日本人で初めて実名で個人全ゲノム配列を公開、ネットからダウンロード可能に

By Lawrence Berkeley National Laboratory

慶應義塾大学環境情報学部の教授で、慶應義塾大学先端生命科学研究所の所長でもある冨田勝教授が、自身の全ゲノム配列を解析して公開しました。日本人が実名で全ゲノム配列を公開するのは初の事例です。

日本人初、本学教授が実名で自身の個人全ゲノムを公開 -湘南藤沢キャンパス(SFC)にて公開ゲノムを用いた授業も開講-:[慶應義塾]



「ゲノム(Genom)」という単語はドイツの植物学者ハンス・ウィンクラーが1920年に作ったもの。オックスフォード英語辞典によるとGene(遺伝子)とChromosome(染色体)をあわせた造語だそうです。

1990年に発足した、ヒトのゲノムの全塩基配列を解析するプロジェクト「ヒトゲノム計画」は、13年と約30億ドル(約2347億円)を費やして2003年に完了。医学や創薬分野において大きな貢献を果たし、その経済効果は7960億ドル(約62兆円)とも試算されています。その後、DNA解析技術は大幅に進展を見せており、数年以内には1000ドル(約8万円)で1人1人の全ゲノム情報が解読できるようになるとさえいわれています。

By Gravitywave

個人のゲノムが手に入ると「どういった病気になりやすいのか」というリスクを事前に知ることができるほか、治療の難しいといわれている病気や疾患の原因を明らかにして、創薬や治療に結びつけられる可能性もあります。しかし、いわば「究極の個人情報」でもあるので、その管理や社会的・倫理的課題も存在するため、「パーソナルゲノム時代」が到来する前に、リテラシー教育を浸透させることが急務とされています。

By Ars Electronica Center

今回、冨田教授が自らの全ゲノム情報とこれまでの診療録を実名で公共DNAデータベースに登録・公開することにしたのは、上記課題解決の一助になればという考えがあり、パーソナルゲノム教育に広く活用されることが期待されています。

これまでに実名で全ゲノム情報を公開した例としては、DNA分子構造を発見したノーベル賞学者のJames Watson博士、ヒトゲノム計画の立役者の1人であるCraig Venter博士、パーソナルゲノムプロジェクトリーダーのGeorge Church博士などがあり、また、日本人でも匿名でゲノム配列を公開したという事例があります。

すでに、慶應義塾大学ではこの冨田教授のゲノム情報を利用した授業を実施。ワークショップの中では、学生が「ゲノムから見た冨田教授の適職診断」や、「冨田教授がオリンピックに出場するならこの種目」「冨田教授が注意すべき生活習慣病」といったテーマでゲノム解析を行ったとのこと。

この結果を受けて、冨田教授は以下のコメントを発表しています。

 最終発表会では、私の遺伝的な身体能力や知的能力、体質や病気のリスクなどの考察・議論がなされ、とても興味深いものだった。当たっていると思われるものや外れていると思われるものもあり、『ゲノムを見ればなんでもわかってしまう』ということでは決してないということが学生たちは体感できたと思う。
 一方で、体質や能力について統計的な傾向が分かるということも確かであり、それをどのように生活向上のために利用していくかが今後重要になる。


冨田教授のゲノム情報は以下のデータベースで公開されています。

ftp://ftp.ddbj.nig.ac.jp/ddbj_database/dra/DRA000/DRA000583/ の一覧
ftp://ftp.ddbj.nig.ac.jp/ddbj_database/dra/DRA000/DRA000583/

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in サイエンス, Posted by logc_nt