取材

1万話以上のアニメを作ってきた「東映アニメーション」の今までとこれから


現在放送中のアニメでいうと「ワンピース」、「トリコ」、「プリキュア」シリーズ、「デジモンクロスウォーズ」シリーズなどを制作しており、会社の歴史は50年以上という老舗のアニメーション制作会社が東映アニメーションです。歴史を積み重ねてきただけあって、これまでに制作したアニメの話数はトータルで1万話をオーバーするという、とてつもない数になっています。

アニメ・ビジネス・フォーラム+2012」では、この東映アニメーションの常務取締役経営戦略本部副本部長、大山秀徳さんが「東映アニメーションの近未来戦略」というタイトルで講演を行いました。


これまでに東映アニメーションが手がけてきた代表的な作品たち。


大山秀徳(以下、大山):
まずはアニメーション業界がどういう状況にあるかということからお話していきたいと思います。昨年の映画の国内興行収入トップ10、邦画洋画取り混ぜるとハリー・ポッター、パイレーツ・オブ・カリビアン、またハリー・ポッターという並びになり、4位に「コクリコ坂から」、5位に「劇場版ポケットモンスター」ということになります。


大山:
これを邦画だけにするとこうなります。1位が「コクリコ坂から」、2位が「ポケットモンスター」、そして「ステキな金縛り」「SPACE BATTLESHIP ヤマト」、これは木村拓哉さんが主演した実写映画ですね。「GANTZ」「SP 革命篇」「相棒-劇場版2-」とあって、8位に「名探偵コナン 沈黙の15分」が入り、9位がまた「GANTZ」、そして10位が「ドラえもん 新のび太と鉄人兵団」、となっています。1位、2位、8位、10位がアニメ映画ということで、邦画においてはアニメが重要な位置を占めています。


大山:
2011年に10億円以上の興行収入があったアニメ映画は7本でした。実写もすべてひっくるめると32本ということになります。昨年、全体では1810億円の興収で、残念ながらその前の年がよかったものですから、10%ぐらい興収も人口も減ってしまいました。昨年は全体として興収100億円を超える映画がなかったこと、そして興収50億円を超える邦画がなかったことで数字が落ちています。

いま、週に64本のテレビアニメが制作されています。この資料は去年の秋の編成の数字で、地上波が48本、衛星が2本、ローカルは関東エリアだけなどのもので14本、あわせて64本となっています。意気盛んだったころには週90本だったこともありますね。オリジナルのビデオ作品は統計が取りづらいんですが、東京国際アニメフェアの投票用紙資料から数字を拾うと、年に100本ぐらいが作られているようです。アニメの生産地ということでは、日本とアメリカが二大生産地です。


大山:
アニメスタジオは国内に419社あります。元請能力、つまり作品を企画するところから最後まで作って納品するというところまで主体的にやれる力のある会社は約50社です。419社のうち、365社が都内にあります。そのため、アニメは東京都の地場産業という位置づけになっています。そのほとんどは西武線、中央線沿線にありますこれは最初に東映動画ができて、その周辺に下請や協力する会社ができたから、ということです


大山:
アニメの売上は直近では2006年がピークで、そこからゆるやかに落っこちてきています。昨年は全体で2290億円でした。映画の興行収入は頑張っているのであまり減っていませんが、DVDの売上が劇的に落ちています。ちなみに、この数字はアメリカやヨーロッパ、アジアに比べると緩やかな落ち方で、日本の業界はまだまだ頑張っている方です。そして、アニメに限らず、普通の映画などでもDVDの数字は落ちてきています。同様に「商品化」と書かれた部分、いわゆる版権ビジネス、マーチャンダイジングの数字はあまり落ちておらず、むしろがんばっているといえます


それでは、東映アニメーションのお話に入ります。


大山:
東映アニメーションの売上などはこのような数字になっています。従業員数は550名で、在外子会社を含むとなっていますが、このうち200名がフィリピンで働いています。


大山:
いま東映アニメーションではだいたい1年間に劇場版作品を3本から5本、テレビシリーズが250本から300本ほど、ビデオやその他で数本を制作しています。アニメとその他のビジネスが違う点として、作品のライフサイクルが非常に長いということが挙げられます。つまり、40年前、50年前の作品を持ってきても喜んで見てもらえるという点です。東映アニメーションは愚直にアニメを作ってきましたが、その本数は劇場版が206本、テレビが196タイトル、TVスペシャルなどが91本。トータルでは10813話数、5292時間分となります。これは2011年9月末現在の数字なので、今はこれよりも増えています。


これらがいつまでも活躍してくれるというのが、他の映像ビジネスとは違う点です。このライブラリの数は、ディズニーやワーナーにも勝っているのではないでしょうか


地域別のシェアで見ると、アジアが28%、アメリカが30%、ヨーロッパが42%となっています。最近はアメリカでの成績があまりふるっていません。ちなみに、海外輸出全体のうち、東映アニメーションが34%を占めています。輸出も2006年のピーク時には168億円ほどありましたが、今は92億円ぐらいになっています。


大山:
ビジネスの大元になってくるのが著作権です。劇場上映権とありますが、弊社は東映グループなので東映配給作品がほとんどです。テレビ放映権というのは期間を決めてキー局中心に売っているもので、その間に地上波で放送してもらっています。ビデオ権はそのときどきの番組の組み方で変わってきます。たとえばプリキュアだとマーベラスAQL、ワンピースはエイベックスといった形ですね。


当社の主要な取引先はこういった会社です。当社の場合は原作のある作品が多いので、原作者や出版社も多いですね。そして目立たないんですが、広告代理店も大事です。ここを通してテレビの枠を確保します。例えばワンピースの放送枠だとアサツーディケイ、デジモンの放送枠だと電通。そのほかに読売広告社さんなど、それと組んで枠を確保し作品を露出していくというわけです。ライセンシーは我々から商品許諾を得て、商品を作ってくれる会社ですね、たとえばバンダイさんなどです。


大山:
総合力というところを見ていきますが、これだけ力のある会社は業界には他にはないのではないかと思います。まず一番は製作能力であろうと思います。多いときは週に6本の新作を作っていましたが、あのクオリティを作り続けてこれだけのリソース、機材、ソフト、それらを統合するシステムというのは、なかなかないのではないでしょうか。これは東映アニメーションが50年かけて築き上げてきたものです。近年、残念ながらプライムタイムの子ども向けアニメ放送枠が減ってきています。今は15~6本しかないのではないでしょうか。ここで力を発揮するのが東映グループとしての総合力です。東映本社ではスーパー戦隊、いまは海賊戦隊ゴーカイジャーというのをやっていますが、そのほかに相棒などのドラマ作品もあり、テレビ局といい関係を築けているのではないでしょうか。


大山:
かつてはドラゴンボール、セーラームーンがアジアで売れて、そしてアメリカへと進出しました。この2本がキッカケになって、どんどん北米に上陸していくことになりました。売れるようになると注目を集め、輸出商品の花形といわれていますが、我々としてはずっと同じようにアニメーションを作ってきただけなんですね。ワンピースとプリキュア、デジモン、これらも話数を重ねて、次の海外戦略の商品になると思います。聖闘士星矢やDr.スランプも長く人気のある作品で、アジアや中南米で人気があります。


海外販売ではある程度の話数がないと売れませんので、どれぐらいあったかなとまとめてみました。ドラゴンボールはもう終わってしまいましたが、GTまで含めて508話ありました。デジモンはどんどん話数が増えていますが、いま310話を越えて、最終的には320~325ぐらいになると思います。もともとアメリカで人気のある作品なので、どんどん売りたいと思っています。ワンピースは520話を越えています。これがおそらく当社でもっともいま話数の多い作品だと思いますが、尾田先生が「あと10年は描く」とおっしゃっているので、まだまだ続くのかなと思います。プリキュアシリーズは8年目で、今までのところで376話あります。プリキュアは10年プロジェクトで、毎年50話ぐらいいきますので、最終的には500話ぐらいまでいくかなと思っています。


海外販売作品はそれぞれの土地で現地語版が作られます。英語はもちろん、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語、中国では北京語、広東語などなど、これらをすべて合わせると、非常にざっくりとまとめた数字ですが、5万話は越えるはずです。これらはテレビ放送で作ったものですが、他のメディアでも使えるような契約になっていますので、今後、インターネット配信をするときに力を発揮するのではないかと思います。


大山:
これからどうしていくのか、という点でのキーワードは「70億人ー少子化」ということです。東映アニメーションのように図体の大きなスタジオがこれから生き残って行くには、こういった長期的企業戦略がポイントかなと思います。アニメーションだけではなく、映像はそのときどきに登場したメディアに対応してきましたが、今後はYoutubeやインターネットにどのように対応していくのかということですね。中国もやがて人口が減るといわれています。これまでアニメは子ども向けととらえられていましたが、大人でも楽しめるようにしていかなければいけませんね。そして、グローバル化も進めていく、ということです。


大山:
アニメには最初は劇場用のビジネスしかありませんでした。当時、東映には大川社長という方がいたのですが「(他は頑張っているのに)アニメ分野だけはディズニーに負けているではないか」ということで、劇場向けに長編アニメを作る会社を立ち上げたんですね。最初は「白蛇伝」という、中国の古典に題材を得た長編を作りまして、映画館の扉が閉まらないぐらいの大ヒットになりました。続いてはアメリカのマネをして「テレビにもアニメがいるだろう」ということでテレビアニメを作ることになりました。当社のテレビアニメ第1本目が「狼少年ケン」です。


以前は当社もすべてアナログで製作しておりました。紙で作画して、セルへトレースし、彩色してカメラで撮影して編集する、という流れですね。これが現在はパソコンで作画から編集まで行えるようになりました。セルなどが不要になり、コストの削減に繋がりました。アナログでは映像表現にも限りがあったが、デジタル化でいろいろな表現が生まれました。私は後者の効果が大きいのではないかなと思っています。


デジタルということでは、東映は50億円を投じて東映デジタルセンターを作りました。ここは映像を最初から最後まで一貫して作ることができる、デジタルポストプロダクションです。たとえば、「プリキュア」シリーズの最近の作品ではエンディングでキャラクターがダンスしていますが、このモーションキャプチャーなどをここで行っています。また、試写室も200人ぐらいは入れるもので、B級作品であってもA級作品のように見えます(笑)。ツークン研究所というのは技術の研究開発を行っているところで、ツークン(Zukun)とはドイツ語で未来を示す(Zukunft)から付けられています。これは東映の岡田社長が命名しました。


東映アニメーションのスタジオはすべて専用線で結んでいます。特徴的な点として、フィリピンのマニラには100%出資のスタジオがあるが、そことも専用線で結ばれています。今までは飛行機や空輸で完成品を送ってきていましたが、今は絵コンテや作打ち資料を送ると、彩色済みの物が夕方には送られてくるというようなことも可能になっています。


大山:
デジタル化にはいろいろないいところがありますが、映像や音楽をデリバリー可能ということがありますね。例えば、「ワンピース」は日本でのオンエア後1時間でアメリカではネットで見られる、ニアサイマル放送を行っています。


このへんはぱぱぱっといきますが、映像コンテンツ配信市場、モバイルコンテンツ関連市場が成長しているということで投資を行っています。また、新しい試みとして「京騒戯画」というプロジェクトも進めています。(2011年12月にネットで本編配信)


講演で、大山さん自身も口にしたように東映アニメーションは歴史があり、また人も多い「図体の大きい会社」ですが、旧態依然としたモデルにしがみつくことなく、むしろデジタルの利点を最大限に生かした作品作りをしています。持っているコンテンツが多いことによるメリットもあり、たとえば「一休さん」は日本だけではなく中国で非常に知名度が高いので、2012年に中国全土で公開する映画が作られています
作れば作るほどに資産が増え、それを生かしてビジネスを展開していけるというのは、今後も東映アニメーションの強みとなっていくはずです。

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in 取材,   アニメ, Posted by logc_nt

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