絶滅したはずの昆虫が絶海の孤島で再発見され繁殖に成功

by Patrick Honan/Nick Carlile

モアドードーリョコウバトなど、数多くの動物が絶滅していますが、生き残った個体がいて再発見されるのは、さかなクンが関わったクニマスの事例のようにわずかです。

そんな貴重な事例の1つが、オーストラリアの孤島、ボールズ・ピラミッドでのロードハウナナフシ再発見です。

※記事中には昆虫の写真が出てくるので、苦手な人は注意してください。

Six-Legged Giant Finds Secret Hideaway, Hides For 80 Years : Krulwich Wonders... : NPR

オーストラリアの本土から東に600km離れたところにロード・ハウ島があります。このあたりの島々にはサンゴ礁や海水の浸食によってできた険しい山があり、独特の生態系もあることからユネスコ世界遺産(自然遺産)「ロード・ハウ島群」として登録されています。

20世紀初頭まで、ロード・ハウ島には「ロードハウナナフシ」という、体長が12cmぐらいある巨大なナナフシが生息していました。ヨーロッパからの来訪者が驚いて「木のロブスター」と呼んだこの虫を、地元の漁師は釣りエサとしても使用していました。

1918年、イギリスの補給船Makamboがロード・ハウ島近海で座礁。1人の乗客が溺れ、その他の乗客は船が直るまでの9日間をロード・ハウ島で過ごしました。このとき、船にいたクマネズミが島に上陸、ナナフシはよいエサとして捕食され、1920年にはもはや見かけることはなくなってしまいました。

1960年代になって、ロード・ハウ島の南東にあるボールズ・ピラミッドへとロッククライミングに出かけた一団がありました。

大きな地図で見る

ボールズ・ピラミッドはGoogleマップで見ても大きな影が南側にできているほど険しい島で、まるで岩山の先端が海の上に付き出しているかのような形をしています。

by National Geospatial-Intelligence Agency

クライマーたちは絶滅したはずのロードハウナナフシの死骸、それも最近死んだものが転がっているのを見つけました。しかし、ナナフシは夜行性ということもあって、夜にこんな険しい島に虫探しに来ようという物好きはおらず、長らく生きた個体は見つかりませんでした。

オーストラリアの科学者、David Priddel氏とNicholas Carlile氏が2人のアシスタントとともにボールズ・ピラミッドを訪れたのは2001年早くのこと。海から島を見上げた彼らは、ナナフシが生息できそうな植物群が点在しているのを確認し、島に上陸しました。上陸自体にも非常に難航し、のちにCarlile氏は「泳いだ方が早かったと思うけれど、たくさんのサメがいたからね」と振り返っています。

500フィート(約150m)にわたって垂直な崖をのぼった彼らが見つけたのはコオロギでした。特別なものを何も発見できなかった彼らは仕方がなく崖を下ってきましたが、その途中でフトモモ科のMelaleucaという植物が生えているのを見つけ、その真下に巨大な昆虫が最近したフンを発見しました。これがどこから来たのかと興味を持った科学者たちは、夜間の観察を決行。ついに、巨大な黒光りする昆虫を見つけました。

by Peter Halasz

彼らが見つけたナナフシは合計で24匹。最初にこの光景を見たとき、Carlile氏は「まるで、昆虫が世界を支配するジュラ紀に戻ったみたいだった」と感じたそうです。のちに、これらはDryococelus australis(ロードハウナナフシ)だと確認されました。この翌日、そして2年後と調査を重ねた結果、これらはもはやボールズ・ピラミッドにしか生息していないということが確認されました。いったいどうやってロードハウナナフシが海を渡ってボールズ・ピラミッドへと移り住んだのか、鳥が運んだのか、漁師が運んだのか、なんらかの植物に乗っていたのかは特定に至っていません。

オーストラリア政府はロードハウナナフシの保護を決定。2003年2月に2組のつがいを捕獲し、1組はナナフシに詳しいシドニーの昆虫ブリーダーに、1組はメルボルン動物園に運ばれました。昆虫ブリーダーに渡された2匹は2週間ほどで死んでしまったものの、メルボルン動物園に渡された「アダム」と「イブ」はPatrick Honan氏による賢明の努力によって産卵に成功。2008年には700匹のナナフシと1万1376個の卵にまで増やすことができました。

by Patrick Honan/Nick Carlile

こちらはロードハウナナフシが孵化する様子を撮影したムービー。

Lord Howe Island Stick Insect hatching on Vimeo


今後、このロードハウナナフシをロード・ハウ島へ戻すかどうかは決まっていませんが、もし戻すのであれば天敵であるネズミの徹底的な駆除と、島の人々の協力が必要となってきます。

絶滅を食い止めてめでたしめでたし、ではなく、ここから先、元の環境へ戻すにはどうするのか、戻したときに再び絶滅しないように何をしていくのか、まだまだ課題は尽きません。

・関連記事
マダガスカルで絶滅危惧種のキツネザルが食用にされている - GIGAZINE

内戦にもめげず、コンゴのマウンテンゴリラにベビーブーム到来 - GIGAZINE

今後10年間で絶滅してしまうかもしれない10種の動物 - GIGAZINE

すでに絶滅してしまった驚くべき動物10種 - GIGAZINE

迫り来る哺乳類のなまあたたかい息に身の危険を察する昆虫たち - GIGAZINE

ネズミも溶かしてしまう肉食っぷり、フィリピンで発見された巨大食虫植物 - GIGAZINE

アリの頭部に寄生して発芽に有利な場所に移動させ死ぬ時間までも操作する恐怖のキノコ - GIGAZINE

in サイエンス,   動画, Posted by logc_nt