コラム

グリーは一体どこから道を間違え始めたのかという知られざる歴史まとめ


本日発売された週刊ダイヤモンドの「当局がグリーに重大な関心 正念場迎えるソーシャルゲーム」という記事に対し、速攻でグリーが反論のリリースを出したわけですが、一体何が原因でこんなことになってしまったのかを理解するためにも、そもそもグリーはどのような経緯で今のような形に至ったのかをまとめてみました。

これが本日発売の週刊ダイヤモンド


記事の中身はこんな感じで、ネットに掲載されているものと同じです


指摘されている問題点は以下のようになっています。高収益体質のグリーを支えている部分に大きな問題がある、というわけです。

 急成長しているソーシャルゲーム。そのビジネスモデルを揺るがしかねない事態が起きている。

 ある政府関係者によれば最大手グリーの摘発に向けた検討が始まったもようで、「4~5月が山場だ」というのだ。

 ゲームジャーナリストの新清士氏は「月10万円近く使うような、会員全体の3%に満たない高額利用者が支えている」と言う。

 会社側にとってみればデジタルアイテムを制作する原価はほぼなく、その出現確率も操作できるために高収益につながるのだ。

 もともと携帯端末を用いて無料でゲームが始められ、簡単に決済ができることで会員数を伸ばしてきたために、未成年者の高額利用の問題も引き起こしている。

 各地の消費生活センターには、子どもが多額のカネを使ってしまい困り果てた親からの相談が相次いでいる。「100万円を使う例もよくある」(東京都関係者)ほどだ。

そもそも「GREE(グリー)」が始まったのは2004年2月、当時はまだ楽天の社員だった田中良和氏が個人の趣味で始めたサイトでした。

サービス開始当初のサーバが公式サイトに掲載されています。ここからすべてが始まったわけです。


アップの写真はこんな感じ


開始から5ヶ月後の貴重なインタビュー記事が以下にあります。

ITは、いま「それでいい、楽しいから」――7万人の町「GREE」を一人で作ってる会社員 - ITmedia ニュース

 「趣味でポルシェ買ったり、世界一周旅行する人もいれば、趣味でインターネットサービス作る人がいていいじゃない」。

 ソーシャルネットワーキングサイト「GREE」を“趣味”で開発・運営している田中良和さん(27)は言う。

 GREEは、7月29日現在で7万1364人が利用する国内最大規模の無料ソーシャルネットワーキングサイト。ユーザーからの招待があれば、誰でも無料で参加できる。

 7万人超のコミュニティサイト。企業が維持するのも大変な規模だが、開発やサポートは田中さん一人だ。田中さんはある大手IT関連企業の社員。といってもGREEは仕事とは無関係。作業は終業後や休みの日などに行う。サーバ費用などはすべて自己負担だ。

ここがDeNAのモバゲーとの最大の差で、モバゲーの方はDeNAの中で最初から仕事として作られたわけですが、GREEはそうではなく、創始者である田中良和氏が最初からたった一人で作ったものである、という点。なぜGREEの田中良和氏が時としてヒステリックに反撃したりするのかという最大の理由がここにあると予想され、以下のように語っています。

 「GREEは僕にとって子どもみたいなもの。子どもが生まれる前から『子ども年表』みたいなのを作って、子どもの将来とか、いつ死ぬかとか決めたりしないでしょう?『あなたの子どもの目標あるんですか』とか、『将来のプランがないなんておかしい!』なんて言う人もいないし」。

つまり、田中氏にとってGREEはまさに「我が子」であり、だからこそ今回の週刊ダイヤモンドの記事しかり、DeNAのモバゲーに対する裁判しかり、超主観的かつ感情的、そして過剰なまでの反応をしてしまうわけです。

また、単純に趣味として始めたものなので、GREEには「理念」のようなものは初期の段階ではなかったことが以下の発言で分かります。

 「GREEのユーザーは増やしたい。ユーザーが増えれば、サービスの質も変わると思うから。でも、GREEをどんな形にしたいのかとか、10年後どうなっているかなんて分からない。誰かに教えて欲しいくらい」――投げやりな言い方ではない。分からないことを楽しんでいるかのようだ。

最初期の頃のGREEは今のようなソーシャルゲームとは縁もゆかりもなく、非常に牧歌的な様相を呈していたことが下記の記述でうかがい知れます。

 GREEからの収入も、ない訳ではない。サイト内にGoogleのアドワーズ広告を表示しているほか、Amazonのアフィリエイトサービスを導入。ユーザーが紹介した本やCDがレビューを通じて購入されれば、売り上げの数%が支払われることになっている。しかし……。

 「儲かりませんよ。Amazonのアフィリエイトは、レビューサービスを使いたいから入れてるだけ。アドワーズも、タダで貼れるんだから貼ってみよう、くらいの気持ち」。サーバのレンタル費用など到底カバーできない。私財を投じて、運営を続ける。

 でも、それでいい、楽しいから、と田中さんは笑う。「町を作っている感覚。『シムシティ』リアル版みたいな。今日はビルが建った、今日は線路が通じた。住民は今日も幸せだった、みたいな」。

今の現状から考えると「儲かりませんよ」という当時の田中氏の言葉からずいぶん遠いところまで来たのだというのがよくわかります。

次に、GREEが変わり始めた最初の第一歩は上記インタビューの2004年7月から約4ヶ月後の2004年11月、GREEが個人運営から「株式会社」になったときです。

「GREE」を株式会社にした理由 - ITmedia ニュース

 国内ソーシャルネットワーキングサイトのさきがけ「GREE」を運営する「グリー株式会社」が12月7日に設立される。社長に就任するのは、GREEを開発し、ボランティア運営してきた田中良和さん。勤めていた楽天を10月に退社し、GREEの運営に専念する。株式会社化に踏み切ったのは、GREEを長く続けるためだという。

 「個人運営は大変だった」と田中さんは振り返る。ユーザーが11万人以上いるのに、運営するのは田中さん一人。田中さんが旅行に出かけたり倒れたりすれば、サポートやサービスが止まってしまう。かといって、GREEをボランティア運営してくれる仲間がいるわけでもない。複数の人間でサポートするには、会社化して組織を作る必要があると考えた。

 GREEからの収入はほとんどなく、運営費用は私財でまかなっていたが、「お金も無限にあるわけじゃない」。11万もユーザーがいる今、お金がなくなったからやめるというのも無責任だ。11万人の個人情報を一人で管理するのも、限界だと感じていた。

この段階でもまだ「収入はほとんどなく」となっており、今の姿からは想像も付かないような状態です。

ここからさらに半年後の2005年5月、GREEはまだそんなに大きくなっておらず、以下のような感じであり、かなり苦労していることが感じ取れます。

社会とネットとサービスと──SNSその3“社会”を作る「GREE株式会社」 - ITmedia ニュース

 現在の収入源は、従来からあったAmazonのアフィリエイト、Googleのコンテンツマッチ広告「AdSense」に加え、「純広告」と呼ばれるテキスト広告やバナー広告。「今の体制を回していくだけの収入はある」。営業を担当する山岸さんの人脈が生き、MSNやApple Store、リクルートといった大手との広告契約が相次ぐ。

 しかし「SNSでがっつり儲けるとか、SNS独自のビジネスモデルとなると、まだまだ」。広告だけでなく、独自のビジネスも模索していく。

 「個人の力を生かしたビジネスをしてみたい」――田中さんは展望を語る。「楽天市場も価格.comも、個人の小さな力を集めたビジネス」。具体策はまだないというが、日記やレビューによる情報発信をさらに充実させ、個人を核にした新しいビジネスを始めたいと話す。

この時点ではおぼろげながらもGREEの方向性をある程度示しており、田中氏は以下のように語っています。

 「GREEを作ることと社長業は、すごく似てる」――GREEも、GREE株式会社も、中で人が幸せに生きるための一つの“場”と、田中さんはとらえている。「人が幸せになるには、誰と、何をするかが重要」。GREEという場で、また、gree株式会社という場で、素敵な仲間と楽しく活動し、みんなが幸せになれば――そんな思いで、“場”作りに徹する。

「人が幸せになるには、誰と、何をするかが重要」という言葉からも分かるように、社長の田中氏はかなり「理想」を追求する性格であることがうかがえ、そのことは収益のめども立たないのに楽天を辞めてGREE一本で行くという、普通の人間であればとてもできないはずの決断をしたことからも垣間見ることが可能です。

そしてさらに5ヶ月後の2005年10月時点のGREEを見てみると、まだ悪戦苦闘してもがいていることが分かります。

グリー、田中社長のSNS式起業の方法 - CNET Japan


まず、ユーザー数はmixi以下となっており、大体4分の1ぐらいの規模。

 現在、GREEのページビューは1日250万程度で、ユーザー数は約24万人だ。ライバルのmixiは、2005年8月にユーザー数100万人を突破しているが、GREEでもリニューアルを機にサービスを拡充させる考えだ。

会社自体ももっとこぢんまりとしており、いわゆる「ベンチャー」の典型的なパターン、まさに新進気鋭のスタートアップ的会社だったのです。

 会社として登記したのが2004年12月で、最初のオフィスができたのが2005年2月でした。春に初めてエンジニアを採用し、6月には資金を調達しました。その後、社員が増えたので7月に現在のオフィスに引越しました。つまり、この1年はサイトを作るというよりは、会社の体制作りに追われていたというのが実際のところです。

 今回のリニューアルは、法人化して以来の大きなニュースと言えるかもしれません。ほとんどのメディアでGREEについてのニュースは、2004年末の「グリー法人化」で止まってしまっているのではないでしょうか。

 あれから約10カ月間、とにかく会社としてのインフラ作りに追われていました。同じ20歳代が中心の会社でも、はてなやイー・マーキュリーは、これまで数年間会社として活動してきた実績があり、だからこそ新しいサービスや機能の追加も迅速に動できます。

 それに対して、GREEはあくまでも私個人が趣味で1日数時間の余暇を使って運用していたサービスでした。最初は機能の追加もできましたが、ユーザーが増えるにつれてサポートメールを書いているだけで1日が終ってしまうこともあったのです。

 グリーは、はてななどの新しい世代のインターネット企業と同じように扱われますが、実は法人化したばかりで、他社よりスタートが5〜6年遅れています。この遅れを急ピッチで取り戻さなければなりません。起業から1〜2年以内にどこまで追いつけるかが重要な鍵だと思います。ただ、ここで幸いだったのは、本当にいい人材を大勢確保できたことでしょう。

GREEは田中氏が個人で始めたものであり、バックグラウンドも何も無く、この時期はまだ一生懸命、なんとかして会社としての体裁を整えようとがんばっているころ。一番肝心要の収益モデルについては以下のように言っています。

 基本的にユーザーには全機能を無料で提供したいので、広告モデル主導でやっていくつもりです。8月にやっと営業担当者を雇用したのですが、ここでも優秀な人材に恵まれたため、すでにKDDIや民主党、リクルートなど、ナショナルクライアントからの広告出稿も実現しました。ページビューもそれなりにあるので、当面広告だけでやっていけると思っています。

 もっとも、それはSNS事業における話です。インフラ部分が完成したのを受けて、今後はアフィリエイトやコンテンツ連動型広告、RSSマーケティング、さらにはWeb2.0やCGMといった広範なサービスにも目を向けていきたいと思っています。そういう意味では、会社としてあまり今の収益構造にこだわる必要はないのかもしれません。

「広告モデル主導でやっていくつもり」と言っているのですが、よく読むと「会社としてあまり今の収益構造にこだわる必要はないのかもしれません」とも言っており、この時点で既に「広告モデルの限界」を悟っていた可能性はあります。

というのも、最初期の頃はほとんど広告で儲からず、株式会社化してから後も苦戦しており、一方で広告についてはユーザー数などで上回るmixiに持って行かれてしまっている状態。つまり、GREEとしてはこの時点ですでに「広告以外の収益」を模索せざるを得ない状態に追い込まれていたのではないか?と推測されます。

事実、収益面に目を向けてみると、上記インタビューから10ヶ月後の2006年3月にはクチコミ型のキャリア情報サイト「GREEキャリア」を正式オープンさせ、さらに翌月の2006年4月には「はてな」と提携してSNSとブログを利用したクチコミプロモーションを商品化しています。2006年5月、この時期のグリーの規模がどれぐらいかというと、以下の講演記事でその実態がつかめます。

「10年先を見据えた成長戦略を」--グリー田中社長が語る起業秘話 - CNET Japan

 現在、グリーは社員21名、インターン11名ほどの人員で会社を運営している。経営陣のほとんどは20代後半と若く、社員の平均年齢は25歳。田中氏は、若い社員で会社が構成されているという点が多くのベンチャーの特徴となっているということを指摘した。

また、この時点では広告モデルではなく、まったく違うものを想定しており、以下のように田中氏は語っています。

 田中氏はこの講演の中で、グリーが、次に注目しているのはキャリア、人材系サービスだと語った。この分野にWeb 2.0の要素を盛り込んだサービスを考えているという。グリーでは、求人情報の横断検索やQ&A機能を備えたキャリアサイト「GREE!キャリア」を3月よりサービス開始している。

 今までもあった手法をいかに組み合わせ新しいものを作り出すか、それが今後の成長戦略のテーマになっていくと結び、講演は終了した。

つまり、広告の次は人材系サービスでいこう、というわけです。このあたりの情報からも、当時のグリーは必至で収益の柱を増やそうと懸命に努力を続けたことがわかり、もちろんその努力はグリーという場を守るため、グリーのユーザーたちのためだったわけです。

ところが上記講演の行われたわずか2ヶ月後、電撃的な発表が行われます。そう、グリーとKDDI(au)が手を組んだのです。

KDDI 会社情報: ニュースリリース > KDDIとグリーの提携について

一方、グリーは、2004年2月よりPC向けのSNS「GREE」をスタートしましたが、2005年6月に携帯電話向けのSNS「GREEモバイル」を導入するなど、今後急成長が予想されるモバイル展開へも積極的に取組み、サービスの拡充に努めてきました。
今回の提携により、KDDIとグリーは、KDDIのコンテンツ事業やEC事業とグリーのSNS事業に関するそれぞれの顧客基盤・ブランド・事業ノウハウなどを融合し、携帯電話の強みを活かしたSNSにおけるサービスの企画・運営を共同で検討していきます。

つまり、ここからいよいよ本格的にGREEは「携帯電話」市場へと乗り出していくことになります。今のグリーの基本となる部分はこのとき、ようやく始まったのです。

そしてこの2006年7月末の発表から約3ヶ月後の2006年10月末、モバイル向けSNS「EZ GREE」が2006年11月開始であることが発表されます。

KDDIとグリー、モバイル向けSNS「EZ GREE」を11月16日に開始

 EZ GREEでは、グリーが運営するSNS「GREE」をベースとして携帯電話向けの機能を強化。 日記やプロフィール作成、会員間のメッセージ送受信、コミュニティなど、GREEと同一の機能が利用できる。

 さらにEZ GREEの独自機能として、プロフィールやメール、日記を装飾できるデコレーション機能、結果を日記に公開できる占いや心理テスト、成績をランキング表示できる機能などを搭載。GPSと連動した位置情報機能、携帯電話のみで利用できるQ&A機能も備えるほか、Wikipediaの検索と閲覧が携帯電話から可能になる。

独自機能としてはコミュニティ機能をかなり重視しており、このあたりからより一層、いわゆる「ソーシャル」的な方向への加速が始まっていきます。

また、このKDDIとの提携は以下の記事を読めば分かるように、かなり人材と運とに恵まれた結果であり、グリーは実に「強運」です。

グリー躍進、本当の理由(前編):日経ビジネスオンライン

 そんなグリーに、2006年7月、乾坤一擲のチャンスが転がり込む。携帯電話大手のKDDIが、資本金6000万円ほどのグリーに3億6400万円を出資し、さらにauの顧客向けサービスとしてGREEを採用してくれることになったのだ。

 行き詰まっていたグリーに大量のカネとユーザーをいっぺんに連れてくるというミラクル。やってのけたのは、KDDI出資の4カ月前にグリーに転籍した、取締役執行役員CFO(最高財務責任者)の青柳直樹、30歳である。

 青柳は業界担当としてKDDIとも懇意にしており、株主向け説明会のために副社長に同行して欧州を回ったこともあった。その立場を利用し、グリーの面々をKDDIの担当者に引き合わせたのだ。

これがきっかけで大躍進が始まっていくわけです。

が、この時点でもmixiとの差は圧倒的であり、2006年8月の以下の記事を読むとその絶望的なまでの差がはっきりとわかります。

グリーはどこへ行くのか - CNET Japan

 グリーが運営するSNS「GREE」は、2004年2月に現グリー代表取締役社長の田中良和氏が個人で始めたサービスだ。その年の10月にはユーザー数が10万人を突破するなど、急激に人気を集めていたが、個人運営の限界もあり、後発のmixiに大きく差をつけられてしまった。2004年12月に法人化したものの、両者の差は開く一方だ。2006年8月現在の会員数はmixiが500万人を超えているのに対し、GREEは約35万人に過ぎない。

そう、なんとmixiが500万人、GREEは35万人、約14倍もの差が付いてしまっていたのです。

しかしGREE創業者である田中氏のすごいところは、なんとこの時点で既に今の「ソーシャルゲーム」的なもの、つまり「もしかしてゲームの方がいいのではないか?」というのを既に察知し始めている点です。上記インタビュー記事は田中氏本人が語っているもので、その中に以下のような箇所があります。

 すこし話がずれるかもしれませんが、ニンテンドーDSがこれだけ流行っているのを見ると、すごい革命的だなと思います。エンターブレインの調査で、携帯型ゲーム機の販売金額(ソフトとハードの合計)が、据え置き型を抜いたという報道が出てましたが、そんなことが世の中に存在するんだという驚きがありました。

 ニンテンドーDSが出たときには、「いまさら携帯型なんて何言ってるんだよ。これからはハイディフィニッション(高品位映像)だよ」というような風潮があったと思うんですよね。

 最近ショックだったのは、若い人と話していたときに「家に帰ってパソコンを開くのは疲れるからモバイルでやる」と言われたことです。それまで、「携帯電話だとボタンが押しにくいじゃないか」とか「画面が小さいじゃないか」と思っていたんですが、そういう議論とはまったくレベル違う話が起きている。

 ニンテンドーDSなんてまさにそうですよね。一見関係ないようで、実は大きな流れとしてはモバイルサービスとも関係していると思うんです。

特に以下の部分が今にして思えば要注目の部分です。

 最近だと、Apple Computerや任天堂がすごいなと思うんですよね。どうしてかというと、5年前だったらAppleも任天堂も、「この会社ってもうダメだよね」というように思われていた。AppleはMicrosoftに押されていたし、任天堂はファミコンで成功したけれども、ソニーのPlayStationが出てきて市場を奪われてしまった。ところが今は、iPodやニンテンドーDSがヒットしている。

 自社のエレクトロニクスとか、エンターテインメントといった基本的な領域は守りながらも、音楽配信や携帯型ゲームのように、時代に応じた最先端のサービスを作り続けていける会社というのが一番価値のある会社だと思うんです。

 グリーも、SNSやモバイルなどの新しい時代の波をとらえて、もっといいサービスが作っていけるような会社にしていきたいなと思っています。

確かにこの頃の任天堂は劇的な復活を果たし始めた時期であり、それを端から見ていた田中氏の胸中には「mixiに10倍以上の差を付けられているがまだまだこれからだ」という思いとともに、おそらく無意識ながらも「ゲーム」の方を向き始めている傾向が見受けられます。また、「最近ショックだったのは……」というくだりを読むと、このときの経験がそこからあとのGREEに大きな影響を与えており、それまでの「Web2.0」的な方向から、ある意味「利益のためには必要悪として割り切ってしまう」ことをGREEが選択し始めるきっかけになったのではないか?という予想が可能です。

そしてちょうどこの同じ年、2006年2月にはGREE最大のライバルであるDeNAの「モバゲータウン」が開始され、2007年1月にはその恐るべき攻撃力と勢いを示し始めます。

モバゲータウンが1日2億PVを達成--モバイルではmixiの2倍に - CNET Japan

 モバゲータウンは2006年2月にサービスを開始したモバイル向けのSNSだ。約50種の無料ゲームやアバター、日記やサークル(コミュニティ)などのサービスを提供しており、サービスは既存ユーザーの紹介を必要としない登録制となっている。利用は無料だが、アバター用のアイテム購入には「モバゴールド」と呼ばれるポイントが必要となる。モバゴールドはモバゲータウン未登録ユーザーに同サービスを紹介した際や、提携するECサイトで商品を購入した際に入手できる。

 DeNAによると、2006年12月末の会員数は259万人、月間PVは48億6700万となっている。サービス開始当初のユーザー割合では10代が圧倒的に多かったが、2006年6月末以降、20代のユーザーも急増しているという。

実際に当時、この勢いがどれぐらい圧倒的であったかというのは、2006年12月のインタビュー記事の中でわかりやすくまとめられています。

目指すはケータイのポータル--ゲーム&SNS「モバゲータウン」の勝因は? - CNET Japan

 ディー・エヌ・エーのモバイルゲーム&SNS「モバゲータウン」が絶好調だ。今年2月のスタート以来、わずか9カ月でユーザー数が200万人を突破。11月時点でユーザー数が225万人、月間のページビュー(PV)が39億へ到達するまでに成長し、モバイルSNSとしては異例の成功を収めつつある。ディー・エヌ・エーによれば、1日あたりのPVで比較すると、モバイルサイトの中ではヤフーやmixiよりも多いのだという。

 mixiの登場によってPCの世界ではすっかりポピュラーになったSNSだが、実はモバイルでも、名だたる事業者たちが過去数年間にわたって「モバイルSNS」に挑戦し、その多くが苦戦を強いられてきたという事実は、PCユーザーにはあまり知られていない。

今でこそSNSといえば携帯電話・スマートフォンだよね、というような感じになっていますが、実は2006年の時点では右も左も死体だらけでまさに野原一面が死屍累々となっており、そこへ突然降臨した圧倒的勝利者がモバゲータウン、後のモバゲーだった、というわけです。もちろん時期的にはいよいよGREEも本格的にやっていこうかという頃合いであるものの、突然後ろからやってきた新参者に目にもとまらぬ早業でGREEはぶち抜かれてしまったことになり、当時のGREE創業者社長である田中氏の胸中を考えると、このことが決定的になり、「GREEもゲームやろう」という話になっていったことが推測できます。

その際、おそらく参考にしたであろうDeNAのモバゲータウンですが、DeNAもそう簡単にこの大当たりに至ったわけではなく、こちらもまた恐るべき遠回りをしています。上記記事中の以下の部分が非常にわかりやすいです。

--モバゲータウンをはじめることになったきっかけは?

 当社は、PCオークション事業「ビッダーズ」から始まった会社ですが、2004年3月にモバイルにも進出して、携帯オークション「モバオク」を立ち上げました。その後にKDDIと組んで「auオークション」を開設。有料化に踏み切った後も順調にサービスは伸びています。また、その後に始めた「ポケットアフィリエイト」という携帯電話アフィリエイトサービスも好調です。

 それで昨年8月ごろから、さらに新たなサービスの検討を始めたのですが、「ポケットアフィリエイト」の運営を通じて得ていたデータから、携帯電話ユーザーには、やはり「音楽」と「ゲーム」がとても反応率が高いという傾向が分かりました。

 しかし音楽となると権利関係が大変で参入は難しい。またゲームについても、公式サイト内で有料で提供したのでは、今から新たに参入して、公式サイトの一番下の序列からスタートしたのでは大変です(編註:携帯公式サイトは、前月までのユーザー数やアクセス数など、人気度に応じてサイトでの掲載順序が変わるため、掲載位置が下位のサイトほど不利になりやすい)。

 そこで、PCでの事例も含めてビジネスモデルを考えたのですが、PCには広告モデルでゲームを提供しているサイトがあるから、同じことをケータイでやったら面白いかなと思ったんです。そうした例は携帯でも過去にありましたが、やはりクオリティ的にもそれなりのものが多くて、「もし公式サイトゲーム並のクオリティで無料にできたらイケるだろう」と判断しました。

 しかし、広告モデルの場合、ゲームのダウンロードだけではユーザーの滞在時間を稼げないので、コミュニティという形にしていこうと。その「つなぎ」としてアバターを用意するなど、ユーザー同士がコミュニケーションを取りやすい仕組みを考慮したんです。

--今年2月にスタートした当初の感触はいかがでしたか?

 もう開始初日から手ごたえを感じましたね。入会率も高いし、「これだけのユーザー数でこんなにもPVが出るのか」と思うほど、当初からユーザーのアクティビティも高かったです。その後はすぐにユーザー自身が口コミで友だちを集めてくれるようになりましたね。

モバゲーのゲームによる収益の高さを目撃したGREEは上の記事が掲載された2006年12月の翌月、2007年1月からあの釣りゲーム「釣り★スタ」の企画と開発を始めます。このことは以下のページに明記されています。

グリーエンジニアが明かすソーシャルアプリ開発舞台裏|【Tech総研】

携帯サービスにおけるエンターテインメント系コンテンツの立ち上げにかかわり、2007年1月からは「釣り★スタ」の企画・開発へ。同時に20万人以上がハマるヒットゲームに育て上げた。

実際に「釣り★スタ」が完成してサービスが始まったのは講演によると2007年5月となっており、ここからGREE大逆転ののろしが上がり始めます。

また、逆転のためにGREEがモバゲーからインスパイアを受けたと思われるアイディアは他にもあり、たとえばモバゲータウンの特長でもあった「アバター」部分については、以下のようにかなり詳細に参考にしていることが2007年7月の記事で分かります。

新GREEはケータイに「住む」 アバターと“部屋”導入 (1/2) - ITmedia ニュース

 グリーは7月10日、PC・携帯電話両対応のSNS「GREE」とau携帯向け「EZ GREE」で、携帯電話向けプロフィール画面をリニューアルした。従来は、ユーザーが自由に設定したプロフィール画像と自己紹介のテキストを表示していたが、新たにユーザーのアバターを設定し、アバターが住む仮想の部屋「ルーム」を設置。ルームでオリジナルのペット「Clinoppe」(クリノッペ)も飼えるようにした。

さらにGREEはこの動きを加速させるのですが、加速させすぎた結果、3ヶ月後の2007年10月にはなんと意外なことに「炎上」してしまいます。

荒れるケータイコミュニティ--GREEアバターをめぐる騒動 - CNET Japan

 グリーは9月、GREEのモバイルサイトにおいて、一部のアバター連動コンテンツ内に表示されるユーザーのプロフィール画像をすべてアバターにした。これに反発する人や、今後すべてのプロフィールページでアバターしか表示できなくなり、自分の好きな画像や写真を掲載できなくなるのではないかと懸念した人が反対運動を起こした。

 具体的には反対コミュニティを開設し、「このグリーの動きに納得いかない方、反対の方、この日記をバトンとして回していただければ」として、反対文を日記に書き込もうという運動が起きた。これに賛同した人が次々と同じ文章を日記に書き込み、反対運動が広がっていった。

 さらに一部のユーザーは、グリー代表取締役社長の田中良和氏がGREE内に開設している日記などに、田中氏やグリー社員への誹謗中傷を書き込んだ。さらには社員や社員の家族の写真を掲載した。

しかしモバゲータウンのアバターとゲームの組み合わせによる収益爆増&会員数爆増を目撃しているGREEはこれらのユーザーたちによる動きに対し、当該コメント削除・退会処分を連発、古参ユーザーたちはさらに猛反発するという悪循環に陥ります。この時点で会員数が247万人に達していたGREEは強気な姿勢を崩さず、さらに当時のユーザーたちとの関係は悪化。この時点でいわゆる「良識的なユーザー」「初期の頃から支えてくれたユーザー」などのユーザーが離れていってしまい、逆に当時のGREEに適応したユーザーたちによって、今のGREEを支えるユーザー層の基盤が形成されていったわけです。

事実、この時点では以下のような「金儲けしか考えていないのか」といった点も指摘されています。

 このほか、グリーの主な収益源が広告とユーザー課金(有料会員およびアバターアイテムの販売)による点も、今回の騒動が起きた要因の1つといえる。グリーとしては収益を上げるために、積極的に広告主のサイトに登録してもらったり、アバターアイテムを購入したりして欲しいという思いがある。そのある種の「下心」を見透かされ、特に若いユーザーから「金儲けしか考えていないのか」といった反発を招いてしまった。

また、このような反発が起きた何よりの原因は創業者である田中氏の日記だったのです。日記には以下のように書かれていたそうです。

 そしてもう1つ、田中氏がまったく予想外だったことだが、ユーザーの反発をさらにあおったことがあった。田中氏が9月11日に書いた日記の内容だ。「アバターについてそろそろ言っとくか」という件名のこの日記は、今回の騒動が起こる前、「アバターの自動表示とは無関係に」(田中氏)、アバターの面白さについて書いた日記だ。

 この中で田中氏は「アバター、超面白い。相当、面白い。今日も2000円使いました。アバターのこの面白さを知らない人がいたら、声を大にしてお伝えしたい今日この頃です」と書いている。この言い回しや内容が、「GREE利用者を馬鹿にしてるとしか思えない」「あなたにとっての2000円は安いかもしれませんがあたくし達にとって2000円という金がどれだけ大切のものかお考えになったコトがおあり?」とユーザーの反感を買ってしまった。

 田中氏としては、ほかの人のブログで書かれていた「●●についてそろそろ言っとくか」という言い回しが面白いと感じ、タイトルで流用したにすぎない。また、アバターが面白いと感じたのも本心で、「10年くらい前から、韓国でアバターが流行っていると聞いていたが半信半疑だった。それが最近自分で使うようになって、本当に面白いなと思った」と、気持ちをそのまま書いただけだった。日記は一般にも公開しているが、普段は1日のアクセス数が200〜300件程度で、「自分の友達だけが読んでいた」(田中氏)ものだから、仲間うちに向けて書いたつもりだった。アバターに1日2000円使ったというのもこの日が初めてで、そのくらい「はまる」サービスだと伝えたかった。

 しかし、アバターの自動表示に反対する1人のユーザーがこの日記を発見。「祭り」の対象にしてしまった。

 「いつどういう形で誰に見られるか分からないんだな、とあらためて感じます」と田中氏は困った様子だ。

つまり、この時点から田中氏自身がもう既に「アバターが面白い、収益もすごい」という状況を経験してしまっており、さらに信頼していたユーザーたちからの一斉の猛反発によって、ある意味、今までの「GREEの大切なユーザーたち」から「GREEを支えるだけのユーザーたち」という感じに意識内で変質してしまったのではないか?と思われます。実際にこの事件までの田中氏とそのあとの田中氏は言動がかなり違っており、事業の方針もそれまでの「ユーザーを大切にする」姿勢から一転、今ではアイテム課金のレア度によって度を超えて「ユーザーから搾取する」と言われているソーシャルゲームが栄える状況になっているわけなので、これまでのユーザーを大切にしていた田中氏からは考えられないことであり、ユーザーからの反発などの積み重なりが相当ショックだったらしいことがうかがえます。

また、なぜユーザーの意見などを無視してまでこのような暴挙に走り始めたかというのにはもう一つ理由があります。実は「赤字」だったのです。日経ビジネスのこの記事には以下のように書かれています。

 mixiがほぼ寡占の状態を築いたパソコン向けSNSを避けてモバイル向けにシフトした結果、確かに会員数は伸びた。しかし、儲からない。大規模アクセスに耐えるためのサーバーへの投資がかさみ、人材の採用も増えた。

 コンテンツもEZ GREEの開始を機に、無料ゲームや無料デコメール、友人を招待すると仮想通貨をもらえる機能など、SNSだけに頼らず、モバゲータウンのように広範囲に展開した。その結果、2007年6月期は約1億円の営業赤字を出してしまう。

しかも2007年3月の時点でmixiは会員数が920万人、モバゲータウンは440万人、GREEはわずか100万人。追い詰められたGREEはこのとき、今の我々が知る「グリー」になる決断をしたのです。そのエピソードは以下のように語られています。

 こうした状況が徐々に明らかになって来た2006年12月、青柳は意を決し、当時40人ほどに膨れていた従業員全員の前で財務資料を見せながら、こう率直に語った。

 「今期は赤字です。来期(2008年6月期)は少なくとも黒字にしないと、その次の期の上場は絶望的となり、新たな資金調達ができない。そうなれば、ほかの会社に勝つことも絶望的となります」

 「僕らはこういう計画を立てていて、最悪のシナリオはこうです。お金が足りなくなったら、僕はCFOなので集めて来ようと思えばできる。ただ、それじゃあ、しょうがないということは、みんな分かりますよね」

 「モバイル向けのGREEを立ち上げただけでは収益は生まれない。会員数をもっと飛躍的に増やすか、新たな収益源を見つけるか、両方やるかしなければ、グリーに未来はないと思います」

会員数をもっと飛躍的に増やすか、新たな収益源を見つけるか、両方やるかしなければ、グリーに未来はない」というこの言葉が、今のグリーへとつながっていく最大のきっかけだったことは想像に難くありません。

事実、ここからあとはよく知られているとおり、ゲームのソーシャル化と射幸心を煽るシステム・仕組みによってどんどん収益が増えていき、それにともなって会員数も増え、2008年11月にはマザーズへ上場することを発表、12月には上場して大量の資金をゲット、そしてそれから4ヶ月後の2009年4月、大金を得始めた田中氏は以下のようにインタビューに答えており、最初の頃の田中氏とはまるで違うビジネスライクな雰囲気を醸し出しています。

ターニングポイントは「モバイルに舵をきったこと」--ユーザー1000万人を達成したグリー - CNET Japan

--モバイルでは月間100億ページビュー(PV)を超えたと発表しています。mixiともほぼ同等の水準のPVとなり、モバゲータウンにも近づきつつあるようですが、競合に対しての優位性などをどう考えていますか。また、ゲームやアバターなどの課金サービスを提供していますが、来期以降もこれらに注力するのですか。

 我々の開発に対するスタンスは「ほかのメディアが何をしているか気にしない」ということです。GoogleはYahoo!を研究しつくしたから出てきた訳ではないように、1人でGREEを開発していたときから競合を意識した開発はしていません。

 上場をきっかけに、課金サービスで成功しているからという理由だけでアバターや「釣り★スタ」(釣りゲーム)と同種のサービスを提供しようという動きもありますが、それだけでは何も生まれません。

 今後については、特定分野に注力するというのではなく、現在と同じことを淡々と進めていく予定です。

--モバイル版では、アバターや「釣り★スタ」、「クリノッペ」(ペット育成ゲーム)などを提供し、課金サービスが順調のようです。課金による収入も2009年6月期第2四半期決算(2008年10〜12月)でも直前四半期比57.5%増の21億8000万円となっています。

 課金収入の内訳については開示していませんが、各種のサービスが順調に利用されています。

 また、比率としては課金のほうが伸びていますが、広告収入も順調です(2009年6月期第2四半期の広告収入は前四半期比22.3%増の7億2900万円)。人材や不動産など、出稿が減っている業種もありますが総合的には成長しており、GREEがメディアとして評価されているのだと思います。

こうやって見ていると、急激に追撃してきてグリーを追い抜いていったモバゲー、いつまでも目の上のたんこぶのような存在だった元気な頃のmixi、ユーザーからの強烈なバッシング、といったような「焦り」を生み出す要素が満載であり、さらには「赤字」だったわけです。そんな窮地から一気に巻き返しが成功してしまい、大金を手にしてしまい、「当たったものは良いものだ」ということで、その方向性、つまり今の過激なユーザーがお金をあまりにもじゃぶじゃぶと使いすぎる「ソーシャルゲーム」の方向性へどんどん加速していったわけです。

事実、創業者である田中氏本人も2010年1月の時点ではまだわずかに「良心の呵責」とでも言うべきものを確かに感じていたことが以下の記事で分かります。田中氏も決して100%の守銭奴というわけではなく、やはり生きていくためにはお金が必要で、しかしあまりにも多くのものを得るためにそれ以上の何かを犠牲にしていることを自覚していることがはっきりと明示されています。

グリー田中社長が語る、GREEの変化 - ITmedia ニュース

 田中社長もネット業界人の1人。今のGREEは「必ずしも自分が使いたいものとして作っているわけではない」と認める。ただ「より多くの人に使ってもらえるものが、社会に影響を与える良いサービス」という信念のもと、マスに届くサービス作りを心がけているという。

 自分が使うためのサービスと、会社で提供するサービスのかい離。携帯電話からのネット利用の普及に伴い、「ネットユーザー」の意味が2004年と今とでは異なってきたことがその背景にあると、田中社長は分析する。

 「2004年当時はネットユーザーの規模が小さく、自分がユーザーの中央値に近かったが、どんどん中央値から外れてきたというのも、あるかもしれない。GREEは僕も楽しめるが、僕以上に楽しめる人がたくさんいるサービスにしないと、多くの人に使ってもらえるものにはならないと思う。業界にも受け、かつ、みんなが使っているサービスを作れればそれがベストだが、ネット業界の内輪受けを狙ってサービスを作っているわけではない」

必ずしも自分が使いたいものとして作っているわけではない」と認めている訳なので、決して田中氏は「儲かりさえすればそれでいい」という守銭奴とは違う人間であるという事は確かなのです。

では「金」ではなく、一体何を目指しているのか?ということを実際に2010年9月の講演では以下のように語っています。

CEDEC 2010:「パチンコのような単純さ」で1000万ユーザー獲得 グリー田中社長が語るヒットの極意 (2/2) - ITmedia ニュース

 GREEは今後1億会員を目指し、海外進出も狙っている。1億の会員を抱えるサービスは「日本で聞いたことがないが、世界的にみるとFacebookやTwitterのようにいくつもある」(グリー田中社長)。「日本にオフィスがあるかどうか分からないような」米国のサービスが、日本で多くのユーザーを獲得しているのを見ると「なんで僕らにできないんだと挑戦の心が燃える」と語る。

 そのためにはまずは「日本のトッププレイヤーが集まる会社にしないと」と語り、はてなを退社した伊藤直也さんがグリーに入社したことを明かすと、会場は一瞬ざわついていた。

つまり、「世界で戦いたい」わけです。このことは同じ2010年9月のインタビューでも明言しており、「ゲーム」はその手段に過ぎないという旨の発言を実はしています。

グリーは「ゲームサービス」ではない:日経ビジネスオンライン

―― DeNAはソーシャルゲームに注力し、ミクシィはプラットフォーム事業に専念している。グリーは何を目指しているのか。

 田中 まず、はっきりさせたいのは僕らはコミュニケーションを加速させるために「ゲーム」を選んでいるだけだということです。いわゆるゲームが大好きという人たちを対象にしているわけではありません。あくまでゲームは友達とのコミュニケーションを円滑にするための存在。エンタメ、特にゲームを通じてコミュニケーションを図ることで人間関係が築かれていくと考えています。

 日本企業には、グローバル市場を舞台にした成功体験を持っている人がまだいないですよね。平均年齢30歳くらいの会社でもやればできるんだという成功事例を僕たちは作りたい。きっかけになれたらいいなと思っています。シリコンバレーや中国の人たちは実際ビジネスを成功させている。世界最大のSNS「フェースブック」のCEOは26歳ですよ。その人たちにできて、できないはずがない。

そして「もう1つの目標」を語り始めます。

 もう1つの目標は1億人のユーザーに使ってもらいたいということ。これは日本だけじゃ到底無理。世界市場を見据えなければ達成できません。日本で初めて1億人が使うネットサービスを作る会社になりたいんです。中国には中小企業が作るネットサービスで何千万人単位で使っているものがごろごろありますし。

 だから、僕らはソーシャルゲームだけをやりたいのではない。ネットを通じて世の中を変えていくつもりで挑んでいます。今はソーシャルゲームやSNSとかに注目が集まっていますが、今後は「ソーシャル」部分を伸ばしていきます。

そして今、ついに稼ぎ頭であり、その「1億人ユーザー」の原動力でもある「ソーシャルゲーム」がこのままではたたきつぶされるかもしれない危険な状態になってきたため、グリーは事態を制御するため、矢継ぎ早に対策を打ち出していきます。

まず、非難が集中する原因となっている「課金」部分を制限することを2012年3月16日に発表。来月の2012年4月からは以下のようになります。

グリー株式会社 | ニュースリリース | プレスリリース 2012年 | グリー、利用環境向上に関する施策を導入・実施

15歳以下のユーザー:月間5,000円まで
16‐19歳のユーザー:月間10,000円まで

おそらくこの数値は「これぐらいなら総収益にあまり影響を与えない」という数値なのでは無いか?と予想されます。なぜなら、全世界展開を考えているグリーにとって資金が不足する・成長が止まるというのは最大のタブー。そのためのエンジンが「ソーシャルゲーム」であり、燃料が「課金」である以上、その内燃機関を止めるような数値設定をするわけが無いからです。だからといって燃料である「課金」を突っ込みすぎると、エンジン部分の「ソーシャルゲーム」が自壊するため、自制を始めた、というわけなので、軌道修正をして「間違った方向」から「正しいあるべき方向」へ進もうとしているわけです。

それを裏付けるかのように、上記発表からわずか6日後、全世界展開することを再度、宣言しています。

グリー株式会社 | ニュースリリース | プレスリリース 2012年 | グリーと電通、グローバル展開で包括的業務提携

グリーは、2011年1月に米国子会社を設立して以降、世界各国での子会社設立、有力なグローバル企業との提携など、世界最大のソーシャルプラットフォームの構築を目指し、グローバル展開を加速させています。一方、電通はグローバルビジネスの強化・拡大を推進しており、現在では世界28カ国に167社を展開し、2万人以上の社員を抱える広告会社グループ(2011年12月末時点)へと成長しています。このたびの業務提携により、両社はお互いの強みを活かしグローバルなソーシャルメディア市場の開拓に協力して取り組んでいきます。

もちろん、週刊ダイヤモンドの報道にあるような、あまりにも不透明で射幸心を煽りまくり+お金を払いすぎる仕組みが満載となっている現在の「ソーシャルゲーム」を「当局からの摘発」から守るための方策も、先週の水曜日、2012年3月21日に、ライバルのモバゲーを持っているディー・エヌ・エー、グリーに抜き去られてかつての栄光の欠片すら見あたらないミクシィ、さらにはドワンゴ・サイバーエージェント・NHN Japanといった各社とともに打ち出しています。

グリー株式会社 | ニュースリリース | プレスリリース 2012年 | プラットフォーム事業者6社によるソーシャルゲームの利用環境向上等に関する連絡協議会を設置

ソーシャルゲームを含むネットワークゲーム市場の拡大が続く中、市場のさらなる健全な発展と良好な利用環境の維持・向上、ユーザーによる適正利用の推進、ユーザー保護の充実・強化を目的として、この度、プラットフォーム事業者で連絡協議会を設け、各プラットフォームにゲームを提供している開発パートナー各社や関係各所とも連携等を図りながら、様々な取り組みを開始いたします。

「ユーザー保護の充実・強化を目的」としているそうですが、ここまでのグリーの変遷と軌跡を見れば明らかなように、これは言い過ぎかもしれませんが、お金ではなく、より大きな目標である「全世界1億人ユーザー」という野望にとりつかれて迷走したあげくの果てが、これまでの「グリー」なのです。

しかし、田中良和氏自身が間違ったわけではありません。結果的には間違っていますが、創業者である彼自身ですらもはや「グリー」を正しくコントロールできなくなってしまっており、逆に創業者自身も「グリー」にコントロールされてしまっている、それが今までの「グリー」なのです。

何より、グリーのソーシャルゲームをプレイすることによって楽しい体験を一時的にすることができるのだとしても、そのための代価と対価が自己責任の領域の一線を現在は明らかに越えており、だからこそグリー自身も上限金を決め、連絡協議会を設置してなんとか制御しようとしているのです。

これらのグリーの行動自体が「今のグリーの方向性はプラットフォームを提供する事業者として間違っている」ということを自分で自覚している何よりの証拠であり、行き過ぎでやり過ぎてしまっているからこそ、本来あるべき姿、つまり、グリー創業者である田中良和氏が最初に志したような「GREEは僕にとって子どもみたいなもの」という初心をまだ忘れていないこと、そのことをこれからの行動でユーザーたちやそれ以外の人たちにうまく示せるかどうかが、まさに今からグリーの真価が問われる重大局面に差し掛かっている証拠なのだ、というわけです。

・関連記事
グリーが出品販売停止と削除をリアル・マネー・トレード専門事業者へ要請 - GIGAZINE

「まったく新しい人類の進化に立ち会うんだという感覚」に、GREEの田中社長がソーシャルゲームの先に見るもの - GIGAZINE

「個人のセンスよりも数千万人のデータの方を信じる」、これがGREEの作り方 - GIGAZINE

これが5年間の技術的失敗と成功の歴史、GREEの成功を支えた技術者たちの闘いが今明かされる - GIGAZINE

モバゲーのDeNAがグリーを裁判で訴えることを決定 - GIGAZINE

GREEが勝訴してDeNAの「釣りゲータウン2」配信停止と2億3460万円の損害賠償金をゲット、GREE代表のコメントあり - GIGAZINE

in モバイル,   ネットサービス,   ゲーム,   コラム, Posted by darkhorse