生き物

「鷹の目」は実は凄くない、本当かウソか


漫画「ワンピース」に登場する「鷹の目ミホーク」は超人的な強さを持つキャラクターで、アニメ「攻殻機動隊」に登場するサイトーの「鷹の目」は人工衛星とリンクして狙撃をサポートする高性能な義眼です。「鋼の錬金術師」に登場するリザ・ホークアイも優れた狙撃手として描かれており、鷹ではないものを探すと、ありとあらゆる端末から人間を監視してくる恐怖のシステムを描いた「イーグル・アイ」など、「鳥類の目」というのは何かとてもスゴいのではないかという気になってきます。

しかし、実際の事例を見てみると、鳥は飛んでいる間に障害物にぶつかって死んでしまうことも多々報告されています。鳥の目は本当に良いのか、その仕組みから見てみることにしました。


Bird Eyesight Not So Keen After All - Animal News: Animal Planet

「鳥類の視覚受容機構」SOBIM : Vol. 31 (2007) , No. 3 pp.143-149

◆色彩は見分けられるのか
宇都宮大学農学部の杉田昭栄教授は、鳥類の中に、カワセミやオシドリ、クジャクなど、羽の色彩や模様が豊富な物が多いことを例に挙げ、鳥類が高度に色彩を見分けていることを指摘します。

by markkilner

例えばニワトリにはヒトと比べて、光の吸収を行う視物質が1種類多く存在しています。ヒトは赤、青、緑の光三原色で色覚を構成しますが、鳥は光四原色で色覚を構成すると考えられるそうです。しかし、これによってどのような色が鳥に見えているかは、想像の域を出ないとのこと。

◆視野の広さ
眼球を動かさずに見ることのできる範囲を「視野」と言いますが、鳥類の視野は一般的に広いものになっています。頭部の横側に眼球がついているハトは、片眼の視野で169度。両眼になるとカバーできる視野は316度にもなります。さらにヤマシギという鳥は、両眼で359度もの視野を持つとのこと。ちなみに人間は両眼で200度程度です。


反面、両眼で同時に対象物を見て立体的にその姿を捉えることのできる範囲は、ヒトの120度に対し、ハトで22度、ヤマシギでは4.5度と非常に狭くなっています。ハトが歩行するとき、首が固定されたまま体が動きますが、これは眼球の位置を安定させて、対象物に焦点を合わせながら移動するためと考えられています。

◆鳥の眼は脳と同じくらいの大きさ
鳥の眼球は、脳とほぼ同じくらい、もしくはそれ以上の大きさを持っています。下の画像はニワトリの脳と眼球。眼球のほうがかなり大きいことが分かります。


陸生動物の中ではダチョウが最も大きな眼球を有し、遠く3.5kmまで見渡すことができるとのこと。

◆遠くの物、近くの物、どちらも自由に捉える仕組み
鳥の眼球は、基本的な構造はヒトなどのほ乳類と同じでありながら、独自の機能を持っています。例えば、眼球の中でレンズの役割を果たす水晶体が、ほ乳類に比べて鳥類は柔らかくなっています。鳥はこの柔らかな水晶体を、「クランプトン氏筋」「ブリユック氏筋」といったヒトには存在しない機構によって変形させ、近くの物を見る場合にレンズを突出させることで、自在な焦点の調整ができます。


ヒトをはじめとするほ乳類の場合、ピントを調節して結像させるレンズとしての機能を持つのは水晶体のみですが、鳥は角膜の湾曲を変えることが可能で、角膜にもレンズ機能を持たせています。このように、柔軟な水晶体と角膜を持つことで、より高度なレンズの調整が可能となり、遠くの物でも近くの物でも、自在に視覚に捉えることが出来るようになっています。

◆ではなぜ障害物にぶつかるのか
過去にGIGAZINEでも記事として「どうして鳥は目の前にある障害物にぶつかってしまうのか」を掲載しました。

バーミンガム大学のグレアム・マーティン教授は、「鳥が空を飛ぶ時、眼下を見るために頭を下に向けてる場合、両眼を使ってその方向を見るか、あるいは視野の片側だけを使って見ている可能性が考えられます。これらの動作は種に由来するものですが、どちらにせよ、一時的に進行方向を見ていないことになります」と語っています。

広い視野と高度な焦点調整能力を持つ鳥類ですが、飛行中は下方を見ており、進行方向を見ていない場合も多く、超高層ビルなどの構造物に激突してしまう場合があるとのこと。また、鳥の視覚は動く物質を捉えることに優れている反面、空間の詳細な状況を読み取ることには適していないようです。


冒頭に出てきたキャラクターたちのところに戻ると、彼らの技能は「鵜の目鷹の目」に由来しています。これは、鵜や鷹が獲物を求めているかのように、熱心にものを探そうとしている様子のこと。つまり、「目がいい」「視覚関係の能力がスゴイ」という意味で使われているというよりは、「鷹のように獲物を狩る」という意味の方が強いわけです。

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in 生き物, Posted by darkhorse_log

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