取材

マラウイはブラックマーケット、ガソリン不足、インフレーションと経済が混乱中でジンバブエ化の気配も


こんにちは。自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンです。マラウイ湖畔を進んで首都Lilongwe(リロングウェイ)に入ります。ここではじめてブラックマーケットの存在に気付きました。公定のレートよりマラウイ通貨の価値が下がっているのです。これに加えてガソリンスタンドに行列ができる恒常的なガソリン不足、そして物価が上がり続けるインフレーションなど、マラウイの経済は混乱しているようでした。すでに経済が崩壊してしまったジンバブエ化しそうな気配を感じます……。

マラウイの首都Lilongweはこちら。

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マラウイ湖に立ち寄りながら首都Lilongweを目指します。


穏やかなマラウイ湖。


たくさんの木製カヌー。


マラウイ湖に流れ込む川。


そんなマラウイ湖で採れる魚を食べていました。


こうして路上で売られている魚を、


そのまま捌いてもらいます。揚げたてでホクホクです。


食堂で食事して……


商店で休憩して……


ときには山羊さんと一緒に雨宿りをしながら進みます。


そして首都Lilongwe(リロングウェイ)にたどり着きました。マラウイ湖畔は標高500m近くなのですがLilongweは標高1000mを超えるため、そこまで暑くなく過ごしやすいです。ただ、ほぼ毎日、土砂降りの通り雨に遭遇したのには参りました。テントに居ましたから……。

宿でテントを張ります。


街へ出かけて帰ったら、テントが増殖していました。なんだか落ち着きません。


Lilongweの宿には大型バスのツアー客がやってきます。ヨーロッパの若者を中心にケニアの首都Nairobi(ナイロビ)を起点として、南アフリカのCapetown(ケープタウン)までのツアーだそうです。リア充が爆発です。

このLilongweでブラックマーケットの存在を知りました。ブラックマーケットは固定相場の取引レートが実体の通貨価値より低い場合に発生します。「固定されている通貨にそこまでの価値はない」ということです。ウズベキスタンやベネズエラ、ミャンマーの話は知っていました。でも、まさかマラウイでブラックマーケットがあるなんて思いもしませんでした。


マラウイの場合、公定レートは1ドル=約165MK(マラウイ・クワチャ)ですが、闇レートは1ドル=約265MKとなっていました。その差、約1.6倍。このブラックマーケットも昔からあるわけでなく、最近活発になっているみたいです。どんどんとマラウイ・クワチャの価値が下がっています。

スーパーで500mlサイズのペットボトルのコカコーラが120MKで売られていたのですが、公定レートだと72セント、闇レートだと45セントと全然違います。公定レートで計算されているATMを利用したことを後悔しました。「スーパーの前に両替人がいる」という情報を仕入れて両替してみました。

100アメリカドルを両替したら財布がパンパンに。


黒人の若い男性が両替してくれたのですが、気になったので「個人でやっているのか?」と聞いてみると「インド人商店のボスがいる」と教えてくれました。話をしてみて分かったことは「インド人商店ではマラウイ・クワチャが集まる。それを米ドルに替えて、ジンバブエに商品の買出しに行く」ということでした。現在のジンバブエの通貨は米ドルです。

マラウイの最高額紙幣は500MK。公定レートですと約250円ですが、闇レートですと約156円とかなり低い額面の紙幣になります。そのため銀行ではレンガを重ねるようにして札束を扱っていました。スーパーでお釣りをもらう際のレジの中もぎっしりとお札が詰められていました。

このブラックマーケットも不思議なもので、固定相場を取りながら存在しない国もあります。西アフリカ、中央アフリカで使われていたセーファーはユーロと固定されていました。でも、ジンバブエの例を出すと分かりやすいもので、ブラックマーケットを経てジンバブエドルは消滅してしまいました。

こちらもブラックマーケットの存在したウズベキスタン。貴金属店や電化製品店で両替をしていました。


この経済の混乱はガソリン不足となって、マラウイ国民の日常生活に影響を及ぼしています。ガソリンスタンドの前には長い列となって車が止まっていました。それでもガソリンがあれば、列は流れていくのでまだマシです。いつ入ってくるか分からないガソリンを待つ為に運転手もいない車の列もありました。ガソリンスタンドのショップで買物した際に「ガソリンはあるのか」と聞くと「2週間は来ていないよ」とそんな回答ばかりでした。

このガソリンは政府によって供給の統制が取られています。ただ、ここにもブラックマーケットが存在しているそうです。Lilongweで会った日本人ライダーは「1リットル=700MKでガソリンを入れた。公定レートだと350円近くで。世界一高いガソリンだよ」と嘆いてました。公定レートは1リットル=400MKです。「どこにガソリンがあったの?」と聞いてみると「ガソリンスタンドの従業員がポリタンクに移し変えて密売している」と教えてくれました。

ガソリンスタンド前の車の列。


印刷のないコカコーラの王冠も経済の混乱の影響でしょうか。


外貨を持っている旅行者でしたら問題はありませんが、現地の人々にとってブラックマーケットは死活問題でしょう。自国通貨の価値が下がっているのですから。この影響でマラウイではインフレーションが起きているようでした。以前は150MK、2011年11月で180MK、2012年1月で210MKと食パンの値段が上がっています。市内交通の乗り合いバスが「150MK」と呼び込みをしていました。公定レートですと約75円、自分の旅したアフリカの乗り合いバスは30円、40円くらいでしたから、マラウイは高く感じました。これもガソリン高騰の影響かもしれません。メーカーの希望小売価格があって安定しているはずのコカコーラの値段でさえ、60MK~80MKとマラウイではバラバラでした。インフレで物価が上がるからといって給与が上がるわけでもありません。

この経済の混乱の理由を調べてみたところ二つの理由にたどりつきました。

間違った道を行く ー マラウィ

2009年のムタリカ氏の5年間の2期目への地滑り的な勝利の直後に、事は曲がりだした。議会で2/3を超える多数派を握って、かつては広く賞賛された大統領は独裁的な兆候を示し始めた。2010年に任期が来る地方政府選挙を2014年まで延期し、いくつかの違憲の法を制定し、あえて彼に反対しようとした人たちの多くを脅迫した。

最近のタバコ価格の低迷により問題は更に悪くなった。マラウィは巻きたばこに使われる乾かしたタバコであるバレー種のタバコの最大の輸出国だ。80%程度のマラウィ人が生活をタバコに頼っている。それは、その国にとって援助に次ぐ2番目の外貨収入源だ。2006年に農民へ支払われる価格が生産費用を下回るキロあたり90セントに下がった時、政府は年間最低価格を導入することを決めた。いつも非現実的なほど高く決められたので、これは生産の急増の原因となり、新たな価格低迷につながった。この年、バレー種のキロあたり価格は、公式最低価格の1.76ドルを無視して、競売でたった1ドル程度になり、マラウィの不平分子の地位を上げた。

一期目は堅実な政権運営に努めて支持を拡大した結果が大統領の独裁化のようです。これによって政府予算でも無視できない額である外国からの援助を止められてしまいました。ジンバブエの匂いがして、こじらせれば英連邦から脱退しかねない勢いです。これが一つ目の理由です。そして二つ目の理由はタバコの価格低迷です。一つの商品に生産が偏るモノカルチャー経済の悪い面が出てしまっています。この二つが理由で外貨不足に陥りました。外貨がないのですから、満足にガソリンも買えないのでしょう。

マラウイの特産品であるタバコ。


こうした経済混乱の中マラウイでは暴動が起きやすい状態となっています。

Lilongweの中心部には南アフリカ資本の「SPAR」「SHOPLITE」といったスーパーマーケットや「Game」といったディスカウントストアが並びます。ただ店内は輸入品で占められていて、それは日本の物価からしても高くてなかなか手が出せません。レストランやピザショップもあってヨーロッパみたいな場所です。ここの中心部から一つ川を越えると庶民のエリアが広がります。空き地にある簡素の青空屋台では中古の服や靴を扱い、ストリートの両脇には中国系やインド系の商店が軒を連ねています。アフリカらしい安食堂もあって、よく通いました。人の往来も激しく賑やかな場所です。

Lilongweの中心部。


南ア資本のスーパーマーケットが入るショッピングセンター。


郊外にあるショッピングセンター。


この川を越えるとLilongweの庶民の町。


両脇に店が立ち並ぶストリート。


大きな店舗を構える中国系商店。


とある日の午後に川を越えてLilongwe庶民のエリアをのぞいてみました。ですがストリートにならぶどの店も空いていません。扉にはしっかりと大きなな南京錠がかかっています。「間違って休日にも来てみたのか」と首をかしげていました。それでも商売をしている中古市場で「今日は何で店がしまっているの?休日?」と訊いてみると「午前中にごたごたが起きて、みんな店を閉じちゃったよ。明日は開いているんじゃないかな」と教えてくれました。暴動が起きていました。以前に起きた暴動ではインド系、中国系商店は襲撃をうけています。何だか不穏な空気を感じました。

最近のマラウイの動きを知るにはスタートマラウイというサイトが勉強になります。

こうしてみるマラウイは「貧しい国」と思われるかもしれません。この経済混乱以前に、外から入ってくる情報から「マラウイ=貧しい国」というイメージを持っていました。でも実際に訪れてみると違いました。

東アフリカで比較するならケニアに次ぐ工業国です。タンザニア側で砂糖、モザンビーク側でもジュースの原液やクッキーと、マラウイ産の品物が国境近くで販売されていました。この工業化もタンザニア、ザンビア、モザンビークと反南アフリカの社会主義の国が囲む中、親南アフリカ政策をとったのが理由でしょう。孤立化したからこそ、自立を深めていったと推測します。こうしたマラウイ産の工業品をもとに、地方の都市にすら全国展開しているスーパーがあります。電気や水道に困ることもありませんでした。地方のそこまで大きな都市ですら携帯の3Gが入ります。確かに田舎では電気も水道もなくマンゴーや揚げパンを10円で商売しているような状況です。ですが全体を通してみると基礎体力は十分にあって、もしも西アフリカにマラウイがあればトップレベルだろうという発展の仕方でした。

街に入る際にあるたくさんの看板、「PEP」は衣料品チェーン店。


よくみかけていた「Peoples」はスーパーマーケット。


工業製品であるピーナッツ。他のアフリカ諸国では家庭の副業として個人が袋で詰めています。


マラウイで飲まれている「Calsberg Beer」はデンマークブランド。


マラウイでザンビアのビジネスマンとに会ったとき「ザンビアも前の大統領はよくなかった」と聞きました。そこで気になって「今はどうなったのか」と訊くと「変わって新しい大統領になったよ」と答えてくれました。当たり前のことですが、アフリカですから新鮮でした。マラウイには日本の援助も入っています。だからこそ、マラウイの独裁化への動きには注視していきたいところです。

マラウイを後にしてモザンビークへ向かいます。


なお、このあと、2月6日にも前回と同じ場所で暴動が起きたそうです。

(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
)

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in 取材, Posted by logc_nt

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