一番難しいのは「生き残ること」、大塚明夫が「声優」という職業を語る


声優と言えば一時の爆発的なブームは収まってきたものの、まだまだ人気の職業です。学校や養成所なども多数ありますが、実際にどのような職業なのかは外からではなかなか分かりません。マチ★アソビvol.8で企画された今回の「デジタルクリエイター養成講座」は、「メタルギア」シリーズのスネーク、「Fate/Zero」のライダー、ブラックジャックスティーヴン・セガールの吹き替えなど、アニメ・ゲームから吹き替え・舞台まで、俳優・声優業界の幅広い分野で活躍している大塚明夫さんを講師として招き、開催されました。同じくマチ★アソビvol.6のデジタルクリエイター養成講座では、「ニトロプラス」が作品を世に送り出すまでの苦闘という興味深い内容を講演していましたが、今回、大塚さんも声優という職業についてユーモアを交えてディープなところまで語っています。

場所はここ、「あわぎんホール」です。


14:00に到着したときには講演会の整理券はすべて終了していました。


開始30分前ですが、もう人がいっぱいです。最終的に満席になり、立ち見をする人まで出てきていました。


15:00、講演スタート。


◆デジタルクリエイター養成講座/声優について

高橋祐馬(以下、高橋):
すごい、満杯でございますね。立ち見までいらして、大変ありがたいことです。さて、本日の講師は後ほど登場される大塚明夫さんですが、私たちは大塚明夫さんのサーヴァントとして司会進行をつとめさせて頂ければと思います。それでは改めまして、本日の司会進行をつとめさせて頂きます、高橋です。よろしくお願いします。

納谷僚介(以下、納谷):
同じくサーヴァントとしてやってまいりました、納谷と申します、よろしくお願い致します。

高橋:
では、本日の講師の方、大塚明夫さんです。

大塚明夫(以下、大塚):
ごめんね、待たせて。早く出たかったんだけど、なかなかゴーサインが出なくて出られなかった(笑)はるばる東京からやってまいりした、大塚明夫です。今日はひとつよろしくお願いします。

高橋:
ではこれから、時間が許す限り、大塚さんからいろいろお話を伺っていきたいと思います。本日は大塚さんにデジタルクリエイター養成講座の講師としていらしてもらっておりますが、大塚さんはこれからみなさんに「こんなことを伝えていこうかなあ」とか、何か考えていらっしゃいますか。


大塚:
ええとね、僕は仕事的にこの、デジタルクリエイターに素材を渡している人間なんで、あんまり偉そうには言えないかなあと思うんですが、世の中には声優になりたいっていう人がたくさんいるそうなので、何かそういうことを話していきたいなあと思います。

高橋:
今、大塚さんもおっしゃられましたが、この会場に俳優とか声優とか表現する人……役者さんになりたいんだっていう人はどれくらいおられますか。全然恥ずかしがらずに……あ、けっこういますね。20人以上いらっしゃいますね。じゃあもう1ついきましょう。この中で大塚さんのファンの方、手を上げて頂いてよろしいでしょうか。(ほぼ全員が手をあげる)すばらしいです(笑)ありがとうございます。ということで大塚さん、役者を目指される方もおり、大塚さんのファンの方もおられますが、先ほどもおっしゃられたように、役者を目指す方が増えているっていうのは実際に感じられますか?

大塚:
そうですね、一昔前よりはだいぶ収まってきたかなって感じなんですけど。前だったら、この人数だったらもうちょっといたかなあって思いますね。まあ、今日はさっき手を上げてくれた、その人たちのためのお話になるのかな、と。

高橋:
そうですね。大塚さんは今、最前線で声優をされていて、いろんな作品を通じて表現をしてらっしゃるんですけど、いくつかこちらでその作品をピックアップさせて頂いてるんで、それについていろいろお話を伺えていけたらなあと思っております。

大塚:
はい。

◆メタルギアシリーズについて


高橋:
1つ目はこちら、「メタルギア」シリーズ。スネークという役を大塚さんはやられていますが、スネークというキャラクターをやるにあたってのお話などを伺ってもよろしいですか。

大塚:
もうね、小島プロの面々には大変かわいがってもらってまして。元を正せば、小島監督があるアニメを見て、自分の作品をこの人に頼もうと思ったというのが始まりです。それがアナベル・ガトー。「ガンダム」のアナベル・ガトーを見て、自分の今度のゲームはこの人に頼もうと思ってくれたというのが、私とスネークとのなれそめというんですかね。

高橋:
なるほど。そういう出会いから生まれたんですね。実際に初めて小島監督とお会いしたときのことって覚えてらっしゃいますか。

大塚:
ええ。確か収録のときだったと思います。なんかすごくこう……ひたむきな。僕も若者だったので、当然小島監督もまだ若者だったんですけど。若者もないか、30過ぎたら。

高橋:
いえいえ。

大塚:
確か30過ぎだったと思うんだけど……忘れちゃったなあ。

高橋:
このスクリーンの写真も小島監督から快諾して頂いてお借りしてるんですけど、改めて、スネークというキャラクターを演じるにあたっていろいろあったと思うんですけど、最初の収録のことって覚えていらっしゃいますか?

大塚:
覚えてますよ。

高橋:
どんな現場だったかっていうことをお聞きしてもよろしいですか。

大塚:
ゲームの音声というものが、今ほど大切じゃなかった時期で、スタジオでそんなに録ってなかったんだけど、小島監督は自分の作品に対してものすごくビジョンがあった。それで、こういうふうにしてほしいんだ、ああいうふうにしてほしいんだっていうことを言ってて、とにかく作品を大切にしているってことがすごく伝わってきて。で、いっぺんに何か「この人好き」って思いましたね。

高橋:
すてきな出会いですね。やっぱりこう、物作りというもの介して通じるところがあったんですね。

大塚:
そうですね。


高橋:
声を当てるってなったらアニメだったり、映画の吹き替えだったりいろいろありますが、ゲームに声を当てるっていうことに対して何か感じられることはありますか。

大塚:
そうですね、ゲームに声を当てるっていうのは実際難しくてですね。ゲームの形態にもよると思うんですよ。例えば、女の子が好きな男をゲットする!っていうゲームがあるじゃないですか。

高橋:
ありますあります(笑)

大塚:
逆に男の子がこのかわいい女の子をどうやってゲットしようかって、あの手この手で関係を築いていくってゲーム、ありますよね。ああいうゲームとメタルギアソリッドだと、ものすごくやり方が変わってきますよね。基本的に会話をしているのが、そのドラマの中の相手役なのか、ユーザーと直接話すのか。ユーザーと話すなら、じゃあ何が目的なのかっていうことを考えていくと、やらなきゃならない仕事が若干変わって来るんですよね。だからそれがどんなゲームかっていうのを分かってないと、トンチンカンなことをやって、それで評価されなくてふくれっ面になったりね。そういう人もいるんじゃないんですかね。

高橋:
実際にされた芝居がどういう形でユーザーに届くのかっていうことを意識されているんですね。

納谷:
僕もゲームをよくやらせてもらってるんですけど、ゲームってドラマと違って間が使えないじゃないですか。

大塚:
そうですね。


納谷:
当たり前なんですけど、普通誰が見たって30分アニメは30分で完結するんですけど、ゲームって、ばんばんボタン押して進める人もいれば、じっと進めないで待ってる人も存在するわけで……。役者さんにとって間ってすごく大事だと思うんですけど。

大塚:
すんごい大事です。

納谷:
ゲームには間をつぶされちゃうつらさってあると思うんですけど、実際どう思います?

大塚:
そこは、ムービー画面でしかできないことなんで。ボタンで間をどんどん飛ばされちゃうと、基本的にもうお芝居じゃなくなっちゃうんで。相手役がいなくとも、「こんな感じになるのかなあ」と想定して言葉を紡いでいくしかないですね。そうすると、お芝居が出来なくとも声がかわいーとか、かっこいーとか、えろいーとか、そういう方向でやる人が増えちゃうんで、まあそれもある意味ラッキーですよね。幸運が激しく作用します。

高橋:
そうですね、そこが難しさと申しますか。

大塚:
そういうことで、別に芝居できなくともいいんじゃないっていう分野が生まれつつあるってことです。それがこれからの声優って枠組みの中で、役割を担う仕事なのかなあっていう感じはしますけどね。


高橋:
なるほど。それで、先ほどもお話を伺ったように、メタリギアシリーズは長くやられてます。今日みなさんから頂いた質問の中にもあったんですけど、実際に長く同じキャラクターを演じられることの楽しさ、難しさはなんでしょう?キャラクターの成長も含めたところで、長さがゆえの楽しさ、難しさというものってありますか。

大塚:
ありますね。初めての役は探りを入れながらちょっとずつ知っていくんです。実際スネークって何人か、年をとってしまったスネークとかいろいろいるんですけど、付き合いが長くなると、ちゃんと自分のファイルの中にその人が入ってるので「あ、久しぶりだな」ってなってくるね。

高橋:
それぞれの引き出しに。久しぶりにファイルを開けるときってすぐに開くものなんですか?

大塚:
画像を見ているだけでも大丈夫ですね。

高橋:
画像を見て自然と出てくる。

大塚:
あんまり久しぶりだと忘れてたりね。生身の人間と同じようなことで。あ、この人、昔会ったことあるんだけどなあ……どこだったかなあ、みたいなね。ありますね。

高橋:
そのほか、今お話を伺ったこと以外でメタルギアという作品に関して、今日は講師としていらして頂いているので、講師として、この作品を通じて何か伝えたいことがありましたら。

大塚:
1つだけ言いたいのは、僕が声優を始めた頃と時代が変わってきてるので、同じことを言うと古いってことになるかもしれないんですが、やっぱり、役者になるっていうのは親から見たら心配なことなんです。何故心配するのかっていったら、大体が悲惨なことになるわけで、経験から親はそれを知ってるんですね。現実に声優になりたいとか俳優になりたいとかミュージシャンになりたいとかって大阪や東京に出てきて、ブームの時とか現実にものすごい数の人が都会に出てきたんですが、現実に、ご飯食えてる人って殆どいないんじゃないかなあ。どうしても、お仕事として捉えたときに、商売になる人っていうのは、本当に、ごく一握りだし。もし生き抜いて、勝ち残って、どこかの事務所に入れてもらっても、そこからが大変。サメって生まれる前にお母さんのお腹の中で共食いをして、勝ち残った奴が生まれてくるんだけど、それで外に出てきても別の生き物にすぐに食われちゃったりするんですよ。そういうのがリアルにあるんで。ほんとバクチなんですよ。僕らの時代なら人よりちょっと上手ければ見てもらえるっていうケースも考えられたんですよ。あれから二十幾とせが過ぎまして、世の中を見ていますと、うまい下手というのはさして変わらないんですね。それよりもやっぱり愛嬌があって、人好きがして、かわいがられる人じゃないとまず、チケットがゲットできない。で、その人が幸運に恵まれて、チケットをゲットできて、ぽんと売れて。で、ここで初めて技術力が必要になってくる。その時のために、必要にならないかもしれない技術力を磨く努力っていうのができるのかどうか。大抵の人は商売になりません。お金になりません。運がいいと人気者になれて、力があると、生き残っていける。でも幸運がなかった人は、力があっても売れずじまい。そういうリスキーな仕事を一生やれる覚悟があるかっていうことをまず、自分に聞いてみてください。40、50になってからじゃ取り返しが付きませんからねえ。

納谷:
僕の感覚で正確な数字じゃ無いんですけど、事務所に入って、仕事をして、一応声優って認められる人の中でも、ご飯を食べられる人っていうのはその10%くらいだと思うんですね。さっきの話になるんですけど、実際に生き残れて事務所に入れてもそれでご飯が食べられないのは9割くらいいるんじゃないですかね。


大塚:
まったくその通りで、50過ぎてもバイトしている人とか現実にいます。いいところばかり見て憧れて声優になっても、現実は「こんな世界なのか……」ってがっかりすることもあります。それでもいいんだって思ってやっていけるかって言うのは、要は好きかどうかってそれだけなんだよね。自分が好きだからやってるってことだと、どういう結果が出ても人の罪にはできませんから。事務所が悪かったとか、先生が悪かったとか、色んなことが人のせいに出来ます。でもそういう人は続かないと思うんですね。僕も物の弾みで始めたんですけど、芝居をやる上において、商売ではない世界に足踏み込むんだから、商売のことは考えてはならないっていうふうに自分で決めてましたね。運がよければ当たるだろう、運が悪けりゃだめだろう。でも俺は当たる、っていう非常に根拠のない確信がありました。僕も30までは当然のようにアルバイトをしていました。ひどいバイトもたくさんありました。今、若い人が声優になりたいって言って、声優学校に行って、事務所に入って、例えばジュニア所属とかになったら「なんでバイトしないといけないんだろう」って思う人が多いんじゃないかなあ。「思ってたのと違う」みたいな。

納谷:
なんか、就職をするのと同じ感覚でいらっしゃる方は多いですね。「事務所に入りました。なんでご飯食べられないんですか、何で給料ないんですか」って。僕に言わせれば、「仕事をしていないからだ、以上」って話なんですけど(笑)世の中のことを否定するわけでは無いんですけど、声優という職業に対して学校や養成所っていうシステムが出来たのがここ何年かの話なんですけど、学校を卒業したら何らかの資格がもらえて何らかの就職手段があって、なんとなくご飯が食べられてっていう感覚ってあるじゃないですか。そういう、普通の職業学校や大学と同じ感覚で、単純に専門学校や養成所を卒業したら「はい、声優になれました」、事務所に所属しました、ごはんが食べれるって。本当はそこからがスタートっていうか、そこはスタートラインですらないんですけど。世間に認知されて、仕事が回ってきて、ご飯が食べられるようになって、やっと自分の演技を追求できるようになる。そこから役者としてのスタートが始まると思うんですけど、そこにすら達していない時点でもはやゴールになっちゃってる人を生んじゃってるような気はしますね。この学校システムは。

大塚:
分かりやすく言うと、こういう仕事を選ぶって時点で、生産社会からドロップアウトするということです。

高橋:
ずばっといきましたね(笑)

納谷:
僕、優しくしゃべってたつもりなんですけど(笑)そうなんですよね。

大塚:
当然、ローンも組めないし、いわゆる世の中の社会人が持っている力みたいなことを全く行使できなくなります。

納谷:
そうなんですよね。そこに気づかないとだめなんですよね。さっきちょっとおっしゃった時に「ええ~」って声が聞こえたんですけど、普通にローンは組めないですよ。来月仕事が一本もない可能性もあるわけで、「仕事がある」と保証できる人間はこの世にいないわけで、銀行にしてみればそんなところにお金は貸さないですよ。

大塚:
まあ僕の場合は、そういうふうにならないことをやってきてるんで、銀行もちょっとくらいは貸してやろうかなって思うと思うんだけど。そりゃ世の中の一般社会人の持っているもの、保証されているものっていうのは捨てなきゃならないですよね。そこまでのことを本当にやりたいのか?やりたいなら仕方ない。もう人のせいには出来ないから。という非常にハイリスク・ローリターンな世界なので、まあ僕はあんまり勧めませんね(笑)

高橋:
なるほど(笑)

大塚:
はっきり言ってあんまり勧めません。なぜなら本当にハイリスク・ローリターンだから。どうせだったら漫画とか。漫画の原作者は強いでしょ、今。

高橋:
ハイリスクだっていう点は一緒だと思うんですけどね。

大塚:
漫画はハイリスク・ハイリターンなんだよね。声優はローリターンだけど。

納谷:
まあたしかに声優はローリターンだと思いますよ。漫画はちょっとわからないですけど。


◆機甲猟兵メロウリンクについて


高橋:
最初はメタルギアシリーズの話をさせて頂きましたが、あと5つこちらで作品をピックアップしています。では続いての作品はこちらです。30代40代の方は「おおっ」てなるかもしれません。

会場:
おおおお。

高橋:
機甲猟兵メロウリンク」の情報将校キーク・キャラダイン。みなさん気づかれたかもしれませんが、画面が4:3でございます。左側はセル画の時代のキャラクター設定というものをお借りしております。キーク・キャラダインを振り返られて、ご自身の中でどんなキャラクターでしたでしょうか。

大塚:
いやあ、懐かしいですねえ。実はね、僕、もう一度やってみたいんですよね。

高橋:
おお。

大塚:
それこそ、アニメーションに声を吹き込むっていうのを初めてやった仕事だったんで、まあ、とっちらかってるはずなんですよね。

高橋:
なるほど。

大塚:
そんなにとっちらかってないとするならば、読み込みが多分浅いと思うんですよね。

高橋:
なるほど。踏み込んでとっちらかってるか、浅瀬で拾っているかなんですね。ご自身で振り返られていかがですか、その当時のことって。

大塚:
無我夢中ですよね。知らない世界で。吹き替えは、ラジオドラマみたいなものにいろいろ出させてもらってたんです。でも生身の人間じゃない二次元の人間に呼吸を吹き込んでいくっていうのは、どう理解すればいいのか。昔から鉄腕アトムとかは見てたから、「そんなに難しいことなのか」って思ってたんだけど、やってみるとやっぱり「何だよ難しいじゃねえか、これ」って。画面の中の人との距離感とか、スタジオで隣でしゃべっている人の距離感とか、いろいろなものを常に計算しなくちゃいけないんだけど、そういうことにまだ慣れないでやってたね。

高橋:
ああ、なるほど。

大塚:
その割には役が大きかったんで、申し訳ないけれどもう一度やらせてもらいたい役ですね。もう一度やってみたい、それくらい深い役ですね。


高橋:
そのあたり是非、サンライズさん、バンダイビジュアルさん、よろしくお願いします。今でこそ様々な役をされているんですが、二次元の役を初めてされたその当時、どういうふうに役に挑まれたんですか。

大塚:
その頃はまだバイトきつかったですからね。汚い格好をしてはいけないとか、きれいな格好をしないといけないとか(笑)それはまあ冗談としても、朝の8時から夕方の5時まで野外で土木作業をしてたんですけど、当時このメロウリンクで頂いたお金っていうのはそれと大体同じなんですね。それがスタジオの中でやる仕事だと、行く時間がまず朝10時。で、大体午後2時には終わる。で、夏でも冬でも空調が入ってる。雨があたらない。快適でね、「こんなにいい仕事ないよ!こりゃあ大切にしなきゃいけない」って、すごく思ったのを思い出しましたね。

高橋:
土木のお仕事ってすごく大変だと思うんですけど、当時は同じくらいの給料だったんですよね。

大塚:
そう。でも今も言ったけど、毎日あるわけじゃないから。オーディションで受かって、月一だったかな。

高橋:
そうですね。今で言われるOVAというシリーズでしたから。

大塚:
月1それで仕事してもご飯は食えないので、沢山やらなきゃならない。沢山やるにはどうしたらいいかって言ったら、売れっ子にならないと飯は食えないんですよね。だからそんなことを考えるよりは、地道に働いてまっとうな人生を生きた方がいい。それができないっていう方、さっき手あげてくれた方の中にいませんか。自分にはまっとうな人生は歩めそうにないなっていう人……あ、何人かいますね。多分その人たちにしか、覚悟は持てないと思います。ただ、食えるか食えないかとは別です。覚悟と運とは別だから。だからさっき手を挙げなかった人の中に運のある人がいるのかもしれない。本当にわからない。まっとうな職業じゃだめですって言う人じゃ無いと続かないかもしれないね。僕も生産社会の人から見ると、ドロップアウトしているというか、アウトサイダーというか。


納谷:
僕が言うのも何なんですけど、一歩間違えていたらってところはありますね……。

大塚:
なので、わざわざちゃんと生きられる人がそんな世界に踏み込むことは無いと、これだけは、何度でも声を大にして私に主張させて下さい。

高橋:
これからの講演の中でも何度も出てくると思うんで、みなさん、鼓膜に焼き付けて下さい。

大塚:
そうですね。……ということでキークはもう1回やってみたいですね。

高橋:
何度もビデオシリーズに出ている訳なんですけど、回を重ねるごとに自分の中で掴まれたものってありますか。

大塚:
いや、ただこのときは夢中でやってたから。

◆機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORYについて


高橋:
無我夢中がむしゃらにおやりになられたと。先ほどおっしゃってたように同じキャラクターを「もう一度」っていうことは素敵なことだと思いますので、是非、この場にたくさんおられる業界関係者の方もご検討よろしくお願いします。それでは、続いてはこちら。「機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY」のアナベル・ガトーでございます。

大塚:
これもオーディションでしたね。

高橋:
やっぱりキャラクターの役を決めるのはオーディションが多いですか。

大塚:
このとき僕ガトーと同じ髪型してたんですよね。それで音響監督が選んでくれたんじゃないかっていう。変な話なんですけど、キャスティングする時ってだいたいイメージキャスティングなんですよ。その人の声の特質とかどんな芝居が得意だとか、そういうものでキャスティングする人はまずめったにいませんね。ぱっと見たときに「あ、あいつ」っていう。だからやっぱりキレイにしていないといけないし、かっこよくしていないといけないし。

高橋:
時には髪を後ろに結ぶことも必要になってくる。

大塚:
そのときはまあ、たまたまそうでしたね(笑)でも、そのとき僕がボウズだったら、この役はこなかったと思います。

高橋:
巡り合わせといいますか。

大塚:
そうですね。


高橋:
実際にこの作品もOVAと呼ばれるビデオシリーズで、結構長くやってらっしゃいましたけど、改めてこの「アナベル・ガトー」というキャラクターを振り返られて、今どんなふうにご自分の中で感じられますか

大塚:
彼は、さっきのキークと比べて直情なんで、すごくやりやすかったですね。

高橋:
キャラクターの性格というか。

大塚:
キークの時は腹に一物抱えていろんなことを変化球で投げるキャラクターだったんですが、ただ「キザにやって下さい」って言われてただけだったんですよ。なんで、どういう背景があるとか、ストーリーとか人物関係とか、そういうのを把握しないで変化球を投げるって言うのがすごく難しかったんですね。その秘密みたいなことを何も知らずにやるもんだから、最後までもがいて苦しんだんですが、ガトーの場合は秘密にしていることとかなくて、ただ、まっすぐにまっすぐにいってるんで、ある意味で気持ちよかったですね。

高橋:
感情表現がまっすぐなキャラクターというか。

大塚:
やっぱり、曲がってないんで。

高橋:
当時はこのガンダムシリーズは好評を博して、LDも出て、すごく大ヒットになった作品なんですが、大塚さんはすごく人気のあるガンダムのキャラクターをやられるということで、ご自身の中で意気込むものはありましたか。

大塚:
僕、初めてテレビアニメを見たのがちょうど幼稚園の時の「鉄腕アトム」で、当時「風のフジ丸」とか「狼少年ケン」とか、そういう番組がやってましてね。そのへんを見てたんですよ。だけど、小学校の高学年のときには既にアニメは見てなかったんですよ。宇宙戦艦ヤマトもね、「これなんだろう」って思って「大人の話みたいだ」って夜中に時々見てたくらいで。だからガンダム自体を知らなかったんです。役者になろうとした寸前くらい、ちょうど二十歳くらいの時かな。後輩から「これ面白いですよ」って言われて、小説を貸してもらったんです。それで「面白いな」と。だから最初にガンダムがどんなブームを巻き起こしたのかっていうのを知らない。


高橋:
それで気負い無く芝居をされたと。

大塚:
まあね。こんなこと言うと悪いかもしれないんですけど。だから、ガンダムだからどうとか、そういうのは全くなかったですね。ガトーという人がジオンの正義をまっすぐに信じて闘って散っていったという、そういう思いの強さみたいなものをどうやったら抽出できるかなってそういう。これは面白かったですね。

高橋:
すてきですね。

大塚:
ありがとうございます。

高橋:
まあここからあと3つ伺うんですが。今回は講師と言うことで、まじめな話もありつつ……。

大塚:
今日はまじめに(笑)明日は騒ごうね。

◆ブラックジャックについて


高橋:
作品について沢山お話を伺うと言うことで、わたくしも淡々と司会をしていますが、けっこう緊張しております(笑)それでは次の作品。大塚さんと言えばこの作品ということで思い出す方も多いと思いますが……「ブラックジャック」。ブラックジャックと言えば少し影のあるキャラクターですが、改めてブラックジャックを振り返られて、どんなことを思い出されますか。

大塚:
ブラックジャックはもう、それこそ週刊少年チャンピオンで連載していてね、そのときはまだそういう漫画を買っていたものだから「かっこいいなあ」って思って。そのときは自分がその役をするなんて想像もしてませんでしたけど。でも、この間さん(ブラック・ジャックの本名)と出会ったことで、僕の人生は少し変わったんじゃないかなあと思います。

高橋:
それは、出会いを通してどんな変化を感じられたんでしょう。

大塚:
まず、ブラックジャックっていう人の認知度が非常に高い。スネークよりもキークよりもガトーよりも誰よりも有名人だった。その人と同じになったってことで、その後の展開にだいぶ広がりが出来たんじゃないかって感じはしますね。


高橋:
ブラックジャックの役はオーディションだったんですか。

大塚:
これは、オーディションじゃないです。もともと、内藤剛志さんがやる予定だったんだけど、急病でICUに入っちゃって、もう間に合わないって状況で。それでちょうど1回目の録音の時に僕がちょこちょこっとした役でちょうど呼ばれてたんですけど、「せっかくだから、明夫ちゃんできないかなあ」って音響監督が振ってくれて。そのおかげでこの人と友達になれたんですけど。今思うと関俊彦さんもいたんで、彼の方が合ってるんじゃない?って感じなんですけど、彼の方はちょっと大きな、いい役があったんで。だからそれも運なんだよね。

高橋:
その時もし別のことをされたら、もしかしたら出会いは無かったかもしれないという。

大塚:
ええ。

高橋:
先ほども言ってらした、才能とか努力ではなく、ある種の運みたいなもの、もしかして運を引き寄せるのも実力なのかもしれないんですが、そういう運とか運命というものを感じられることってありますか。

大塚:
年を取れば取るほどそう感じてきますね。若いときは自分で戦えばいいと思ってたんですけど、だんだんそればかりでも無いなあって思ってきましたね。


高橋:
実際にブラックジャックを振り返られて、このキャラクターならではの芝居とかありますか。

大塚:
この人は大変有名で偉大なキャラクターなので、そのときによって芝居が変わるんですよね。

高橋:
ええっ。

大塚:
ビデオシリーズの時と、テレビシリーズの時と、芝居が変わるんですよね。微妙な修正がしてあって、そこの所をちゃんと捕まえないと、難しい。

高橋:
絵からキャラクターの芝居を読み取られるということですか。

大塚:
絵からと言うよりはシナリオかなあ。絵が入ってることってあんまり無かったからね。テレビの時は絵が結構入っていたかな。ビデオシリーズの時は……青いんですよ。ブラックジャックが。青臭い。

高橋:
キャラクターの性格というか……感情が。

大塚:
そうそう。テレビシリーズの方が優男ふうに見えるんですけど、実は成熟しているというか、大人なんですよね。

高橋:
そういうところを台本を読まれてご自身で読み取られて「こういうふうにしよう」とか思われるんですか。

大塚:
あんまり考えてないんですよね。勝手に、勝手にって言うのもあれなんですけど、なるべくしてなっちゃうみたいなとこがあるんですよね。


高橋:
大塚さんはチェックV(おそらくアフレコ前に台本とともに渡されることの多いVTRのこと)っていうか、音も何にも入ってない映像をお渡ししてるかと思うんですが、戦略立てられる派ですか?それとも感覚で芝居される方ですか。

大塚:
基本的に僕は直感で何でも判断してしまう癖がありまして。うまくいくときはいいんですけど、ダメなときは本当にダメ。

高橋:
ご自身でダメと感じるときも……。

大塚:
ありますね。

納谷:
さっきチェックVという話が出ましたけど、チェックVを事前に渡されるのは本当に最近で、それまでは毎回通し見でしたよね。

大塚:
そうですね。

納谷:
今でこそ事前に練習できるようになりましたけど、それって最近のことで、以前は現場にいきなり行き、台本はあったかな?ってくらいで、1回映像を見せられて「さあ、いきましょう、ドン!」って。だからベテランの方とか、台本だけで全て読み取るので、台本読むのがすごく上手です。上手ですっていうのも失礼な言い方かもしれないけれど。今では割と絵だけ見て「こうだろう」って判断する方が多いので、「いやいや顔は笑ってるけど、裏では泣いてるはずじゃないかい」ってことは、あります。

高橋:
そういうものを、大塚さんは台本から直感で感じられるんですね。それでは残り2つになりましたが、次は間違いなくオールフルカラーで楽しめるんじゃないかなと思います。吹き替えです。ここに書いてあるのはごくごく一部ですが。まず、吹き替えとアニメーションの違いというのはどのような部分に感じられますか。


大塚:
アニメと一番違うのは……生身の人間ってことですよね。フィルムっていうことでは2次元の世界ですけど、生きた人間が芝居をやっているわけですから、アニメの場合は描いた絵がしゃべりますけど、生身の人間と描いた人間の違いっていうのは大きくて、生身の人間っていうのはどうしてもその人の芝居からあんまり外れられない。例えばスティーブン・セガールなんかは本人は甲高い声ですけど、声を当てるときに甲高い声を当てるよりは普通にしゃべる方が様になる。しっくりくる。そのしっくりくるみたいな所を探して行くのが吹き替える上で結構大切なんじゃないかなあ、と思いますね。そうしようと思うとまず呼吸を盗まないといけない。息が合ってると、立体感が出てくるんですよ、台詞に。息をあわせてやらないと、画面に貼り付けたような台詞になっちゃう。

高橋:
実際にそれを見ているたくさんの人の感じ方も変わると言いますか。

大塚:
そうですね。

高橋:
沢山の俳優さんを吹き替えられる訳ですが、やっぱり芝居っていうのは1人1人違うものですよね。

大塚:
違いますね。

高橋:
1個1個掴んでいくのはなかなかアプローチが大変なのかなあと思ったりするのですが、そのあたりは。


大塚:
でも僕は自分の声を商品にするって考えがあんまりないので。声を商品だと思っちゃうと、多分どの役をやっても同じしゃべり口で同じ声で、かっこいい声を出してやっちゃうと思うんだけど。商品だけど商品じゃないっていうかね。

高橋:
声以外にも、ということに関して重きを置いてるというか。

大塚:
声は素材でしかなくて、商品ではないですね。ただまあ買う側からしたら商品なんですけど。

高橋:
トータルの、総合芸術というか、大塚さんとしてはそういうふうに感じておられると。

大塚:
そうですね。素材だけじゃなく。


高橋:
実際に吹き替えからアニメーションまでさまざまな役をやっておられる大塚さんなんですが、吹き替えの現場とアニメーションの現場って言うのは違うものなんですか。作業の段取りだとか、やり方だとか。

大塚:
本来違いはないはずですね。あるとすれば原音を聞く「ミミ」とモニターがあるかどうかくらい。

納谷:
アニメはまあアニメなんですけど、声優さんが声を吹き込むから、当然台詞は存在していないし、効果音もついていないので、絵だけを見ながら声を当てていくわけですけど、吹き替えは僕らが「ミミ」って読んでるヘッドホンを付けて、役者さんがしゃべっている英語や音楽が耳に入ってきて、っていうのが違うかんじかなあ。


高橋:
先ほどおっしゃっていた「呼吸」ですが、声を当てる時はそういうもので呼吸を掴みながらやっていくっていう。

大塚:
まあ、アニメーションの場合は自分が呼吸しないと。まず、最初に自分が呼吸してやらないと、絵が生きていかない。

◆「Fate/Zero」について

高橋:
なるほど、そういうところに違いが。ということで、本当様々な吹き替えをやってらっしゃるので、もしご覧になってない方がいらしたら、是非ひとつ、ご覧になって下さい。そしてもう1つ、、最後はこれかなあと。「Fate/Zero」。ただいま放送中の1stシーズン、13話。そして2ndシーズン、合わせて25話。アフレコは少し前に終了しましたが、実際にFate/Zeroのアニメをご覧になって、出来と申しますか、フィルムの完成度と申しますか……大塚さんにとってFate/Zeroという作品はどんな作品に映っていますか。


大塚:
面白いですよ~。これは本当に……なんて言うんだろう、僕はこのライダーという役に出会ってよかったと思いますよ。何だろう、「神様ありがとう」って。

高橋:
それはどんな時にそのお気持ちを感じられますか。

大塚:
あのね、なんか楽しかったんですよ。まず本を読んでたときに「俺、こんな役なんだよな」って思いながら読んでたら、すごい好きになってね。泣きましたよ。ウェイバーが男になる瞬間に。

高橋:
いいですね。この先々もすごい展開が待っているんで。

大塚:
ぼろぼろ泣いたのを覚えてますね。

高橋:
それは、小説を読まれたときに。

大塚:
ええ。

高橋:
今、声を全部とり終えられたということですが、ドラマCDを経て、テレビシリーズとして、大塚さんは芝居をしてどんな風に感じられましたか。

大塚:
どんな風……まあ、基本みんな知ってる人だし、なんだろ「今日も一緒に遊ぼうぜ!」みたいな。そういう感じかなあ。

高橋:
ある種、勝手知ったると申しますか。非常にキャリアを積まれた方が多い現場で。

大塚:
そうなんですよ。大体どんな音を出すのかとか……声の質だけじゃなくて。スタイルみたいなものがあるじゃない。そういうのを知ってる人たちが集まってきて、「あ、今週は彼がいる」とか「今週も、一丁やろうか」みたいな。そんな感じがして、とても大好きでしたね。


高橋:
今、17話まで終わって、毎週毎週お亡くなりになられているという(笑)

大塚:
「次は誰か」って、みなさん戦々恐々としているという(笑)それがこの作品のスリリングな所じゃないですか。

高橋:
今日ここにいらっしゃってる方で、先を知らずにテレビアニメを楽しんでいる方はいらっしゃいますか。おお、けっこう、半分くらいの方が。「この先、何が起こるのか」と……。もうね……楽しいです。

大塚:
面白いですよ。

高橋:
実際、今、勝手知ったるという感じと伺ったんですけど、こう、キャリアを積まれた方との接触っていうのはわりとすんなりいくものなんですか。

大塚:
と、思いますよ。そこに、なんか新人で、人気者になりたかった人がいたりすると、「おい、こいつ誰、誰、こいつ!?」てなると思うんですけどね。……それで、さっき僕が「ウェイバーが男になる瞬間」って言っていけない想像をした人は……。


納谷:
言わなきゃそう思わなかったですよ!

大塚:
いや~ちょっと、しんとさせてしまったなあと思って。違いますからね。分かってると思うけど……違いますからね。

高橋:
当然、放送される少し前に完成はするんですけれども。本当に、いいアニメーションになっていて……。大塚さんも毎週楽しくご覧になっていますか?

大塚:
ええ。前のシーズンの時は2週遅れで見てたんですけど。今期からはMXテレビでちゃんと見てます。

高橋:
今週は18話、やりますので。残りも少なくなってきましたねえ。

大塚:
誰が……今週は誰が……。

高橋:
すてきな別れなのか……罵詈雑言を吐きながら去って行くのか……。ご期待頂けたらと思います。


大塚:
これはほんと面白いなあ。Fate/Zero。だらだら続くのはきっとねえ、だめなんだろうなあと思うんだけど、惜しみながら終わるって言うのが一番いいんでしょうね。

高橋:
ちょっと寂しいですけどね。

大塚:
こないだのは切なかったですけどね。

高橋:
そうですねえ。ちなみに、これまでの中でどのあたりが一番切なかったですか?

大塚:
ランサー……。

高橋:
ランサー……。なんかもう、ごめんなさいって感じですよね。

大塚:
ちょっとそれはねえだろっていう感じで……。かわいそうな感じがしましたね。

高橋:
1個前の週でね、キャスターさんがちょっと幸せそうな感じでね。


大塚:
何か……天国に行ったんじゃないかって。ランサーはまたかわいそうになあって感じだね。

高橋:
これからもすごいシーン沢山ありますので、お楽しみにしていただけたらと思います。

大塚:
変なことは想像しないように。

高橋:
(笑)というところで、ここからはみなさまから頂いた質問に答えられたらと思います。作品を通じてのお話というのは以上にさせて頂きます。みなさま、お話し頂いた大塚さんに拍手をお願い致します。


(拍手)

大塚:
もういいよ!(笑)ありがとう。

高橋:
ということでこれからはみなさまから頂いたご質問に、時間の許す限り答えていきたいと思います。

大塚:
5分くらいですか?

高橋:
いやいや(笑)

大塚:
2分くらい?

高橋:
強いて言えば、その20倍くらいは……。

大塚:
わかりました(笑)


◆一番大変なのは、生き残ること

高橋:
まずは今日非常に多い質問で、上は30代から下は8歳からの質問なんですが。「声優になることを夢見てます」と。「声優のお仕事で一番大変なことはなんですか」ということなんですが。

大塚:
それはね……生き残ることです。

高橋:
(笑)はい。

大塚:
これはもう……永遠のテーマなんですよね。僕がどうやって人生をまっとうするかってことも、そこに直結してきますから。まあ、死ぬ寸前まで仕事に呼ばれる役者でいたいっていう。最後まで生き残りたい。命が余ってるのに仕事がないって言うのが一番怖いですね。


高橋:
実際こう、生き残るっていうのはある種、メタルギアソリッド的な感じで、色んな武器なのか、箱なのかがあると思いますけど。

大塚:
カロリーメイトとか(笑)……みなさん拍手ありがとうございます。この中で大塚製薬の方と知り合いの人とかいれば、CMの仕事を僕にくれれば、ばんばんカロリーメイトのことを言ってあげますから。

高橋:
ではどなたかいらっしゃったら、よろしくお願い致します(笑)それで、逆に大塚さんが生き残ってこられた術……というと失礼になってしまうかもしれないんですが、なぜ芝居というものを続けられていると、ご自分では感じられますか。

大塚:
わかりませんねえ。運じゃないですか(笑)いやあ、その、堀内賢雄と大塚明夫は方向性が全く違っていて、お互い腹の中で「あいつは長く持たねえな」って思ってたんですけど、最近は「お互いすごいな」って言い合ってるんですよ。何故かというと、お互い生き残っている。自分は生き残ってもこいつは生き残らないって思ってたのに、お互い生き残っている。ということが、ものすごく面白いし、結局自分の頑張ってきたことは間違いではないけれども、それだけが道のすべてじゃないって感じがしますね。彼が自分のプロダクションで若い子に教えることっていうのは、「とにかくかわいがられなさい」ということ。誰にも顔と名前を覚えてもらって、かわいがられないと仕事なんて無いんだから。とにかくかわいがられなさいと。これはある意味真理で、例えば学校の同期の中で自分が一番上手いっていうんで、ちょっと天狗になったりするじゃないですか。それって一番損なのね。その中でちょっとくらい上手くても、僕から見ると全部同じにしか見えない。そこで天狗になってる子なんていらないよ~ってだけのことになっちゃうから。その辺に気をつける意味で言えば、とにかくかわいがられたもの勝ちだっていう考え方は正しいと思いますね。まあ、それで仕事が転がって来たときに、下手だとちょっとしんどいんですけどね。下手でも仕事をがんがんやっていくうちに段々上手くなっていったりするんで、とにかく現場に出してもらうことが一番の勉強だと思うんですけどね。


納谷:
養成所でよく同じようなお話をするんですけど、僕が思う声優さんの一番つらい所って、自分でお金を稼げないこと。誰かに選んでもらわないと、誰かに「いいね」って言ってもらわないとだめなんです。そういう意味では新人も大塚明夫もある意味一緒。ということは、誰かに生活調達権をずうっと握られ続けなきゃならない。だから僕がよく生徒たちに言うのは「キャスティングをする人間に超能力者はいない」ってことで。キャスティングにおいて知らない人や分からない人を書くって言うのはある意味不可能なんですよね。だから、僕の言い方では「知られなさい」っていうこと。今、明夫さんの話聞いていて「ああ、僕と一緒だなあ」ってちょっと感動したんだけど。

大塚:
僕は若い時から「腕が無いとだめでしょ」って思ってたんで、それを一生懸命勉強してきましたが、結局は、腕だけあったところでだめなんだって分かったわけ。例えば誰かに「こいつだめだな」って思われても、「でもそういう所がかわいい」って思ってもらえることを信じて、何だろう……難しいな。うん……まあ、運です(笑)

◆若い時にしたこと、しておくべきだと思うこと

高橋:
はい(笑)では続いての質問です。先ほど運というお話もありましたけど、駆け出しの頃、自主的にされていたことはありますか。また当時を振り返って、しておけばよかったなあと思うことがあれば教えて下さい。

大塚:
もともと声優という目標が無かったので、亡くなった井上ひさしさんっていう劇作家がいらっしゃったんですけど、その人の作品を上映するというコンセプトのこまつ座というものがありまして、そこに行ってました。そこは売れている役者さんをプロデュースして、井上さんの作品を上演するって形式の集団なんですけど、そこで僕はお芝居の勉強をさせて頂いて。別に稽古場を手伝いに来たわけじゃないんで給料は一銭も出ないんですけれど。でもいつか芝居に出してほしいって思うし。だから毎朝みなさんより早く来て、掃除してね。便所掃除なんかは他人にはさせませんでしたね。あの、自分って子どもなんですよ。今でもそうだと思うし、親父の年から見れば「お前には全然知らないことがある」ってなるわけですから。特にその、これから始めようって人なんて、何にも知らないって自分で思って、何でもしようってした方がいいと思いますね。そのためにはまず、否定から入らないってことかなあ。

高橋:
目に入れる色んなものを受け入れるといいますか、吸収すると言いますか。

大塚:
若い時って否定したくなるんですよね。自分じゃないなにかを。

高橋:
自分を出したがるっていうか、「俺、すげえ」みたいな。

大塚:
自分は悪くないんだ、悪いのは他の人なんだっていう。自分を守ろうとする心なのかな。わからないけど。なんで、まず肯定から入るといいと思いますね。


高橋:
では次の質問に。これは今日、一番ある種、核心に入るかもしれないんですが。ストレートです。「声優になるにはどうすればいいですか」。

大塚:
そんなことを聞かれても僕には分かりませんねえ(笑)「どうしたら声優になれる」何かってあるのかなあ。声優っていってもいろいろあるわけだし。例えば、マウスでもいい、青二さんでもいい、所属になったとしましょう。それが声優になるってことなのかな?

納谷:
僕も同じような質問を受けるんですが、言うことって大体決まってて。まず、声優って言う言葉の定義は何ですかって答える。大塚さんの言ったとおり、どこかに所属するっていうのも一つの定義だし、ただアニメに出たい吹き替えをやりたい、特撮をやりたいっていうのが目標であるっていうのも一つの定義だし。ただ、アニメに出たいだけだったら、変に時間かけて勉強するより、ここらに業界関係の人いっぱいいるんで、その人を誰か捕まえて「出させて下さい」って言うのが一番早い。でも、それが本当にやりたいことなんですか?って。それとも、僕が言うプロの声優とは、声優という職業でご飯が食べられることを指すんだけど、あなたのやりたいことはそういうことなんですか、って。その定義がしっかりしていない人に聞かれても、答えようが無くて。

大塚:
なるほど、そうですねえ。

納谷:
その次にNO.1の声優って誰ですか?って聞くんですよ。これって、答えは無限にあるんです。例えばよく言われるのが、山寺宏一さん。山寺さんが悪いっていうわけじゃなく、あれは1つの形だと思う。声優をやっていて、どんどん仕事を広げていって、今は顔出しのお仕事とかタレント的なことをやっていて、っていうのも一つの頂点だと思う。あとはうちに80歳を超えても仕事がある声優っているんです。いろいろあるし、体がつらいこともあるけれどもそれでも仕事がしたい。正直イベントやってキャーキャー言われたり、ものすごい主役をやってみんながすごく知ってるってわけじゃないけれど、それでも80歳を超えても仕事がもらえる。これも僕は1つの頂点だと思うし。あと、例えばさっき否定的な言い方しちゃったんですけど、歌があって、武道館でコンサートやって、キャーキャー言われる、それも1つの頂点だと思うし。別に誰がナンバーワンでもいいと思うんです。ただ。あなたにとっての一番はいなければならない。「やれれば何でもいい」ではなく、「わたしはこういう声優さんになりたい」って思わなければならない。山寺さんを目指すでも、水樹奈々を目指すでも、まったく新しい形の声優を目指すのでも、それはそれでありだと思うんです。でもそれをはっきりと思い描いて目指さなければならない。漠然と目指してはいけない……って言い方だと逃げになっちゃいますかね。

大塚:
付け加えておきますと、わたしに挑む人は覚悟してこないと(笑)若いうちにつぶしますんで。……というのは冗談ですけど、本当にそれぐらいハイリスクなんです。だから、「じゃあ誰よりもコストパフォーマンスが高くて、お買い得な商品として成立してやる」っていう1つの戦略も現れるわけだし。そういう具体的なものが無いと。

納谷:
声優という職業をよくピラミッドという言い方で表す人がいますけど、ピラミッドじゃ無いと思うんですよ。どっちかというと……山がいっぱいある感じ。


大塚:
なんか北アルプスみたいなね。

高橋:
そう北アルプス。失礼な言い方かもしれないんですけど、僕らは使う方だから上の方にいる人をぽっぽっぽって取ればいいんですけど、目指すみなさんにとって同時に二つの山を登るってことはかなり難しいと思うんです。下の方はみんな一緒なのかもしれないけれど、山に登ると確実に分岐してきていて、ということは、両方に登ろうとか、「どこに登ろうかな」っていう状態だと厳しいかなって。「声優になる」ってすごく漠然としていて、北アルプス山脈のどこかに登るって言ってるのと一緒で、それはまず遭難しますよね。だいぶ悲しい事態になるんじゃないですかね。だから、はっきりとした、自分のなりたい声優像を持つこと。そのために具体的に今何をするかを考えることが大事かなあと思います。すみません、大塚さんの前でなんかいっぱいしゃべっちゃった……いやでもよく聞かれる所なんです。

大塚:
全く同じことを思いますね。

高橋:
みなさん、目指されていることはすてきなことだと思いますが、お二人の今のお話を思い出しながら登って頂いてほしいなあと思います。ということで、こんな区切り方になってしまいましたが次の質問を。20代男性の方です。「近年声優という職業が人気職業と言われていますが、ぶっちゃけおすすめしますか?」というご質問です。

大塚:
(笑)さっきから言ってるじゃん。勧めませんよ。まっとうに生きなさい。

高橋:
ということでですね、先ほどから声優という職業について伺っていますが、実際お仕事もあれば日常もあると思います。これも多く頂いたご質問なんですが、40代男性の方から。「大塚さんは素敵なお声をされておりますが、日常生活で気をつけたり気を使われたりすることはありますか」と。これは声というものに関してお聞きしているのだと思いますが。

大塚:
別にありません(笑)

高橋:
自由闊達に(笑)

大塚:
なんていうんだろう、例えばオペラの人だったらどれだけ高い音が出るだろうっていうフィジカルな問題っていうのがあるんで、それこそ、夜更かしをしないとか、たばこを吸わないとか、酒飲んだら歌わないとか、色んなことがあると思うんですね。僕らの場合、例えば僕が一番高い音を出しても、別にいらないものですよね。その人によって、じゃあ何がその商品の効能書きなんだっていうことだと思う。いい声ったって、じゃあ何がいい声なのか。そんなの好き好きなんだから分からないじゃない。だとしたら、語り口とか、そういったものの方が効能なわけ。ほら、「こんなにいい声なんですよ」って「ああそうですか、よかったですね」ってそれだけのことになっちゃう。そういう考え方をしちゃう。そういう考え方が僕はすごく嫌で。なんでかって、仕事がつまんなくなっちゃうじゃない。演ずる楽しみがなくなってしまうような気がする。「これが自分の声です」って固執しないで、なんか声は声で、それはあなたの、僕の、声なんだから。その声をどうやって使ってキャラクターを作っていくんだって、そこと常に向き合っていたい。あんまり声質みたいなことは考えない。ただまあ、薬によってはあんまり低い声が出なくなっちゃうんで、それは気をつけないといけない。


高橋:
それは体調を崩された時とかに。

大塚:
そうです、そうです。

高橋:
なるほど。ちなみに、お体を鍛えられたりっていうことは……。

大塚:
日常的に?

高橋:
はい

大塚:
……なんにも?

高橋:
すごくスマートなお体をされていますが……。

大塚:
いや、人前に出るときには腹を引っ込めてるんです(笑)

高橋:
こういったジョークも忘れない、素敵なお人柄ですが。では、先ほどは日常的なことを伺いましたが、これからまた作品ごとというか。これも結構多かった質問なんですけど、徳島市内の女性の方からですね。「Sound Horizon」にて、語りだけでなく、歌も含めてご参加されておりましたが、その部分を含めていかがでしたか。また、役作りで気をつけられていることなどありましたら教えて下さい、ということです。

大塚:
サンホラに関して。


高橋:
はい、語り、歌、色んな形で参加されましたが、どんな印象、感想、あるいは思い出などございますか。

大塚:
思い出はね……だんだん課せられる仕事が多くなってきてる……(笑)それはちょっとつらくなってきたよね。気をつけるのは曲の全体像があって、その中で語りってなったときに、どうやってメロディを引っ張り出していくのか、っていうようなことをすごく気にしますね。

高橋:
そのヒントになるようなことってあるんですか。

大塚:
その曲によってメロディラインも違うし、ストーリーみたいなものもあるんで。ここでざって強く入ってくるんだったら、それをどうやって音を引っ張ってくるんだっていう。何も無いところに例えば、その音をぼんっとほらって渡してあげる、そういうまやかしみたいなことをどうやって出来るのかっていうのを、常に考えますね。ああいう語りをやるときはね。

高橋:
なるほど、「こうしたらいいだろう、みたいなことを」ご自身の中で……。実際にそういうことと通ずるところがあると思うんですが、その表現の仕方について。徳島県の20代女性の方です。アマチュアで歌を歌ったりしてるんですが、表現力が欲しいと思います。歌に限らずお芝居に関しても、表現力とはどんなところでどのように培われていくものだとお考えでしょうか。

大塚:
えっとね……僕は、分からないんだけど、表現っていうものは、もともとそれを持って生まれてきてる人に任せればいいと思うんです。ただ僕みたいな人がそれでもやりたいっていうんだったら、傷ついたり泣いたり、つらい思いをしたり、何か負の感情みたいなものを沢山経験した方が、いいような気がする。

納谷:
僕もそう思いますね。結局役者さんって、自分の経験値だったりなんだったりから、引き出しからいろいろ出していくしかないので、例えばスポーツやったことありません、何もしたことありませんっていう人に、ホームラン打ったときの感情を表現して下さいって言っても多分その人は出来ないんじゃないかな。大塚さんの言ったとおり、天才っているんですよ。全然何の経験もしていないんだけど、急にポンって言われると「そうだよね」って出来ちゃう人はいます。でも残念ながら天才に生まれてないけれど、それでもやりたいって人ならば、さっきの例で言えば、野球やるのが一番手っ取り早くて。まあでもそんなことを言ってたら今のアニメの主役をやりたかったら、魔法が使えて、空が飛べて、恋愛ではやたらとモテて……。

高橋:
そうですねえ、魔法かモテるかはどっちか欲しいですねえ。

納谷:
経験が無ければできないっていうならば、そんな奴いるわけないじゃないですか。でも想像することはできるじゃないですか。例えば野球はやったことなくても、テニスはあるっていうんなら、サービスエースやったときの感覚で表現したら合うかなっていう。僕の生徒の話なんですけど、ある生徒が僕の元に来て「今日、実は頑張って来たんです」って言うんです。何かって言うと、潜水艦に乗ってクルージングに行くっていう企画があったらしいんですけど、それをわざわざ断って学校に来たって言ってて。僕は怒りましたね。だって、そんな経験おそらく出来ないじゃないですか。


大塚:
そうですね。潜水艦の上にクルージングっていうのがすごいですね。

納谷:
たまたま僕が予定を変更して授業の日程を変えちゃったっていうせいもあるんですけど。「約束断ってきたんでほめて下さい」みたいな感じで来たんで、 「お前馬鹿か」って言いました。経験を一番積んでいる人が僕は一番上手くなると思うんで、そんなチャンスがあるなら俺の授業サボればいいのに……って普通に言ったらぽかーんってしてましたけど(笑)

高橋:
大塚さんはその、ご経験って言うのは自分の中で蓄えられているんですか。

大塚:
世の中生きてると、いろいろつらいこともありますよ。人様には言えないこともありますよ……。

高橋:
皆さん、察してください(笑)それでは次の質問なんですが、えっと、先ほどの「目指すな」以外の答えでお願いしたいんですけども。徳島の方からなんですけど、「私は今年で25歳になるんですけれども、今から声優を目指すのは厳しいものでしょうか」ということなんですけれども。

大塚:
う~ん。厳しいって言うのは、何に比して厳しいのか。別にやりたけりゃ厳しかろうが優しかろうがやるんだろうし……。別にお芝居やってる人間からすれば「30過ぎてるけどお芝居やりたい」っていうならやればいいだけだし。

納谷:
さっき僕が言ったことなんですけど、どういう声優を目指しているかにもよる。例えば歌って踊れるアイドルで、なんかAKBみたいなことしたいなって思ってて……。

大塚:
神谷くんとか小野くんみたいなね(笑)


納谷:
アイドル的な声優を目指すのに今40ですって言われたら、うーん、為せば為るっていうのはちょっと無責任かなあっていう気はしますけど。ただ、80過ぎても芝居が好きで声優やってるっていう人もいるんだから、僕に言わせれば……25でしょ?まだ55年もあるので、どうにでもなる。今回マチ★アソビに連れて来てる森谷里美とか加隈亜衣とかもOLやってて、それでも声優やりたいってやってきた子だから。正直、年いってから始めてますけど、女の子の声優としてはそれなりにしてもらえるってところまでは来られてるんで。それだけでご飯食べられるかって話はあれですけど。なんで、どこでどういう姿を目指すかっていうことだと思いますね。

大塚:
飯を食うようになれるのは大変でしょうかって言われたら、そりゃあ。何度も言わせるんじゃねえよっていうね(笑)

納谷:
簡単に目指すなとは思いますけど、不可能であるとは思いませんね。基本的に日本で声優をやろうって思ったら、日本語がしゃべれて、声が出せるんであるなら、可能性はゼロではないよって思うので。自分の登りたい山に登れるかはわからないけれどね。例えば声ががらがらで、すごいダミ声の子に、「でもわたし清楚なヒロイン役をやりたいんです!」って言われても、いやあそれは、人にはイメージっていうものがあるじゃないですかっていう話になってしまうので。

大塚:
ボクニモヤレルンダ、ソンナコトナイヨー(裏声)

納谷:
(笑)いや、不可能ではないですよ。

大塚:
いやあ、これ、1人2役いけますね。冗談です。とても浪川の高みには……(笑)


高橋:
先ほど何かを目指すっていう話になりましたけれど、逆に大塚さんご自身が表現者としてどんな風になりたいか。目指す場所のようなものってあるんですか。

大塚:
じゃあ声優としてどうありたいかって言ったら、とにかく声優として死ぬ直前まで現役。あの人は元気だよねえって言われる。そんで、前線にいる、そうありたいですね。惜しい人を亡くしたって言われたいですね。

高橋:
なるほど。実際、現在最前線におられますもんね。ではこの方、25歳の女性の方です。「私はなかなか1つのことが続きません。自分の中でモチベーションが下がってしまうことがよくあるのですが、大塚さんがこれまで芝居というものを続けてこられたモチベーションは一体なんでしょうか」。

大塚:
面白いと思うからですね。これ、つまんねえ、嫌だなあって思ったら続くものでもないし。僕はいろいろ仕事を変わってて、たまたまお芝居というものと巡り会えたときに「面白いじゃん」って思って、それで危険な第一歩を踏み出して。踏み出したがゆえに俺は後には戻れないって思いましてね。そういうのもあるんですね。確かね、お袋が「30になるまでに道が見えてこなかったらやめなさい」って言ってくれて、「分かった」って言ったんですけど、その時はやめる気はなかったです。幸い30になるくらいにちょっと道が見えてきたっていうのもあって、今もやれてますけれど。

高橋:
では次は20代女性の方。「昭和60年あたりのこまつ座の舞台『きらめく星座』を見る機会があったんですが、大塚さんが出演していてびっくりしました」。

大塚:
ですよねえ。

高橋:
はい。「この頃は声優さんとしてのお仕事が非常に忙しいと思うんですけれども、今後、役者さんとして舞台に立つ予定はありますか」ということです。

大塚:
予定が決まってるっていうのであれば、11月くらいに1本やるつもりはあるんですが。舞台の場合は……だいたいやってますので。最近はTwitterなるものを始めたので、何かあればTwitterにつぶやくので。遠いけど、是非ね、遠いところからでも見に来てくれると嬉しいです。

高橋:
すべては表現ってところにあると思うんですけれど、大塚さんがお考えになる舞台の芝居の魅力みたいなものを1つお願いします。


大塚:
舞台の芝居の面白さって言うのはね、多分、音楽やる人ならレコーディングよりライブのが面白いってわかると思うんですけど。

高橋:
非常にストレートで分かりやすいですね。なるほど。じゃあライブの時は何か高まるものもありますか。

大塚:
あります、あります。やっぱり声の仕事の場合は、例えば自分を撮った映画のアフレコをやる場合でも、そのときの同じ気持ちにはならないと思う。台本を見ながらであっても、ああ、このタイミングで後ろを振り向いてしゃべり出したんだった……とかって思いながら声を当てちゃうし。自分が演じたものに台詞を入れるとしても、その時と同じようにはいかないじゃない。芝居の場合はその時そこで起きてることが全てだから、一番ウソがなく出来るんじゃないかな。もちろん芝居だからウソなんだけど。目の前にお客さんはいるしね。ウソなんだけど。だけど、自分の生理で言えばそれが一番ウソが少なくて、一番その気になれるゴッコなんじゃないかな。

高橋:
なるほど。

大塚:
見てるお客さんが笑ったり泣いたりしてくれるのが速攻でわかるのも楽しいしね。

高橋:
また、そのレコーディングの先の楽しみにこう、お休みの日っていうのも当然……。

大塚:
休みって言うか…あぶれですね。

高橋:
あぶれ(笑)お休みというか、たまたま仕事がなかった日みたいなことですかね。

大塚:
そう思ってた方がいいんじゃないですかね。

高橋:
自分はあぶれてるんだ、マズイ!と。

大塚:
やべえんじゃねえ?って。誰さんと誰さんは仕事しているのに、私だけ仕事ないの?っていう。で、せっかくあぶれちゃってるんだから、あぶれたのを挽回すべく何か1つ拾っておこうかな……っていうことを考えたりね。

高橋:
今おっしゃっていたようなこともありながらも、これは差し支えなければなんですけど、今日はエンジョイしようってなった時に、大塚さんはオフの日ってどんなことをされていますか。


大塚:
僕は体が弱いんで、寝てることが多いです。……まあそれは冗談としても(笑)芝居も昔よりは見なくなったし、そうだなあ。なんかふらりとオートバイに乗って近所を、なんかこうね、広い空が楽しくなったりとか、あるんですね。まあ、麻雀とかもやりますけどね。

高橋:
徳島の空はどうでした?

大塚:
いやあ楽しかったですよ。今、ゴールデンウィークなんで、なんか休みがうまいこと重なって。せっかくだからと手を尽くしまして、なんとかオートバイで来られました。本当はね、明るいときに走りたかったんですけど、ちょっといろいろ都合で……雨が降ったりね。夕べ、夜中に走ってきて、仮眠とったら顔がむくんじゃって、困ったなあって思って。

高橋:
いえいえ、すてきでございます。

大塚:
それで明日、これが終わると道後温泉とか行ってみたいと思ってます。6日に帰ろうと思うと、きっと超絶渋滞するので、その辺の段取りもうまくやりつつ、今回はちょっと楽しみたいなと。

高橋:
是非、楽しんでください。そしてですね、そんなことを言ってるうちにあっというまに2時間が経ってるんですが……。

大塚:
お尻痛いでしょう。ごめんねえ。

高橋:
というところなんですけど、もうちょっとだけ、すみません。あと1つ2つ質問が。みなさんも、まあ大塚さんを好きな方しかいないんで、大丈夫だと思うんですけど。これも非常に多かった質問なんですけど、香川県の女性の方からです。「他の方の望む大塚明夫さんと、ご自身の求める大塚明夫さんがあると思うのですが、そういうことで葛藤する部分、自分の中のご自身と、求められる大塚さんのギャップみたいなものを何か感じられたりすることはありますか」ということです。

大塚:
うん、それは感じるけど、仕事には持ち込まないようにしているね。そんなのを持ち込まれても、困るでしょうしね。誰しもあるんじゃないですか。その、「わたしは本当は優しい女の子なのに。みんな私を男の子みたいだって言うわ」みたいな、何かそんなの。そういうのってみんなあるじゃないですか。「本当の自分」。まあそんな感じですよ。そのことが僕たちの場合は、キャスティングするときにぱっと出てくる。たとえばライダーとかが「おお、明夫!」って。僕はあんな体ごっつくないんだけれど(笑)そういう時にぱっと感じたりする。なんかそういうことが僕のこう、外殻をどんどんどんどん築いて強くしていってくれてるのかなあって思うくらいで。そのことに対して深く悩んでるとか、そういうことはないんで、安心してください。

高橋:
是非、安心したいと思います。ということで、時間も押していますので、最後の質問です。今、17時なんですけど。大塚さん、今ここにいる方はみんな「今晩、大塚さんは何を食べるんだろう?」って思ってるんだと思います。そこで最後の質問なんですけど、20代女性の方。「わたしは大塚さんの大ファンです。初めての徳島ということで、お楽しみいただければうれしいのですが、今晩食べたいものはなんですか?」っていう質問です。何か今晩、徳島のもので味わってみたいものはありますか?


大塚:
おいしいもの?(笑)うーん。ラーメンは明日にしようかという感じでね。徳島っていうのは、基本食べ物ってなんなの?

客1:
鳥。

客2:
魚。

大塚:
食べ物って言ったんだよ……。

客3:
阿波尾鶏。

大塚:
ああ、知ってる知ってる。阿波の鳥でしょ?魚と鳥か。そうか。じゃあ、焼き鳥?そんな感じがいいんじゃないですか。

高橋:
是非ね、そんな感じで徳島を満喫していただいて。

大塚:
四国ってだけでいいよね~。なんか、すごい風でね。バイクに乗ってて死ぬかと思ったんだけど。もう空は青いし雲はバンバン動いてるし、空は広いし。空気感が本州じゃない!これはなんかちょっと……また来ちゃおうかな。

(拍手)

大塚:
そこそこバイクは大変なので、フェリーのね、再開を是非お願いしたい。みなさんで声を大きくして、再開してほしい。行きか帰りかどっちかフェリーに乗れたらいいかなあって思いますね。


高橋:
ということで、そういうことも含めて、今日は初めての徳島をお楽しみいただければ。本当にいろいろなお話を、芝居のこともそうですし、驚くようなことも、いろんなことを伺ってまいりましたが、そろそろお時間でございます。今日はデジタルクリエイター養成講座、講師・大塚明夫さんということでお招きしたところでございます。最後、本日は500名近い、「生徒」さんたちがいらっしゃってるわけですが……。

大塚:
今日は本当に立って見てくれる人まで、ごめんね、疲れたよね。ありがとう。

高橋:
ということで改めて最後、お越し頂いたみなさんに講師大塚明夫さんからお伝えしたいことなど、何かありましたら、頂戴できればうれしいのですが。

大塚:
ええっ。そんな難しいこと!

高橋:
いやいや、生徒さんに一言……シンプルな言葉でかまいませんので。

大塚:
なんだろ。とにかく、楽しく、生きましょう。生きるっていうことはやっぱりしんどいことなんで、どうやったらしんどさが消えるかって。逃げるってことじゃなくって、アプローチを変えて、逆に楽しんでしまえっていうことを考えられると、生きるのが楽になると思う。そういう形で考えることができると、この先、生きていく上ですごく有利に展開できると思うんで。そういう感じで、楽しい方向にどうやっていくのかっていうのを、みんなで考えていきましょう。それと、50を過ぎた人には親切に。……という形で今日は終わってもいいでしょうか。

高橋:
はい、本日はありがとうございました。本日の講師、大塚明夫さんでした。

大塚:
どうもありがとうございました。

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in 取材, Posted by logq_fa