いつ来るか分からない15分のために常に準備をしているのがプロ、デザイナー奥山清行による「ムーンショット」デザイン幸福論


「自分が考えていることを、その場で決められた時間の中で他の人とシェアしないのは、プロとして犯罪に近い」

「プロというのはシステムで仕事をする人間である」

「いつ来るか分からない15分のために常に準備をしているのがプロで、来ないかもしれないからと言って準備をしないのがアマチュア」


などなど、非常に刺激的な言葉が次々と飛び出したのが、CEDEC2011の2日目基調講演「「ムーンショット」 デザイン幸福論」です。

国際的な活躍を続けるインダストリアルデザイナー、奥山清行氏による講演となっており、「実際に会場にいらした方に直接語りかけたい」という本人の強い希望によって、ニコニコ動画「CEDECチャンネル」での配信や講演資料の配布はなし、「最後の瞬間まで講演内容を考えたい」ということで演題・内容についての事前発表もなし、という直前まで謎のベールに包まれていた講演だったのですが、見ての通り少し書き出しただけでもすさまじいセリフが飛び出すというような、異様なほど濃密な講演になりました。

以下、そのアグレッシブな基調講演をできるだけ再現したものです。なお、あまりの疾走感の激しさで意味不明・支離滅裂になっている部分については、可能な限り持ち味を残しつつ、なんとか理解できるようにしています。

奥山:
皆様おはようございます。奥山清行です。今の和田会長の方からイントロダクションにあったようにクロスボーダーの象徴としまして、異なる業界の人間でありますけれど、今日いろんなモノを作るという、モノというのはハードに限らずいろんなモノをつくる話というのを大体80分ほどさせていただきたいと思います。


主に、海外で30年ほど仕事をしてきた経験から、日本のものづくりに関していろんな気がついた点があります。そういったところを主体に皆さんと僕の経験をシェアさせてください。題しまして「ムーンショットデザイン幸福論」。ムーンショットの意味というのは後ほど、一番最後の方にご説明差し上げます。


工業デザイナーと言いましても、実は皆さんと非常に近いところで仕事をしていまして、一番最初はハリウッドのユニバーサルスタジオ「バック・トゥ・ザ・フューチャー」というライブのデザインをしたりとか、「アポロ13」でのアポロ13号のセットデザインとか、「バットマン フォーエバー」のセットのデザインとか、ハリウッドで実はかなり仕事をしてきました。さすがにゲームのデザインはしていません。ただ今、例えば、ここ10年くらいはセガサミーの顧問をさせていただいたりということで、ここのみなとみらいにも実は大型のテーマパークを作る予定でして、僕もアートディレクションを何年かやりましたけれど、残念ながらいろんな不可避の理由があって計画は中止になりました。なので、みなとみらいに来ると毎回何となく、苦い思い出といったものがよみがえって参ります。

今これ画面で見ていただいているのが、今現行の路上を走っているフェラーリの全てなんですけれども、右上のFFというへんちくりんな車を除いて、全て僕のディレクションの車です。右下の車は特に思い出があるフェラーリ・エンツォという車です。


マセラティクアトロポルテという車を作った時も、その後のクーペを作った時も、オーナーが4度ほど変わりまして、死に絶えていたブランドをゼロから再興するという役目を担って、その中の仕事の一環として「ハードウェアとしての自動車」のデザインをしました。


その中で日本とイタリアを比較して、面白いことに気がつきました。皆さんこれを読まれて、個人力の日本、団体力のイタリアというタイトルを見ると、「逆じゃないの?」「個人力のイタリアで団体力の日本じゃないの?」と思うかもしれませんけれど、イタリアというのは実は全く逆でして、イタリアというのは実はご存じのようにワールドカップとか、それからいろんな、例えばフェラーリのようなブランド企業をゼロから作り上げたりとか、その陰にある力というのは実はローマ時代から伝わる、いわゆる民主主義の元を作った彼らの団体力なのです。イタリア人の個人個人も非常に個性のある人たちが多いですけれども、その何というか、味が強い野菜が集まってもっと面白い料理ができるように、イタリアは非常にその団体で行動をするというのが僕が想像していたよりもはるかに得意でした。


その中の一つの例として、フェラーリ・エンツォという車は、10年に一度の限定生産の車なんですけれども、その販売価格が7500万円。残念ながら僕もまだ買えません。中古車市場でこれ1台が大体1億3000万円くらいの車になってます。いまだに、売り出してから10年たっても販売価格を一度も下回ったことがないという奇跡のような車なんですけれども、この生産台数が399台。なぜ399という変な数字なのかというと、市場調査をして、何人の人がこの車を確実に買いたいかっていうのを調べたら400人の人が僕は必ず買いますというふうに手を挙げた。それに対して需要よりも1台少なく作れという創業者の言い伝えに従って、フェラーリは399台で生産を実際にやめたわけです。


面白いのは、開発を始める前に「うちは399台しか作りません」と言ったら、その10倍以上の3000人以上の人たちがこのフェラーリに対して「この車を買いたい」というふうにデポジット(前払いの保証金のようなもの)を持っていらっしゃって、その中で会社が人を選んで、その399人のラッキーな人たちは7500万円の現金を持って、イタリアまで飛んでこの車を引き取りに行くわけです。高飛車ですよね。高飛車ですけれども、それをすることによって「フェラーリ」というブランド力は上がって、フェラーリっていう世界観の中にもっと入りたい人たちがボンボン増えていく、と。


日本は逆のことをやるじゃないですか。6000万で売ったら500台売れるんじゃないかなあとか、5000万で売ったら1000台売れるんじゃないかな、と。それをやっちゃうから未来の芽をつぶしちゃうんです。ブランドの力を落としちゃうんです。学ぶべきところっていうのは大いにあると思いました。それを成し遂げているのがフェラーリっていうチーム、わずか3000人のチームでして、3000人のうち600人がF1という部門に従事しています。ですから残りのなんと2400人で年間8000台の車を開発して、生産するまで全部入れて2400人です。僕は大変なことだと考えます。


逆に日本に帰ってきまして、去年から今年にかけて、これは六本木ヒルズのアカデミーヒルズというところで「日本元気塾」という社会人向けの塾の塾長をやりました。8か月間、2週間に一回くらい27人の生徒さんと一緒に集まりまして、その生徒さんが実は外資系の証券会社の部長さんであるとか、最近だと悪名高き海外の証券会社のヴァイスプレジデントであるとか、そういった人たちが集まって、日本はどこに行くべきか自分の将来はどこに行くのかという議論を毎回続けました。


非常に面白かったのはその中で、日本人ほど哲学とか倫理観とか教育レベルとかそういったことの個人の力が高い国というのは、僕は今まで経験したことがなかったのです。ところが、そういう人たちを5人以上集めると、幼稚園みたいなもんでまるでまとまらない。イタリアの方がよっぽどまとまる、アメリカの方がよっぽどまとまるという現実に気がつきまして、ひょっとして日本って団体力ないんじゃないの?っていうことになり、僕の今までの仮説が逆転しました。皆さん何となく思い当たる節があるんじゃないかと。飲み屋に行くとすごいこと言うんです。仕事終わるとすごいこと言うんです。仕事の最中は黙って何も言わないですね。黙って何も言わないくせに何も考えてないかっていうと、当てると皆さんすばらしいこと言うんです。僕はそれは卑怯だと思いまして、自分が考えていることを、その場で決められた時間の中で他の人とシェアしないのはプロとして犯罪に近いと考えています。イタリアでそれをやると二度と会議に呼ばれません。ところが日本はそれをやって、黙っている方が会議に呼ばれるという、これは悪しき慣習だと思います。

面白いのは日本の議論の仕方っていうのが、何かと個人攻撃になってしまうこと。これは日本の言葉の作りっていうものがどうしても目上とか目下とか、男性とか女性とか、自分の相手に対する相対的な位置を示す感情を表す言葉があるのに対して、英語とかイタリア語っていうのは非常に少ない言葉で情報の内容を的確に相手に伝える言語の作りなんです。だから、誰が何を言うかってことは重要なじゃなくて、その話の内容の方が重要だって順序になってる。だから日本語で、実は個人攻撃にならない議論の仕方というのは非常に高度な議論力が要るというふうに思います。僕はこれを小学校で教えられなかったので、社会人になって必死の思いでイタリアで勉強しました、議論の仕方というのを。この「議論の仕方」をひとつの技術として、僕らは学ばなくちゃいけないんだなってつくづく思いました。


いわゆる会社という組織というのは、実は産業革命が起こってできたもので、それ以前っていうのは人類の99%は家で仕事をしていたらしいです。ところが産業革命が起こって、紙が印刷されて、いろんなエネルギーができて、みんなでひとつのビジネスを行おうっていうふうになりました。それが会社っていう形になって、お父さんは家にいるだけじゃなくて、朝には会社に出かけていって、そこで仕事をするという形に変わってきたのは、なんとたかだか150年前。本当の意味での会社という機能が世の中に存在し始めたのはたかだか100年前です。皆さん会社っていうものがこれから永遠に続くと思ってるかもしれませんけれど、今の形での会社という組織というのはもう崩れ始めています。会社の持つ意味というのは実は非常にいろんな意味があって、例えば昔、家でだけ仕事をしていた人というのは24時間の時間のほとんどを家族というコミュニティで、近所のコミュニティの中で過ごしていたわけです。


ところが今、その中の最低8時間、人によっては12時間から16時間という時間を、家以外の会社、仕事場っていうコミュニティで過ごしていますよね。当然のことながら家のコミュニティよりも会社のコミュニティの方が実ははるかに重要な意味合いを持ってきている。その後例えばPTAの集まりであるとか、いろんなジムに行ったりとか、今の皆さんというのは自分の中で最低4つのコミュニティを持っているって言われます。4つのコミュニティの中で、住んでいる家のコミュニティは実は一番重要じゃないコミュニティになってきているからこそ、近所付き合いがなくなってきているのは実はごく当たり前のことなんです。そうすると会社の機能というものが実は昔の家族と同じくらい大きい意味合いを持ってきて、そこで例えばいろんな、何かエンターテインメントしたりとか、植物を植えたりとか、一緒にご飯を食べに行ったりとかっていうのは、実はこれは当たり前の姿で、だから家庭崩壊が起こるんです。僕らが今の24時間の中で、通勤という時間を費やしている時間が何時間あるかと考えて、経営者として考えると、これは無駄ですね。それを省こうと思うと、家で仕事しなさいよ、となる。仕組みがきちんとできてて、それで結果がちゃんと出せる人であれば、家で仕事をした方がよっぽど結果は出るというのは皆さんももうお気付きで、実際そうしている方というのもこの中に実際にいらっしゃると思う。


これからは、会社という組織が逆に膨れていくか、どんどん崩壊していくか、その両方がこれからどんどんこの今後の50年間で起こってきます。それで重要になってくるのが、これは日本経済新聞に載せた記事なんですけれども、会社と個人、あるいは自分のキャリア、仕事と個人というバランスシートがあって、日本の特に若い人に強く言いたいんですけれども、勘違いしているのは、若い人が特に勘違いしているのは、自分は会社とか仕事から得るものだけ得て、一番得た時点で次のステップに移っていくのがキャリアアップである、と。実はこれ大きい間違いでして、自分が与えたものと相手からいただいたものの中で、相手にあげた方の大きい場合に、次の仕事につながります。これはアメリカとかヨーロッパの契約社会で非常に重要な考え方で、得たものよりも与えたものの方が多いことが大切なんです。それでこの人間は優秀であるという名声が広がって、きちんとしたお給料なり、それに対する対価をいただいて、次の仕事をもらうという仕組みを作るのが、実はプロとして非常に大切なこと。なんか高校の話みたいですみません。プロの皆さんを前にして。ただ、非常にその基礎が日本に帰ってきて成り立っていないのでびっくりしました。


もうひとつ、いわゆるブランド商品というものとコモディティ商品というものがあります。皆さんが作られているゲームとかエンターテインメントの中で、これがブランド商品、これがコモディティ商品と分けるのはまだ難しい段階にあると思います。ですけれどもハードの分野ではこれが明確に分かれてきています。ブランド商品の面白いところというのは、実はその利益率。縦の軸が利益率で、これが時間軸、つまりプロセスです。一番利益が高いのはメーカーなんです。メーカーというのは、例えば、フェラーリはどの素材を使おうが、どの部品を使おうが、誰が売ろうが、メーカーが一番利益を上げる、間違いなく売れる商品だったんです。


自動車に例えれば、日本の自動車の悲劇というものは、実はその正反対のコモディティ商品だという点にあります。要するに安くて生活の必需品ですね。そういうものっていうのは、実は素材であるとか原材料であるとか、小売りの人たちが高い利益を上げる。ヤマダ電機がそうですね、素材産業もそうですね。ところがメーカーっていうのは利益がほとんど上がらないです。


日本の自動車はかつては利益を20%も上げていながら、今は1%から2%です。だから数を売らなきゃいけない。車売ったって儲からないです。悲劇は、会社の組織っていうのがブランド商品になっていながら、実はコモディティになっているから、この利益がここまでに落ちてしまっているところにある。


面白かったのは、日本のルイ・ヴィトンの社長のプラトーさんという方とある講演で、ルイ・ヴィトンのかばんは30万とか50万はしますよね、と話をしてたときのことです。僕はプレゼントでルイ・ヴィトンのかばんを僕自身で買いたくてもなかなか買えないので、安くしてもらえませんか?と大胆な質問をしたら、うちは申し訳ないけどディスカウントはしません、と。ただし、30万円のかばんを買えない人でも同じ素材を使ってうちは5万円の財布を売ってます、財布というカテゴリの中では一番高い商品です、5万円の財布を買えない人には犬の首輪をうちは売ってます、1万円で売ってます、猫の首輪ならもっと安いです、いろんなそのキーホルダーならもっと安いです、と。それぞれのカテゴリでは一番高いものをうちは売っていて、決してディスカウントはしない、と。だけど同じノウハウ、同じ素材を使っていろんな商品展開をしている、だから実はルイ・ヴィトンというのはいわゆるブランド商品ではなくて、ライフスタイル全体を提供しているものだ、と。うちはかばん屋だからかばんしか売らないって言ったら利益は実は大して上がらないし、マーケットに入ってくる人も少ないです。でも同じノウハウでいろんな商品展開をして、全体のライフスタイルを提供しているからうちは健全なんです、ということを聞いて、これは感激しました。


もうひとつ、コモディティ商品ってこれは数を売るしかないのかっていうと、ご存じ僕も使っているiPhoneとかですね、スティーブ・ジョブズさんは引退されましたけれど、だけど会社として健全なAppleの商品というのは「プレミアム・ブランド」と言われていまして、これはいわゆるラグジュアリーブランドじゃないんです。プレミアム・ブランドというのは、多少プレミアムを払ってでも買いたいと思う商品で、安くてもいいんです。ただ彼らの特徴というのは、ただハードウェアを売るんじゃなくて、ハードを売る前にインフラを作って、例えばコンピュータに同期して、ミュージックダウンロードシステムを作って、それでiPodから始まっていって、やっとiPhoneを売って、さらにその延長のiPadを作って、さらにその先に何があるのかを見ましょう、という全体の仕組みを売っている。そのデバイスを通して、どういうトータル・エクスペリエンスを提供しているかというのがこのブランドの価値なわけです。ですからデバイスだけ売っても、実は利益率はものによってはそれほど高くありません。ただ、トータルで儲ける。このようにして、いわゆるコモディティ商品がエクスペリエンス・デザインに変わっていくことが非常に重要である、と。言い換えると、ブランド商品はライフスタイルデザインになって、コモディティ商品はエクスペリエンス・デザインになって、初めてビジネスが成立するということです。


それを動かしているものは何なのか。


ニーズ(Needs)というのはよく皆さんプレゼンでも使われるし、よく聞く言葉だと思いますが、ニーズと並んで、あるいはニーズ以上に実は社会を動かしているのは、和製英語なんですけれども、ワンツ(Wants)です。


非常に面白いことに、今年の2月に出たカリフォルニアのロングビーチのTEDカンファレンスで、これがビル・ゲイツですね、そしてコーヒーを飲んでいたら隣にアル・ゴアが立ってて、「Hi, Al」とか言って写真撮ったりですね、そんなオープンな雰囲気なんですけれど、そこに入るには非常に厳正な抽選とか審査が必要で、そこでこのワンツに関して非常にいろんな方が議論していたのが特徴的でした。まだ日本ではワンツなんてのはまだ全然聞かないのに、アメリカでは既にそれが常識になっている、と。


ではこれって何なんでしょう。分かりやすく説明します。ここにトヨタの人はいないと思いますけれど、もしいたらすみません。トヨタのYaris(ヴィッツで知られるブランドの欧州名)という車は106万円から179万円で、それに対して同じ前輪駆動の4気筒エンジンで性能的には劣るBMWのminiは219万円から440万円です。なんとこちらのトヨタの3倍もするんです。ハード的には劣るものが、劣るものの方が何で3倍もするのか?それは人が求めるものが、左のものと右のものとは根本的に違うわけです。


例えば日本の時計メーカーが必死になって作って1969年に作ったクオーツですね、セイコーが発明したクオーツ時計、あれによって正確な時間の民主化が起こりました。ところがすばらしい偉業を成し遂げた日本のメーカーがどんどん売るために価格ダウンをしていって、挙げ句の果てに電波時計で太陽電池がついてて100年間で2秒しか狂わない時計が3万円で買える時代です。ところが右側のロレックスのデイトナっていうのは僕が買いたくても、これは定価が98万円なのですが、プレミアムが付いて150万円でもものが見つからないです。3日間机の上に置いておくと止まります、この時計は。こっちは100年間で2秒しか狂わないです。何でこっちの方が150万円で、こっちが3万円なのって思うじゃないですか。ところが僕らがなんで機械式の時計を買うか。考えてください。全部機械でできてる、エレキが入ってない時計っていうのは、今土の中に埋めて100年後に掘り起こしたならば、ちゃんと動くんです。機械屋に持って行って、油注ぐだけで、この時計は一生動くんです。人間がものを作っている中で、自分が生きた証をこの世の中に残すためにモノとかコトを作ってる。僕もそうだと思うんです。だから、自分の50年とか80年とかそういう自分の人生を超えて、自分が何を残したのか、自分の人生の前と後に何があるのかってことを考えるのは、これは人間として、これ当然のことなんです。


こっちの時計は実は100年使おうと思っても、電池の形式が変わるし、中の半導体がもたないし、実は4年しかもたないです。100年で2秒しか狂わないって言ってる時計が実は4年しかもたないんです。こちらの時計は振ってさえいれば100年でも200年でも部品を換えながら使うことができる。だからなにか、この時計を最初に買った人がこの世からいなくなっても、この時計はその人たちが生きた証としてこの世に残るんです。なにかすごくロマンを感じるじゃないですか。なんか、日本人の宗教観が、全てのものに神が宿るというのが宗教観であれば、実はものをつくる、ことをつくるというのは、神が宿るほこらを作る、実は非常に貴重な仕事だと思うんです。そういうことを一番よく表しているのが、実はスイス式の機械式の時計だった、と。だから150万円するわけです。高いものはもっとしますよね。これがブランディングです。これがワンツです。これはニーズとは違う「ドライビング・フォース(「企業の未来に対する戦略的ヴィジョンを決定する最も根本的な因子」を意味する)」です。


もうひとつ。洗濯機にしてもですね、たかが洗濯機ですよ。ところが僕はこのLGの洗濯機をデザインしたキムさんという人に会ったんですけれども、キムさんはものすごくこの洗濯機を誇りに思っていて、なぜならそれまではワールプールっていうブランドがベストセラーだったんですが、このキムさんが作ったこのLGの洗濯機っていうのがアメリカ市場であっという間にベストセラーになったんです。キムさんは「ミスター洗濯機」と呼ばれていて、彼はもう洗濯機のことをモーターからネジの位置から全部知っている。同じように、それこそダイソンさんに会うと、ダイソンさんは自分の商品のことを何から何までベアリングの個数から何から全部知ってます。彼は300人のエンジニアを雇って、自分の研究所の中にベアリングの研究所を作って、ダニの研究所を作って、世界中のダニを集めてそれを殺す方法を研究しているわけです。それでダイソンができたわけですね。


それと同じようななにかものに対するものすごいハングリー精神と、それからもうひとつあります。これはですね、日本の悪い癖です。例えば100人と1億円があったとします。韓国とかアメリカの企業っていうのはそれを50人ずつふたつのチームに分けて5000万円ずつ与えれば、たいしたことないアイディアでもこれが面白いものになっちゃうんです。そうですよね?50人で5000万あったらば、日本の場合だとものが決められないからまずリサーチしましょうと言って、ひとりずつの100個のアイディアをリサーチしましょう、ということで1つのプロジェクトに100万円与えます。100万円もらってひとりで何しろって言うんですか?これが今の日本です。優れたアイディアが山ほどあっても、それぞれのアイディアが日の目を見ないのは、1人と100万円を与えられても何の仕事ができるんですか、と。ですから、一番最初にうちの会社はこれをやるんだというヴィジョンを抱いて、ものを決めて、それに従って集中投資をするのが今のものの作り方です。分散投資はこれからの時代は絶対に成立しません。


日本人のもうひとつの能力として、左側の想像力という力があります。ものを作るのはクリエイションの方の創造力ですけれども、この左側のイマジネーションの想像力というのは日本人が優れているからこそ、マーケティング理論が世界で一番発達して、実際にいろんなマーケットリサーチをする会社もたくさんありますし、非常に技術的に発達しています。でも、だからこそ人の気持ちは分かるけれど、自分の気持ちが一番分かっていないのが日本人です。自分が本当に何が欲しいのか、自分の会社が何を作るべきかが一番分かっていないのが典型的な日本の企業であり、日本人なんです。

非常に面白かった経験をいくつか皆さんとシェアしたいと思うんです。僕が、何がプロで何がアマチュアかっていうのを考えさせられる転機になったいい機会がこの一枚の絵なんですけれど、1998年の秋です。


それまで2年間かけて作ったエンツォ・フェラーリのデザイン、車全体ですね、それがなかなかうまくいかない。10年に一度だからこそ、本当は限定生産で大胆なことをやらなきゃいけないのに、それだからこそ人間はすごく臆病になってつまらないものを作っちゃう、もうその典型だったんです。で、2年間開発をした後、今日この日にモンテゼモロの会長がヘリコプターでやってくる、と。この日に決まらなかったらば、このプロジェクトはキャンセルになるってことで、来ました。


でも僕自身、やっぱり何か納得がいかない、それで万が一のために僕は絵を描いていたんです。仕上げまでの時間がなかった。案の定、モンテゼモロさんはヘリコプターが来て、エンジンも止めないでこうやって降りてきて、車を見た途端、ああもうだめだと言ってそのままヘリコプターに乗って帰ろうとしちゃった。これで帰してしまったら、僕らもう二度とフェラーリの仕事ができないですから、さてそれで僕の上司は僕に対して「奥山、15分やるからスタジオ戻って絵を描いてこい、あるだろ例の絵が」ってニタッと笑いまして。僕は走ってスタジオに戻りまして、描きかけてたこの右上の絵を最後に色を塗って紙に貼って仕上げて、それで廊下を走って。スタジオ遠いんです、プレゼンテーションルームから。走って戻って、もうあの、サンドイッチ食べさせろって言ってそれでモンテゼモロの会長を中に収めてたんですけれども、もうサンドイッチ食べ飽きて、外に出てきているところを廊下でこの絵を見せて、そうしたら「なんだおまえらできてんじゃねえか」って。「やりなさいよこれ、来週の水曜ね、見に来るから、車モデル作って仕上げといてね」って、ヘリコプターでバーバーバーって帰って行って、「はあっ」てなった反面、金曜日の夕方ですから水曜日までにこれどうやって作ったらいいのかなってことで必死になって、週末も完徹でみんなで仕事したんですけれども。


僕が言いたいのはふたつ。ひとつには、その時この絵を準備してなかったら、僕らはおそらく一生この車の日の目を見ることはなかっただろうし、そのチャンスを生かすこともできなかった。いつ来るか分からない15分のために、常に準備をしているのがプロで、来ないかもしれないからと言って準備をしないのがアマチュア。それだけの違いだと思います。プロとアマチュアというのはそんな小さい違いだと思ってます。そしてもうひとつ、僕の上司は僕がこの絵を描いてたことを知ってたんですね。そういう信頼関係というか、よく周りの人間のことを見ていて、万が一のために誰を使うか、どういう風にその15分を生かせるかということを見ていた僕の上司もすばらしいという風に思います。今でも友達です。


それからもうひとつ。いけすの中に魚がいて、ずっと泳いでいると活きが悪くなってみんなだんだん死んできて、そこにナマズを1匹入れると、変な魚が来たのでびっくりして、活きがよくなって、死ぬ魚が少なくなるんだそうです。僕はイタリアでナマズでしたし、日本でもナマズなんですけど、何が言いたいかっていうと、ものの本質というのは、実はその中にいる人間っていうのは意外と分かってない。イタリア人はイタリアのデザインの悪かった時期ばかり覚えているので、なかなかイタリアのデザインに対して、実はロマンを持てないんです。僕ら外国人は国を捨てて家族を捨てて、すばらしかった60年代、70年代のイタリアのデザインにあこがれてイタリアに渡った人間ですから、もう何が何でもイタリアにあこがれているんです。そういった人間の方が実はものごとの本質を知っていて、意外とイタリア人よりもイタリア人らしい仕事をするから、僕は外国人としてイタリアのデザイン会社のディレクターを12年間務めたわけです。


だから皆さんも、自分は会社に何年もいるからこの会社のことを一番知っている、でもこのゲームを何年も作っているから意外とあなたが一番よく知ってない。意外と他の人の方が分かってることがあるっていうことを理解して、外の人間と自分の能力をよく使い分けていただきたいなと思います。

それからもうひとつ、さっきアマチュアとプロの話をしました。アマチュアというのは実はすばらしいアイディアを持っていて、それでプロよりも非常にいい思いつきをするんですね。プロというのはものを知っているだけに、実は一番保守的です。長年同じことをやっているプロというのは、実はアマチュアよりもインスピレーションという意味でははるかにレベルは低いです。ところがなぜプロがプロたる仕事ができるのかというと、アマチュアはたった1枚の企画書、1枚の絵、たった1個のアイディアに満足して先に進まない。プロは最初はろくでもないアイディアが出てきて、なかなか会議でもアイディアが出ない。だけどもそれを100回続けて、100個の中から1個を選んで、そういった人間が予算を取って100人集めて、合計1万個の中から1個のアイディアを出すから、いいものが出るのが決まっているというシステムを作るから、プロはプロたり得るのだと信じます。プロというのはシステムで仕事をする人間である、と。

だとすると、俳優の津川雅彦さんが言っていたんですけれども、「若い人は質なんか追うな。質より量だ。量をこなしていれば質なんて自然に付いてくる。それは実は僕ら年を取ったプロであっても全く同じことだ」というふうに言っていました。この質より量というのは非常に重要なことだと思います。頭動かす前に体動かせ、いろいろごちゃごちゃ言う前に数出しなさい、と言うのは実は非常に正しいアドバイスだと思うんです。


それからもうひとつ、非常に面白いと思ったのは、これちょっと自動車の話ですいませんけれども、世界中の自動車の模型っていうのは粘土で作るんです。粘土っていうのは盛ったり足したりできるので、彫刻ではなく彫塑(チョウソ)と言われるものなんですね。足すことができる。


ところがイタリアだけは不思議と、ちょうど木のような、エポウッドと呼ばれるエポキシの木ですね。それを使うんですけれど、これはA液とB液を混ぜて3時間くらい待つと堅くなって、それをノミとカンナとノコギリとサンドペーパーで作るんです。なんでそんなめんどくさいことするのかなっていうと、これは堅い素材でものを作るとできあがるものも実は堅く見える。粘土みたいな柔らかい素材でものを作るとできあがるものも実は非常に柔らかく見える。外に出て走っている日本車のデザインを見てもらって、それに粘土の色を塗ったらどうなるか想像してみてください。もうそのまま粘土に見えます。それは実は粘土で作ってるからです。粘土に見えるどろどろのデザインが日本車になっていて、世界中で評価されていない。それに対してイタリアっていうのは、あまり余計なことできないです。木みたいなもんだから、キャラクターラインなんてこんなもんだから。せいぜいこのくらいの大きさですね。もう小さなこんな面の表情なんてとても出せない。でも全体のたたずまいとか、プロポーションとか、かたまりとか、そういうことがよく表現できるのがイタリアのデザイン。それはなぜかっていうと、大理石を削っていたミケランジェロとかダヴィンチの頃からの職人技というのがずっと今の工業界で生きていて、それがこの車作りに生きていることに気付いた時に、ものすごく感動しました。それはやっぱりイタリアという文化があって、それを生かせる人間がいて、チーム力があって、そういう工業界があって、今があるんだな、と。そういうことが後でつながってくる。それが僕が日本に戻ってくるひとつのきっかけになりました。


今どういうデザインが起っているかという話をさっとさせてください。これはどちらかというとハードウェア寄りの話が多いですけれども、最近これ皆さんのゲーム業界、エンターテインメント業界とは違うものばかりをわざと持ってきましたが、どのような傾向でデザインが行われているかという例をいくつか挙げさせてください。


E6系という秋田新幹線があるんですけれども、これのデザインを川崎重工の皆さんと一緒に、僕が監修という役割でJR東日本さんのためにデザインをしまして、既にこれが16両編成で走り始めています。営業運転は2013年ですから、まだ来年1年間テストをして、再来年の春に走り始めるまで綿密にテストを続けます。


この新幹線のすばらしいところはデザインとかそういう部分だけではなくて、実は今もう既に走り始めている「はやぶさ」っていう東北新幹線とこの秋田新幹線は自動で福島駅とか盛岡駅とかで連結をして、その状態で時速320kmでトンネルに出たり入ったりするわけです。日本のトンネルというのは周りの民家と近いところにあるという、ものすごくまれな成り立ちですので、トンネルに時速320kmで連結した状態で出たり入ったりすると音が低くて、周りの犬がほえたりとか、鶏が卵を産まなくなったりとか、窓ガラスが割れたりとか、赤ん坊が泣いたりということが起きます。先ほどの新幹線はこういうことがないように、実はこの長いノーズっていう部分に自動連結器を納めて、その後ろの客室までの断面積の間を完全に一定の変化率で全部作っていったんです。キャビンが上に乗ってヘッドライトが出たところを横でへこませるんです。それで断面積の変化率が全く同じように、ノーズから後ろまで作らなければなりませんし、なおかつ10cmの雪が積もってもかなりの高速で走れるとか、いろんな難しい条件があります。

中国で事故が起こりましたけれども、こういう電車を使って時速500kmで走るというのは、実は技術的には極めて簡単なんですけれども、それを日本はあえてやらない。今まで数十年間、一度も事故を起こしていない日本の新幹線というのは、ハードウェアだけじゃなくて、そのオペレーションシステム、全てが合わさって初めて実は世界で非常にまれな価値を持つ新幹線というものになります。英語にもなっている「Shinkansen」という全体のシステムに価値があるんです。ところがおかしいのは、後でお見せするアメリカの高速鉄道とか、ブラジルとか中国に売りに行く時に、日本人が一番その価値を分かってなくて、ハードウェアを売り込みに行こうとする。そうすると「うちの機械は時速320km出ますよ」と言っても「悪いけど中国の人は時速400km出てるって言ってるよ」とか。ハードとハードのプレゼンテーションをしてしまうわけです。ところがこれはカリフォルニアの政府の関係者から後で聞いたんですけれども、日本人が電車の売り込みに来てプレゼンテーションしていると、ちょうど……ちょっと危ない発言ですけど、北朝鮮がミサイル売りに来たみたいなもんだと。ハードの話をして性能の話ばかりするけれど、「僕らが求めているのはそんなところじゃない。僕らが求めているのは、これまで日本人が築き上げてきたシステムである。何で一緒に売り込みに来ないの」と。「いや、それはあちらはJRという製造メーカーですから」と言うと「そんなの関係ないだろ」と。「お客さんにとってハードウェアメーカーも、ソフトウェアメーカーも、それが合わさってひとつのシステムなんだから、それをバラバラに分けるのは業界側が勝手でしょ」と。「俺たちにバラバラにプレゼンテーションに来られたって、俺、何言ったらいいんだ。それがあなたたちのエゴだ」と罵倒されました。全くその通りだと思いました。システム全体で初めて意味合いを持つ、それが今ありとあらゆるさっきお見せしたようなものの全てに通じる価値なんだなと思った象徴が、このひとつの新幹線です。

これ、内装もすばらしくてですね、自分でデザインしてて恐縮ですけれども、秋田のちょうど稲穂の色を、普通車の方に採用しまして、これは非常にきれいな色です。で、田沢湖のブルーをカーペットに使って、それで本革を使って、グリーン車のデザインをしました。これはええと、まだ一年以上乗れませんけれど、出てきた際には是非乗ってみてください。


これが今走り出している実車でして、僕がもうひとつ非常に感激したのは、今六本木の交差点をフェラーリに乗ってて渋滞で止まっていても、子どもたちは誰も寄ってきてくれません。最近では女の子も寄ってきてくれません。ところが新幹線の先頭車両が東京駅に入ってくると、もう何十人もの、何百人もの子どもたちが、カメラ小僧が、カメラを持って新幹線を撮っている、と。これを見て僕はあのスーパーカーの時代を思い出しまして、これは一体何なのかな、と思ったんです。もちろんもう鳥肌が出るほどうれしかったんですけれども、だけど冷静に考えてみると、後で説明する自動車は、自動車のやるべきインフラ整備という一番大きな宿題をやっていない。だから街の中で全然生き生きとして使われていない。だからそのハードを見ても、いくら時速360km出る、750馬力のフェラーリだと言っても、六本木の交差点で座って、交差点の渋滞の中では、750馬力でアイドリングしていてもあんまり頭よく見えないんです。フェラーリを持っている方すいません。ですけども、フェラーリは箱根に行って、ちゃんと使われる状況に行って、初めてそのハードウェアは生きるんですね。自動車はそのインフラに対して一銭も投資していない。ただ乗りなんです。子どもたちは実はそういうところにものすごく敏感で、社会の正義がどこにあるかってことは子どもが一番よく分かってる。


新幹線っていうものは、時速320kmで走れれば、安全に人が死なずに東京駅から秋田駅まで今までより1時間早くこれで行けるっていうのは、圧倒的な正義です。これからまだもうちょっと速くなるでしょう。おそらく時速500kmくらいまで。これがあのハブモーターっていう車輪の中にモーターを入れる機械を使いますと、リニアモーターじゃなくても、ほとんど同じ構造で大体時速400km、500km出せるというように、技術的には言われています。そうなってくるとますますノーズは長くなるでしょう。たぶんトンネルに入っていく技術というのは非常に重要になってくると思います。実は僕、これを一度運転しまして、時速300kmで走っているところで操縦席に座らせてもらったんですけれども、電車ってなんかゆっくりカーブを曲がっているイメージがあるじゃないですか。でも結構なタイトなターンでして、あのフェラーリだったら絶対にブレーキを僕は踏むなっていうような速度で、新幹線っていうのはものすごいターンして入ってくるんですね。だからもう、ちょっとしびれました。自分の経験ばかりですみません。


そういうのを作っている技術というのが、川崎重工の職人さんが3mmのアルミの板をたたいて、それを溶接して、こうやってつなげて、それを磨いて組み立てる技術があるからこそ、今の現行車に比べてこれだけ複雑なノーズの形を、この人がいるからこういう形状が作れる。これはイタリアと全く同じで、職人さんが、今の最新鋭の技術と一緒にすばらしい技術を持ってこういうものをつくっているんだな、ということに僕は感激をいつも覚えます。

今国内だけじゃなくて、さっき申し上げたみたいにカリフォルニアの高速鉄道であるとか、それからそれ向けのビジネスクラスみたいなインテリアであるとか……これ、あの、食堂車ってあったじゃないですか。今あれないですよね。座席で食べますよね。アメリカほど、ブラジルほど、中国ほど、座席で食べるっていう文化は当たり前でして。じゃあ食堂車で何すんのっていうと、スターバックスなんです。皆さんスターバックスでも他のコーヒー屋でもいいんですけど、なぜスタバに行くのか?コーヒー飲みに行くんじゃないんですよね。スタバのコーヒーが死ぬほど好きだっていう人ってあまり聞いたことがないです。あんな高いのにですね、それでも行くのっていうのは、そこに人がいるから、そこに座ってなにか心地よい空間があるから、Wi-Fiが使えるから。そういうところに行くっていうのを、電車の中に一両編成のところを、あえて使おうっていうことで、その提案をしまして。そこにあるのがソファーです。フハッ、自分で笑っちゃいけませんね(笑)


皆さん既に乗っていらっしゃる千代田線の地下鉄も僕らと川崎重工の人たちで作りました。アルミでできていまして、非常に軽量です。これはシカゴの近距離鉄道とか、ワシントンDCのトラムっていうものとか、交通機関の話ばかりであれですけれど、こういういろんなものというのは、非常に社会的に意義があって、ものすごい楽しんで仕事をさせてもらってます。


車も実はやってるんですけれども、あまり車の話はできないんですが、唯一お話しできるのは、このk.o7っていう車がやっと4年間かけて量産までいきまして、2008年の3月にジュネーブで発表した車がこの前やっと納車になりました。だいたい月1台くらいのペースで山形で組み立てをちょうど始めたところで、それのこれから電気自動車版っていうのを作っていきます。


これは僕が運転していまして、サスペンションのいろんなハンドリングテストっていうのを公道で行っているんですけれども、ちょっと見たらエディ・アーバインみたいな人ですけど、元F1ドライバーのエディ・アーバインを雇うお金はありませんけれど、この人は実は日本に住んでいるピーター・ライオンっていう外人のジャーナリストなんです。いろんなテストを行ってます。


この後、(k.o7がオープンカーだったのに対して屋根をつけた)クローズ版のk.o8とか、その次の9とか、こういうものが出てくるんですけれど、何言いたいかっていいますと、うちは20人のデザイン会社です。小企業です。中企業にもならない。いろんな方に協力してもらったので資本金はちょっと多いんですけれども、20人のデザイン会社が、今や車を作れる時代になったんです。考えてもみてください。3000人いなくたって、3万人いなくたって、部品を集めて組み立てさえすれば、少量生産であればもう、車が作れるっていうそういうご時世なんです。これからいろんな業界で部品のモジュラー化が行われて、それで例えば自動車の電気化とかそういうことが起こると、ものすごく塀が低くなって、いろんな人たちが入ってこれるようになります。もちろん自動車メーカーでないとできないことっていうノウハウはすごくありますけれど、それでも象徴的なのは、たかだか社員が20名のデザイン会社が自動車を作れる、そういう時代だっていうことを覚えておいていただきたいな、と。


では何をしているかっていいますと、こういうお店を開きまして、そのショップの中でこうして自分たちの商品を売り始めまして、僕が今かけてるこのメガネとか家具とか小物とか、そういったものを売ってるんです。時計もこれから作り始めます。ちょっともうひとつ面白いことをやっていて、ぜひ皆さんに知っていただきたいことがあります。たった1台だけの「オートクチュールカー」というマーケットがありまして、これがそうなんです。

この依頼者っていうのがロサンゼルスの僕の歯医者でして、10年来ずっと通ってる歯医者がいつも治療に行く度に絵を持ってくるんです。「俺、車大好きだ」って言って、アメリカ人がこうやって車の絵を見せてくるんです。いいから早く治療してくれ、と。彼の絵は最初、すごく下手だったんですが、見ているうちにだんだんやっぱりうまくなりまして、そのうち、治療が終わった後に話があるって言われまして、座ってコーヒーを飲みながら話をしていると、「俺は医者やめようと思ってるんだ。カーデザイナーになりたいんだ」って。「やめとけ、歯医者の方が絶対儲かるから」って説得したんですけれども、最後には「でもそんなに車好きだったなら、自分の車作ったら?俺助けるよ」って言いました。彼はその後、夜間のアートセンターっていう大学に通いまして、もっとうまくなりました。この絵は実は僕じゃなくて、歯医者が描いた絵です。アメリカの歯医者がこれだけ描けるんですよ。

で、それを僕らは今モデルにしてあげて、僕がいろいろ直してあげて、世界にたった1台だけの車をここで今作り始めています。またこれ何を言いたいかっていうと、素人でも、今はコンピュータ技術と、自分がやりたいっていう気持ちと、ある程度の最低限の教育を受けて、それを10年間、15年間続けていくと、モノって作れるんです、プロの力を借りれば。で、逆にもちろんそれを作るのには100万、200万じゃ作れません。5000万でも作れません。やっぱり1億、1億5000万っていった数字になります。そういったものに、自分自身にやっぱり財力があるなり、奥さんを説得するなりして、そういったものを集める力がある人は、世界に1個だけのモノを手に入れられる時代になってきています。つるしのスーツの上のレベルのものを銀座に行ってオーダーできるように、自動車でも、いろんな業界でも、そういうことができる時代になってきているというのを知っていただきたいな、と。

ええと、さっきの職人技を生かしていろんなこういうKEN OKUYAMAっていうブランドを作って、それでこれは村田昇さんっていう非常にすばらしい写真家の方に毎年新作の写真を撮っていただいてます。


こういうカタログをずっと起こしていまして、これをちょうど今週末にはフランスの展示会に持っていって、また今年も展示します。


このメガネですね、皆さん馬鹿にしているかもしれませんけれどね、ここはメガネかけてらっしゃる方が多いからわかるかもしれませんが、普通の方ってメガネに1万円、2万円しか払わないじゃないですか。時計に150万円払う人に、その人のかけているメガネの値段を聞くと、1万円なんですよ。なんかおかしいな、と思って。それで福井の鯖江に行って、それで福井の鯖江でしかできないことって何かなと思ったらチタニウム、いわゆるチタンのプレスで、鍛造で作るフォージですね。それで作る技術で、ものすごく強くて造形力のあるメガネっていうのは中国でもどこでも作れなくて、福井の鯖江でしか作れないんですよ。それで作ったところ、これが8万7000円という決して安くないフレームなんですけれど、あえて今日皆さんに申し上げたいのは、メガネの利益率の高さでして、これ1個売ると、トヨタのYarisを10台売っただけの利益が、これ1個で上がるんです。


業界を超えて仕事をしていると、利益率とかものの売り方とかそういったことがこれほど違うのかな、ということにがく然としまして。皆さんも是非ですね、他の業界のことももうちょっと見て行かれると、見てらっしゃる方もいらっしゃると思うんですけれどね、意外と面白い発見がありまして。8万7000円のメガネ1個の利益が、トヨタ10台分の利益をこれ1個で出せるんです。だからこのメガネは結構うちでは儲けなしなんですけれども、こういう8万7000円の商品を、国産のメガネのブランドとしてどうやってブランド力を出そうかと考え、こういう戦略だとか、雑誌広告にいろいろ載せたりとか、テリー伊藤さんにかけてもらったりとか、後は久米宏さんとか、たけしさんとか、そういう人たちにいろいろかけてもらったりとか、そういうのもあります。後はやっぱりモノの魅力をきちんと伝える努力をして、作るだけじゃなくて、その作った人間たちとか裏側の世界観とか、そういう物語を正確に伝えることも実は僕らものづくりの、あるいは皆さんの役目なんだな、と。ゲームを売ってよし、作ってよしじゃなくて、その大変だったところとか世界観だったりとか、派生する商品とかを作って初めて商品は成り立つんだな、と。

皆さんご存じのようにハリウッドの映画が近年、最低200億円とか300億円とか投資を要しますね、作るのに。それを映画だけで回収することはほとんどもう無理ですので、当然のことながらマーチャンダイジングでいろんな横展開をして、それを経て初めて利益になる、と。映画のヒットいかんっていうのは実はそれほど重要じゃなくなってきている。これはビジネス的な意味合いからですね。もちろん映画がヒットして初めてものが売れるんですけれども、そういう風に全部がつながっている時代になってきているんだな、とつくづく感じています。

デバイスとインフラの話を今日はくどいってくらいしています。その典型が分かりやすいです。


OSがあって初めてアプリも売れるしハードウェアも売れる、と。


で、車で非常に今問題視されているのは、僕はさっき「ただ乗り」って言いましたけれども、インフラを全く作らないで、インフラに対する投資ってものを一切しないで、ハードウェアだけ売ろうと思ってもなかなか売れない。ですから日産のリーフのリチウム用電池を車としての寿命が終わった後、固定用として家で使ったりと、そういうことも提案してる。それで初めてこの車が成り立つというのが日産はよく分かってらっしゃるので、そういう風な展開を始めている。モビリティっていう意味合いでも、全く同じでして、いろんなデバイスを作るにはスマートグリッドとかスマートシティっていうものがこれからごく当たり前に皆さんの生活の中に入ってきます。その中で果たして自分が何ができるのかというのが、またビジネスチャンスにつながると思うのですけれど。


そのひとつの例として、私が参加し始めて2年くらいたつのですが、アラブ首長国連邦の70%の面積を持つアブダビという国がありまして、ドバイの隣ですね。ドバイもUAE(アラブ首長国連邦)のひとつですけれども、そのアブダビの街の郊外に9万人が住む街を今、人工的に作っていて、それがまあ2013年には完成すると言われています。これが何が特徴的かっていいますと、これはノーマン・フォスターが設計しているんですけれども、この絵と次の絵だけはノーマン・フォスターの絵なんですが、その後は僕の絵です。これが、いわゆる二酸化炭素を一切使わないで作られて、その後も二酸化炭素を一切使わないで運営される予定のいわゆる「スマートシティ」と呼ばれるプロジェクトの世界で最大規模のものである、と。これが中国とか韓国とかニューメキシコとかそういうところ、世界中のいろんなところでこういうのが起こっています。その中には、こういうアーケードであるとか、天井の太陽電池の仕組みであるとか、中のいろんな開閉する屋根だとか、そういったものっていうのがいろんな技術者が組み合わさって、非常に心地よい街を今、人工的に作っている。


なぜ産油国がこんなことしているのかというと、これには深い意味があって、皆さん是非考えていただきたいんですけれども、今2011年ですね。アブダビっていう国は今から45年~50年前に原油が初めて出ました。それ以前は貧しい漁村だったんです。首長国の首長の人たちはいまだに戸籍を持っていません。戸籍っていう仕組みのなかった頃に生まれた人たちが、今これだけ豊かな国のトップになっている、と。彼らは今の原油の埋蔵量を考えると、今後おそらく50年もたない。ひょっとして計算違いがあって、70年ぐらいに伸びるかもしれないけれども、おそらく彼らの綿密な計算からすれば、大体50年で世界の原油はなくなるであろう、と。50年でもしなくなるのだとすると、石油が絶対なくては成立しない航空機、考えてください、飛行機、燃料なかったら飛ばないですよね。電気モーターでまだ飛ぶ飛行機ってできてないですし、原子力エンジンで飛ぶ飛行機って子どもの頃はSFでありましたけれど、そういう石油無しで飛ぶ飛行機というものが量産化されるのにはおそらくまだ20年か30年必要で、原油がなくなるまでには間に合わないです。そういうものとか後、国防、国を守るもの。後はプラスチック。石油がなかったら絶対に作れないし、絶対に動かないものに対して、石油がなくなりそうになる後半の25年はおそらく使わずに残しておきますよね。それか、もう値段が高沸しちゃって、商業的に計算が合わないので、他に選択肢を持つ自動車のようなものには、25年後、長くて30年後には石油は回ってこないと考えていいと思います。それをメーカーの人たちじゃなくて石油を掘ってる人たちが言ってるから怖いんです。ひょっとして彼らも間違ってるかもしれない。今日ここに危機感を煽るために僕は今日来て話をしてるわけじゃなくて、それが現実なんです。


さて、そんな中でどうやって生活を楽しもうかな、というのがポイントでして、そうすると、原油国っていうのは自分たちが過去50年間に蓄えた富を使って、技術を集めて、人を集めて、スマートシティを作って、それでその実証実験をする、と。


技術とか人っていうのはお金があるところと、実際に実験をして実用化したところに残るんですね。技術は、あるいはアイディアは、発明したところには残りません。技術は使った人のところに残ります、マーケットとして。だから日本人が作ったアイディアなんだって言っても誰も見てくれなくて、お金を出して採用してくれて、実際に使った人の技術になります。それが現実なんです。皆さんもよく分かってらっしゃると思う。金出して使った人勝ちなんです。作った人じゃないんです。


だから彼らは、それに対して投資をして、人を集めるために金を出して、アブダビにF1を連れてきて、アブダビに今フェラーリのテーマパークってありますね。それを作って、世界一速いジェットコースターを作って。で、その前に彼らの投資会社がフェラーリっていう会社の株式の5%を買って、なんのことはない、それでアドバルーンを上げて、ノーマン・フォスター連れてきて。で、僕らはこの次のページからの絵を描くのにアブダビから一銭ももらえませんでした。あなたたち、日本政府から金もらってから来なさいよ、と。ということで経済産業省の方とか、地方行政の人たちから、僕らは一緒にコラボレーションとして、砂漠のど真ん中に行ってこういう仕事をする、世界中からこういう人たちが集まってきている。皆さんお金を持って、パートナーを持って、技術を持って、それで来るわけです。それで実際にみんなが集まってものを作ると、その個々の技術が予想してなかったとんでもない副作用が起こって、たいていの時は面白いことが起こって、商品化になる……ということをやりたいがために、わざわざ自分で金を持って、技術を抱えて行くわけなんです。だから日本は技術立国だって言いますが、そのポイントっていうのはものすごく間違っていて、技術単体には価値はないんだ、と。それをどうやって使うか、むしろ人の技術でもどうやって日本に来てもらうかということが大切なんだと思ってます。

スマートグリッドのスマートメーターとか、いかにして電気自動車の電気を売り買いするか、充電するだけじゃなくて夜間余った電気を売るかという2方向のもの、場合によっては太陽電池でこれをオペレーションして、場合によっては太陽電池で車を充電することができる仕組み自体を作って、デザインしてということを、「カーデザイナー」が今やるわけです。


バッテリーひとつで航続距離が150km、200kmであれば、バッテリー交換すればいいじゃないか、と。これはまあ技術的には非常に難しいところはあるんですけれども、地下の冷蔵庫にリチウム電池を何千個も蓄えておいて、どこに何の種類の車が走っていて、これから電池交換に行きますよということを車がステーションに無線で送って、行く前に準備をしていて、来たら即2分間でバッテリーを交換して、次に行く。次の車が近くに来るっていうことは既にもう30分前から連絡が来ていて、これで自動的に交換するっていう仕組み自体を作れば、バッテリー1個での航続距離が足りなくても、200km、300km走れるようになる、と。


それからもうひとつ、第3の交通機関と書いてますけど、これはパーソナルとパブリックの間に入る第3の交通機関。


パーソナルというのは自転車とか自動車とかオートバイとかそういうものですね。パブリックっていうのは電車とか飛行機とかそういうものです。今の問題は、その両方とも問題を解決しないということなんです。65歳、70歳の人がおむつしながら軽自動車乗ってるのが今の日本の田舎の実態ですよね。それで乗れるのかというと、ぶつけながら、ぼこぼこにしながら皆さん乗ってますよね。それでドア開けるともうおしっこ臭くて、それが日本の本当のパーソナルトランスポーテーションの現実で……。ただ彼らは車取られちゃったら、スーパーマーケットにも行けない、と。息子はこうやって偉そうに横浜で講演しているけれど、親はおしめ履いて臭い車に乗っている、というのが本当に僕自身にとっても現実なんです。ところがその人が、公共の交通機関、パブリックトランスポーテーションに乗れるかっていうと、山形みたいなところだと、僕は出身が山形なんですけれども、もうバスが通ってないですから。タクシーに乗れば、一番近いスーパーマーケットまで片道2000円で、往復4000円ですよ。東京からここよりは安いけど、実際にバスなんて来ないですから。

世界中にそういう人たちがたくさんいるので、そういう需要はすごくある。例えばこういう自動操縦の車が、6人の人を運んで、乗り合いで目的地まで行ければ、問題解決しますよね。自動操縦なんてそんなロボットみたいな車作れんのかって、もう20年間も30年間もやってるじゃないですか、テーマパークで。この前ディズニーシーに行ってきましたけれど、あそこのあのアクア……なんでしたっけ、というのが、あれは川崎重工のシステムの人たちが作った仕組みで、30cmごとに三角形のセンサーが入ってまして、それが全くレールがないところを、タイヤの跡を見ると全くずれずに同じところを走っていく。それぐらいの精度を持つものがGPSでもできますし、もう技術は既にあるんですね。それがなぜ生産されていないかというと、量産メーカーがそれをやって、事故があって、一番最初に誰かが必ず死にます。死んだ時の責任が持てないから、メーカーとしてはそれを持ちたくないから、そこのビジネスに入っていきたくないっていうのが一番大きい理由です。だから例えば運営業者がいて、レンタカー会社みたいな人たちがこの車を100台売って、それでちゃんと乗る人にサインをしてもらって、責任を負わせません、と。そういうことをして、これが自動で走れるようになったら、自動操縦の車が日本中で5年以内に確実に走れるようになります。

アブダビではこの2マイル四方のここのところに3000台のこの車を配置して、9万人の人たちを自動操縦だけで動かすという実証実験をもう既に始めているわけです。もちろんエラーもあります。大変な部分もこれからたくさんあります。でもそういったことをやっていかないと、人間は動けないんです。動いて初めて全体のライフスタイルを維持できる。個々でポイントとなるのはプライベートかパーソナルかということじゃなくて、どういうサービスを提供しているかというそのサービスの内容なんです。


例えばオンデマンド、今もうスケジュールがあってそれでここで待ってて、今来たから乗ったというのは嫌ですよね。電車で一番嫌なところはそれなんで、僕は乗りたくないんですけれども。それとプライバシー、嫌ですよね、隣の臭い人の横に立つのって。女性の方なんかは絶対嫌だと思います。プライバシーはこれからは公共の交通機関の中でも必要となってきています。ですから僕らが今デザインしている電車というのは、実は細かい仕切りがありまして、人は中を向いてなくて、外を向いているんです。ここに小さいテーブルがあって、ラップトップがあって、新聞読んだりとかできるのが公共交通機関。真ん中のところにも壁があって人を見なくて済む、それが公共交通機関のこれからの姿。それくらいプライバシーっていうのは重要で、それから全体効率が重要で、それからもうひとつは非所有社会、クラウドですね。クラウドは全ての業界に起こってきます。ものは所有しなくてサービスだけを受ける社会になってくる中で、さて僕は、皆さんはこれからどういったことをビジネスのネタにしていくのか。

さっきスタバの話を電車の話でしましたが、これも同じです。セブンイレブンやスターバックスみたいなものが、電池交換のステーションとか、充電のステーションとか、そういうものとして機能して、それでそこにスタバに来てもらう、セブンイレブンに来てもらう、ローソンに来てもらう、ということじゃないんです。そうじゃなくて、ローソンにこういう充電ステーションを後付けで付けるんです。その順序になるんです。人は一番便利なものに集まっていって、その便利なところにデバイスを作っていく、そういう風な順序になっています。例えばこのセグウェイという、僕も日本セグウェイの方々とアドバイザという形で仕事していますけれど、その技術を使って2輪のこういった1人乗りのカプセルカーがあります。雨が降っても大丈夫、中にエアコンが効いてる、そして電気で走る、と。で、これがコミューターで、ちょっと長距離を走る時にはこの空母みたいなものに乗せて、ちょっと遠くまで5km以上のところは乗せて走っていってもらう、と。こういうカプセルカーっていうのは十分可能なんですね。これはもうGMなんかは既に量産を始めてまして、社内版でもこういうデモンストレーションありました。


僕がもっと面白いと思うのは、高層ビルの横っ腹の駐車場で、下に来るとこれがエレベーターになり、自分の部屋のところまで上がって来て、そこがオーディオルームになって、喫煙室になる、と。


「あなた外でタバコ吸ってよ」って時とか、「音ガンガンでオーディオ聴きたいな」っていう時は、そういうところに入っていって、タバコを吸ったりオーディオを聴くわけです。「音を上げてゲームしたいな」っていう時はそういうところに入ってゲームをするわけです。で、これを買うと高いじゃないですか、500万とか。これがマンションの20年ローンの分割の一括でマンションと車が一緒に買えたらいいんじゃないかというビジネス提案をしましたら、非常に喜びまして、これが駐車場問題から何からエレベーターからそういったことを解決するひとつのきっかけになると思って提案しています。まあ、量産になるかどうかは分かりませんけれど。

それだけでは面白くないんで、この電気自動車のリムジンっていうのは実は5mの長さで、ここに全部のコンポーネントが入っているので、中に10人入れるんですけれど、それじゃもったいないので、非常に豊かな人たちに2人乗りでロボットの運転でこういうリムジン作ったら面白いんじゃないかなと思って、こういう提案をしています。


さて、今日のまとめになります。今日はニーズとワンツの話をしました。僕らは価格競争じゃなくて価値競争にこれから入っていこう、産業の枠を壊して初めていろいろなことができる、技術というのは「食材」で商品というのは「料理」だ、と。技術を売り物にしたって新鮮な魚をただ売りものにしているようなもので、それを料理して初めて商売になる、と。いろんな狩猟型開発から、最初から農耕型開発をしましょう。「ものづくり」だけじゃなくて、「ことづくり」をしましょう。個人力と団体力の中で、もうちょっと団体力をつけよう、と。


最後の一枚です。今日のタイトルにもなったムーンショットっていう言葉なんですけれど、今日この言葉を皆さんにお送りしてお話を終わりたいと思います。僕はこの左側の車が大阪万博に出てきたのを見まして、感激してカーデザイナーになることにしたんです。


これはその前の年の7月に、ご存じアポロ11号が月面着陸をしたのに感銘を受けたイタリア人のデザイナーが、月面着陸船のデザインとアポロ11号の色をもろそのままベタなまでに乗せてこれを作った。非常に分かりやすいデザインなんですけれど、未来を端的に表してますね。この車っていうのは、あるいは1969年のアポロ計画というのは、ご存じジョン・F・ケネディが1962年に有名なスピーチをしまして、「この10年のうちに人類を月に送る」っていうスピーチを聞いた大学生の卒業生たちが感激して、できたばかりのNASAに入って、平均年齢なんと28歳のエンジニアがアポロ計画の月面着陸を成し遂げているんです。28歳ですよ。38歳、48歳じゃないんです。28歳の若者が人類を月に送っているんです。28歳を超えた人、僕を含めて焦りましょう。それだけ若者たちが感銘を受けて夢を持って集まって、あれだけの偉業を成し遂げた、と。このことはなにか、覚えておくことなんじゃないかと思います。それに感銘を受けた人たちがこういう車を作って、それに感銘を受けた僕みたいな馬鹿がこういう電気自動車を作ったりしているわけです。

ムーンショットというのは、「That's a moonshot」とか「He is in the moonshot shell」とか言うとですね、月に向かって鉄砲を撃つ、と。初速と同じスピードで弾が落ちてきて自分に当たって危険だとか、あるいは絶対届くわけがないということで、不可能で危険なことに挑戦する馬鹿なやつだという言葉の意味だったんです。「That's a moonshot」って言うと「また馬鹿なことやってるな」と。でもアポロ計画で月面に11号が着陸した後、ディスカバリーチャンネルがムーンショットっていう番組を作りました。要は、不可能だと思われても、それに向かって夢を持って努力すれば、それはかなうんだ、と。その可能性はあるんだという意味に変わってきたのがムーンショットっていう言葉です。

僕の大好きなこのムーンショットっていう言葉を皆さんに今日お送りして、今日の僕のつたない話を終えようと思います。どうもご清聴ありがとうございました。

質問者:
大変心に響く講演ありがとうございました。ひとつお聞きしたいんですけれど、個人力と団体力の話をはじめの方にされていましたが、日本の組織というと非常にヒエラルキーというか上下関係が強いという印象がありますが、僕も今年就職活動っていうのを体験して、目上の方に率直に意見を申し上げるというのがやりづらいなと思った瞬間がいくつもありまして、そういうときにできればもっと自分の本心を素直に伝えたいのに、そういう壁がどうしても日本人同士だとできてしまうというのが残念だと思ったんですけれども、これについてなにか改善案とかお持ちだったらぜひ奥山さんからの意見を伺いたいと思うのですが、よろしくお願いいたします。


奥山:
ええとですね、話しづらいって言っている方はまだいい方で、大抵皆さんもうなんやかんやメールで送りますよね。Twitterで送ったりとか。それが横行しているので今非常にいろんな関係はさらに悪化しているんですけれどね。なぜかっていうと、さっきも言ったみたいに日本語で目上の人に合わせていくのって非常に大変じゃないですか。ただそれははっきり言って目上の人が目下の人たちよりも価値を持っていた時代には、目上の人を敬う意味が仕事場であったわけですね。残念ながら今の業界で技術がこれだけ早く変わって、これだけビジネス自体の形がどんどん移り変わっている中で、正直目上の方がより高い価値を持っているケースって少ないんです。


ただこれ、もうひとつ理解していただきたいのが、僕さっきひとつのコミュニティって言いましたよね。自分の家庭とか学校とかよりも重要なコミュニティが、会社っていうコミュニティになってて、そこでみんなで一緒に暮らしてるんですよね。そういう意味を考えると、仕事の内容だけを考えるよりも、やっぱその目上の人を敬って、みんなで楽しく仲良く仕事をしていくっていうことで、要するにファミリーなんですよ。会社がファミリーだって言うとなんかゾゾゾってしますけれど、それは本当は自分が過ごしている時間が一番長いですよね。そういう意味で、ちゃんと必要な意見を言わなきゃいけない、ちゃんと意見交換しなきゃいけない、でも敬わなきゃいけない。難しいです、これは。


世界中でこれは今起こってますよ。めんどくさかったら英語で話せばいいんですけどね。英語で話せば一発で簡単なんです。言葉っていうのは、考える言葉。要するに言葉っていうのは考える道具なんですよね。日本語っていう道具を使って考えた時と、英語を使って考えた時と、イタリア語を使って考えた時と、山形弁を使って考えた時と、僕も思考回路が違いますよ。下手なドイツ語を使うとまた変わる。要は言葉の成り立ちで、実は表現だけじゃなくて自分の考え方も変わるっていう、ものすごく実は画期的なものが言語なんですよね。だからどこかの会社が標準言語を英語にしたっていうのはすごくよく分かりますし、ものが言いやすくなるんですよね。


だから、これはですね、自分で考えてください。

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in 取材,   デザイン, Posted by darkhorse