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取材

「個人のセンスよりも数千万人のデータの方を信じる」、これがGREEの作り方


「感性に頼りすぎないゲーム設計というのを心がけている」「企画・開発はもちろんのこと、分析や事業戦略まで手を出しつつやっていく」など、これまでのゲーム作りの方法論を覆すという制作体制をとっているGREE、彼らはどのようにして数々のトップセールスを誇るプロダクトを作り上げているのでしょうか?

日本最大のゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC2011」にて、これまでのゲーム機業界での手法との対比を交えながらGREEが「セールスランキングNo.1プロダクトの作り方」というタイトルで、ソーシャルゲームの未来への展望について講演を行いました。

講師は過去にフロントミッションシリーズ、FFシリーズなどを手がけ、今年スクウェア・エニックスを退社してGREEに入社した土田俊郎氏、そしてソーシャルゲーム初期の名作「釣り★スタ」のプロダクトマネージャーを努めた岸田崇志氏の両名です。こちらの濃密な講演の全内容を紹介します。


土田:
本日は我々のセッションにお越しいただき誠にありがとうございます。本日は「セールスランキングNo.1プロダクトの作り方」と題しまして、GREEのソーシャルゲームに関してお話をしたいと思っております。まずは自己紹介をさせていただきます。


岸田:
私は開発部門のソーシャルアプリケーションジャパンの統括部長をしている岸田と申します。私は2年ほど前にグリー株式会社に入社しまして、まずはソーシャルゲーム「釣り★スタ」のプロダクトマネージャーをやり、「モンプラ」という新規タイトルの開発を行って、現在は内製プロダクトの統括・監修に携わっています。


土田:
私も同じくメディア事業本部に所属しております。私はちょっと経歴が長くて年も取っているのですが、就職してから2年間ゲームの開発に携わりまして、気がつくと20年以上ゲームを作っているというような感じで、こっちも自分流のゲームデザインっていう感じのものが何かでてるんじゃないかな、ということを考えた時に、昨年CEDECでGREEのセッションを見まして、ここだったんじゃないかなと思って今年3月にGREEに入社いたしました。


まずは我々を取り巻く環境、そしてその中でGREEがこの半年どのように進んできたかに関して岸田の方から説明させていただきたいと思います。

岸田:
まずここから、ソーシャルアプリ市場の動向についてご説明差し上げたいと思います。


こちらは私たちがソーシャルアプリ市場の中で取り組んでおりまして、さらに昨年で大きく市場を伸長しており、今年で行くと1700億円、さらに来年以降は2000億円ということで、大きく伸長が見込まれております。


加えてゲーム市場の方でも大きく変化が出てきているというところで、皆さんはご存じかとは思いますが、コナミでソーシャルゲームが家庭用ゲーム機の売り上げを逆転したというのも今起こっていることかと思います。


さらにソーシャル市場を引っ張っている用例として、スマートフォン市場が世界的な規模で拡大しています。こちらに関しては3年でさらに大きく伸長していく見込みで、ここをチャンスと捉えてGREEではゲームを作るということになっております。


具体的にGREEでは、この半年間どういうことを取り組んできたかを説明したいと思いますが、その前に、2010年12月7日のIVSというイベントで、社長の田中が「5年後には、今のガラケーの市場がなくなってGREEのビジネスがゼロになる、という前提の元にスマートフォンのビジネスを始めた」と言っているとおり、ここから大きく今のGREEのビジネスモデルはほとんどゼロに帰すというところから、大きくスマートフォン戦略を立てて転換をしています。


ここから半年以内にフィーチャーフォンからスマートフォンへつないでプロダクトを全て移行させるという号令のもと、急速に対策をして、プロダクト展開を現在行っているところです。2011年の6月末に内製のプロダクト全部に関して移植がほぼ完了しておりまして、7月~9月にリリースしたところ予想を上回る勢いでした。社内でも大きな変化を感じており、こういったことを紹介していければいいかなと思っております。


スマートフォン市場の変化としてのひとつの例となりますが、こちらがAppStoreでのセールスランキングで、トップに写っているもののおよそ半分がソーシャルゲームというところになっています。「探検ドリランド」に関しましては、リリース後しばらくしてからですが、ほぼずっと1位です。


土田:
ここでスマートフォンおよびフィーチャーフォンでのゲームと、家庭用ゲーム機のニーズを比較してみたいと思います。フィーチャーフォンとスマートフォン両方の売り上げイメージになりますが、1年運営したNo.1コンテンツは大体数百万本クラスのコンソール用ゲームと同じ規模だと思っております。

「探検ドリランド」は現在国内のみでの運用で、この規模は国内、日本市場で達成されています。ゲーム機では数百万本というのは、ワールドワイドでしか達成できない数字ですので、その辺りを考えてもまだ可能性はあると思っております。

あと、コンソール用ゲームを作るにはお金がかかるというのはあると思います。実際にネットなどを見ても60億かかったとか、70億かかったとか、100億かかったようなプロジェクトもある、というのが実際だと思います。

そういう形でさまざまなリスクのあるコンソールと肩を並べるくらいの規模感のゲームを、我々は作れていると意識しております。


そんなNo.1プロダクトをどのようにして企画開発しているのかに関しまして、まず組織名というところから岸田から説明をしてもらおうと思います。


岸田:
ここから「セールスランキングNo.1プロダクトの作り方」として、3つの軸で紹介をしていければと思います。まず1つ目は「ソーシャルゲームの組織」、2つ目が「ソーシャルゲームの企画」、そして3つ目がGREEの考える「ソーシャルゲームの未来」というところです。


1点目が「ソーシャルゲームの組織」というところで、こちらは大きな要素として「垂直統合型スキルセット」というのを考えています。これはどういうものかというと、ゲーム業界では「水平分業型」というところで、それぞれスペシャリティを持った方々がそれぞれの領域をカバーするといった形で、ゲーム作りが行われているかと思います。

GREEでは、「垂直統合型」というところで、それぞれの領域を数名のエンジニアとディレクターがカバーできるような形で全グループ業務は行っていくという形で、企画・開発はもちろんのこと、分析や事業戦略まで手を出しつつやっていくということです。


なぜこういう組織になっているかといいますと、やはりソーシャルゲーム市場というのはとても流動的で、さらにスピード感を持って開発しなければならず、本当にひとりひとりがお互いが領域を作らず、いろんなところに対応していく、というところを重視しているためです。そのため、新しい挑戦やスピード感を実現しやすいチーム構造になっています。

2点目、「少人数制」というところについては、具体的には「探検ドリランド」で説明しますが、「意思決定のスピードを最大化させる」ということを根底においており、少人数制によってスピード感を出すということをやっております。


大体5年間から7年程度、10年以内のチーム構成になっていて、少人数になるのはコミュニケーションのコストを最小化したいためです。そして現場主義で、基本的に意思決定はPM(プロジェクトマネージャー)に一任していますので、その現場の判断で仕事をすると。その結果に関しては結果で判断する、ということでやっています。

ただ、このようなプロフェッショナルのチームは各プロジェクトチームのデータのマイニングやインフラのスキルといったものをフォローするためにおります。複数のプロダクトで共通となるようなスキルセットに関して基本的なフレームワーク化やライブラリ化をして、エンジニアが使いやすい仕組み作りを行っており、同じものを再生産しない体制を作っています。

そういう組み合わせでスピード感を出して作っていくことができ、。サービスとしても成長して、さらに個人としても成長しやすい、個々の能力を最大にするような体制となっております。

こちらは先ほど説明したスマートフォンへの移植についてですが、それぞれのプロダクトにつきおよそエンジニア1名程度で1か月くらいで作っています。直近だと「探検ドリランド」はエンジニア1名で3週間ほどです。そういったクオリティやスピードを非常に意識しつつ、速いペースで進めて来ることができていると思っています。


3点目が「データ駆動型アプローチ」となります。こちらはどういうことかといいますと、画像やデータに関しても、単純に「絵がきれい」とか「かっこいい」とか、そういうことではなく、いち個人のセンスよりも数千万人のデータの方を信じるというアプローチです。その画像がいくらきれいだといっても、我々は数千万人のユーザーのデータの方を求めており、ゲームモデルの試作を作る上でも「感性に頼りすぎないゲーム設計」というのを心がけています。


具体的にどういうことをやっているかといいますと、「Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)」の4段階を繰り返すPDCAサイクルの徹底です。どの指標を改善するための企画なのか、ということをまずプランニングの段階で明確にしておきます。さらにこの企画によって、どのパラメーターがどの程度変化するのかをこの段階でしっかり表します。

そしてDo(実行)に当たる部分として、実際にリリースしてみます。その後チェックし、想定した数値が何%変化したのかというところで、自分の企画精度や「予想していたマスに受け入れられるものだったのか」というところを都度チェックして企画精度を個人で上げていく。これによりそれぞれのプロダクトのクオリティやサービス品質を上げております。

具体的にはデータマイニングの「GREE Analytics」というツールがあって、ユーザの動向が月単位や日単位、さらには時間単位でも分かります。例えば11時にイベントをリリースした時に、想定した値と1時間回して違っていた場合でも、即座に企画とぶれを修正して新たな企画の投入やゲームバランスの修正を可能にしています。つまり「リアルタイムで常に時間単位でPDCAを回せる制度」です。


そしてデータ駆動型で進める中で、弊社もいろいろとソーシャルゲームに取り組んでおりますので、いくつかのノウハウは蓄積していっております。それらは「ソーシャルフレームワーク」として社内でまとめており、今までたまったモデルにいくつか名前を付けて呼んでいますが、こういったものは複数あります。


基本的に新しい施策を作る場合でも、このようなフレームワークを組み合わせることによって、例えばこういったモデルは集客目標が、こういったモデルは収益が、といったところで今回のプロダクトはどう色づけるかをモデルに関して作り、新作施策のアプローチを図っています。

さらに新規ソーシャルフレームワークの構築も常に行っており、先ほど申したように、「どのターゲットユーザに」「どの指標を上げるためのフレームワークなのか」をひたすら分析をしながら構築しています。「それがそのプロダクトだけに使えるのか」「その他のプロダクトにも使えるのか」「どこまで汎用(はんよう)化できるか」というところを主軸において見るわけです。

弊社としてはそのようなフレームワークの数が企業の体力や新施策、新プロダクトのスピードにつながるということを考えており、今までもピード感を持って進んで来られているため、今後も蓄積していきたいと思っています。

いったんまとめると、ソーシャルゲームの組織として「垂直統合型スキルセット」、「少数精鋭チーム」そしてソーシャルフレームワークを中心とした「データ駆動型アプローチ」の3点というところになるかと思います。


土田:
では、今GREEの1タイトルを支えている開発組織に関して説明したのですが、私はずっとゲーム機業界と言わているところで働いてきましたので、私の知るゲーム業界の開発者と当てはめて考えてみたいと思っています。

先ほど岸田からの説明で、わりと分業型が多いという話があったと思うですが、実際そういうことが起こっていると思っています。それはゲームがより複雑化、高度化している中で、最高に効率を上げようと思った時に取られていた形だと思います。


ただ、それが今後のゲーム市場において有効かどうかといった時に、先ほどのように我々は垂直統合型スキルセット、というものに強みを見いだしています。

「今分業である特定のカテゴリに関して、分業ですごく専門的なアプローチをしている人はどうなんだ」ということですが、私は強みにすればOKだと思っています。

枠を作るのはだめだと思います。「私はこれが専門で、これ以外はしません」とか、もしくは「君はこれが専門なんだからこの仕事だけをやっててください」とか枠を作ることで、本来ならば垂直統合型のスキルに伸ばしてその上で自分の得意な分野を強みにできるはずが、かえって閉塞していくというのはマインドセットの問題だと考えております。


次に少数精鋭というところなんですが、実際の話、少数になれば精鋭になると。結局、ひとりひとりにかかってくる責任が重くなって、そしてスピード感が非常に速くなる。

先ほど言ったようにプロジェクトのPMはかなりの権限と責任を持たされているので、PMとの会話の中でいろいろなものが決まってくる。そして年齢や立場によらないコミットメントというものがあり、実際にそれこそ20代の中盤くらいの人でもコミットメントの高い人は発言力がどんどん上がっていく、というところがある。

なので、より責任を持つような形態になっていけば、僕はゲーム業界の方でも精鋭になっていくと思っています。もちろん自らそれを望んでいただく必要はあるとは思っています。


最後にデータ駆動型アプローチとゲーム機用ゲーム開発で、これは自分も入ってみて思ったんですが、このようなアプローチを理解して取り入れていかなければ、もうゲームクリエイターとして滅びていくのではないかと、ちょっとこれは刺激的な言い方ですが、思っています。

ただ、その上で、今ゲーム機用の開発をやっている皆さんが持っている「感覚」であったり「過去の経験」であったりといったものは、これを理解した上であれば本当に生きると、そう考えています。


今申し上げたデータ駆動型のゲームデザイン、これに関してどういうものなのかというのを岸田の方から説明をしていってもらおうと思います。


岸田:
ということで、ソーシャルゲームの企画というのは最近、どういう風にやっていくのかということを話させていただければと思います。


まず、弊社では企画3大モデル、というところで「集客」「活性化」「収益化」を全てのプロダクトで進めております。


これはどういうことかというと、「集客」に関してはユーザが集まり続ける仕組み。続いての「活性化」についてはユーザが使い続ける仕組み。さらには「収益化」では収益が上がり続ける仕組み、となっており「ユーザーが~し続ける仕組み」というのが重要であると思っています。


こちらが実際に行ったり、指標として示している体制ですが、まず「集客」は新しくユーザを集める手段です。これはスーパーの例ですが、プロモーションであれば新聞広告やCMなどでスーパーの割引のチラシを出したりで新規顧客を獲得したり、ブランディングの向上というところで口コミ効果を狙って新しく集客をします。


「活性化」に関しては「再度訪問してもらえる仕組み」や「さらに継続率を高める仕組み」「退会を防ぐ仕組み」で、具体的には一度来たお客さんにダイレクトメールを送ってさらに来てもらったり、ポイントサービスプログラムで継続的に来てもらえる仕組みを作ったり、さらにはタイムセールによって来るためのモチベーションを構築したり、といった例があるかと思います。

「収益化」に関しては「課金ユーザーの増加」や「ARPU(ユーザーごとの収益平均)の増加」というところになりますが、例えば陳列方法を工夫して買いやすいような仕組みを作る、タイムセールを実施して、瞬間的にも購入モチベーションを上げる、ということかと思っています。

こういった企画モデルや事業モデルといったものを全て数値的なモデルに落とし込んでおります。例えば集客ですが、GREEのユーザー数からどの程度自分のタイトルに流入したかという「流入率」を見てやります。これが「集客」のパラメーターとなります。

次に、実際にゲームを起動したユーザーが日々ログインしていくかという「ログイン率」を取っていて、これが「活性化」の中間指標となっています。さらに「収益化」の中間指標としては、そのログインしたユーザーが課金した割合と、どの程度お金を使ったか(=ARPU)の2つのパラメーターを「収益化」の課程として見て、全体としてこの4つの指標を常に見ているという形になります。

常にこういった「企画が出ると、事業モデルを関連づけて可視化する」ということを全てのモデルで弊社社内において行っています。


具体的には「集客モデル」というのがどういうことをやっているかということをこれから説明していきます。


集客モデルは「プロモーション」と「バイラル」という2つのキーワードで紹介していきます。まず「集客モデル」です。こちらは1500万人に受け入れられるようなコンセプトメイキングということで、これらの3つのプロダクトはずっと考えてきました。


例えば「釣り★スタ」ですけれど、ルールは本当によくある一般的なルールで「釣る」というもので、これも日本でどの程度通じるかというと、1500万人が実際にやっていますが、よりマスに向けられるモチーフを先頭にしております。

さらには「Clinopet」ですと、「ペットを飼う」というところ。こちらは1800万人。ガーデニングの「ハコニワ」ですと、園芸人工が4000万人ということで、よりマスに受け入れられやすいものをモチーフとして選定を行っています。


あとは、直感的に聞くだけでどういうルールか判別できるようなモチーフを選定したり、ということではじめの意識としても入りやすいようなモチーフを選ぶということを意識的にやっております。

もうひとつ集客モデルとしては、「ゲームへの友達招待」ということが非常に重要だと思っています。ゲーム内でコイン、アイテムといったものが必要になるような状況というものが発生しますので、そこで「招待」をすることで遊んでいけるというようなスキームを作ることで、より友達を招待して自分も進んでいけるという「招待スパイラル」を作りました。


こちら右手に示している、下にあるのは「探検ドリランド」というものの、例の「キングモンスター」というイベントです。こういうモチーフを元にゲームの中で友達と一緒にキングモンスターを倒したいというモチベーションを向上させ、さらに友達を誘って一緒にプレイするといったような、ゲームの中でさらに招待スパイラルを回すということも行っております。「友達を招待する」ユニットを、ゲームの中で意識設定する、そしてその中で友達の招待スパイラルを回すといったことをやっております。

こういったものも具体的に数値モデルとして取りまして、1日にアカウントしたユーザー数からどの程度想定したとおり招待が飛んだのか、さらに招待を送ったユーザーたちが招待を送った数はどのくらいのユーザーに拡散したのか、というところも実際のゲームモデルとこうした数値モデルとを照らし合わせながら、現場測定を行っています。


最終的には登録UU(ユニークユーザー)というものが存在するんですが、これらの中間指向がゲームをモデル化する上で、ちゃんとゲームの演出とモデルが一致しているか、というところをチェックするポイントとなっています。


続きまして「活性化」のモデルです。こちらは「サイクル設計」と「ユーザ間コミュニケーション」という2つのキーワードで紹介をしたいと思います。


まずは「サイクル設計」のところですが、ゲームサイクル、これを簡単に「釣り★スタ」の例でお話しします。いちばん始めの小サイクルというところが「釣る」といういうことなのですが、これは魚を釣って、結果画面が出て、それをコレクションするというパターンで、その中でも、1サイクルの中での達成感の演出が非常に重要になってきます。


こうしたサイクルの繰り返しなので、その釣りというサイクルの中で、中間のマイルストーンとして次は何が達成できて、さらにゴールとしてはどういうことが達成できるのか、ということが重要になってきます。

実際には「釣り★スタ」というのは小、中サイクルのところで称号をゲットして何かが上がったりですとか、大サイクルですと全お魚をコンプするといったことになりますが、その間のマイルストーン設定が非常に重要になってきます。例えば一番下に示していますが、「旬魚」というイベントがあります。

このようなマイルストーン設定を当初のゲームバランスとして指定してもいるのですが、マイルストーンが必ずしも機能しないこともあり、そういった場合は個々のマイルストーンのもう一段階下からできるようにしてあります。

例えば旬魚の場合ですと「たった4匹でコンプリートを楽しめる」ということで、達成ポイントを前に落としているという形になっています。誰でも簡単に上位へ上りやすいマイルストーンをイベントという仕組みで作って、サイクルを回していくということをやっています。

このようなゲームモデルであっても短期・中期・長期というところを実際にサイクルにして、欲求や達成感といったものを適切なところに構築する、ということをやっています。


もっと重要なのはユーザー間のコミュニケーションで、これは「モンプラ」というサービスの例です。

まず「友達を訪問する」ところから始まります。そこでは遊ぶことができますが、遊ぶことで「なつく」というパラメーターが上がり、コミュニケーションに価値が付いてきて、よりコミュニケーションしたいというモチベーションを上げる……ということを促進できるよう設定しております。


さらに受け手の方に関しましては、遊びに来たことがテキストだけで表示されるのではなく、画像で可視化することによって、より遊びに行った効果を最大化するということをやっております。

このようなことを考えてきた理由としては、弊社から一方的にサービスを売り込むということではなく「友達からのお知らせ」という形で届く方がリテンション(Retention、人材の維持・保持の意)効果も多いですし、ユーザーもその方が興味が持てるということです。このサイクルをループさせるためにコミュニケーションに付加価値を付けたり、感情を画像にすることをやってます。そしてこのサイクルをひたすら回すということが、コミュニケーションの活性化につながり、最大のリテンション効果をもたらすと考えています。

こちらに関しても数値モデル指標を持っていてやっています。1日のうち「どの程度のユーザーが遊びに来たのか」「遊びに行ったユーザーがどのくらいの回数遊んだのか」「どの程度のユーザーに拡散したのか」という割合、さらに「遊ばれている側はそこから再度ログインしたのか」という再ログイン率で、きちんと紹介サイクルが乗っているかというところを可視化しています。


そしてさらに「収益化」のモデルです。


こちらが2つのキーワードです。1つは「納得のいく失敗 劇的な変化」というところと、もうひとつは「ネットワーク効果 自己顕示欲の最大化」というところになります。


こちらについてはサービスがいくつかあるんですが、例えば「探検ドリランド」では「モンスターに負ける」というところで、非常に悔しい気持ちを与えます。そこで例えば「こういう行動をすれば、強いカードがゲットできて倒せますよ」ということを示して、戦闘力を買うことでもっと楽しくなっていく……といった劇的な変化を感じることができます。

例えば「釣り★スタ」では、失敗の場面で「今、釣り具の力が足りなくて釣れなかったのがどういう魚か」という演出をして、さらにどうすればそこを解決できるのかというサジェスチョンをします。それで具体的に課金してもらい「試してみると釣れた」というところで、実際の失敗をもとに課金を実行して一段上に行くことで、課金のモチベーションを上げるということをやっています。


ここで気をつけなければいけないのは、「失敗に意味がある」ということをきちんと演出してあげたり、失敗の画面というのをきちんと見せてあげることです。そして実際に見た目で変化を感じられるようになっているアイテムを購入させたいため、プロセス設定というのを気をつけてやっています。細かいゲームバランスももちろんちゃんと作るんですけれども、とりあえず「課金機会をきちんと作ってあげる」というところが非常に重要かと思っております。


もう一点はネットワーク効果による自己顕示欲最大化というところで、まずこの基本について説明しますが、「ライト」「ミドル」「ヘビー」層という3つの層がおります。これはどういう分け方かといいますと、まず「ライト」層っていうのはおよそほぼ無課金の層になります。そして「ミドル」層以上が課金者ということになっています。


プレイする目的や満足点というのはそれぞれ違うかなと思っていますが、まずヘビー層は「課金をすることで時間短縮や大幅に強くなれること」、そして達成点として「名誉や他の人より強くなれること」に非常に重きを置いているユーザーです。

ライト層は無課金で「まあちょっと楽しめればいいかな」というユーザーで、そのためにはヘビー層と一緒に行って自分も達成すると。それによってマイルストーンを越えていけるような設定をしていて、ユーザー層が相互に果たす役割による集客といった部分はあるかと思います。

実際ライト層がヘビー層に力を借りてイベントを達成して、さらにヘビー層はライト層を助けることによってモチベーションを感じてもらえるといった、お互いにメリットがあります。さらに多くのユーザーがいるようなサービスですと、頂点に達するのがより名誉となりますので、スパイラルで収益率はどんどん上がっていくし、さらにどんどんサービス自体も盛り上がっていくことで、収益性と集客性のスパイラルを作る、ということをやっています。

そのために例えば「協力して進めるようなイベント」や「競争して1位になろうとするようなイベント」など、そういうものを実施をしていきます。ここまででいったんまとめますと、企画の3大モデル、「集客」「活性化」「収益化」というところで、それぞれゲームデザイン、ソーシャルデザインという2つのキーワードで、説明をして参りました。


土田:
ここでソーシャルゲームと私が今までやってきたゲームデザインとの違い、という部分で説明をさせていただきたいと思います。

一番大きな違いはゲームデザインのモデル化とフレームワーク化です。


モデル、フレームワーク化することの効果ですが、まずひとつはSPEEDです。企画をゼロベースから始めない。要は「こういうフレームワークに合わせていく」「フレームワークから始めていく」ということです。つまり「このフレームワークに合わせた場合、このゲームはこういうふうに落ちるべきだよね」という会話が基本的にあり、「フレームワークの種類がいくつあってどう使おう」という形で進んでいきます。

もうひとつがPOLISH。「成功事例によって1つの成功事例がさらに調整強化されていく」ということです。1つのフレームワークがありまして、このフレームワークを使ったゲームがある程度の成功を収めたとします。ただそれを本当に最大限発揮していたかどうかということに関して、新しいサービスがそのフレームワークを使ってさらに活性化を成功させたり集客できたりと、何か実績を上げると「同じフレームワークを使ったその2つのコンテンツの差は何なの」というところを突き詰めていき、フレームワークが調整強化されていきます。

そしてADVANCE。新しいゲームモデルを考える人がいて、そのアイディアが成功した場合、新しいフレームワークとして追加されます。これは先ほど岸田の方から言っていたのと同じ話になりますが、これが会社の企画に関する力になると思います。つまり「どのくらいゲームデザインに関して知識がたまってるか」「どのくらいコンテンツを作る力があるのか」と同時にフレームワーク化されていることによるスピード感で、短い時間で実現するということができる、ということだと思います。

ゲーム業界と比べた場合の違いに関してですが、新規性を求める傾向に関して言うと、フレームワークありきというところで確立しているので、もしかしたら新規性を求める傾向はゲーム業界のゲームデザインスタイルの方が少し多いかもしれません。

ただそれは「前にこのゲーム遊んだけど、ここが楽しかったんだよね」というところから始まっているもので、そこから新たなフレームワークが生まれる可能性はあります。なのでぜひゲーム業界の経験をフレームワークを作るというか、「これはソーシャルに生かせるんじゃないのか」という気持ちで利用できればいいかなと考えています。

チャンスに関して言うと、私はソーシャルゲームの会社というのはGREEしか知らないんですが、GREEはかなりそういう意味ではチャンスがあると思っています。それは先ほど言ったようにフレームワークが共有されているので結局それをみんなが使えるわけです。

「これはこういうモデルです」「このモデルはこうすることで、こんな成果があがります」というデータを見た時に「この部分が足りない」と思って、このフレームワークを使ってこういう施策を打ったらこういった成果が上がりました……というような経過が全部wikiに上がってるんです。それを自由に見て自分なりに利用して自分のサービスに展開できる。そして成果を上げれば当然発言力は上がる。ということでチャンスはあるのではないかと思っています。

データ駆動型設計による目標設定と改良ということに関して自分がしていたところなんですけれども、自分の経験だと今までゲーム業界でやってきたゲームデザインがどうしても感覚的だったりとか、あと生活感みたいなものが経験で積み重なって「大体この辺りのことを考えておけばこの辺に落ちるよね」みたいになる。

自分なりにはそれはできているけれど、人に伝えようと思うとなかなかそれを伝えるのが難しい、というような、ゲームデザインが属人化していくような部分がどうしてもあったと思っているんです。


それに対して「なぜその機能が必要なのか」が明確化されると、施策を打つことや企画のアイディアを盛り込むことでユーザーが集まるのか、それともユーザーが活性化するのか、それとも収益を伸ばすことに影響するのか……という今ある数値、「今何人のユーザーが毎日来てくださっているのか」という数値と、今後どのように変化が現れるのか、という話ができます。

これは本当に経営レベルでプロジェクトの事業に関する話をする人たちが使っている単語と、現場でひとつひとつの企画を作っている人の使っている単語が一緒だということです。そこに文化というか、浸透したゲームデザインをするフレームワークとその成果の見方を感じます。

あとはその実際の成果です。効果があったかどうかを判断する指標を決めて、そこに目標数値を設定する。要は、例えば集客に効果があるとしたら、それはいったいどのくらい効果があるのか、今の集客がデイリーでこれくらいですが、この施策を打つと何%増員するのか、ということを数値目標として決めるわけです。

そして「なぜ何%増える」と考えるのか、というその何%の増員に対する根拠というものも過去のデータから一生懸命探していくわけです。間違いないのではないかというところまで施策を考えた上で、その後実行したときの変化をデイリー、アワリーで取っていく。当然それが至っていなければ常にそれが変えられていく。「何が原因なんだろう」と考えていくわけです。もちろん実際に施策を打つまでにずいぶん思考過程があるので、その思考過程で察しきれなかった部分で何が起こったかを考えて直していくということになると思います。

ゲーム業界と比べた違いに関してですが、「ユーザーへの利益提供」ということを考えた時に、「こういうサービスをしたいね」とか「ユーザーさんにこういう気持ちになってもらいたいよね」というところからスタートして考えていった場合、思い込みではなくて、「実際に何の効果があって、それが本当にお客さんに伝わって効果が出たのか」というところまで追いかけて改善ができるので、結果的にこの仕組みの方が利益提供できると思います。

要はゲームデザイナーや1人のクリエイターの思い込みよりも「実際にお客さんがどう思ったか」「実際はどう思ったかまでは分からないんだけれど、どう反応したか」ということを常に見る、ということです。

これに関して私がGREEという会社に入って思ったのは「データログに対するこだわり」です。お客さんがどのようにGREEのプラットフォームやコンテンツの中でどのように振る舞われたかということをものすごく厳格、厳密に取って、すごく速いスピードで見られるような仕組みをバックエンドの方で支えています。

そこに技術力と「それをどうしてもやらなきゃいけない」というこだわりを強く感じました。その結果がこういうフレームワークや仕様設計になってくるんだろうと。あと開発者の利益ですが、このように目標を設定してやっていくと、施策やゲームコンテンツを作った時の成功の確度が上がっていきます。そうすると結局成果が出るので次の投資も生まれやすくなる。結局ゲームを作る人間にとっては開発する機会を与えられる。

新しいアイディアを実験する機会を与えてもらうことが何より重要なことだと思っているので、投資の機会に恵まれやすいという意味では開発者にも利益はあるのではないかと私は思っています。そういうGREEがどんな未来を描いているのかということに関して、岸田の方から説明をしてもらいます。


岸田:
ソーシャルゲームの未来といったところで、まずキーワードを3つ挙げていきます。まず1点目は「ソーシャルフレームワーク」、これは今まで説明してきたことですが、後は「グローバルプラットフォーム」、そして「コンテンツ力」。この2つがさらに重要になってくると思っています。


まずは「グローバルプラットフォーム」ですが、グローバルプラットフォームを拡大させていくことに力を入れていて、現在、提携を含めて8億ユーザーのプラットフォームの基盤を目指しています。ここに関してはさらに力を入れて、10億ユーザー規模へと拡大していこうと考えています。


そしてコンソール市場とソーシャル市場でどういうことが持ち上がったのかということを、いったんここで振り返ってみたいと思います。


ソーシャルゲームといっても、今までいろいろ説明をしてきましたが、まだ5年くらいの歴史でして、その反面コンソール市場というのはもう30年以上、という非常に歴史のある分野になっています。


そのような中でこのソーシャルゲーム業界の持つ、「ソーシャルフレームワーク」と「グローバルプラットフォーム」、これらの2つの要素とゲーム業界の持つ非常に豊富な「コンテンツ」というものを重ね合わせることによって、今後はGREEでグローバルに展開していくことが可能になってくると考えています。

よりゲーム業界、ソーシャル業界というものが融合して、この日本のプレゼンスというものを世界に示していくことが非常に重要になってくると思っております。


土田:
次が、今の話と重なることになりますが、ソーシャルゲーム、コンソールゲームっていう区切りがあって、「自分たちはコンソールゲームは作れないから」とか、もしくは「ソーシャルゲームってよく分かんないよね、何が面白いんだろう」、とかいう区分をして会話をすることがかつてはあったと思いますが、今後は、スマートフォンが普及していくことによって、いわゆるゲーム機的な視点で見たときの携帯というものの可能性がすごく上がってきています。


いろんな表現が可能になってくると、ゲーム的な遊びというのはさまざまな表現であり得るので、むしろソーシャルゲーム、コンソールゲームというのはなくなっていくんじゃないか、1つになって、ゲーム的なものを楽しむユーザーがいて、そのゲーム的なものを楽しむユーザーがどのプラットフォームを使っているか……というような時代になっていくのではないかと思っています。

ゲーム内容は広がる時代なので、そこにはもしかすると、というかたぶん確実にコア的なゲーム、今までのゲームデザイン的なゲームのメカニクスを強く取り込んだものが出てくると思います。

次に「全ユーザーがオンラインというのが前提になる」というのがすごく大きな変化だと思っています。これは「オンラインにつながっていることが想定される機械」と「つなげていない人いるかもしれない機械」でゲームをするというのと、「全体がオンラインになる」ということでは、ユーザーが電波の届くところにいるという前提ですが、大きくゲームの作り方が違います。

本来これは我々ゲーム的なエンターテインメントを作る人間が全体的に意識しなければいけないことだと思いますが、我々はゲームのプログラムとかグラフィックデータを売っているんじゃなくて、「ゲーム体験を提供している」ということです。

体験を提供しているからそれがコピーされて流布されるようにもなり、あくまでそのプラットフォーム上で提供されるコミュニティや日々変わるデータと共に、ユーザーに対してすごい達成感やすごくうれしい気持ちを提供することになってきている。「体験を提供する時代」になってきているということを意識するようになるべきだと思いますし、今後そういうことをやっていくべきだと思っています。あと、アジア市場です。今まではどうしてもゲーム機が北米市場、そのあとがヨーロッパ市場ということで日本市場と共に3つのカテゴリで話すことが多かったかと思います。どうしてもゲーム機自体がその国で販売されてどのくらいの台数売れているのかということにゲームの提供の機会っていうのが限定されていたところがあります。

ところがスマートフォンになってくると、それを持っている方が、ゲームそのものは無料で提供して、ユーザーに課金していただく、時には強く面白いと思った方に課金していただくと、そこに関しては非常に機会が増えると思っています。


我々日本人はずっとコミック、アニメ、ゲームといったいろいろなコンテンツを作ってきて、私もGREEに入って「土田さんの創ったゲーム遊んでましたよ、中学生の時に」と言われて「ああそうですか、ありがとうございます」って言った時がありましたが、「手塚治虫の漫画を見た後にゲームを作った」とか「あるゲームを遊んだ後にコミックを描いた」とか、要はコミックとかアニメとかゲームとか、あるいは小説といったものですが、それを見た人たちで双方に影響し合ってここまで来た文化を持っている国はそう多くはないと僕は思っています。

そういう意味で現時点では、ここには歴史と一言で書いてありますが、相互に影響を与え合って、エンターテインメントのコンテンツを持っている日本という国にはアドバンテージがあると私は思っています。それを考えるとグローバルな展開というのにすごくひかれているのを私は感じています。

どうしても日本のゲーム業界に関する話だと、「閉塞感を脱せ」というような発言や状況というのがよく見られますが、ゲームの定義がそもそも変わります。今までゲームと思われてなかったようなものもゲームになっていったり、これはゲームなのというところのものと、ゲームらしいゲームと両方がゲームと呼ばれるようになっていくような時代です。

さらにライフスタイルとの関係です。私も自分でコンソール用のゲームを作った時にはアンケートを取りましたが、「このゲームを買わなかった理由を教えてください」と聞くと、ダントツ1位と2位が必ず決まっていて「時間がない」「お金がない」なんです。3位になってやっとキャラクターがどうした、ストーリーがどうだ、ゲームシステムが複雑そうだ、というような話になってきて、その差は歴然としています。

ユーザーがゲームをするに当たって、ゲームを買ってきて、さらにスイッチを入れてそれに集中する……という状態を作ることによってしかゲームが関わり合えないのが、すごく忙しくなってきた日本の中でソーシャルゲームが普及してきたというのは、ユーザーが遊ぶ機会に関していろんなタイミングを提供できているのではないかなというのを感じてはいます。


そういうプレイスタイルが変わる時代で、収益法でも変わります。市場も変わってきます。こういうほとんどのものがどんどん大きく変わっていくような時代に、こういうターニングポイントで世界を目指す日本のサービスがあるということは、すごく私はわくわくする話だと思っています。

ぜひ皆さんにもGREEやGREEプラットフォームに参加をしていただいて、一緒に世界を目指していけたらなと考えております。


ではこれで本日の我々からの講演は終わりにさせていただきます。

続きまして、質疑応答に写らせていただきます。


質問者1:
本日は貴重な講演どうもありがとうございます。本日の主題と逸れてしまうかもしれませんが、先ほどスライドで「仕様書無し」と書かれていました。仕様書無しでどうやって実際に開発、運用を行っているのか、お聞かせください。

岸田:
この件は仕様書はないんですが、実際にはwikiベースで簡単な仕様とか簡単なことだけおさえたり、情報を外に提示しながらやっているということで、カチッとした仕様書がないということです。

質問者1:
フォーマットが無く、個々で行っているということでしょうか。

岸田:
そうですね、今回どこのユーザをターゲットにして、どういった必須要素をゲームに加えるんですかというメモ程度のwikiで進めています。あと、口頭ベースでのコミュニケーションを密に取るようにしていますので、そこでコンセンサスを取りながら進めていくようにしています。

質問者1:
ということは先ほど説明のあった垂直統合型スキルということを求められているということですか。

岸田:
そうですね、これを実現したい、という時に上のレイヤーから下のレイヤーまで、やはりそのデータベースの設計といったところまで理解しておく必要はありますので、とりあえずそれをするためのボトルネックはどこなのか、といったところですとか、それをする時にどういった事業的なメリットがあるのかということを幅広く本当に上から下まで看破しながらやるということです。

後は結構エンジニアとかディレクター間の席を近くにしていますので、ある意味大学の研究室みたいなノリで、話しながら作っているような感じです。

質問者1:
最後にもうひとつ、メンバーがスキルをとかを共有するための工夫とかはなにかされているのでしょうか。

岸田:
とりあえず先ほど言ったソーシャルフレームワークといったモデルに落とし込んでいて、基本的に新しく入ってきたメンバーは、こういうところを意識していきましょうとか、どのターゲットユーザーを考えた施策という意識付けをするところから始めるようにしています。

質問者1:
ありがとうございます。

質問者2:
本日は非常に興味深い講演をありがとうございました。ちょっと土田さんに伺いたいところがあるのですが、たぶん私も含めて、この部屋の中で土田さんの作品を遊んですごく感銘を受けた方というのは多いと思うんですけれど、あえてこのような質問をさせていただきたいんですが、ソーシャル側、そのGREEさんの方でスピード感だったりとか、データ駆動型によるゲーム作りっていうのはすごくいいところはたくさんお聞きしました。

そこであえて、昔のゲーム業界のゲーム作りの方がここに関してはよかったなと思うところはございますか。

土田:
会社員の忠誠心が問われるところですかね(笑)。


ええと、今のは冗談としてですね。まあ難しいところですが、感覚としてですけれど、先ほどのプレマークとかは進んでいる一方で、いろんなところから自分がファミコン、スーパーファミコンっていうようなメディアで作っていたときにすごく近いものを感じます。なので、コミュニケーションに関してもすごく意識してこだわっていて、そもそも「小チームだからコミュニケーションしやすい」ということがある一方で、やっぱりそれを引っ張っていく人とか、そういう人の力量は問われますし、そこで1つ間違うと、っていうところはあると思います。

それに関して言うと、フレームワークがあるので「昔ちょっと誰かの思い込みでまずいゲーム作っちゃったよね」みたいなことが起こりづらいとは言いつつも、データに関して言うと、こういうことをやるとデータにこういう影響が出るということは、割とサービスそのものではなく「こういうことをやるとこういう影響が出る」という関係性が明確なものというのをよく見ていられるんです。「じゃあ、これが欲しかったらこれをやったらいいじゃん」という短絡的になることも、危険性としては考えられると思います。

だからあくまで先ほど言ったデータを「お客様に何を提供したいのか」「どのように楽しんでもらいたいのか」から始めて、ログを見て指標を決めて……というプロセスを踏むのであったら、おそらくGREEというかそのフレームワークの作り方はいいと思います。ただ、本当に「こうやると数字がはねるよね」というところだけ見るのはリスクはあると思っています。というところですかね。

質問者2:
たぶんこれ以上つっこむとお互いやばいと思いますので(笑)ここまでで。どうもありがとうございました。


質問者3:
今日は貴重なお話を聞かせていただきました。垂直統合型の組織とゲーム業界の組織の対比というのが非常に面白かったんですが、かつては、ゲーム業界も、ファミコンやスーファミの時代はそこまで分業化されてなくて、おそらくGREEさんの言うような垂直統合型の組織だったんではないかと自分は想定していたんです。

そこでかつてのファミコンの頃の組織を今体現しているGREEさんが非常にベースのある組織になっていくというのも非常に面白かったのですが、現在はゲーム機のスペックの向上に伴い徐々に規模が大きくなり、ファミコン時代の統合型が維持できなかった結果分業化が起きてきて、こういう方向に進んできたのではないかと。

でも今後は、かつては機能が低い状態だったから規模を大きくしようがなかったっていう携帯とソーシャルゲームも、スマートフォン時代になるということでスペックが確実に向上していくと思います。そのような中で今後も規模を大きくしながら垂直統合型の組織を維持するのか、それともやはりゲーム業界のように分業化が進むのか、という今後の組織展望のようなものをお聞かせ願いたいと思います。

岸田:
基本的には今のスタイルの続きで通していこうと思っております。やはり今の私たちに特徴的なのは、ソーシャルゲームというリアルタイムに変化していくような仕様ですし、そういう中でやはり対応するためには垂直統合型でないとなかなか対応が難しいかと思っています。

ただ今後に関しては、スマートフォンとフィーチャーフォンと申しましたが、基本的にはゲームモデルのモデリングの部分は変わらないと思っていて、演出の部分では、例えば今弊社ですとAdobeのFlashですとか、(Adobe) AIRとか、Unityとか、演出面の重要な部分はそういった作り込みの部分はやっていますが、ゲームのベースとなる部分、サーバーサイドの部分とかは基本的には大きくは変わっていません。

というところで、ゲームに対するスペシャリストの方とかは、書いてもらったり作ってもらったりしていますが、ゲームの中間指標や収益性に関わる中間パラメーターの指標は大きく変わっていないので、このままやっていけるかなとは思っています。

現状半年間スマートフォン対応したという具体例を示しましたが、この時にはもともと私たちが持っていたものを使いたいので、できることならサーバーサイドでゲームロジックは完結する、といったことをやっていきたいと思って、ハイブリッド型というアプローチを進めております。

表向きはネイティブっぽく見えるんですけれども、裏は我々のソーシャルゲームのノウハウが使えるような作りになっていまして、こういったところは引き続きこの強みをもって進んでいきたいと思っています。

質問者3:
ありがとうございました。

質問者4:
今日は面白い話をありがとうございました。先ほどフレームワークとして蓄積していっていると伺ったんですが、そのフレームワーク自体が消耗していっているような感覚はありますか。例えば似たようなゲームがでてきているとか、自分がソーシャルのゲームを作る時考えるようなことが既にデータとして出てきていたりとか。

岸田:
はい、ソーシャルフレームワークによっても、ライフタイムというものがあると思っていて、蓄積をしていくというのは重要で、その寿命みたいなものは長いものもあれば短いものもあると思っています。

とはいえ、使うだけではなくてそういった反面、例えば3か月に1回1本ゲームを作りますとか、そうしたことはきちんとやっていかないとやはりノウハウとか、新しいイノベーションというものは浮かんでこないので、さらには3か月に1個、そういったフレームワークを作っていくといったような取り組みを行い、新しいものも取り入れて作り、さらにソーシャルゲーム市場に活を与えるものを蓄積していく、というようなことをやっております。


質問者4:
もうひとつなんですけれど、そのフレームワークを作るというのは既にリリースされて成功したものからフレームワークとして落とし込むのか、あるいはフレームワークを作るという考え方で作るのかというところなのですが……。

岸田:
それはほぼ同時です。やはりそのプロダクトにして新しい施策を作るときに、まずはそのフラットサイトに提案するんですが、それが他のプロダクトにも適応できるものとなりますとマネージャー的にもうれしいですし、市場的にもうれしいと思います。なので、そういった視野を持って進めていくことは各プロダクトにおいて必要だと思っています。

その中で「てにをは」をやっているうちに、そのフレームワーク化しようと思って作っていないものがフレームワーク化されることはもちろんあります。そういったものは他のプロダクトで「なぜ今回成功したのか」を検証して自分のプロダクトに適応することによって、どんどん横展開して汎用化していき、その流れでいいものが集まってきている、といったようなこともあります。

質問者4:
ありがとうございます。

質問者5:
本日は貴重なお話ありがとうございます。お話をお聞きしているとフレームワークやデータ駆動型というシステムで、集客だったり収益だったりを高い精度で予測をできるというイメージを持ちました。

それでも実際にやってみたら、このフレームワークでこのようなゲーム内調整をしていたらこれくらい当たるはず、という予測よりもまったく食い違った結果が出る、というケースがあるのかどうか、またその時にどのような対応をして、どこまでその理由を特定できるのか、その辺りをお聞かせいただければと思います。

岸田:
想定したフレームワークというのとその実際効果というのは違うことというのはあります。ただ、それは結構プロダクトの性質によるものかと思っていていて、説明はしなかったんですが、このフレームワークは男性には向くけれど女性には向かない、女性に向くけれども男性には向かないということは往々にあります。

例えば女性向けのプロダクトに男性向けのフレームワークを入れてみて、それもやっていく中で分かったことなんですが、逆効果だといったことが実際にもありました。

基本的にはそういったところで、単純にフレームワークを組み合わせればいいというわけではなく、プロダクトの特性とフレームワークのマッチングを考えながら、そのプロダクトの特性に合ったフレームワークを選定するということが、これからやっていかなければいけないところかなと感じています。


質問者5:
ありがとうございました。

土田:
ではどうもありがとうございました。以上になります。

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