取材

誰でも家庭で板前の味を再現できる「煮物調理支援システム」


芝浦工業大学で「煮物を工学する」というキャッチフレーズで紹介されていた「煮物調理支援システム」の実演が行われたので、システムを実際に使って料理を行っている様子を見学し、できあがった鯖の味噌煮を食べてきました。

芝浦工業大学構内の会場に到着したところ、煮物というよりは機械を作っていそうな現場に遭遇して驚きました。実際にはその奥の部屋の一角で実演は行われました。


これが「煮物調理支援システム」


見たところ、ノートPCとディスプレイを組み合わせているようです。


かたわらにはすでに量ってある調味料などがずらり。3分クッキングのようです。


まず、プルダウンメニューの中から作りたい料理を選択。


今回は「鯖の味噌煮」を「4人分」という設定でシステムを作動させます。


するとこの画面が表示されます。画面下部に「下処理」として書かれている項目は今回の実演前にすでに終わらせていたようで、システムの中に特に手順を指し示すところはありませんでした。しかし「鯖を塩〆にする」「熱湯をかけて霜降りにする」など料理の初心者にはかなりハードルの高いフレーズが踊っているため、この部分の作業も含めて指示するようにするとよりユーザビリティが向上するのではないかと感じました。


材料はこんな感じ。仙台味噌桜味噌を合わせて用いるなど、かなり本格的です。さりげなく「ネギ」はすでに調理済みとしてラインナップされていたのに驚きました。これも材料欄に突っ込むのではなく、手順として明文化し、加熱時間をシステムで指示して最適な物に仕上げたいところです。


まず鍋に水と料理酒をあらかじめ合わせておいた物を投入。


次に分量通りに量っておいた砂糖を投入。


そして生姜を入れた後、ガスコンロの火を点火して強火で煮ます。ここまでの手順は「鍋に砂糖、水、料理酒、生姜を入れ、強火で煮て下さい」という一文で表現されているだけなので、初心者でも手間取らないよう、材料1つひとつに対して投入タイミングを音声や画像で指示した方が戸惑わずに済みそうです。


熱電対で鍋の中の温度を調べ、加熱時間を算定しています。


電子音のチャイムが鳴り、音声で画面の文字を読み上げるため、いちいちディスプレイの前に戻って見返す必要はないようです。


音声の指示に従って鯖を鍋に入れます。

「煮物調理支援システム」鯖を投入 - YouTube


続いて味噌をどさりと投入。

「煮物調理支援システム」味噌を投入 - YouTube


「調理終了です」と表示されていますがここで料理が終わるわけではなく、その上に書いてある「206秒後」という部分のカウントダウンが終わったら加熱が終了するという意味です。ここはスライドの枚数を増やして、段階を踏んでアナウンスをしてもらえるともっと分かりやすいと思いました。


鍋内部の熱流体シュミレーションのグラフも掲示されていました。


仕上げに落としぶたをしてそのまま煮込み続けます。


ぐつぐつ煮込んでいます。

「煮物調理支援システム」調理終了の瞬間 - YouTube


そしてこれが調理終了の瞬間。


コンロの火は自動的に消されます。ガスの流量計を見ても、確かにゼロになっていますが、安全のため自分でガスコンロのスイッチはOFFにします。


調理終了後の鍋の中。確かに鯖みそになっています。


そしてできあがった鯖の味噌煮がこれ。仕上げに針生姜もトッピングされています。


鯖に味噌がよくからみ、中までしっかり火が通っているのに身はほろりと崩れるほど柔らかく、身のうまみを感じることができる絶妙な火加減。味噌と砂糖がやや混ざりきっていなかったように感じたので、その部分について少し手順に追加したらより本格的な味わいになりそうです。


焼きネギも中がとろっとしていて非常に美味。やはりこの焼きネギの火入れについてはぜひともシステムでカバーしてほしいところ。


この「煮物調理支援システム」を開発しているのは、芝浦工業大学の古川修教授。今回は実演を補うような形で、古川教授自らスライドを使ってシステムの解説を行いました。

古川教授は本田技術研究所で人間型ロボットなどの開発に携わったのち、大学で教えるようになったといいます。この略歴では詳しく書かれていませんが、諸事情により国外での特許確保が間に合わなかったものの、セグウェイよりも先に同様のコンセプトの乗り物を実現する技術を開発し、日本での特許を保有しているという経歴の持ち主でもあります。


近年は家庭で料理が作られなくなり、不況などの要因により小料理屋の経営が悪化する向きもあるようです。そのことによって日本の食文化、さらには農業・漁業が衰退し、食糧自給率が低下していくという流れを打開するため、この「煮物調理支援システム」は開発されました。

煮物には焼き物など以上に高度な調理技術が必要とされるため、その部分をシステムで補うことで、家庭でも手軽にプロの味を再現でき、かつ小料理屋のような小規模店でも高給を必要とする熟練の板前を雇わずに調理が可能となるとしています。


「煮物調理支援システム」を図解したもの。今回実演される「鯖の味噌煮」の調理データベースは、服部調理師専門学校の講師の調理データが組み込まれているとのこと。


食材の物理的・化学的変化を工学的に予想して情報制御と制御を行うため、プロと同じ火の通し方が可能。また、煮物は特に大量に作った方が調味のバランスなどが取りやすく、少ない人数分で作ったら失敗した……という経験のある人もいるかと思いますが、そういった調理の「勘」とも言える部分を全てデータで管理するため、分量を変えても失敗はしないというのがかなり画期的。

また、市販のガスコンロを少し改造してコンピューターを追加すれば一般家庭にも導入可能で、業務用の機械のように巨大な物を導入する必要もなし。


今後商品化するにあたって課題となっているのは、鍋の材質やサイズ、食材の量、煮汁の量などの調理する際の状況が変化した時も、それを読み取った上で予測を行う方法で、こちらは解決の見通しが立っているとのこと。

それ以外の改善点としては、調理をする人が触れることになるインターフェース。画像や文字、音声などについて改善していくそうです。


まだ荒削りな部分もありつつ、料理のレシピだけでは伝えきれない火の通し方や材料の投入タイミングなどをデータに基づいて指示できるというのはかなり画期的だと感じました。日本料理はさまざまな手順やコツがあるため、こういったデータを介して次世代に伝えていくことで、家庭での食事も豊かになり、古川教授がねらいとしている「日本の食文化の継承」も進んでいくのかもしれません。

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in 取材,   サイエンス,   , Posted by darkhorse_log