取材

ムービーで実感する「日本アニメの伝説、金田伊功氏がゲームに残した物」完全保存版


「日本のアニメ界のモーション表現に、「金田パース」と呼ばれる独自の手法を築き、一昨年57歳で他界されたスターアニメーター故金田伊功氏。多くのアニメ作家に強い影響を与えた氏が、そのフィールドをゲームに移して実現したものは何だったのか? 実際に氏と作品を作っていたゲームクリエイターにより、ゲームは氏から何を学んだのか?ゲームという制約の中で氏にどのように動いてもらったのか?などを中心に、アニメ業界とゲーム業界の「モーション」の差と演出の違いや、試行錯誤から確立された一流アニメーターとの協業手法を紹介します」ということで、CEDEC2011にて、遠藤 雅伸氏と時田 貴司氏(グラフィックデザイナーとして「FINAL FANTASY」「半熟英雄」「魔界塔士Sa・Ga」を制作、ゲームデザイナーとして「FINAL FANTASY 」「半熟英雄~ああ、世界よ半熟なれ~」を制作)のセッションとして行われた「日本アニメの伝説、金田伊功氏がゲームに残した物」、その内容をムービー付きの完全保存版でお送りします。

スクウェア・エニックス モバイル事業部 シニア・マネージャー 時田貴司(以下、時田):
スクウェア・エニックスのモバイル事業でシニア・マネージャーをやっております時田貴司です。よろしくお願いします。

CEDEC運営委員 株式会社モバイル&ゲームスタジオ取締役会長 遠藤雅伸(以下、遠藤):
CEDEC運営委員でゲームデザインを担当しております遠藤雅伸です。よろしくお願いします。

時田:
遠藤さんの方からお声掛けをいただいて、金田さんがスクウェア・エニックスでしたゲームのお仕事をまとめて、紹介できないかとお声かけをいただいて早二年になるのですが、なかなかこういう機会がもてないまま、ここまで来てしまったことを僕らも非常に心残りに思っていましたので、こういう機会をいただいて感謝しています。今日はみなさんと一緒に金田さんのゲームでのお仕事を振り返りつつ、またいろんな物作りに対しての姿勢みたいなものを共感できるかなと思っています。今日はよろしくお願いします。


時田:
ではさっそく。

遠藤:
はい。


時田:
もちろん、みなさん金田さんをご存じだと思うんですが、いまさら振り返ることもないだろうと思いつつも、簡単に僕なりにまとめさせていただきました。金田をご存じの方は手を上げていただけますか?……ああ、さすがみなさん、ファンでいらっしゃる。世代的にも僕らと同じぐらいの方がいらっしゃると思いますが。僕が金田さんという名前を作品として初めて知ったのは……。遠藤さんはどれくらいの作品からですか?


遠藤:
僕は、そうですね……ガイキングとかその辺も知っていますが、ナウシカでメーヴェが飛ぶところとか、そういうところですね。あの頃が気にし始める最初のころかもしれないですね。

時田:
このころはアニメージュとかが創刊した感じで、アニメブームがあって、それまではキャラクターデザインとか作画監督さんというメインのスタッフさんのお名前というのは著名だったのですが、いちアニメーターの方で、ものすごく個性的で、しかも絵が気になって名前を覚えていた人というのは金田さんが最初だったんじゃないかなと思いますけど。僕が小学校高学年か、中学一年生の頃とか、そのくらいだと思うんですけど「なんか独特な人がいるなあ」という。考えて、さかのぼってみると「そういえば、ゲッターロボでもそんなシーンがあったな」みたいな感じで、それが金田さんだったという。


時田:
まさにその時は同じゲーム業界で、師匠と仕事をするとは夢にも思わなかったんですけど、アニメブームの中、オープニングであるとか劇場であるとか、本当にアニメーションの花形の部分を金田さんは一人で楽しそうに伸び伸びとやっていたのがすごく、おもしろくていいですね。オリジナルアニメの「BIRTH」という作品も担当されていました。

その後、ジブリにいってナウシカ、ラピュタとトトロ等、非常に金田さんらしいシーンですよね、生命力に満ちあふれていてアクションプラス人間らしさという。僕が非常に好きなのはラピュタの殴り合うシーンですね。あのオジサンたちの、ニヤッとしながら楽しそうに殴り合うところが非常に楽しそうで、ああいう殴り合いならいつでもしたいなという感じで、いつも見ているんですけど。


時田:
旧スクウェアの方に入社されたのは98年ですね。ホノルルで、みなさんご存じだと思うんですけど、フルCG映画の「ファイナルファンタジー」のアニメーションスーパーアドバイザー、原画、レイアウトとして参加されたのがきっかけですね。そもそも「パラサイト・イヴ」というゲームを同じスタジオで作っていて、そのときは直接の関わりはなかったんですけど「どうやら同じひとつ屋根の下に金田さんがいるらしいぞ」というようなウワサになっていて、いつかお仕事できる機会があるかもなという淡い期待を抱いていたんですが、それが数年後にやってくるというわけですね。


そこから遠く離れてから、Finalfantasy11を皮切りにいろんなゲームプロジェクトに参加されるようになったので、今回は具体的にどんなお仕事をされたのかということを代表的な映像などと合わせてご紹介できればと思います。

亡くなったのは2009年7月21日で、あれから丸二年とちょっとですね。その間、早いようで短いようで……亡くなる一週間くらい前に、たまたま半熟英雄を作ったスタッフが辞めると言うことで、歓送会みたいな形で、ほんの一週間くらい前に飲んで、そのときに金田さんと初めてアニメ業界に入ったときの話だとか、どうして金田さんがアニメーターになったのかみたいな話、いろいろみなさんが興味あるようなことを僕も初めて聞けたので、今思えば非常に運命づけられていたというか、そういう機会を得られたのはよかったかなあと思っています。そういうわけで、今日はスクウェア・エニックスでの金田さんのゲームのお仕事をみなさんにご紹介したいと思います。よろしくお願いします。

2002年ですね、CG映画のあと東京に戻られてきて、FinalFantasy11というMMO、オンラインゲームですね。このキャラクターデモシーンでモーションキャプチャのアニメーションディレクターというお仕事をされていました。このモーションキャプチャの環境が、もろもろのCGスタジオで作っていたランサーというキャプチャシステムで、それを使ったキャラクターの紹介シーンというもののアニメーションのディレクションですね。イメージを作ってキャプチャのディレクションをして、最終的にカメラデータであるとか、モーションデータを修正して、ぜんぶ手付けで作ったデータもあったりします。


遠藤:
自分でされていたというね。

時田:
そうですね、いろいろ試行錯誤をされていたみたいですね。今回見ていただく動画とかは、非常に金田さんらしいカメラだったり、動きのメリハリが効いたものです。ガルカという非常にごついキャラクターがいますが、これを見ると「サイボーグ009」のオープニングでの005とかを思い出すんですけれども、それではその動画の方をぜひ、ご覧下さい。

※この部分で放映された映像については、未公開の資料と合わせて、CEDEC運営委員会が完全アーカイブ化を目指し交渉中です。


というような。いかがでしたか?

遠藤:
何とも言えない重量感ですね。

時田:
これは10年近く前の映像なんですけど、やはりアニメーションの「生きる、命を与える」という語源の通り、非常に生き生きとしているところが10年前という古さを感じさせませんね。モデルとテクスチャとか、背景とかを見ると非常に時代を感じさせるんですけど、動き自体はまだCGはここまで来ていないんじゃないかというところまで表現されているのかなと個人的には思っています。

続いては、これは僕自身がプロデューサーをやった「半熟シリーズ」というギャグのシミュレーションRPGなんですけども、これを久しぶりにPS2で作ろうというときに、ちょうど金田さんがFF11を終えて、どうやら金田さんとお仕事が一緒にできる可能性があるんじゃないかと。そうであれば、「半熟英雄」というタイトルがもともとスーパーファミコンで出てから10年くらいシリーズが作れなかったので、フル3Dにするよりは、金田さんを旗印に2Dと3Dというコンセプトにすれば、おもしろいんじゃないかと。

当時、PS2から3Dで非常にコストが掛かり始めていたのと同時に、僕らにとっては2Dの良さというのがあって、非常に悩ましい時期だったときに、たまたま金田さんと一緒にお仕事ができるということで、「だったらコストカットすらコンセプトにしてしまおう」と、敵を3Dにして2Dのキャラクターが頑張る、ムービーも2Dと3Dを合成してアニメのいいところ、3Dのいいところをあちこちに散りばめてみようというコンセプトの企画ですね。


金田さんはムービーのディレクションということで、2Dパートは別のプロダクションにお願いして、3DパートはD3Dという制作プロダクションで、パートによって切り分けたりまたは合成したりという、非常に時間を掛けてハイブリッドなムービーを作りました。その中で、オープニングやエンディングは絵コンテ、レイアウト、原画を担当していただきました。その他ですと、エッグモンスターという卵から出てくるモンスターがいるのですが、彼らのリアルタイムの2Dアニメーションも金田さんが原画を担当したほか、一般公募をしたんですが、その選考やアイデアを出したり、社内のスタジオでアフレコをしたのですが、そのアフレコに来ていただいて、そこで一緒にみんなとコーラスをしたりとか、そういうことを家内制手工業みたいな感じで、一緒に楽しんでやっていただきました。

では具体的にご紹介していきましょう。これはストーリーボードですね。ムービーだけではなく、ゲームの初期のプリプロダクションのときに、どういうゲームにしようかという簡単にお話を説明しながら、金田さんなりのイメージを描いていただいたものですね。この辺がムービーの元になっています。


遠藤:
構図自体が金田さんらしいですね。

時田:
そうですね。この左のイラスト、斜めに地平が走っているところがすごくスケール感があって、これはちょうど動画もご覧いただけると思いますので、お楽しみ下さい。これは絵コンテですね、さっきのシーンがきちんと絵コンテになっています。絵コンテはひとりで描いていただいていて、全部で40ページくらいはあります。


遠藤:
こういうものはなかなか表には出てこないですね。

時田:
そうですね。攻略本とかで少し紹介させてもらったくらいです。順を追ってストーリーボード、絵コンテ、ムービーが見れるということは、こういう機会がないとないので、ぜひみなさんこれを体感していただければと思います。代表的なシーンをいくつか抜き出してみました。これは3Dの敵の軍艦の中に2Dのエッグモンスターがつっこんでいくシーンですね。バックが3Dで手前が2Dなんですけれども、そこの指示ですね。金田さんらしい特異なエフェクトが入っていますけど、ここはやっぱりぜひ2Dという形でお願いしました。


このシーンは右側が2Dのキャラクターで左側が3DのCGのキャラクターで、この二人が「あしたのジョー」のクロスカウンターのように殴り合うというシーンをお願いしました。


ここはコンテではないんですけれど、レイヤーと原画ですね。3DCGの参考原案というものを描いていただいて、これを元にモデリングをして、アニメーション作りをしていった形ですね。


完成のシーンがこんな感じです。ぱっと見は2Dっぽいですけど、よく見るとワイヤーフレームの3DCGですね。これはわざわざワイヤーフレームをテクスチャとして貼り付けたりしているんです。


ではこのオープニング動画をご覧下さい。

半熟英雄対3D OP - YouTube


時田:
というような。

遠藤:
すごいですね、やはりこれは。

時田:
いや、我ながら何でもかんでもぶち込んだなと思いますね。久しぶりに見たのですがもう一回見たくなりました、シーンごとに金田さんが作ったものがいろんな2D3Dの人たちと一緒になって……。これ、最初はもっと2Dの線をもっと現実的になじませようという感じだったんですよ。「いや、はっきり戦っているんだから別々でいいじゃない。どんなことよりも『らしさ』を出そう」ということで、勢いだけで作っていたところが非常に懐かしいですね。

今は3DCG自体がもう、技術的にはものすごいことができるんですけれど、分かりやすいおもしろさという意味ではこれくらい2Dを使ったり、3Dと戦ったりということを生かせたのは金田さんと一緒に仕事ができて本当によかったなあと思います。

続いてですが、実機のリアルタイム。これは2D、いわゆるスーパーファミコンとかのドット絵だったのですが、かなりVRAM、メモリが増えまして、アニメーションのパターンをどこまでできるかということをやってみようと言うことで、金田さんに原画を描いていただきました。企画の方では攻撃が三種類で、勝利敗北のシーケンスの仕様も確定して、金田さんにお願いして原画を描いていただいて、タイムシートを作成していただきます。ここまでは普通のアニメーションの流れなんですけれど、ここから独自のツールを作って、それをデータ化していくわけですが、それを細かく説明させていただきます。


これは金田さんに描いていただいた原画を、コンピューターのVRAMというメモリの中にきっちりと収めなければいけないのですが、隙間があると非常にもったいないので、細かく切り分けて、色をつけて整理をしている形ですね。真ん中の方にエッグマンがいるんですが、胴体がないのは卵のところは使い回しをしましょうみたいな感じですね。当時としてはこのキックのポーズなんか、ここまでデフォルメを利かせてサイズもパターンによって全然違うようなのは、かなり贅沢に使った仕様だったなあと思います。


これが実際のテクスチャーですね。先ほどのやつをさらに実機用に整理した形ですね。かなりバラバラになっているのは、この後に紹介するアニメーションツールで、アニメーションを付けつつパターンを削ったり、使い回せる部分は使い回したりなど工夫した結果、このようなプラモデルの組立図みたいな形になっています。このツールも単純に2Dのアニメーションを再生するだけではなく、2Dのパターンを変形させるというような機能も持っているんですね。頂点をいじって、ひとつのポリゴンを変形させるところにテクスチャーを貼り付けるというようなツールだったので、慣れてくると金田さんはそれを見て「だったらここは手描きは一枚で変形させてしまってもいいですよね」というようなことを現場のCGのスタッフと一緒にやっていました。


遠藤:
ちょうどその頃、その変形ツール……ですかね、ポリゴンだけではなくて変形オブジェクトみたいな、四角に変形させるものとかちょうど出てきたばかりの頃だったので、手法としては非常に旬だったやり方でしたよね。

時田:
PC上のツールでその軸確認をできるようなものを取って、トライアンドエラーをして、最終的にPS3で実機確認したというのが作業の流れですね。


時田:
これは実際のPC上のツールの画面で、メインプログラマーが作った開発ツールなんですけれどなかなか若いプログラマーががんばってよく作ってくれました。真ん中の下の方がアニメーションパターンが出ているので、そこを見ていただくと、こうやって動かしていたんですね。この四角で先ほどのテクスチャデータのところに止まると思いますので「このパーツをここにおいて、こう回転させて」とパターンを作っていくということが分かるかと思います。


現場のスタッフなんかも気を利かして、間になめらかに動きを入れたりするんですけれど、金田さんは「いやいや、メリハリを利かしてくれ」ということを前提にしていたので、あえて中割は入れずにということを何回もやりとりされていましたね。


遠藤:
その辺の味というのが金田さんのテイストだよね。

時田:
どうしてもCGは均等にタイミングを置きがちじゃないですか、そこを緩急をつけるというのが、リミテッドアニメの中でもメリハリをさらにつけようという金田さんの蓄積されているテクニックなのかなあと思いますね。ではこの実験の動画がありますので、ご覧下さい。

※この部分で放映された映像については、未公開の資料と合わせて、CEDEC運営委員会が完全アーカイブ化を目指し交渉中です。

時田:
……というような動画で、後半には半熟英雄の続編の4の画像も入っているんですけれど、金田さんにわざわざそこにも参加していただいて、その後は3Dで培った画面全体のレイアウトをどう使うかということをエフェクト込みで自由にやっていただいて、メリハリがすごく利いたおもしろいシーンがたくさんできたなあという印象ですね。

遠藤:
何度も言うけど、エフェクトが曲線ではないですよね。

時田:
そうですね。

遠藤:
直線ですよね。あそこらへんが金田さんさんらしい。

時田:
曲線と直線との微妙なミックス具合というのが、いまだに見ても何でそうなるのか、意味は分からないんですが、動くと気持ちがいいというのはすごいですよね。

遠藤:
単体の絵だけ見るとなんでそうなるのかよく分からないですが、動かしてみると変に迫力があるというのが魅力ですよね。

時田:
それは、ゲームは本当に分業で作ることが多いので、エフェクトとかは別にアーティクルで非常に理詰めで作るんですが、やはり理屈だけでは到達できない気持ちの良さみたいなところというのが金田さんのエフェクトの唯一無二なところかなと思います。

続いては2005年の作品になります。「武蔵伝2」というプレイステーション2のアクションRPGですね。これは僕自身がプロデュースをした作品なんですけれど、金田さんにはオープニングムービーのコンテをお願いしました。アニメーション制作はGAINAXで、金田さんのフォロワーとしても有名なグレンラガンの今石さんにお願いをして、新旧金田アクションコラボレーションみたいな感じで実現していただきました。


これは絵コンテのシーンと実際にできあがったシーンとの比較ということで載せています。右側の真ん中くらいのシーンが完成になると左のものになるという感じですね。絵コンテ自体は非常に金田さんらしくご自由にやっていただいたんですけれど、そこから先に今石さんにもさらにご自由にやっていただいたので、さらにエッジの効いた、シャープさが増したような金田アクションというような印象になりました。


これは主人公の武蔵と敵の小次郎のシーンですね。こういうカット割りとちょっと劇画タッチなアクションみたいなものを金田さんはコンテの段階から指示されていて、そこからさらにカラーリングであるとか、非常にシャープで今風、少しキッチュなノリでもあるんですけれど、そういうノリをGAINAXの今石さんに上乗せしていただいて非常におもしろいシーンになったという印象ですね。


そして2005年の同年ですね。これはエッグモンスターヒーローという半熟シリーズの任天堂DSの作品なんですが、これは半熟シリーズをスーパーファミコンからPSに移して、わりとプレイヤーには20~30代が多かったので、もう少し低年齢層を開拓しようということでDSで作ったタイトルですね。これはPS2で作ったエッグモンスターのデータなどを流用しつつRPGにしました。


ここではエッグモンスターアニメーションのおかげでエンディングコミックという少し変わったことを担当させていただきました。


これはDSの画面を縦に持って本に見立てて、エンディングで今まで遊んだゲームをマンガを読むように振り返ってもらったらおもしろいかなと思いまして。そこに金田さんのアニメーションの止め絵、コマ割りみたいなものでクレジットを紹介できるといんじゃないかという形で、金田さんにDSを使って見開きのマンガを描いていただきました。これはおそらくゲーム以外では初公開ですね。

遠藤:
本邦初公開。子どもとかが買っているような感じですね。

時田:
はい、まさにコロコロとかで連載してそうな感じなんです。「連載マンガのつもりでお願いします」とお願いしてですね。左が原画で、右がそれをスキャンしたものに着色したデータです。右隣は解像度が非常に低いのですが、それでもいい感じのデフォルメさとお茶目な感じが出ているかなと思います。


これは何枚かご用意しているので、生でご覧下さい。これはストーリーのダイジェストですね。主人公が旅立って、ヒロインと出会ってみたいなところを、回顧録的に描いてあります。


これは見開きで派手なシーンをお願いしたところですね。ヒロインがダイナマイトで自爆して一番強い敵のボスを倒すみたいなシーンですね。


遠藤:
金田さんはマンガを描くのもお得意なんですか?

時田:
そうですね。僕もこういうちゃんとしたコマ割りのものを見せていただくのは初めてだったんですが、もともと漫画家志望で望月三起也さんがすごく好きだったらしいです。望月三起也さんをご存じの方いらっしゃいますか?


遠藤:
望月三起也さん、「ワイルド7」のですね。

時田:
いわれてみると確かに女性のおしりの大きさとか、男性の銃の構え方とか確かにワイルド7のグラマラスな印象が現れていましたね。こういうマンガもぜひ、もっとリアルなタッチをぜひお願いできればよかったなあと今になって思いますね。これに色をつけたデータをご覧下さい。このコマの中にはスタッフの名前が入って、全部で30ページくらいですね。ちょっとした読み切りを描いてもらうような形で描いていただきました。


遠藤:
おもしろいですね。絵の中にフォントだけがDSっぽいというのは(笑)

時田:
そこだけゲームっぽい感じにしています。ゲームを作っていて一番おもしろいのは、マンガだったりアニメだったりゲームだったりの色々なノウハウを取り込めるところかなと思います。

遠藤:
それはやはりインタラクティブなコンテンツ、ゲームならではのことができるという。

時田:
だいたい5年周期くらいに新しいプラットフォームが出たり、大きな時代の変化が10年ごとくらいにある中で、姿を変え形を変え、いろんな潮流が生まれてくるところがゲームのおもしろいところかなと思います。

遠藤:
それでいうと、これはハイレゾリューション(高解像度)ではない方向で、こういうことをやっているわけじゃないですか。そういうところに逆にうまみが出てくるというか、おもしろみがあるというか。

時田:
マンガのアナログの良さと、ドット絵の良さみたいなもの。それとDSの二画面だからこそできたみたいなこととか、ことあるごとにそういう可能性がいろいろ出てくるのではないかなと思います。

これは2005年ですね、この頃は立て続けに半熟シリーズをやっていただいていた頃ですね。これは先ほども少し紹介しました「対3D」の続編ですね。ここでは企画の序盤から参加していただいたので、全体的なイメージボードとムービーディレクター、絵コンテ、レイアウト、原画をお願いして、それとエッグモンスターデザインとアニメーションをお願いしました。


イメージボードですね。この「7人の半熟ヒーロー」というサブタイトルなんですが、宇宙に存在する七つの惑星のヒーローたちを集めて、最終的には地球に来て軍と戦うという話です。「核ミサイルとくだらないモンスターたちが戦う」というテーマだったので、そこをイメージして、地球防衛軍対モンスターみたいなイメージを描いていただきました。これは写真を取られてきて、そことうまく合成しつつイメージを作っていっていて、「おお、金田さんは写真を加工して使うのか」と。


遠藤:
ご自分で撮りに行かれたんですか?

時田:
そうですね。エンディングのお祭りのシーンのなんかも、自分で撮られた写真を加工して使っていました。今はゲームに限らず、実際の画像をモロに使うというのはなかなか難しいんですね。このときもうちの方も戦って「では撮ってきた写真を絵にすればいいのか」みたいなところは、結構侃々諤々としてやったところはあります。大変でしたけれどすごく面白かったところですね。この作品はエッグモンスターのデザインも、エッグモンスターがエッグマンだけだったのが7種類、メカだったり、メガネだったり、ピンクだったりと。鉄人だったり、モモレンジャーだったり(笑)


遠藤:
好きそうな感じですよね(笑)

時田:
デフォルメされているのにすごくちゃんとセクシーだというのがさすが金田さんだなあと思いました。おしりがポイントですね。

遠藤:
おしりがピンク色ですね。

時田:
おしりが見えると書いてあるんですけどね。

遠藤:
ここですね。おしりが見えると書いてある。

時田:
クイーンクイーンと泣くらしいですよ(笑)


遠藤:
こういう設定を書いていたりする人がアニメの人になったりしますよね。

時田:
そうですね。画の中にちょっとおもしろいアイデアが入っていたりとか。この辺はやはり、いろいろ楽に描きながら考えていくことの良さなのかなと思いますね。これはエンディングムービーのイメージボードですね。


これはささきいさおさんにロックを歌っていただいて、メインキャラクターたちがロックバンドを組んで演奏するシーンというようなものです。これはタツノコプロさんにお願いして作ったムービーです。

半熟英雄4 8-3-5 - YouTube


次の作品です。2006年、「聖剣伝説4」というPS2のアクションRPGです。こちらはフェイシャルセッティングという、また全然違うお仕事をお願いしました。


遠藤:
こういう仕事をされていたというのは、今回初めて紹介されるんじゃないでしょうか?

時田:
そうですね。あまり知られていないと思うので。逆にこのお仕事を知っていたという方はいらっしゃいますか?さすがにいないですかね。

遠藤:
あまりたぶんいないと思いますね。

時田:
なのでぜひ、ここはご覧いただきたいと思うんですけども。シネマティクスのキャラクター表情設定と書いてありますね。シネマティクスというのはいわゆる3DのCGのリアルタイムを使った演出シーンですね。キャラクターデザインの金田さんがそれぞれのキャラクター設定を見て「こいつはこういうやつだがら、こういう表情だろう」ということを描いていただいて、CGのモデラーがそれをもとにモデリングをしつつ、いわゆる骨付けだったり、どこをどう動かすかというような、「表情をもとにアニメーション作りをするモデルとそのセッティングをする」ということですね。そういう意味では「フェイシャルセッティングのためのキャラクター設定」というのが正式名称であると思います。それではその画像をご覧下さい。

これはメインキャラクターですが、メインキャラクターだけでもこれだけあります。実際はNPCも含めて総勢20名くらいのキャラクターを、これの倍以上の表情を描いていただきました。


遠藤:
これだけの種類のものを、それだけの数を描いていくというのはたいへんですね。

時田:
基本的には非常に短い期間でした。1~2ヶ月もかけていないと思いますけれど、その間に描いていただきました。この画像はどのCGに生かされているのかというのが次のものになります。代表的なものを集めてきたんですけれど、このニヤリとした、かわいいんだけどチャーミングな感じであるとか、憂いを秘めた表情とか。


遠藤:
この顔はいいですね。

時田:
この辺は3Dになっても金田さんの役作り的なキャラクターライズが出ているのかなと思います。この少しむくれた表情も、むくれているだけではなくて愛嬌があったり、……このニヤッとした表情、これも非常に口元勝負だなあと思いますね。やはり目と眉と口というのは、なかなか3Dのモデリングでここまで凝ったアニメーションというのはピクサーくらいじゃないとないかなという感じですよね。

遠藤:
そうですね。この頃、フェイシャルというものは非常に注目をされるようになっていまして、フェイシャルとセリフの同期とかシビアなタイミングだった時期なので。でも最先端のことをお好きでいらっしゃったんですか?

時田:
そうですね。アニメーション自体もキャラクターの表情であそこまでこだわることはなかなかないと思うので、そう考えると金田さんはキャラクター一人一人を「演じてらっしゃるんだなこの人は」と思いました。絵を通して「こいつはこういうやつだよ」ということを2D、3D関係なくやってらした方なんだなということを、振り返るとよく分かりますね。

続いて2007年ですね。「FinalFanatsyⅣ」のニンテンドーDSでのフルリメイクですね。これも僕がプロデュースさせていただいたので、オープニングムービーとリアルタイムイベントの絵コンテをお願いしました。オリジナルのスーパーファミコン版を金田さんが遊んでいて下さって、2Dのシンプルだったシーンを、3Dのリアルタイムにするにはどう見せようかというところも絵コンテの中から一緒にやっていただきました。


遠藤:
金田さんはゲームがお好きだった?

時田:
その辺の話しもいろいろと聞くと、ディスクシステムのゼルダが出たとき、仕事をせずにずっとゼルダをやっていたという。

遠藤:
金田伊功はゲームマニアだったんですね(笑)

時田:
そうですね。その頃のいろんな方たちのお話しを聞くと、アニメーターの方たちが徹夜でファミコンのゲームを遊んでいた時代というのがあったらしくて、僕たちにしてみれば「どうしてアニメーターの方たちがゲームを?」ということもあるんですけど、やはり想像力のある方たちのほうが当時のファミコンみたいなゲームにのめり込んで楽しめるのかなと。

遠藤:
絵的にチープなものの中に世界観を感じられるということですね。

時田:
当時のファミコンだったりスーパーファミコンぐらいまでの、特にデフォルメキャラのRPGというのは、ちょうとマンガとアニメのちょうど中間に位置するような存在なのかなという気がしますね。マンガと小説とアニメの真ん中にいるというような形で、小さいデフォルメのキャラクターに感情移入できる方というのはものすごく豊かに楽しめるのではないかなというのは非常に痛感しましたね。

「当時はすごい」と言われていたものがいかにシンプルだったかという意味で、スーパーファミコンのオリジナルのゲーム動画をご覧下さい。出発するシーンです。ちょうど二十年前なんですが、ほとんど棒か四角で、キャラクターもこんなに小さく動いているだけなんですけれど。

FinalFantasy4をPlay2 - YouTube


時田:
このシーンを金田さんに絵コンテにしていただいたのがこちらです。セシルとカイン……。


遠藤:
今のシーンがこういう風であると脳内変換されていたということですね。

時田:
まさか20年後に、当時遊んでいただいていた金田さんに絵コンテを描いていただいて、それを3Dにすることができるとは夢にも思っていませんでしたから、これができたときは感激しましたね。次のシーンですね。白のチョコボが入って出ていく。よく見ると、そこで鳥が飛んでいくとか、カメラを裏返してとか、入っているんですけど、鳥は処理上の問題で飛ばすことはできなかったんですが、いかにしてこれが3Dになったのかということを動画を用意しておりますので、ごらんください。


※下のムービーは2007年の東京ゲームショウで公開されたPVで、講演中に放映されたセシルとカインの旅立ちのシーンを1:08ころから一部見ることができます。
※この部分で放映された映像については、未公開の資料と合わせて、CEDEC運営委員会が完全アーカイブ化を目指し交渉中です。

Final Fantasy 4 DS - YouTube


遠藤:
ちょこちょこ動いている重みというか、まったく同じものなんですけれど、じっと時の流れる部分というか、時間に対する感覚というのがずいぶん違うなと思います。

時田:
そして男同士二人が決意して旅立つ間だとか、一緒にこう兜をガチャッとやるところですよね。

遠藤:
その細かい部分まで見せられるというのも、いいところですよね。

時田:
間とか音楽が流れるタイミングも勝負かなといういうことで、金田さんと調整したところですね。当時、オリジナルを作ったときも、オルガンのタイミングとかにすごくこだわったのを懐かしく思い出しながら「ああ、こんなものが作れるんだな」ということをしみじみ感じたのを覚えていますね。


遠藤:
金田さんは音楽についてはどうだったんですか?

時田:
音楽に関しては、コンテの段階から効果音であったり音楽のタイミングに合わせてというのは、すごくリズムを重要視する方だったなと思いますね。オープニングやエンディングなんかは曲を選考して、渡して描いていただいたりとか。

遠藤:
曲に合わせて、コンテも合わせたということですか?

時田:
そうですね。曲に合わせて、絵コンテを描いていただいて、さらに編集で気持ちよくという三段階のタイミングで曲と合わせるので、理屈だけではなくて非常に感覚的に確かめつつ調整をしていました。快楽主義者という意味では快楽主義者というか、理詰めではない本能的な気持ちよさというものを追求する方だったなと思います。

遠藤:
そういうのって、妥協しない人は妥協しないですよね。

時田:
そうですね。素材をたくさん作るのではなく、タイミングというものが確かに一番大事かなと思うので、同じことをやっていても気持ちいいのと気持ちよくないのは驚くほど違うので、それはすごく理屈ではなく経験値なんだなというのは一緒に仕事をしていて非常によく感じたことですね。

遠藤:
料理みたいなものですよね。素材があって、それが微妙なタイミングでおいしくなかったり、まずくなったり。

時田:
分量通りにしたらおいしくなるというわけではないんだなというのはアナログのいいところですね。続いて2009年ですね、「FinalFantasy13」と一気に最近の時代になってしまいましたが、まだみなさんの記憶には新しいかと思いますが、金田さんがFF13でしたお仕事は、社内のストーリーボードチームという全体のディレクションですね。プリレンダムービー、リアルタイムカットシーン、イベントバトルでの召喚獣登場エフェクトシーンなど、あらゆるシーンのコンテを担当し、統括をされつつ、なによりもご自身でたくさんコンテを描かれていました。


これは現場のスタッフからヒアリングをしたんですけども、かなりハイデフ機の3Dのリアルタイムということで、非常に試行錯誤が多かったですね。そのために絵で見る青写真みたいなものがなかなか提示できなかった中で、金田さんのコンテというものが率先してそういう役割を担って下さったというのが現場のスタッフの感想ですね。「イメージを具現化する仕事」というのは、それは技術ではなくビジョンとそれを体現する力だと思います。


遠藤:
動画の場合だと時間的にどこにあるかとか、演出上の壁みたいなものというのもコンテみたいな形でしか表現できないので、その辺を作る人というのは重要ですよね。

時田:
ファイナルファンタジーのCGの映画をきっかけに旧スクウェアに入られたんですけど、当時はまだプリレンダCGがメインでしたし、まだまだ技術的にできることが少なかったので、なかなか金田さんの良さというものが生かせてなかった部分もあると思うんですけれども、それが10年近く経って、しかもゲーム機のリアルタイムのCGでそれが実現できるようになったというのが、考えてみるとこの10年の進化はすごいのかなあと思いますね。

遠藤:
そうですね。

時田:
これは具体的に金田さんが描いた代表的なシーンですが、召還獣オーディンが登場するシーンですね。ヒロインのライトニングがオーディンを召喚するシーン。非常に象徴的なシーンなんですけれど、これも金田さんが描かれている場所です。


遠藤:
コンテシートいっぱいに描かれているじゃないですか。この辺の描き方というのも独特だと思うんですよね。

時田:
ちゃんとお聞きしたことはないんですけれど、コンテだけではなくてある種のマンガのコマ割り、「決めゴマは大きく描く」みたいな、そのノリをどう使えるかみたいなところなのかなと。

遠藤:
イメージボードみたいな形で見るようなものなので、こういう形というのは大変おもしろいですね。

時田:
絵コンテはきっちり画面のように描く方もいるんですが、マンガのコマ割りのように空間を表現するために、コンテの文法すら無視して、独自の文法を使う方はかなり多いですよね。


遠藤:
普通だとこういうのはパンをするために使うんですけど、そういう訳ではないですよね。

時田:
本当にマンガの見開きで「決めゴマ」みたいな、この決めのシーンを3Dの人たちよろしくみたいなイメージだと思うんですよね。はい、続いてはかなりクライマックスのシーン、これを見ると非常に昔の東映動画のヤマトとか銀河鉄道999の劇場のクライマックスシーンなんかを思い出すんですけれど、このFF13のクライマックスのいわゆるエフェクトメインのシーンですね。こういうところをここまで描いていたということを僕もつい最近知ったのでびっくりしました。


遠藤:
その雲のエフェクト、右側の方は……。

時田:
いわゆるレイアウトにエフェクトのイメージをどう表現するかというところだと思うんですが、この爆発とか、このアングルとか非常に金田さんらしいなと思います。

遠藤:
この辺のものは実際に作るときにはどういう手順で作っているんでしょうか?エフェクトの発注みたいなもの、よくある話しでは「バーッと来たり」とか「ヒャーッと来たり」なんて擬音で伝える場合が多いじゃないですか。ちゃんと指示を出されていたんでしょうか?

時田:
これを見たスタッフがそれぞれどう解釈するかというところは任せていたようです。

遠藤:
逆にそういうところは任せてみて、あとは調整をするみたいな形をしているということですね。

時田:
逆に、金田さんさんのイメージ通りのものをエフェクトでやろうとなると、ものすごくたいへんなものになります。この辺に少し描いてありますけど「炎と爆発」。これはいわゆるCGのパーティクルという技術だけでは多分できないですよね。これをもしCGの技術に分解するとなると、いわゆる遊体といわれる技術と、当然物理学も入ってきますし、あと気体とかの制御ですよね。その辺を合わせて、しかも粘土みたいなもの、どれくらい粘着するかみたいなものもやらないといけないですね。でもそれは実際の粘着質の水の問題ではないので、そのままやってもこういう気持ちよさは出ないのかなと思います。

遠藤:
「それ風」に3Dの機械でということですか?

時田:
そうですね。はい。

遠藤:
2Dでやったりはしないんですか?

時田:
2Dはエフェクトのシーンもカメラが完全固定だと、微妙に2Dをうまく入れたりはするんですよね。

遠藤:
ああ、やはりそういうことをするんですね。

時田:
ところがカメラをあとで自由に動かしたいとなると3Dでやらざるを得ないので、その辺はカメラがフィックスか、フレキシブルに動くかどうかによってずいぶん変わってくると思います。これも同じくクライマックスのシーンですね。では象徴的なシーンですが、たぶんこれはみなさんご覧になったこともあるかと思いますが、FF13のオーディンの召喚シーンをご覧下さい。


【PS3】FINALFANTASY13 オーディン 召喚 ライトニング【FF13】 - YouTube


時田:
やっぱり馬のポーズだとか決めのシーンでのタイミングとかは金田さんの絵コンテというイメージがすごく残っていると思いますね。

遠藤:
話し忘れていたんですけど、ポーズとかというときに、やはりパースが実際よりも強くついているということがあるじゃないですか。このセデックでも、インタラクティブセッションでも、金田さんへのオマージュとしてパースをつけたマルチカメラのレンダリングとかというものが出るんですけど、ああいった形の技術はまだないときにどうやって実現していたんですか?モデリングですか?

時田:
PSくらいになるとカットごとにパースがつけられますので、カットごとにパースペクティブ、被写界深度は調整していたようです。

遠藤:
では、カメラ側の方で主にということですか?

時田:
でもさすがに金田さんの得意とする金田パースまでは利かせられないですね。そこまでいくとレンダリングベースで変えないといけないですね。

遠藤:
では一部モデルの中でやっているということもあるわけですね。

時田:
厳密にいうと背景とキャラクターとでさらにパースが違うはずなんですよね。一見普通のパースなんだけれど、キャラクターだけが妙な動きをしているとかですね。多分モデリングでやるか……。

遠藤:
では実際のカメラでもマルチレンダリングなんかをして、それでもって実現している部分もあると。とりあえずはそういうこともできるんですね。

時田:
リアルタイムですと、そのシーンがモデルみたいな感じですね。

遠藤:
その仕様のモデルみたいなものを作ってしまうと。

時田:
作ってしまう方が早いんじゃないかなと思います。わざと手を大きくしたりとか。なかなか今、ここまでのクオリティになるとそのシーンのためにモデルを作るというのは難しいですね。本当はたぶん手のでかいモデルとか作った上で、さらにパースペクティブをパラメーターで微調整できると、もっとおもしろい描画ができるのかなと思いますね。

このFF13が表向きには最後の作品という形になっているんですが、実は今回、サプライズということで、いろいろと社内で作品をまとめる中で、金田さんのお仕事がまだ生きていました。


FF13のスタッフで作っている「FinalFantasy13-2」というタイトルで金田さんの残したお仕事が形として実現する、それを最後にご紹介させて下さい。13のディレクターの鳥山よりコメントをいただきました。このコンテのシーンですね。「金田さんのコンテで、ライトニングを抱きかかえて登場するオーディンという素敵な演出がありました。自分はこの演出がとても気に入っていたのですが、13では結果的に未使用になってしまったことが心残りとしてありました。そして続編である13-2で、ライトニングを抱きかかえるという未使用に近いシーンを入れることができました。13-2の中で生き続ける金田さんの魂をぜひみなさんの手で確かめてみて下さい」。


ではお願いします。

※この部分で放映された映像については、未公開の資料と合わせて、CEDEC運営委員会が完全アーカイブ化を目指し交渉中です。


時田:
という形でした。これは今回初、この会場で見せたのが初めてです。

遠藤:
まだ発売されていない?

時田:
発売日もまだ発表していないと思うんですけれど(笑)、年末予定となっていますが、今回このCEDECのために13のスタッフが用意してくれたシーンです。

遠藤:
スクエニの方々がみんなこれをやるということで協力していただいたという話を聞いているんですが。

時田:
本当にいろんな大小のプロジェクトがあって、プロジェクトが解散するとまったく違う作品で(元のチームが)ぐちゃぐちゃになってしまう中で、しかもみんな最近はコストカットのために忙しいわけです(笑)。効率よく物作りをしなければいけない時代なので非常に忙しい中、今回「金田さんの仕事をまとめたい」ということで、開発だけではなく宣伝スタッフ、そして業務部といういろいろな業務を取り仕切る部署があるのですが、そこのいろんなセクションの人たちにご協力していただいて、それはひとえに金田さん自身の人柄だと思うんです。僕らがお仕事したときも「怖い人なんじゃないか」「気むずかしい技術家タイプだったらどうしよう」と思っていたのですが、実際に会ってみるとものすごく気さくで、悟りを開いたような方のようで、でも、お酒を飲んだりすると少しお茶目なことをするような……。

遠藤:
そうですよね、いろいろ聞いたりするんですよね。お酒を飲んでのお話を。

時田:
どんな仕事も文句を言わずポジティブに楽しんでやっていたというのはものすごく印象に残っています。僕らも、やりたい仕事だったり、やりたくない仕事だったり、やりたかったことが全部できなかったとか、いろいろあるんですけど、それでもまあ楽しんでやろうよと。「楽しんでやったもの勝ち」というものをものすごく体現していただいたのはものすごく勇気づけられました。続けていくことの大変さと大切さ。続けていくからこそ、いろんな出会いがあったりしますよね。冷静に考えてみると、金田さんのアニメを見て育った僕らが作ったゲームの会社に入ってきた若い子たちと、おじいちゃんと息子と孫と三世代でゲームを作ったりするような時代なんですよね。

遠藤:
そうですね。

時田:
そこを作っていくものの中では、あまりマンガやアニメやゲームだとかというジャンルの垣根は関係ない、世代の垣根も関係ないということを、金田さんのお仕事の仕方や姿勢で、みんな評価されたなと思いましたね。

最後ですが、技術よりも姿勢とリスペクトとエンジョイするところで、いろんな人といろんな作品を作って、好きなことを実現しながらご飯を食べていく楽しさみたいなものが、やはりこのお仕事の原点じゃないかなというところを非常に金田さんに教えられた部分ですね。遠藤さんはどうですか?

遠藤:
僕がこのセッションをやるということを決意したきっかけというのは、僕もアニメのスーパーバイザーとかもやっていたりするんですが、そのときにアニメーターの千明孝一さんという監督さんに「金田さんを使いたかったけど連絡が取れない」「スクエニにいるはずなんだけど、なんでゲーム業界にいるの?」という風な話をしまして。アニメの世界の方たちからも非常に尊敬されている方が、ゲームという新しいところにいってどういう仕事をしているのかなと。アニメに関してはいろいろ資料があって、絵とかもいろいろ残されていて、公開されているわけなんですけれど、ゲームとなると本当に名前や存在が出てこないんですよね。

この時代だとネットで調べたりするわけですが、アニメのことについてはすごくいっぱい出てくるのに、ゲームのことに関しては本当にWikipediaに書いてあるようなことしか出てこないんですよね。その辺のきちんとした記録というものではないですが、スクエニで公式にこんな仕事をしていましたというような形のものを出してもらえれば、ということで。最初、お願いに行ったときは「少し難しいんじゃないの?」だとか「そういうわけには……」という感じだったんですが、時田さんが「一緒にやっていたから」と引き受けてくれて。

いつかやらなければいけないというか、ゲーム業界の人間としてはその辺の仕事というのもきちんとお話をしておきたいというのがあったりしたので、今回みたいなことやってみたわけです。コンテなど色々と出していただいたのですが、その他の資料についても機会があればデジタルでアーカイブしていただけるという話も聞いています。その辺をあとあとネットで調べる時にも正確な情報として伝えられていけばと思います。

この中にもファンの方がいっぱいいらっしゃると思うんですけれど、インタラクティブの中にも金田さんが手がけてきたようなアニメ的な演出だったりとか特殊なパースだったりとか、エフェクトみたいなものが、技術として取り込めるようになる時代がもうすぐ来る、実際にそういうことができるようになるわけです。欧米ですとパースもリアルにしなくてはいけないということなんですが、そうではなくて日本が持っているような誇張した表現を含めた中での演出のお約束というんでしょうか、どちらかというと歌舞伎の「見得」みたいな感じじゃないですか。その辺の文化というのは日本に脈々と流れているという意味では、その辺を継承していければというように考えていたりします。

時田:
そうですね、様式美とかいわゆる「型」とか「間」とかですね。金田さんのお仕事はちゃんとそういうメリハリもありつつ、そこに遊び心という自由な振れ幅があるところが素晴らしいなと思います。だからこそ、ジャンルやカテゴリを問わずにずっと作品を作り続けてこられたんだろうなと思います。また今は変化がすごく早い時代で、スマートフォンだけで何でもできるし「それはドラえもんだろみたいな」ことが実現しているわけですけども、そんな時代でも様式美だったり、ちょっとした遊び心だったり、自由にものを作れる場所というのがゲームだったりアニメだったりした時代が、エンターテインメントをリアルにしたと思うんですよね。これからもゲームというものが、ゲームに回帰する部分もあれば、新しいエンターテインメントとして形として昇華する部分もあると思うので、それは本当にみなさんも金田イズムをもって、いろいろジャンルを超えて楽しんで、「さすが日本の様式美と遊び心だぜ」と言われるくらいに、もう一度日本のエンターテインメントを元気にできればなと思います。


遠藤:
ということで、そろそろ時間ですかね?

時田:
ちょっと駆け足で紹介してきましたが、今日はみなさん楽しんでいただけたと思います。金田さんのお仕事は非常に楽しいもので、それは僕らも今ご紹介させていただいたても非常に楽しかったです。みなさんも金田さんの作品を見たりして楽しんでいただければと思います。僕も今回こういう機会を持てて良かったです。

遠藤:
打ち合わせの時とかも「こんなのが出てきました」といって毎回見せてもらうたびに「うわー!なにこれ!!」みたいな驚きがあってね。

時田:
大学の部室みたいな感じでしたね。

遠藤:
そうでしたね、本当に大変でした。いろんな資料の中から「これは出せる」「これは出せない」みたいなものがあったので、中には一部「なぜ動画が出ないんだろう」というような部分もあったと思いますが、それは大人の事情というもので、みなさん理解していただくという形で。

時田:
そうですね。でも今回はギリギリのところまで。

遠藤:
がんばっていましたよね。

時田:
むしろ、尺の方が足りないという話しなので。また機会がありましたらオールナイトイベントみたいな形で。

遠藤:
先ほど新宿のロフトで似たような話をしていたんですけどね。

時田:
大人たちが集まって、裏フェスティバルのような形でやるということで。今日はどうもありがとうございました。

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in 取材,   ゲーム, Posted by logc_nt

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