「日本のゲームが持つ問題点」や「開発における日本とアメリカの明確な違い」を最前線にいる当事者がハッキリと語る


日本のゲームを愛するが故に「日本の有名なゲームクリエイターが最新のゲームをやっているとは到底思えない」などと「日本のゲームが持つ問題点」について歯に衣着せぬ意見をバシバシ飛ばしまくる講演「僕の海外ゲーム開発ストーリー++ ~日米両方でAAAゲーム開発をして分かったこと~」が日本最大のゲーム開発者向けカンファレンス「コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス2011(CEDEC2011)」で行われました。

講師は、Microsoftの343 Industriesでディレクターを務めたライアン・ペイトンさん。2003年に来日し、小島プロダクションにて「メタルギアソリッド4」などの人気作に関わった後、故郷のシアトルに戻ってからMicrosoftに入社して「HALO 4」を含むHaloシリーズのクリエイティブ面のディレクションを担当した人物です。

講演は自身の半生から始まり、「ゲーム開発におけるアメリカと日本の明確な違い」、「最近のゲーム業界事情」、「日本のゲームが持つ問題点」、「新世代のクリエイターたちが作りだす明るい未来」と、日米両国で最先端のゲーム開発に携わった人物ならではの新鮮な意見が次々と飛び出す内容となりました。

海外トラック | CEDEC 2011 | Computer Entertaintment Developers Conference

◆はじめに

こんにちは。なるべく生き生きした感じで話を進めていきたいと思いますので、もし私の話が違うと思ったら「違います!」と言ったり、面白いなと思ったら、どうぞ声を上げて笑ってください。楽しい感じで進めたいと思います。


私はライアンと申します。また日本に来られてとても嬉しいです。出張ベースで来たことはあるんですが、ここ3年間はアメリカのシアトルにいました。故郷に帰っていた間は素晴らしかったんですが、でもやっぱり日本に来る時はうれしいものです。また、日本に来たことでいろいろと気づいたことがあります。


まず一つは、ドルがすごく安いということ。スターバックスのコーヒーが8ドル(約620円)もするのかと思って計算してしまいました。味は日本の方がちょっと良いような気がするんですけれども、8ドルも払わなくてはいけないのかと。


以前は日本の人と話をするときにアイドルの名前を2、3人覚えていたんですが、今は48人も覚えなければ駄目だということで、本当に大変だなと思っています。


あともう一つ、アメリカで日本のゲームを買う時には今でも苦労することがあるんですが、逆にアメリカの「HALO:Reach」を日本で発売日に買おうとして渋谷のTSUTAYAに行ったらやっぱり商品展開がすごかった。


この人、「HALO:Reach」を渋谷で買おうとしてた人です。話はしなかったんですが、握手をしようかなと思いました。


さて、今日の話は3つです。さっきの話だけではなく、もうちょっと日本に来て気づいたことがありますので、それをお話したい。まず「アメリカでいろいろと学習したこと」。3年間アメリカでいろいろとゲームを作りましたので、そこで気づいたことをご紹介したいと思います。もう一つはイデオロギー的というか、「目覚め」があったので、それについても話をするつもりです。私の人生の中で良いこともあったんですが悪いこともありました。しかし、それによって気づいた「目覚め」もあったので、これも紹介したいと思います。ということで、今から「アメリカでのゲーム開発」について1時間話します。


◆ライアンさんのこれまで

ここ12か月の間は、私の人生の中で最も暗い1年間だったと思います。多分、この1年で出たお葬式の数は、それまでの人生で出た数を全部合わせたよりも多かったはずです。家族や友人で亡くなった方もいますし、アメリカに帰った時には日本で作った親友から離れることになったので、故郷のアメリカに帰っても逆にアウトサイダーになったような気がしました。本当に鬱みたいな状態になってしまい、それに追い打ちを掛けるかのように東日本大震災が起きて……。Microsoftの仕事もあまりうまくいっていなかったし、人生もうまくいっていないという状況でした。ゲーム業界の中で、「ゲームクリエイターとしての責任」なんてことを考えるのは僕だけなんじゃないか、という気持ちを持っていました。皆さんが期待していたような話と全然違うかもしれませんが、とにかくそういう風な気持ちを持っていたと。


本当にひどい冬が終わってから本を読んだり、エクササイズをしたり、それから友人、たとえばこの人は戸島壮太郎さんという「Halo」の音響ディレクターなんですが、この方と話をしてとても心が軽くなりました。私の「ゲームクリエイターとしての責任」の話をしたら、「そんなにおかしくないよ、そのまま考えていていいよ」と言われて心が軽くなったんです。


「ゲームクリエイターとしての責任」という考えがどんなものかというと、ゲームはどんどん大きくなっている業界で、流通チャンネルも開いてきているから売りやすくなっていると。世界も小さくなってきているから、いろんなことが出来るはずだと。世界のさまざまな人に多種多様なメッセージを伝えることができるはずだと考えていたんです。


モバイル機器が売られるようになったことで、どこでも簡単にゲームができるようになりました。それは仕事をする環境としては素晴らしいことだと思います。そして将来、ゲームがダウンロードするものになったときにどうなるのか。こういう風なゲームになるのでしょうか。どれも同じような感じですよね。ほとんど馬鹿馬鹿しいくらいに似ております。


これって「近代兵器のゲームが1番でしょ」みたいな感じになっているわけですが、私たちは単に暇つぶしになるものを作ろうとしているのか。私たちはどんなものを作ろうとしているのでしょうか。個人的には、今は素晴らしいチャンスがあるんだからそれをうまく生かすべきだと思います。


ごめんなさい、皆さんは何の話をしているのかと思っているかもしれません。私たちは、もっと素晴らしいゲームを作りたいと思っています。私がもともと、どうして日本に来たのかということを簡単に説明したいと思います。


運命の日は80年代中頃です。朝の5時に父が私へ「起きろ」と言いました。当時の私は5、6歳だったと思います。


父は後になってから「あんなことしなければよかった」と言っていましたが、これをくれたんです。


本当に「こんなにカッコイイものはない」と思い、毎日プレイしました。素晴らしいグラフィックです。


「Indiana Jones」。いま見るとひどいでしょう。


父は「こんなものあげなければ良かった」と思ったようで、数年後には両親が「もうビデオゲームはやめなさい。外で遊びなさい」と言うようになりました。


それで、こんな感じの自転車をくれたんですけれど、自転車をもらったことによって今度は友達の家に行ってゲームをするようになりました。当時は夕方になる前に帰らなければいけないというルールがありましたが、夕方を2時間くらい越えてもゲームをし続けてしまったと。むちゃくちゃに怒られました。もう友達の家に行ってはいけないし、自転車に乗ってもいけないと。


ちょうど誕生日が近づいていたので、これをプレゼントしてくれるようにお願いしました。「やった!」これで家を出ることはなくなります。


大きくなって新しい家に引っ越してから、私と兄弟には引っ越したばかりで友達がいないということに父が気付いてこれをくれました。すごく面白いゲームばかりです。


特にこのゲーム、「ファイナルファンタジーVI」だったんですが、すごいですよね。初めて「ゲームって複雑な人間の気持ちを伝えることができるんだな」という風に理解しました。3歳の頃の話です。


……というのは冗談なんですが、本当にビックリしたんですよ。


父親は神戸製鋼に勤めていたんですけど、よく広島や京都、東京などへ出張に行っていました。それで、1998年に私を出張のとき一緒に連れて行ってくれました。見てください。


「スーパーマリオはすごい!」という風に父親も感心してくれて、日本まで連れて行ってくれたんです。本当に楽しく、この時に私は日本語を勉強しようと思いました。


そして家に帰ってからこのゲーム(メタルギアソリッド)をやり、これで人生がすべて変わってしまいました。映画的な演出もすごいし、ボイスもすごい。さらにはストーリーもすごい。でも1番ビックリしたことは、「このゲームにはメッセージがある」ということに気付いた時です。そのメッセージの内容に私が同意できるかどうかは別として、「ゲームには何かメッセージ性がある」ということに感銘を受けました。


長い話を短くします。大学を出て日本に来て、「英語を教えながら大都市で暮らしていつかはゲーム業界で働くんだ!」と思い「JETプログラム」という日本語教師として働くプログラムに参加したところ、思いっきり田舎の方へ行かされてしまいました。


コンビニもない、スーパーもない、めちゃくちゃ田舎です。ここに来た最初の晩は涙が出ました。なんてことをしてしまったんだと。ここで一体何をするんだと思ったんです。


次の日になって少し元気が出たのでゲーム雑誌を読み、「ファミ通Xbox」、「ジャパンタイムズ」などいろんなところへ手紙を出して仕事を探していることを伝えました。


いろいろと面白いことがあってからロサンゼルスで行われた「E3 2005」に行き、小島秀夫さんの面接を受けることができたんです。ちょうど「メタルギアソリッド3」が出た頃でした。


面接の後、彼は私が日本語ができることに気づき、「じゃあコナミへ面接に行けば良いじゃないか」と言ってくれたんです。「すごい!夢がかなった!」と思い、「絶対にコナミで仕事がしたい!」と思いました。


それでコナミで2、3回面接を受けたところ、メールが来まして、それは「ライアンくん、面接は残念でした」という内容でした。もちろんショックを受けて「私が仕事をするべきなのに何で!?」と思ったもんです。


わかった、もう日本はだめだ、とにかくアメリカに帰ろう、ということでワシントン州へ帰ってから、そこで仕事をしようと思いました。しかし、アメリカで新車も買い、仕事を探し始めた途端にコナミからまたメールが来たんですね。


たしか最初のメールが来てから1週間後だと思うんですけど、「すみません間違いでした。仕事はあるので帰ってきてください」と。「何で?」と思いましたが東京ゲームショーも近かったし、とにかく東京に戻って。


それからは「メタルギアソリッド4」のためにモロッコへ出張していろいろサーチしたりしました。


サンフランシスコにも行きましたし、さまざまなファンに会い、ファンの人が「ありがとうございます」みたいな感じで握手をしてくれたりということもありました。


3か月分の休暇がたまっていたので、シアトルの近くにある実家へ帰ってきて、そこで「HALO」をやるわけです。


「メタルギアソリッド4」が終わって帰ってきたある日、電話がかかってきたら母親が「出ないで、私が出るから」と言ったんです。おかしいな、と思っていたら、実は母がガンを患っていました。それで、いろいろな治療を受けていたと。父親から「お母さんが病気だから君は日本には帰れない」と言われました。コナミに帰るべきなのか、それともこのままアメリカに留まろうかと考えていたのですが、そういうことがあったので、じゃあアメリカに留まろうと。現在母は元気なんですが、当然その時はショックでした。


それから仕事を探し始めて、Microsoftで仕事を見つけます。新しい「HALO」のチームを作ろうとしているのでクリエイティブディレクターを探しているという話も聞きました。時間はさっぱりないんだけど、新しいチームで何か新しいことをしようと思っていると。非常にリスキーですが、面白そうだったのでクリエイティブディレクターをやることになりました。


◆ゲーム開発におけるアメリカと日本の明確な違い

アメリカでゲームを作る仕事に3年間携わった中で、いくつか気づいたことがあります。一つは、「人の管理の仕方が日本とは違う」ということです。アメリカ、特にMicrosoftは基本的に人の管理にすごく時間を割きます。


チームメンバーのひとりひとりと毎週会って、仕事の内容はどうか、プロジェクトに対してどういう感想を持っているか、キャリアについてのことや、どんな懸念を持っているのかといった話をしました。他の経営陣ともバーベキューやピクニックで話をしたり、チームの人たちと映画やボウリングに行ったり、とにかくスタジオとしてのカルチャーを生むためにそういうことをしました。これは「HALO」だけではなく、毎週月曜になるとチームの団結作りのようなイベントをやっていて、「チームの人材管理」というところにかなり時間をかけていることがわかりました。その価値はあると思います。


それから2点目ですけれど、「仕事とプライベートのバランス」です。アメリカ人は自分たちの自由時間をかなり真剣に守るという話は皆さんも耳にしていると思いますが、大体そんなものです。だからといって「アメリカ人は徹夜で仕事をしたりはしないよ」ということではありません。もちろん徹夜で仕事をすることもあるんですが、「必要な限りは頑張るけれど、必要がなければ家に帰る」というのがアメリカ人のスタンスです。これは大変良いことだと思います。


私自身、「他の人がまだ残っているから自分もまだ帰れない」という考えをアメリカで抱いたことはありません。自由時間があるから読書量も増えるし、映画やテレビを見たり、運動をしたりしてより良い社員になれるのではないかと思っています。今後、もしも日本に来て日本のチームで仕事をするということがあれば、このアメリカ的な「仕事とプライベートのバランス」はどんどんプッシュしていきたいです。自分の人生をもっと大事にすることで、もっと仕事ができるようになると考えていますから。


それから、「チームの団結力」ですね。たとえば日本だと真夜中にサイゼリヤへ行ったりして、チームの団結力はかなりあると思うんです。ただ、アメリカの場合は若干違うと。


アメリカの場合は、毎晩帰宅して家族と夕食を取ってから、その上でXbox LIVESteamをするんですね。オンラインで仕事仲間がいっぱい入ってくるんです。午後の8時や9時になると毎晩数時間だけ一緒にゲームをするっていう、それがアメリカのやり方です。これもすごいと思います。チームとしてのカルチャーを作り上げる良い手だと思いますし、最新のゲームデザインを体験することもできますから。「バーチャルな居酒屋」と言えると思います、お酒を飲みながらやっていますから。


そしてアメリカで気づいた4点目は、やはり「データがカギになる」ということです。全てとは言いませんが、多くのものはきちんとしたデータの裏付けがなければできません。


まずは「プロトタイプ」。皆さんよくご存知ですよね。テストプレイをしてみてチームで調査する、フォーカスグループをやる、あるいは市場のデータをとる、データマイニングをする……。そういったもののすべてがアイデアを検証するのに役立つわけですね。クリエイティブディレクターとしては、新しいアイデアがあった時はそれを推し進めるわけですが、場合によっては裏付けとなるデータが必要になります。このアプローチは良いのですが、危険もあると。データに依存する人が多いということは、そこに将来像を見るわけですね。私はスティーブ・ジョブズの言葉に賛同します。「人々は、実際に目の前で見せてもらうまではそれを欲しがっていることに気付かない」と。


好例が「実績システム」ですね。統一型のポイントシステムがあって喜ぶ人なんて誰もいないと思っていたんです。実際に導入した時も「こんなのいらないよ。これ何なの?」っていう意見が大半でした。つまり、実際に触れてみるまでそれが欲しかったことに気が付かないんですね。だけど、今ではこの「実績システム」が無ければゲームもできないというようなところまで来ている。


次に5点目、「情報共有」。これは大きなトピックです。アメリカで仕事を始めたばかりの頃は「みんな何でこんなに質問してくるんだろう?」と思っていました。アメリカ人は単に好奇心が強いだけでなく、プロジェクトやスタジオ、チーム内で一体何が起こっているのかを知ろうとします。もちろんそれは意味があることです。誰もが、自分たちの成功はプロジェクト次第だということがわかっていますから。そのプロジェクトに対して自分自身を投資しているわけですから、何が起こっているのか知りたがる。


ここ3年でチームに対するプレゼンテーションを60~70本ほどやっております。日本にいた頃と比べるとかなり数が多いですね。常に「情報を出せ」と求められているので、ほとんど毎週のように何らかの話し合いの場を作っています。こういう機能がある、こういう問題が発生している、新しいメンバーが入ってきた、こういう問題が発生しているので話し合いをしよう……というような感じのプレゼンテーションが多いですね。チームにとってはこれが重要なんです。ただ、時間もかかります。


いよいよゲーム制作という話に入って来たわけですが、6点目です。アメリカでは「アイデアをどんどん売り込まなくてはいけない」。経営陣レベルの人たちなどはアイデアについて話を聞くというより、それによってインスピレーションを得たいと思っているわけですね。ならば、その人たちの注意を引き起こす方向へ持っていかなければいけません。


「HALO」については本当にたくさんのアイデアを持っていたんです。「将来はこういう機能があったら良いんじゃないか」というアイデアをたくさん持っていて、デザイナーなどにアイデアを伝えるために1ページのドキュメントを作っても、なぜか誰も動かない。「何で?こんなに素晴らしいアイデアなのにどうして取り入れてくれないの?」と思いましたが、どうもアメリカの「ステレオタイプ」ってある意味で正しいみたいです。アメリカ人というのは「パートナーになりたい」「アイデアを作るプロセスの一環になりたい」「アイデアのオーナーの1人になりたい」、と考えるんですね。これは、恐らく日本人の開発者で、海外でゲーム開発をやっている人はかなり苦労している部分だと思います。

「自分がディレクターである、これは自分のアイデアである」、「それをチームはただ実践していけば良いのだ」という考えはもはやアメリカでは通用しません。私も、チームメンバーと話をして一緒にアイデアを作り、そのアイデアをチームメンバーの手に委ねるという方法を自身の経験から取っています。つまり「君がこれから生み出すんだから頑張ってね」と言った方が良い結果が出るんです。たとえ出てきたアイデアに100%賛同できなくても、「これは自分のアイデアだ」と思えばそれだけでチームメンバーも頑張る気になれますので。アイデアを押し付けるのではなく、相手にアイデアを自分のものとして考えてもらうようにする方が動機付けになります。これは西洋的な考え方というだけではなく、おそらく世界中のどこでも同じだと思います。日本でもおそらく同じではないかと。日本のゲーム開発においても、もっと「自分たちがアイデアを所有している」という意識をチーム内で広めていく、というのが大事だと思います。


同様に、「意思決定を分散させる」ということも重要です。日本のように秀才主義と言われているような人たちは、ゲームの開発となると独断方式なんですね。


アメリカ人はカウボーイ、いわゆるワイルドウエストで好きなようにやってると思われがちですけど、実のところアメリカのゲーム開発は分散化されている。そしてコミットメントを主体としている形になっています。いわゆる草の根運動をアイデアに対して行う、アイデアを伝えてフィードバックを得る、それをまた伝えてチームにどんどん動機付けを行いやる気を起こさせながら進めていく、というやり方をアメリカはとっています。これは「メタルギア」の場合とかなり違います。「メタルギア」の場合は小島秀夫さんがアイデアを持っていて、それをただ実践していったんですね。統一されたビジョンがあったので、そこの部分は私も合わせる必要がありました。


少なくとも私の周りでは、アメリカの「抑制と均衡」というやり方のように、クリエイティブディレクターの権力をどんどん削ぐというようなことが多く行われています。人々は意志決定の一環として加わりたいと考えているわけですから。たとえばアメリカの場合はクリエイティブディレクターとアートディレクターが同等ですから、一方が他方に対してどうこうしろと指示を出す関係ではありません。しかし、クリエイティブなものであってもアートディレクターの方からどうこうと指示を出すこともあります。たとえ機能面でも、クリエイティブディレクターがいろいろと口出しをすることでゴチャゴチャにしてほしくない、と考えるわけですね。チームサイズも大きいので、チーム全体で意思決定を行っていけるようにすることが必要になっていくわけです。それからデータ。さっきも言いましたが、アメリカではかなりデータが重要視されています。たとえば「ゲームにもっと血を盛り込みたい」というときにはデータが必要なんですね。


これまでにアメリカで勤務してきて学んだことの一つが、「ビジョンと強いリーダーシップ、チームワークのバランスをうまくとる」ということです。これは、私が直面した中でも一番大変なことでした。


まず最初に、私はかなり強いビジョンを持っていたので「このアイデアを取り入れてくれ」と伝えていたけれど、なかなか取り入れてくれなかった。そして「OK、今はアメリカに戻っているんだからやり方を変えよう。チームに任せていこう、その方がやる気を出してくれるから」と考えたんですね。しかし、これが常にうまくいくとは限りません。


新しいアイデアのプロトタイプを使ってテストをする。その中にはビジョンがあって、「HALO」の将来をこういう風にしたい、という本当にすごいことを考えていたんですが、その考え方をチームメンバーに任せても、必ずしも私の頭の中が透けて見えるわけではないので、伝えるのが難しかったんです。まるで無人島にいるようでした。あまりに多くの指示を与えてはいけないし、逆に任せ過ぎてもいけない。それで最終的に影響を受けるのが「機能」の部分です。メンバーへきちんとビジョンを伝えきれていなかったので、機能の部分がその被害を被ったと。あまり指示を与えすぎてはいけない、という配慮が必要でした。


次に、クリエイティブリーダーとして考えなくてはならないのは、「チーム内でビジョンの共有を図る」ということ。つまり、ディレクターと、ストーリーやマーケティング側の考えるニーズは違ったりするわけです。


「プロトタイプが欲しい」、「インテグレーションをうまくしたい」、「この部分の作業をカットしたい」といった中で取り入れなければならないものを選ぶ。場合によっては150ものビジョンを常にアップデートしていかなければならない。最初に頭の中に入っているビジョンを最終的にそのまま実現することは大変難しいんです。


他にアメリカのクリエイティブディレクターの多くが苦労していることとして、「アイデアは頭の中にあるんだけど、実際に作業をしてみるとこんな風になってしまってまとめるのが大変」、そういう事態ですね。日本でも使っていると思うんですが、アメリカでクリエイティブビジョンをうまくまとめていくためのツールをご紹介したいと思います。


◆アメリカでクリエイティブビジョンをうまくまとめる方法

まず1点目は「ビジョン・ステートメント」と呼ばれるもので、クリエイティブディレクターとして何時間、何週間、何ヶ月もかけて推敲を重ねながら作るステートメントです。1行ないしは2行でゲームを表します。これは1例ですが、「ラブプラス」のビジョン・ステートメントを作るとしたらこんな感じになります。「学生時代に戻って、夢のような女の子との恋愛体験をニンテンドーDSでやりましょう」というようなものですね。ディレクターは、毎日毎日このステートメントを見るんです。このビジョン・ステートメントを覚えているのかどうか毎日毎日確認する。これを基にしてポスターを作っていくわけです。


では、「BAYONETTA - ベヨネッタ」のビジョン・ステートメントだったらどうでしょうか。「サラ・ペイリンに似た女の子とデビルメイクライをしよう」というところですね。


それから「Xステートメント」と呼ばれるものもあります。これもビジョン・ステートメントの1種ですが、もっと短い、いわゆるマーケティングメッセージのようなものですね。ゲームをどうやって売り込み、勢いを作っていくのか。たとえばこれは「マーセナリーズ 2: ワールド イン フレームス」ですけれど、「戦場でのグランド・セフト・オート(GTA)」と言われています。このXステートメントを経営陣に売り込み、チームを勇気づけるんですね。「戦場でのGTAを作るんだ!それがこのゲームなんだ!」と言うだけで、みんながワクワクしていくわけです。


DEAD SPACE(デッドスペース)」の場合は「宇宙のバイオハザード」。本当なんです、本当に彼はこう言っていました。経営陣に対して「宇宙のバイオハザードを作りたい」と言って、ゴーサインが出た。


これはウソですが、もしも「killer7」のXステートメントだったら、「私、ラリッてます」みたいな。


ビジョン・ステートメント、Xステートメントがあって、次にくるのが柱、「ピラー」であります。このピラーと呼んでいるものは、ゲームにおける主要な4~6個の要素です。すごく大事な要素なので、私だったらそれぞれのピラーに対してポスターを1枚ずつ作り、チームメンバー全員がそれぞれの要素を理解できるようにします。


実際の例として「インフィニティブレード」を挙げますと、これには4つのピラーが作られました。チームはいつもこの4つのピラーを意識して作業したわけです。「ゲームは全て指1本でプレイできるようにする」「ゲームプレイはすごく短時間」「ユニークなデバイス特有のデザイン」「わかりやすいけれど、マスターしにくいゲームであること」。個人がバラバラに見るんじゃなくて、チーム全体が4つのピラーに対して合意するということが重要です。


続いて「HEAVY RAIN -心の軋むとき-」の場合。こちらも4つのピラーが作られました。たとえばチームが「オープニングをアクションにしたい」と言ったとしたら、デヴィッド・ケージ監督は「NO」と言うでしょう。なぜならば、ピラーの4つ目「ストーリーをプレイする」というところが満たされないからです。


私がアメリカで苦労したことは「慢性的なリスク回避」、一種の強迫観念みたいなものです。ビジョン・ステートメントやピラーが素晴らしいものであっても、「Bioshock(バイオショック)」みたいな名作を作ることは難しい。特に、クライアントの経営陣はリスク回避の強迫観念が強いんです。


Microsoftで次の「HALO」を作ろうというときに「こういうビジョンがあるんだ、聞いてくれ!」と言っても「ビッグダディもリトルシスターもいないよ、ラプチャーもないよ(バイオショックのキャラクターと舞台)」と。もしも「まったく新しいものになります。時代も色のトーンも全部変えます」と言ったとすると、多分アメリカの経営陣は「馬鹿な!」と言うでしょう。「ヒット作とまったく違う」というリスクを冒したくないんです。


けれど、「バイオショック」の新作を見ると「すごいよね、こんなのを作って欲しかったんだ」と言うんです。彼らがもしも「バイオショック2」風のプレゼンを受けていたとしても、前作と違いすぎるということで、リスク回避の強迫観念に駆られて「NO」と言っていたと思います。こういったクリエイティブ上の障害は実際にアメリカでもあります。


◆この3年間のゲーム業界

ここで3年の時間を巻き戻して、アメリカへ戻った時の話に戻ります。この3年間でいろいろなことが変わってきました。


App Store」もなかったし、「Angry Birds」もなかった……


Kinect」もなかったし……


それから、「リトルビッグプラネット」や「バイオショック」といった新しいIP(知的財産)がこの3年間で出てきました。


コール オブ デューティ ワールド・アット・ウォー」はうまくいくかな、いかないよね、と言っていました。でも実際は成功しています。


3年前と変わっていないことはなんでしょう。それは、今でも過去と同じように「ゲームをどうやって作るの?」ということをディスカッションばかりしていることです。


さながら、映画で「カメラの仕組みをどうしたらいいのか」というディスカッションを延々と続けているようなものです。私はもっとクリエイティブな部分に努力を注ぎたいと思っています。


それともう一つ、3年間を振り返って気づいたのは「60ドル(約4700円)で売っている、巨人みたいなタイトル」ですね。「コール オブ デューティ」みたいなもの。


Gears of War」や「アンチャーテッド」……


「HALO」や……


The Elder Scrolls V: Skyrim」。そういったものです。これらはモンスターのように巨大なゲームで、毎回新作が出されるごとに技術も高くなっているし、アニメーションの資産もどんどん増えて豊かになっている。しかも、ブランド自体も大きくなってきてユーザーコミュニティも膨らんでいっていると。その巨人たちが頑張っている陰で、うまくいっていないものもあります。


「コール オブ デューティ」の例を挙げますと、素晴らしい開発エンジンがあり、新しいゲームを毎年作れる環境が整ってるわけです。


これは去年のアメリカで最も売れた10タイトルですが、皆さん共通点は分かりますか?一つは、基本となる技術が存在しているということです。それからもう一つは、既存のフランチャイジーがあるということ(つまり「続編」という意味)。「レッド・デッド・リデンプション」以外はみんなそうです。


つまり、「60ドルの巨人たち」はすごくうまくいっているんだけど、その陰で新しいIPを出そうとすると、「ダビデゴリアテ」みたいになってしまって、なかなか太刀打ちできない。誰も口には出していないけれど、現実にはそうなっています。


Google検索で閉鎖されたスタジオを見つけてみました。すごく優秀なスタジオもあるんだけれど、ここ数年の間でゴリアテとの戦いに負けていったわけです。


チームとしては素晴らしく優秀なものの、戦う相手が巨人すぎた。


EAとかCrytekみたいな素晴らしいスタジオでも人員削減を余儀なくされています。人員削減してコストカットした分を使って自分たちの手で巨人を作ろうとしているのです。


日本ではどうでしょうか。「シャドウ オブ ザ ダムド」とかも、ゲーム自体はリリースされてもうまくいかなかったわけです。「どうしてゴリアテと同じ土俵で戦おうとしているのか」というところをもう一度見直すべきだと思います。

◆日本のゲームが持つ問題点

ここからはトーンを変えます。「シャドウ オブ ザ ダムド」とか「Child of Eden(チャイルド オブ エデン)」、それに「キャサリン」とか……素晴らしい日本のゲームですよね。でも、実際には売れないという問題があります。私もそういう経験をしました。


コナミで働いてから初めてアメリカへ行ったとき、「MGS4」の後光があったので、日本で仕事をしたというだけで「すごいね」と言われたんです。「日本で仕事をしてたんだよね。このアイデアはどう思う?」という風に言われました。しかし、時がたつにつれてアメリカ人は日本のゲームに対してだんだんと興味を持たなくなってきています。最近だと「日本から来たんだよね。君のアイデアは古くなってるんじゃないの?」とまで言われるようになってきました。そのアメリカ人の認識が間違っているわけではないと思います。というのも、最近の日本のゲームには深刻なデザイン上の問題があると思いますから。


実際にアメリカ人から日本のゲームが持つ問題点を指摘されたことが何度かあるので、それを伝えていきたいと思います。私は日本が好きですから、あんなことをしろ、こんなことをしろ、改善しろという風に言いたくはありませんが、私を含めたアメリカ人がどういう印象を持っているのかということを正直に皆さんへ伝えたいのでここで話したいと思います。



一つは、「プレイ体験がかなり荒削りである」ということ。多くのアメリカ人がこれに対して苦情を言います。「テストプレイをしていないのでは」と。


たとえば、「キャサリン」が良い例だと思うんです。スタジオでちゃんとテストプレイをしたけれど、内部の人間がやっただけという話を聞きました。だから難易度が適切でないと思います。「キャサリン」の場合は改善したという話を聞きましたが、普通は一度リリースしたらもう変えられません。


アメリカの場合だと500万ドル(約3億9000万円)かけて研究所を作り、そこでテストプレイをしてると聞きますが、別にもっと安くてもできると思います。たとえば、コナミで私が「メタルギアソリッド」の時にやった例では、週末に外国人を呼んでテストプレイをさせたんです。するといろいろと問題が見つかりました。テストプレイのデータを見ればすぐにここを改善すれば良いなとわかって、多くの意味でゲームを駄目にすることを防げたと思います。


2つ目は、「グローバルスタンダードに合っていない操作方法」。XboxのXボタンは「リロード」という意味なんですが、日本のゲームはそうなっていないので、プレイの仕方を学びなおさなければいけないということがあります。


3つ目は、「ローカライズの問題」。これはもっと改善できると思います。「ロストオデッセイ」や「シャドウ オブ ザ ダムド」などのように、ゲームの内容もローカライズも素晴らしい作品というのはもちろんあるのですが、一方で、日本のゲームはまだまだ改善が必要なものが多くあります。


とにかく、日本国内で英語音声をレコーディングしないでください。ものすごくクオリティが下がりますから。どうせやるんだったらアメリカで、本物のアメリカ人をディレクターに起用してから英語のアフレコをしてください。


それからもう一つ、私の個人的な意見なんですが、日本のゲームは「だんだんとファンタジー性が強くなっていて、そっちの方向に偏ってきている」。90年代の「パラサイト・イヴ」なんかは、アメリカ人に大ウケしたんですね。舞台はニューヨークで、すごく成熟して骨太な感じがしたと。アメリカ人はそういうのが好きだと思います。一方の日本は、もっとファンタジーっぽい方向に偏ってきている。そういうものをアメリカ人はなかなか好きになってくれない、という現実があると思います。多分、舞台をニューヨークに移すと訴えられるとか、実際に都市を使えないとか。モロッコのある都市を使ったんだけど法律に引っかかったという話を聞いたことがありますけど、それはやっぱり良くないと思います。日本のゲームだけがこの部分で取り残されている、という現状があると思います。


ストーリーなんて誰も気にしていない」。これは「バイオショック」のディレクターが言った言葉ですが、私も同意します。日本のゲームにはすごく深い物語がありますけれど、やはりゲーム自体が面白くないと良くないと。ゲームをしたいからそのゲームを買うのであって、ストーリーを聞かせられるためにゲームを買うのではありません。


もう一つは、「物語をどう伝えるか」です。先日中国で、物語をどう伝えるかというデザインの話をしました。映画的な演出とかボイスオーバー、それにテキストなどを使えないかなと中国の会議で言われたんですけれど、私はそれは必要ないと思います。たとえば、「レフト 4 デッド」の場合は、別にカットシーンもないしボイスオーバーもないし、キャラクターが何をしているのかという説明をすることもありません。それで物語をどう伝えているかというと、この場合には全部絵で伝えています。この絵を見たら大体ストーリーが分かりますよね。見知らぬ4人が集まって、とにかく4人が協力しないと生き残れないと。全部絵で伝えています。ゾンビはここにいませんが、ビジネスマンとドライバー、左側はジョギングをしているような女性、もう1人は違いますが、4人はもともと友達じゃないということは分かるし、でも4人は協力して戦わなくちゃいけないというのも分かる。絵で十分です。


もう一つの点。これは絶対に必要だと思いますが、「プレイヤーと主人公の気持ちを合わせる」ということです。これは日本のゲームだけじゃなく、全てのゲームメーカーが苦しんでいるところでもあります。たとえば、「ディアブロ2」はうまくいかなかった例です。ヒーローがこの敵を倒さなくてはいけないんですが、プレイをしていても別にこの敵を殺そう、という気持ちにならないんですね。これを殺すとポイントがもらえるというだけで、これを憎む気持ちがまったく生まれないのが問題。たとえばひどいセリフを吐くとか、ヒーローの母親を殺すとか、とにかく「こいつはひどい存在だ」と思わせてくれるところがない。


これも日本だけではなくて他の国のゲームでも見つかることなんですが、30~40時間もモンスターを殺すために一生懸命頑張らなくちゃいけないというゲームの場合には、モンスターについてのストーリーがあるべきだということです。


それからもう一つ。「メタルギアソリッド4」で気づいたことなんですが、「すごく簡単な操作であっても重要だ」ということです。


プレイヤーがコントローラーを手にするとき、それは何かを操作したいから手にするわけで、カットシーンを長くするとこの人みたいに寝てしまいます。


「MGS4」のあと、多くの人たちから言われてビックリしたことがありました。ゲームの最後の方でスネークがマイクロ波のところに来る場面があります。「すごく楽しかった場面はここでした」と、プレイしてくれた人たちが言うんですね。多分4、50回聞いたコメントだと思います。なぜビックリしたかというと、ここの部分を作っていたときに「何でこんなに三角ボタンをパタパタと叩くのが大事なのか」と私自身が思っていたからです。「もっと複雑な操作がデザインできなかったらやらないな」と思っていたんですが、私の考えはまったく間違っていました。この三角ボタンを叩く場面がなかったら、「ここが気に入った」と教えてくれた人は皆無だったでしょう。こんな簡単な操作であっても、みんながすごく気に入ってくれたんです。


9点目ですけれど、「プレイヤーを励ましてモチベーションを保ってもらう」ということですね。能力テストのようなゲームや、スキルレベルが大事という考え方は間違っていると思います。実際、「コール オブ デューティ」が「HALO」を上回ったのはここのところなんです。「HALO」の場合には複数のプレイヤーがいます。チームが2つあって片方が勝つ、片方が負ける。片方が良い気分になれば、もう片方はとんでもなく悪い気分になる、そういう関係でした。しかし「コール オブ デューティ」の場合は、信じられないくらいに下手くそなプレイヤーでも、すごく良い気分になれるんです。たとえば死ぬとする。5回死んだら、5回死ぬごとに「ああよかった、これでポイントを稼げる」という風に考えることもできますし、何なら隠れるだけでも良いんです。これは全て心理上の問題ですから。


デヴィット・ケージという「HEAVY RAIN」の監督がいるんですが、彼は「以前のような『ゲームオーバー』という考え方は捨てて、『ゲームは続く』という考え方をしなければいけない」と言っています。新しい時代なので新しい言葉が必要だと。その通りだと思います。これはストレスをため込みやすい普通のゲームじゃない、良い気分になるためにやっているんだということで、まさにその通りだと思います。私自身はゲームのメカニックとかを通じて、新しい世界に人々を連れて行くということを楽しみにしているんですが、純粋なゲームということであれば、たとえばチェスとか「バーチャファイター」とか、そんなものをやればいいんじゃないでしょうか。それとは違う、勝ち負けに関わりのない新しい世界に行くということもゲームの魅力の一つです。


最後です。「プレイヤーの時間を考慮する」、ということが必要になります。今、この部屋に集まっていただいてますけれど、日本のゲームはもっとプレイ時間というものを考えるべきです。これはよく聞く苦情の中の一つで、「日本のゲームはやりたくない、時間がないから。」と言うんですね。つまり、日本のゲームは映画のようにいろいろなストーリーがあるので、時間がかかるわけです。「Giant Bomb」というサイトに出た記事があるんですが、「『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』でプレイヤーが全てのクエスト、全ての項目を終わらせたとする。すると、773時間もかかるんだ」と。アメリカ人がこういう数字を見たら、おそらく「そんなの嫌だ」「触りたくもない」と考えるでしょう。


私は「モンスターハンター」が好きなのですが、これは冒険を45分で終わらせることができるからです。45分たっても何も得られないんですけど。じゃあ、45分を使ってどうするのかということでして。このゲームをアメリカの友人にやってもらったらPSPを投げつけてしまうくらいストレスを感じていました。こういったことがあるので、アメリカ人は「モンスターハンター」を好きじゃないんですね。


◆ガラパゴス症候群

日本の通信的な話をするならば、「ガラパゴス症候群」です。つまり、ゲームだけじゃなく一般的に言って日本はどうも内向きになりつつあると思います。国際市場はあまりにも競争が増えてきているのに、内向きになってきています。


これらのゲームの共通項は何でしょうか?全て日本のもの、フランチャイザーです。ゲームのIPというだけじゃなく、エンターテイメントのIPという、大変優れたフランチャイザー。でも、コンソール(ゲームをする機械)の時代ということを考えるとどうでしょうか?「Gears of War」は3つ、「アサシン クリード」も3つ、「コール オブ デューティ」は7つと、Xbox360やPS3など多様な機種に向けて出しています。しかし、先ほどの日本のIPは基本的に一つの機種にしか出していません。ホームコンソール(家庭用ゲーム機)向けに一つです。アメリカやヨーロッパでは、こういったフランチャイズがどんどん出てきているのです。


こちらのゲームの中には、PSPやDSといったポータブルゲーム機に出しているものもありますが、ホームコンソール向けのタイトルを出しているわけではないと思います。IPは大変優れているのに、そんなにあちこちで使えないということから忘れられつつあるんですね。これは大変残念なことだと思います。


「運命の日」ということで考えると、マイナスの面がたくさんあるとはいえ、Appleがすべてを凌駕する世界が来てもおかしくはありません。明日になればすべてがひっくり返ると。たとえば「iPhone 5を使えばワイヤレスで、テレビとゲームコントローラーを繋ぐことができますよ」と言ってしまえば、Appleがすべてのコンソールをひっくり返し、Xbox360もプレイステーション3も、今あるものすべてがAppleに凌駕されてしまいます。


こういった「運命の日」という懸念もあるわけですが、明るい兆しも見え始めていると思います。全てのレベルでゴリアテと競わなければいけないということはありません。「クリエイティビティがあるゲーム」という意味で考えていくと、なにも「60ドル」レベルである必要はないです。Xbox LIVE、PSN、Steam、iOS、Android、他にもこの後に出てくる様々なデバイス、そういったものが明るい兆しとなっています。小さなチームからいろいろと新しいゲームが出てきていますので、それを一部紹介したいと思います。


◆新世代のクリエイターたち

ご存知のものもあるかと思いますが、「新しいゲームのクリエイティビティ」の黄金時代が到来しつつあるというのが現状です。


これは「LIMBO」ですね。プラットフォーマーが無くなっている「スーパーミートボーイ」あるいは「キャッスルクラッシャーズ」といった昔のアーケードゲームも現在楽しまれています。「From Dust」はどうでしょうか。エリックシャイーという「アウターワールド」を手がけた方がディレクターでした。Xbox LIVEやPSNだけでなく、たとえばPC上でも「Minecraft」というゲームを、何百万という人がプレイしています。


SpyParty」、これはクリス・ヘッカーが今年のGDCでも話をしていますね。それから「Superbrothers: Sword & Sworcery EP」。これもトロントの小さなチームが作ったとてもクリエイティブなゲームですけれど、大変成功を収めています。


これはアメリカだけの話ではありません。世界規模で見られる現象です。トロントだけではなく、スウェーデンでもどこでも、こうした小さなチームがゲームを作り始めています。


今年のGDCで岩田氏がある質問を提示しました。「スペシャリストはたくさんいるけれど、ジェネラリスト(万能選手)が少ないんだ」と。その上で、「次世代のゲームクリエイターはどこから来るのだろうか?」という質問も提示したんですね。私は彼を本当に好きなんです。でも私はこう言いたい。「先ほどご紹介したようなもの、ご覧になったことはありますか?次世代のゲームってこういうところにあるんですよ。22~23歳、せいぜい27歳くらいまでの若い人たちで、キャリアなど持っていない若者が、これから始めるんだよ」と。


◆日本の有名なゲームクリエイターは最新のゲームをやっていない

そこで思い出したのが昔のファミコンです。小さなチームで、新しいIPで、駆動型の取り組みをやっていた時代です。日本のゲーム業界もここのところに集約できると思います。ファミコンで成功した人たち、PS1で成功した人たちが今いろいろと責任がある地位にいますが、もはや年をとっているわけですね。人生にも疲れてる、以前のような情熱はもうない。そういう人たちがいまだに、若い人たちがクリエイティブなゲームやリスキーなゲームを手掛けることを阻止しているんです。


日本の有名なゲームクリエイターの人たちに、ユージュアル・サスペクツのように並んでもらってから伺いたいです。「Portal 2(ポータル 2)」についてはどう思うのか?「Mass Effect」は?「Terraria」は?「Amnesia: The Dark Descent」は?こういったゲームを実際にプレイしたことはあるんですか?と聞きたいです。もしかしたら私の勘違いかもしれませんが、私の考えではおそらく、昔からいるゲームクリエイターでいまだに権力を持っている人たちは最新のゲームをやってないと思います。だから、最新のゲームデザインについて理解できない。これは本当に深刻な問題です。じゃあ、実際のところ、次世代の飯野賢治さんは一体どこから現れるんでしょうか。


こちらはクリストファー・ノーランです。


スティーヴン・スピルバーグです。彼らは映画界の重鎮ですが、彼らが映画を見ることを止めたらどうなるのでしょうか?


次世代の斎藤由多加さんはどこから来るのか。若くて情熱を持った人たちは絶対いるはずなんです。しかし、「ICO」とか「パラッパラッパー」を手がけたような人たちを、なかなか見ることはありません。


◆革新のための新しい道筋

締めくくりとしまして、「革新のための新しい道筋」が必要だと。ダビデ対ゴリアテということではなく、新しい道筋が必要なんだというアイデアをもって、この講演を締めくくらせていただきたいと思います。たとえば、インディーズゲームの人たちが昔のことを考えずに、どんどん安くなってきている3Dを取り入れたら「コール オブ デューティ」などではなく、インディーズから革新的なFPSが今後出てくるはずです。インディーズだからこそ取り入れられるリスクというものがありますから。


インディーズゲームが好きなんだったら、インディーズで働けばいいじゃないかと思うかもしれません。これについて長々と話はしませんが、私はMicrosoftでは「もっとグローバルなコミュニティと話がしたい」「もっとリスクを取りたい」と考えていました。これまでに務めた経験から、Microsoftはあまりリスクを取らないとわかっています。でも、自分自身はもっとリスクを取りたいと思いましたので、4週間前にMicrosoftを退社しまして、「Camouflaj」という新しい会社を設立しました。この会社から将来ゲームがリリースされたら是非買っていただきたいです。でなければ、私も安眠を得ることができませんから。


4か月前、私は友人の家に行きました。友人はJake Kazdal(ジェイク・カズダル)という、「Skulls of the Shogun!」を作った人で、彼が会社を辞めて友人とゲームを作ると言ったとき、私は本当にうらやましかったんですね。同じようなことをしてみたいと思ったので、このCamouflajを立ち上げたわけです。


先週、中国に行きました。革新や西洋のゲームデザインなど、そこでも今回と似た話をしたんですが、「日本のゲームやアメリカのゲームが好き」という情熱を持った人たちが多いんです。いろいろとグローバルな話をしたいと考える人たちが多かった。既に流通チャンネルが開かれている「コール オブ デューティ」や「Gears of War」、「HALO」の話はもう十分です。もっと世界中の、あるいは日本のクリエイターたちの声を広めていきたいと思います。


というわけで、私の方は以上となります。ご清聴ありがとうございました。

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