テレビを見まくりな謎のカード「BLACKCASカード」をテレビに挿してみた


デジタル放送の視聴に必要な「B-CASカード」。その色は、地上デジタル専用が青、BS・CS用や三波共用が赤、ケーブルテレビ専用がオレンジとなっていて、このほかにも家電量販店の店頭で展示されるテレビ用に使われる白などもあります。そんなB-CASカードと同じか、それ以上の機能を持った「BLACKCASカード」なるものがあるとのことなので、入手してみました。

台湾から郵便物が到着。


裏側にも伝票が貼り付けられています。


中から出てきたのは、かなり小さな袋。


まるで子どもから届いたお手紙のようです。


サイズはこれぐらい……ということは……


これがBLACKCASカード。矢印に顔がついています。


裏面はなにやらよくわからない文字列が並んでいます。


「シールが一度はがれた製品は、一切の修理をお断りします。」のホログラムシールつき。


見る機会の多い地上デジタル放送専用の青B-CASカード、三波共用の赤B-CASカード、そしてBLACKCASカード。もちろんサイズは同じです。


いつもはB-CASカードはこのようにテレビやチューナーに挿入されていて……


そのお陰で放送が見られています。


BLACKCASカードではどうなるかというと……


ちゃんと使えます。しかしこのカード、ただ見た目が黒いだけのB-CASカードとはちょっと違います。


これは、地上デジタル放送がうまく受信できない難視聴地域向けに行われている衛星放送にチャンネルを合わせたところ。この放送を利用できる地域は総務省の地デジ難視対策衛星放送対象リスト(ホワイトリスト)に掲載されているところのみとなっていて、地域外ではこのような案内メッセージが表示されます。


BSの番組表を見ると最後の方(291以降)に入っているのが確認できます。


BLACKCASカードを挿すと、ここは大阪であり、難視聴地域ではないにもかかわらず、ちゃんと受信できるようになりました。


これだけではよくわからないので、BS受信が可能な赤B-CASカードとBLACKCASカードの差し替えをしてみたムービーはこちら。

B-CASカードとBLACKCASカードを差し替えてみる - YouTube


いったいこのカードが何者なのか、どういったことが可能なのかについてはまるも製作所が詳しく調査を重ねており、このBLACKCASカードによって上記の難視聴地域向け放送のほか、WOWOWやスター・チャンネル、グリーンチャンネル、BSアニマックスなども視聴可能なことが明らかになっています。

なぜ視聴が可能になっているのか、技術的な面については2月7日の記事で指摘しています。

2月7日(火) BLACKCAS [2]

BLACKCAS は HW としてのカード自体は B-CAS カードをそのまま使い、有効期限 0xffff の EMM を勝手に作り出して B-CAS カードに供給することで作成されたものだと推定しています。

EMM を作る場合、問題となる点として暗号アルゴリズムが不明である点と、EMM の暗号化に使われる、カード毎に個別の鍵 Km が不明である点、この二つがあります。

しかし、Friio の NET CAS が ECM の Ks 相当部分 (16 byte) だけで、日時情報・改竄検出等を送らずに正常な Ks を返すこと、また任意のバイト列を送っても対応する復号結果を返すことから判るように、一部の解析者には ECM の暗号アルゴリズムは既に判明してしまっているようです。

TS の暗号アルゴリズムである MULTI2 は、受信機で復号が行われ、ECM/EMM は B-CAS カードで復号が行われるといった形で、復号を行う HW が異なるので異なる暗号アルゴリズムが使われる可能性がありましたが、ECM と EMM は共に B-CAS カード内で復号が行われるものですから、同じ暗号アルゴリズムを利用している可能性が高いと予想できます。

ECM の暗号アルゴリズムを知っている人にとって、ECM と EMM の暗号アルゴリズムが同一であれば、EMM の暗号アルゴリズムも自動的に明らかになります。この場合、勝手な EMM を作るのに障害となるのは Km だけです。

問題は、BLACKCAS 作成者が各カードの Km をどのように見つけたかですが、これまで BLACKCAS 関連スレッドで報告されたカード種別が M002 (maker_id=M, version=2) に限定されていることから、この形式のカードに限定した穴があり、外部に Km が見えてしまう何らかのコマンドがあったのではないかと推測しています。

ECM の暗号アルゴリズムを解析した手段は、流出情報とか総当りでヒットしたとかではなく、B-CAS カードを物理解析した結果なんじゃないかなと思っているので、衛星放送で有料放送を実施している以上、無料放送に B-CAS カードを使わなくても日本国外の方々に解析されるのは避けられなかったのではないかと思ったりもします。

そして、このBLACKCASカードの法的解釈について。

2月8日(水) BLACKCAS [3]

私は BLACKCAS カードは不正競争防止法 第 2 条 1 項 11 号にある「装置」に該当すると考えています。ただし不正競争行為と見なされるのはあくまでも 譲渡・引渡し あるいは 譲渡・引渡し目的での展示・輸出・輸入 なので 購入 や 使用 は不正競争行為には該当しません。

今回の BLACKCAS の場合のように国外の者から個人が直接購入する場合、国外の販売者に対して、不正競争防止法 第 3 条 / 第 4 条にある 差止請求 / 損害賠償請求 ができるのか、第 21 条 2 項 4 号にある 5 年以下の懲役・500 万以下の罰金 (併科可) といった罰則を負わせることができるのかまでは調べきれていません。(まず無理だろうと思っていますが)

個人で自己使用目的で輸入する場合は 譲渡・引渡し目的での輸入 には該当しないので、不正競争行為となる心配をする必要はないと考えていますが、ネットオークション等に流す目的で輸入する場合 譲渡・引渡し目的での輸入 に該当して不正競争行為となってしまいますから、国内に居住する日本国籍を持つ人がそうしたことを行うのは止めておいたほうが良いと思います。


なお、通常のカードについている体験視聴期間は16日で、その期間を過ぎるとスクランブル放送されているチャンネルや作品は見られなくなってしまいますが、まるも製作所ではこのBLACKCASカードで16日以上の視聴をしても全局視聴可能なままだったそうです。

2月20日(月) BLACKCAS [4]

到着&視聴確認開始から 16 日以上が経過した 2/20 でも、難視聴含めて受信可能な BS 局は全局視聴可能であることが確認できています。

そういえば、B-CASについては「情報通信審議会 情報通信政策部会 デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」が見直しの方向を打ち出し、「2011年のデジタル全面移行時までにエンフォースメントの在り方を決め、その運用を開始していることが望ましい」と結論を出していたはずなのですが、これはどうなったのでしょうか……?

なお、このBLACKCASカードの現在の販売価格は1枚4万9800円となっています。

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