取材

劣悪環境で働くポトシ鉱山の坑夫に会って「働く」ということをもう一度考えた


かつて栄華を極めたボリビア・ポトシ鉱山で働く男達に会った。粉塵が舞い、気温は35度を超える中、コカの葉を噛みながら一心不乱にツルハシを振り下ろす彼らの姿を見て、「働く」ということをもう一度考えた。

こんにちは。世界新聞社の松崎敦史です。世界一周中のわたくし、今、パラグアイの首都アスンシオンにいます。今後はイグアスの滝からアルゼンチンへ入り、ブエノスアイレスまで南下し、南米の最終目的地であるチリのサンチアゴを目指します。


さて、今回はボリビアのポトシにあるセロ・リコ(スペイン語で「富の山」)鉱山に入ったときのお話を。1546年に鉱山町として設立されたポトシは、スペイン統治下で中南米三大銀山に数えられるまでになります。しかし19世紀には銀が枯渇し、街は荒廃。現在ではセロ・リコ鉱山でスズをはじめ数種類の鉱物が採掘されていて、手掘りで作業を続けている坑夫がいるとのことです。ちなみにポトシはセロ・リコ鉱山を含め、世界遺産に登録されています。

ポトシはこのあたり

より大きな地図で ポトシ を表示

ポトシの街並み。標高約4000mに位置し、人が住む都市としては世界最高地点。


中央広場


ここも他のボリビアの都市同様、インディヘナをたくさん見かけます


路上パン屋さん


映画館ではタイタニックがやっていました(約200円)。


街にそびえるセロ・リコ鉱山


今回、セロ・リコ鉱山の坑夫に「差し入れ」を渡しに行くというツアー(1人約700円)があるというので参加してきました。ガイドによると、坑夫は劣悪な環境で1日約3ドルで働いているということです。

このバスで市内から鉱山へ。約30分の道のり。


作業服に着替え、ヘルメットを装着します。服には鉱物のものであろう臭いが染みついていました


途中、差し入れを買うために売店に立ち寄ります。坑夫のためにスコップやヘルメットなどが揃っています


坑夫が噛みながら仕事をするというコカの葉。疲れや空腹を忘れるために噛むのだそうな。


坑夫が飲むという度数の高いアルコール


手作り感たっぷりのタバコ


コカとジュースを買いました。鉱山の厳しい環境では、水ではなく糖分のあるジュースのほうが喜ばれるそうです。


出発


銀山の入り口


車窓からはこんな景色


車を降りて坑道の入り口まで歩きます


鉱山から街を望む


家が見えます。ここで坑夫が休憩を取ることもある


坑夫たち。コカを噛む者、ご飯を食べる者。


いよいよ鉱山の中へ


少しひんやりします。もちろん照明はなく、頭のライトだけが頼り。かなりの粉塵が舞っていて、硫黄のような臭いも。


天井が低いところが多く、屈まないと歩けない。黒いパイプは中に空気を送るためのもの。


何かの鉱物だとか


頭上から、いきなり坑夫が現れました。汗と埃で服に年季が入りまくっていて一瞬「ギョ」っとしてしまいました


坑道よりさらに上のポイントで作業中


岩を削ります。観光客の視線には慣れているのか、黙々とこなします


この坑夫はもう8時間以上中にいるとのことで、息も荒く、足元がフラフラしていました。膨らんだほっぺにはコカの葉が詰まっています


差し入れを渡すと「Muchas gracias!(ほんとにありがとう!)」と笑顔で言ってくれました


彼らは基本的に3交代で8時間づつ働いているそうです。スペイン統治下では、強制的に集められたインディへナの奴隷により採掘が行われていたそうで、一説には800万人が犠牲になったと言われています(生き残った場合は高額の賃金が支払われた)。今でも、坑夫は平均13歳くらいから働き始めるため、粉塵で胸を悪くし、早めに亡くなる人が多いのだとか。

進みます。これはかなりしんどい……。


これから仕事へ向かうという坑夫とすれ違います


少し広いスペースに像が立っていました。タバコをくわえています


「ティオ」という坑内の安全を守る神様だそうです。ティオにたばこをくわえさせ酒を捧げることで、坑内の安全を祈願するのだとか


違う現場に到着


採掘した石をカメのような入れ物に入れ、板が立てかけられたところからワイヤーで引っ張り上げます


さらに進んで行くと、ゴトゴトゴトゴト……何かがきました


ポトシ鉱山でトロッコを引っ張るパワフルな坑夫たち - YouTube


人力でトロッコを引っ張り、押して行きます。「ぶわっ」という熱気とともにあっという前に通り過ぎて行きました。なんというか、すごいパワーにあてられた感じがして呆然と見送ります。

中に入って1時間以上経過。粉塵を吸い続けてきたからでしょうか、呼吸をするたびに喉に鈍痛が走ります。鉱物の臭いも鼻にまとわりついてかなり不快です。


あるポイントに差し掛かった時、異常な蒸し暑さが襲ってきました……。


壁を登った先に男たちがいました


みんな半裸です。めちゃくちゃ暑い……。35度は超えていたでしょう。


観光客は邪魔者でしかないでしょうに。でも全然気にしているそぶりを見せません


汗が光ります


このおじさん、70歳だそうです。「Como estas?(お元気ですか?)」と話しかけると勢いよく、「bien!bien!bien~!(いいよ!)」と応えてくれました。


仕事が好き?という問いにはちょっと考えてから、「昔からやってきたからな」。

このおじさんがリーダーなんでしょうか。一番元気に働いてました


トンネルの先に光が見えてきました


強烈な日差しを浴びて、やけにほっとしたのを覚えています


坑内では日本にいた時の自分が思い出されました。会社に対して「もっと自分を見てほしい」とスネたり、他の仕事のいい面だけを見てを妬んだり、迷ったり。ここの人たちは、そういうよそ見をしてる感じを全く受けなかった(まぁ、家に帰ってふと思う時はあるのかもしれないけど)。もちろん、ここと日本では仕事の数(種類)、情報、チャンス……全てが違います。でも、あんな厳しい環境で活き活きと働く坑夫を見て「ああ、仕事ってこういうものだったのかな」って思い返しました。何というか、彼らの仕事ぶりは「覚悟」みたいなものに満ちていました。

(文・写真:世界新聞社/松崎敦史http://sekaishinbun.blog89.fc2.com/

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in 取材, Posted by darkhorse

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