターです。左側からひよことかスライムがピューと寄ってくるので、一定時間ピコッピコッとみんなを攻撃して、はじき返すんです。右側にスライムが入ってしまうと、作戦失敗。スライムとかを全部止めることができたら、クリアとシンプルなタワーディフェンス系のRPGです。このゲームの中で、自分のプレイヤーは1人だけなんですよ。後の3人のプレイヤーは借りてくるんです。借りてくるという仕組みに非常にコミュニティを深くする仕組みが組み込まれているという話しをしていきたいと思います。


概要その2。「伝説のまもりびと」は、全てのソーシャルゲームの中で、最高レベルの長期継続率を叩き出している(と思われる)ゲームです。すさまじい売り上げにもなっています。ギルドシステムはなく、ソーシャルゲームによくある、仲間同士がクモの巣状態でつながれたフレンドシステムを採用しています。FEZは全プレイヤーの目標が完全に一致したギルドゲームでした。伝説のまもりびとは、FEZよりも緩いつながりながらも、強固なコミュニティを生み出すゲームシステムの構築に成功しています。このタイトルについても、制作者に取材したわけではなく、「僕が勝手に分析している」だけなので、ご了承下さい。


分析その1。「人の助けを借りると圧倒的に有利になるゲーム性」ですね。このゲームは、全キャラクタ1人+仲間3人の、合計4人で敵の侵略を防御するゲームです。仲間がいない場合、仲間の代わりに3人のNPCを連れて行けますが、NPCはあまり強くありません。フレンド登録した仲間がいれば仲間を連れて行けるので、必然的に、フレンド登録した仲間を連れて行くことになります。圧倒的に強い仲間がいれば、自分一人では絶対にクリアできないクエストも、どんどんクリアできてしまうゲームです。強いキャラクターを連れて行った人は、強力なキャラクターを貸してもらえた感謝の気持ちが芽生え、連れて行かれた人には、鍛えたキャラクターを使ってもらえて、鍛えたかいがあったと思うことができます。そして、戦闘終了後に、感謝を伝える「アリガト」というコマンドが表示されて、連れて行った相手全員に感謝を伝える手段としてメッセージを送ることができます。人に協力してもらうことが大前提のゲームバランスにしていることによって、感謝の応酬によってコミュニティが盛り上がる仕組みを構築しています。あなたが活かせるチェックポイントとして他のプレイヤーのキャラクターを借りるなど、他人のリソースを借りて、強力して、遊べる要素は入っているか。また、リソースを借りた相手に、感謝の言葉をしっかり伝えられる仕組みが入っているのか、ということです。


時間がないので巻いていきます。設計分析その2。「非同期だけど、ログイン時間が近いだけで絆を感じられるゲーム設計」があります。仲間のプレイヤーを自分のクエストに連れて行くためには、そのプレイヤーがクエストを始める30分前や1時間以内にログインしていないといけない仕組みで、100人フレンドがいても、誰もそのゲームをしていないと、誰も連れて行けない。逆に誰かが5分前にログインしてくれていたら。その人は連れて行けるんですね。そういうゲーム性になっています。これによって仲間のキャラクターを連れて行きたいと思うときには「明日5時には誰々このクエストに挑戦するんで、みなさんよろしくお願いします」と告知します。すると4時50分ぐらいにポンとログインしてくれて、そうするとキャラクターを連れて行けると、いうようなゲーム性になっているんですね。ちゃんとログインしてくれていたら。「あ、ログインしてくれてありがとう」という気持ちが芽生えるわけです。


その3は、「ただログインするだけでも人の役に立てるお手軽さ」があります。ログインするだけで、仲間に連れて行ってもらえる以外にもいろんなメリットが生じるゲーム性になっているんです。だから、用がなくてもログインする動機ができます。あと仲間に助けて下さいって言われても、普通その時間にオンラインゲームにログインして一時間ぐらいプレイをしなきゃいけないですが、このゲームは、ただゲームをするだけでもOKなんです。というところが非常にお手軽です。ゲームを起動するだけで、仲間に貢献できるというのは、プレイヤーに負担をかけないように設計されているソーシャルゲームの真骨頂と言えるでしょう。あなたのゲームに活かせるチェックポイントとして、お手軽な手段で人の役に立つことができる仕組みを組み込めないか。他人から援護要請があった場合、プレイヤーに負担を感じさせていませんか。プレイヤーが、「このゲーム援護がしんどいからやめちゃいたい」とならないかチェックして下さい。


分析その4。「人の役に立てば立つほど、自分も有利になるゲーム性」。人にアリガトと言われるんですけど、これが集計されて、翌日のログイン後に増える仕組みになっています。だから、人の役に立たないと、ゲームが進まないという仕組みです。といった点が面白いです。あとはアリガトされた瞬間にポイントがもらえるわけではなく、翌日に繰り越しすことによって、翌日にログインしないともったいないですよね。だから翌日継続率のアップにもつながります。そこがいいんです。


分析その5。「ゲームのメインサイクルに、他のプレイヤーへの巡回が入っている」。これも説明が長いので割愛しますと、他人のページにどんどん行くと、経験値が稼げるんです。ただこれだけなんですけど、経験値を稼げるっていうのは、ゲームのメインサイクルに、非常に影響することです。どんどん他人の部屋を巡回してアリガト、アリガト言って回るだけで経験値が稼げてしまうというところで、他人との交流が図れるというところも非常にポイントです。


まとめになります。伝説のまもりびとは、他のプレイヤーと交流や協力できる導線だけではなく、他のプレイヤーに感謝するシチュエーションが何度でも発生するようにゲームがデザインされています。コアユーザーになってくると、課金する動機が他人になるんです。「あの人の役に立ちたいから、課金したい」いうところまでコミュニティを昇華している素晴らしいゲームです。是非、みなさん体験してみて下さい。


本日のまとめなんですけれども、チャット・掲示板・メッセージ機能・宅配機能など、ゲーム内で充実したコミュニケーション手段を提供するのはオンラインゲームでは当然だと思って下さい。その上でゲームシステムとコミュニティ要素を融合させることによって、初めてオンライゲームのコミュニティは活性化されます。まとめると、「ゲームシステムとコミュニケーションを同時に設計してこそオンラインゲームである」、そして「あなたのゲームを上手に『大人の部活動』化して、一生遊び続けたいと思えるゲームを作って下さい!」ということです。


以上です。ありがとうございました。

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in 取材,   ゲーム, Posted by darkhorse_log

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