取材

世界一の自転車旅行を22歳から50年も続けるドイツ人ハインツ・シュトゥッケさんに魅せられて


こんにちは、自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンです。生きていくうえで分かっているのは一度きりの人生です。死んだ後に何かイベントでも起きると嬉しいのですが、確定もしてないことを当てにもできません。だからこそ、与えられた時間を生きていくしかありません。その一度きりの人生のすべてを自転車旅行にかけたドイツ人がいます。世界中のチャリダーの中では有名なその人はハインツ・シュトゥッケさん、22歳から自転車旅行を続けています。そんなハインツさんがナミビアの首都Windhoek(ウイントフック)に滞在していました。72歳となった現在でも旅を続けているその姿に魅せられました。

ハインツさんは1940年生まれの72歳。同じ歳の有名人は津川雅彦さん、浅丘ルリ子さん、デヴィ夫人、志茂田景樹さん、故人ですがビートルズのジョン・レノンさんも1940年生まれになります。そしてプロ野球の王貞治元監督も。ハインツさんをプロ野球で例えるのであれば、72歳になった現在でも打席に立ち続ける王さんなんです。チャリダーに年齢制限はありませんが、72歳になった現在でもバックパッカー宿でテントを張って寝袋で寝ていました。脚はムキムキの筋肉となっていて、自転車も速いです。

ハインツさんは1962年、22歳の時に祖国のドイツを離れて72歳の現在に至るまで旅を続けています。これまでの総走行距離は約60万km(地球15周分)、訪問国は195カ国と73地域……と世界中を自転車で回っています。日本も北海道から沖縄までくまなく走りました。数年前に大まかな走行は終えて、現在は折り畳みの小径車に乗り換えて、公共交通機関を使いながら未到達のエリアを周っています。昨年には独立したばかりの南スーダンを、2010年には日本の小笠原諸島も訪れています。

北欧でポーランド人のチャリダーと一緒になったとき「世界で一番長く自転車で旅行しているハインツさんって知っているか?」と彼の話題になりました。その時のポーランド人チャリダーはハインツさんのことが書かれた資料をもっていました。それくらい世界のチャリダーの中では伝説的な人であります。だからこそ、対面したときにはどう話したらいいかと緊張したのですが、その心配は要りません。ハインツさんは話し出したら止まりません。滞在中には数え切れないほどの話を聞けました。

トルコ人ライダーに話をするハインツさん。


自分も自転車で世界を旅していますが、カナダ横断、インド縦断、ロシア横断、ブラジル東海岸、マダガスカルと時間と資金で走れそうにないところは諦めています。そんな所でもハインツさんの轍の跡はありました。現在では絶対に自転車で走れない、アフガニスタン、ソマリア、イラクといった国々も50年という時間を使えば問題ありません。全世界に残されたハインツさんの轍には、自分もどこまでも走りたいと誘惑されっぱなしでした。

地図を広げて輪跡を説明するハインツさん。「●」のシールは、その年のクリスマスに滞在した場所です。


1983年から愛用されているというハインツさんの調理コンロ。自分と同じ歳のコンロでした。


とある日の早朝にパソコンで作業をしていると、ハインツさんが何かの準備をしていました。「こんな朝早くからどこかに出かけるの?」と訊くと「ちょっと野生動物を見に近場のゲームパーク(自然保護区)へ行く」、朝から頑張るなと感心していたら「お前も一緒に行くか」と誘われます。世界一の自転車旅行者であるハインツさんと走れるチャンスは二度とないと、すぐに仕度をして一緒にでかけました。

立ち止まって写真を撮るハインツさんの後ろ姿。


現在のハインツさんは折り畳みの小径車を使用しています。これでも結構スピードだすんですよね。


Windhoek市街からDaan Viljoen Game Parkまでは約20km。ここ自然保護区となっていて野生動物を見ることができます。


二頭のキリンさんを発見しました。


キリンさんに向かっていくハインツさん。


逃げていくキリンさん。


キリンさんの写真を撮るハインツさん。


たくさんの草食動物とみつめあってきましたが、キリンさんほど優しい瞳の持ち主はいません。


長い首を使って高い所にある葉っぱを食べるキリンさん。


ハインツさんに撮ってもらったキリンさんと見つめ合う構図。


公園内は未舗装路もあります。



こんな下り坂を……


ハインツさんが軽快に下ってきます。


こちらに近づく。


息一つ切らすことなく、飄々と漕いでいくんですね。


Windhoekの市街を眺めて。


双眼鏡で野生動物を探すハインツさん。


2台の自転車。


双眼鏡で動物を探したり、何の特徴のない草を写真に収めたりと、72歳にも関らずハインツさんは好奇心旺盛でした。ペダルをこぐ脚も軽快で年齢を感じません。50年も旅を続けている人ですから、動きを見ているだけで新鮮でした。忘れられない一日となりました。

ツーショットの写真を撮りました。


世界一の自転車旅行者のハインツさんは後に続く人にとっての希望です。50年間も旅しているのに元気に生きてらっしゃるのですから。たとえ10年を旅してもハインツさんの4分の1、だとすると旅で何か起きる不安も誤魔化して出発できます。どうしても伝えておきたいこの事を、ハインツさんに伝えると少し照れくさそうにしていました。きっとハインツさんの人生は、これからのチャリダーにとってずっと大切にされるでしょう。

一度しかない自身の自転車世界一周でハインツさんに出会えた偶然に感謝せずにはいられません。「Travel is my life」、そう繰り返した72歳のハインツさん、彼と同じ歳になったとき自分にも納得できる何かを持っていたいものです。その時には残された時間は少ないのですから。みなさんも72歳となって振り返ったとき、満足できる物は手にしていますか?何をしていても、時間は過ぎ去ってしまいます。そして、その時は必ず訪れます。

(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
)

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in 取材, Posted by logc_nt