インタビュー

Key最新作「Rewrite」シナリオ担当の都乃河勇人さんインタビュー


Kanon」「AIR」「CLANNAD」そして「リトルバスターズ!」と数々のゲームをヒットさせてきたkey。6月24日(金)に最新作「Rewrite」が発売されました。

これを作り上げたスタッフたちはどのような人たちなのだろうか……ということで、今回は「Rewrite」のメインスタッフたち、シナリオ担当の都乃河勇人(とのかわ ゆうと)さん、key作品の数々で原画を担当し今回は企画・原案としてクレジットされている樋上(ひのうえ)いたるさん、そして音楽担当の折戸伸治(おりと しんじ)さんにいろいろと話を聞いてきました。


まずはシナリオ担当、都乃河勇人さんのインタビューからです。

GIGAZINE(以下、G):
一番最初に、シナリオを書くにあたって、プロとして気を付けていること、心がけていることはありますか?

都乃河勇人(以下、都):
僕はシナリオ以外にも色んなことをやったりしているんですけど「ユーザーがこれを受け取ったときどう思うか」ということだけは常に頭において、その視点だけは見失わないように気を付けて作っていますね。

G:
どのようなユーザー像を想定しているんですか?

都:
そうですね……多角的に見ているというか、例えばライト層だったらこう思うだろうけども、ディープなファンで考察とかもよく読んでくれる人だったらこう感じるだろうとか考えています。結局、ライトな人だけに向けて作っているわけではないし「この文はきっとディープな人ならわかってくれるだろう」という風に割り振って考えてるって感じですね。

例えば、ギャグシーンだったらものすごいライトな人向けにガーッって作るけれども、すごいシリアスなシーンや、伏線が解消されるような仕掛けのあるシーンとかだったら、ちょっとディープな人向けに作っちゃったりします。

G:
伏線を張ったりするときは頭の中で考えてやっているんですか?それともある程度書き出して「じゃあ、ここはこうで……」みたいに考えるんですか?

都:
書いているときに思いつく仕掛けとかも結構あったりするので、そういうときは巻き戻って作ったりもしますけれども、基本的には最初にこういうものを作ろうみたいなプロット自体は存在しているので、それを下敷きにおいてます。

ただ、プロットも割と流動的なもので、あとから「これはこういうことだった」と思いついたりするので……うーん……一概に最初からとも言えないし、後から思いついても面白ければどんどん入れていくっていう感じですね。

G:
なるほど。2008年に「1時間ぐらいにだいたい2000文字ぐらいは書けるんじゃないか、絶好調だったら25000文字ぐらいは12時間ぐらいですっ飛ばして書けるんじゃないか」みたいなことを書いたものがありましたが、あれから書く速度は上がりましたか?

都:
下がるでしょうね、多分……。作家さんで上がっていく人はいないと思いますね。最初のうちのほうが、書きたいこととかいっぱいあるし、ネタのストックもあるだろうから、割と素直に書けちゃうと思うんですよ。

今は、ギャグとかが完全にネタ切れ状態で(笑)、なんか思いつかないといけないなって考える時間がどんどん伸びてます……

G:
では「Rewrite」は割と難産だったのでしょうか。

都:
今回は一緒に製作する方々、ライターさんたちがいたので、合わせるのが難しいなというところはあったりもしました。

G:
合わせるっていうのはどういう感じなんですか?

都:
基本的に自分はサブライターなので、やっぱりメインライターの人に近づけるように努力しているっていうのはあります。前回の「リトルバスターズ!」の時のメインライターは麻枝准さんで、自分は麻枝准テキストで育ってきた人間ということもあるし、元々自分の作風にすごい近いところがあったのでやりやすかったんですけど、今回の田中ロミオさんのテキストはですね、真似できない。

できる限り頑張りましたけど、やっぱりテキストを掴むまでの時間が長くて、何十回となく読み直したり、テキストを1文書いたら、それと似たようなテキストがロミオさんのものにないか探したりしました。

G:
今はもう完璧にそれっぽく書けるようになったと……

都:
無理です!無理!(笑)

G:
やっぱり難しすぎる?

都:
逆に、今回はKey作品っていうのをロミオさんのほうが意識して書いてくれてるんですよ。でも、やっぱり意識して書いてもらっててもロミオさん独特の文体とかそういうのは全部残っていますね。そういう独特の部分って誰にもコピーできないと思うんです。

G:
じゃあ、今回は都乃河さん自身のカラーっていうのは極力出さずに書いたんですか?

都:
半々ですね。やっぱりメインに合わせるっていうのもあるし、ギャグとかそういうところである程度崩さなきゃいけないときは、どうしても自分の地が出ますね。


G:
2008年に都乃河さんが答えていた質疑応答の中で気になっていたのが、「初コメになります。仕事やプライベートで嫌なことがあって落ち込んでいる時、何か(誰か)自分を元気づけてくれるものってなんですか?」っていう質問に対して「詳しくは恥ずかしいので書きませんが、Ritaさんからいただいた言葉が今でもシナリオライターを続ける原動力の一つです。もっとライターとして成長できたとき、どこかでそのことを改めて言おうかな、と思っています。」と答えていたことです。あれから2年以上経過しましたが……

都:
まだ全然言うべきときではないです(笑)

G:
まだ全然?

都:
まだまだ精進しているつもりです。

G:
ちなみにその言葉というのは、今回も思い出してまた奮い立たせてくれるという感じだったんですか?

都:
元気づけてくれるって言葉というよりは、座右の銘というか、常に自分が作品を作る上で念頭に置いて考えなきゃいけないようなことだったんですよ。なので、今後も一生その言葉は使い続けるというか、持っていくという感じですね。

G:
これからもまだまだ成長するということですか?

都:
日々成長でございますよ。

G:
おお!かっこいいですね、そういうの。

都:
ただ、こう言うと「今は全然未熟状態だ」って思われそうですごい嫌なんですよ。

G:
いやいや(笑)

都:
今よりも更にということを言っているだけであって、新しいことや他に今やってないようなことにチャレンジしたいし。そういう意味で幅を広げていくって感じですね。

G:
「自分は脚本と雑用です。『こんなことまでやってるの?』と言うほど色々なことを任せていただいてます」という内容もあったんですが、今回も脚本以外にも何か担当されたんですか?

都:
色々ありましたね……


G:
例えばどんなものがあったんですか?

都:
今は折戸さんに大分やってもらってるんですが、効果音作ったり、後は収録した音声を加工したりだとか……落書きしたりとか。

G:
落書きというと?

都:
「Rewrite」の作中で静流が頭に変なものを思い浮かべたりするんですよ。その落書き原案を描いたりとか。

G:
そういうのは「都乃河さん描いて」と誰かに割り振られるのですか、それとも自分でやらざるを得なくなってくるんですか?

都:
誰かに伝えるより自分で描いた方が早いというのがありますね。効果音とかもそうですが、イメージを伝えるというのはやはり難しいので、すぐできることなら自分で作るのが一番早いなと思って。

あと、生来のいたずらっ子なので、こんなことやると面白いなぁとかやりたくなるんですよね。今回もちょっと音声をいじる関係で色々面白いことやってるんで、そういうところもぜひ注目してくれたらなぁと思ってます。

G:
そういえばサウンドスタジオで姿をお見かけしましたが、何か作業を?

都:
あれは単純に、役者さんの演技とかの監修ですね。必ずシナリオに携わった人間がその場にいて演技チェックを行うというのがあって。

G:
演技監修ではどういった部分のどういう演技が追加されたりするのでしょうか?

都:
なんだろなぁ……文章的にはこうもとれるけど、実はこうなんだよみたいな。結構テキストだけじゃ伝わらないニュアンスとかあったりするんですよね。一見このテキストだけを見るとすっげぇ怒ってるみたいな表記でも、実は笑ってるんだとか、マジで言ってるんだっていうのがあったりするので、そういうところを全部チェックして言わなきゃいけないんですよ。これは書いてる人にしかわからないので。

G:
それで同席して、指示を出してっていう感じなんですね。

都:
東京にいるときは、オペレーターもやっていました。指示だけじゃなくて自分で音声をいじったり何だったり……色々やりました。

G:
へぇー……本当に「なんでもやる」なんですね(笑)

都:
いえいえ。ビジュアルアーツっていう環境が割とその辺りはやりやすいように作ってくれているので、自分でも色んなことができるっていうのがありますね。正直、自分だけ外に放り出されても何もできないですね。

G:
なるほど。ちょうどお聞きしようとしていた内容として、過去の発言で「ゲーム作りに大切なのはコミュニケーション能力」っていうようなセリフがあり、これはどういう様なときに実感する言葉なんだろうって思っていたんですが、要するに一人ではこんなの絶対できないだろうみたいなところでしょうか。

都:
そうですね。これはもともと麻枝さんが言っていた言葉なんですけれど、やっぱり自分一人では絶対出来ないこともあるんですよね。一人じゃ絵も描けない、音も作れない、役者さんみたいな演技もできない。

そういうときに伝えるべきことは伝えなきゃいけないし、相手がこうしたほうがいいんじゃないかって言ってきたときはそれに対して答えなければいけない。一方通行ではないし、やっぱりそのやりとりがいいゲームを作るのに大切なことなんじゃないかなぁと自分は思います。もちろん、中には全部一人でやってそれが一番いいっていう天才もいるので一口には言えないですどね。自分はそういうスタンスかなぁ……

G:
なるほど。

「ビジュアルアーツに応募した作品が審査の方の目に止まったという経緯があり、そのときの没作品は原稿用紙600枚超で少女が主人公の小説という業界ではありえないことでした」ということを過去に書かれていますが、これはどういう内容だったんですか?

都:
超はずかしいんですけど(笑)

G:
ざっくりと……

都:
えー……

G:
これから先、どこかで再び日の目を見る可能性が……?

都:
ない、絶対ない。

G:
どんな内容だったんですか?

都:
水族館で……なんか、女の子がイルカと、それと戯れる男の子に出会ってラブストーリーが進んでいくみたいな、すごい少女小説ですね。コバルトに載ってるんじゃないかというような。

G:
ええー!それは「マリア様がみてる」みたいな雰囲気だったんですか?

都:
いや、普通にガチの恋愛ものでした。

G:
確かに珍しいですよね、そういうので応募って。

都:
でも、この業界に入ってからは、ちょっとそういうのはないなぁって。

G:
なるほど。それで「そのあとちゃんと別に正式な応募作を作ってあります」って書いてあったんですね。

都:
そうなんです。


G:
「学生時代は吉里吉里というエンジンを使って、自主制作のノベルゲームを作っていましたが、絵や音がなく公開には至りませんでした」とのことですが、このころはどういったシナリオを書いていたんですか?

都:
普通に学園ものですね。学園ものなんですが、最終的には世界が崩壊するというわけのわからないものを書いていました。

G:
スクリプトや表示形式など、この時に触っていたものが経験になって生きているという感じでしょうか。

都:
そうですね。

G:
結構役に立ちましたか?

都:
あれは、立ち絵を入れるとか、クリックしたら文章が進むとか、そういうので自分なりのリズムとかができたりするので、やっておいて損はないと思います。

G:
自分の中のリズムって、どういうようなものなんですか?

都:
文章のリズムですね。普通の小説とは違って、ゲームってクリックして進むじゃないですか。その、気持ちのいいクリックするタイミングみたいなのが割と作家さんによって割と個性がでるんですよね。田中ロミオさんなんかみてると、1文あたりが長文が多かったりとか、竜騎士07さんなんかは、とにかく1つのウィンドウにどんだけ詰め込めるか、情報量をいかに詰めるかみたいなのがあったりして。そういうものがあらかじめ確立されているとすごい素直にクリック打ちの指定ができたりします。

あと、立ち絵なんかがどういう理由でこのアルファベットと数字の羅列で指定されているのかっていうことですね。ああ、これが立ち絵指定か、とぱっと見てすぐわかるような感じだったので。

G:
あとは、色々と注文された内容でテキストを書いていくと思うんですが、過去に「こんなのどうやって書くんだ」とかめちゃくちゃ困ったような発注内容というのはありますか?

都:
いや、特にないんですよね。むしろいつも困らせる方なんですよ。


G:
困らせる方?

都:
自分からめちゃくちゃを言って、なんか演出なりなんなり…ホントにするの?みたいな。

G:
周りの人たちが困ってしまうと。

都:
そうですね、「そんな音知らんわ」とか言われるんですよ。知らんわ、とまでは言われませんけど「どんな音かわからん」って。いない生物の鳴き声とか。魔法的な爆発の音とか。

G:
そうなってくると大変ですね。

逆に、今まで苦労してきたと思うんですけど、書いてて今まで困難だった場面とかめちゃくちゃ詰まったとかあるんですか?そんなことはあまりないタイプですか?

都:
たいてい、物語の途中で1番つまりますね。

G:
途中というと、真ん中あたり?

都:
多分ユーザーさん的には1番どうでもいいような場面です。そこらへんでだんだん疑問に思えてくるんですよ。

G:
疑問というと?

都:
やっぱりなんか、ギャグであったりとか、盛り上がるシーンであったりとか、そういうところに入るとすごく早く進むんですけど「どうでもいいシーン」というのは絶対に存在するじゃないですか。そこが「どうでもいい」ということが一時期許せなくて、何かしら入れようみたいな感じで頑張ったけれどどうにもならなくて、最終的になんかちょっと……とギャグ一言だけ挟み込んで終わったみたいな感じになりました。何かしらやろう、でも思いつかない、っていうようなところが1番発生するのがどうでもいいような場面です。


G:
言われてみると、確かに詰まりそうな気がしますね。だいたいいつごろぐらいから、文章を書くということ自体は昔からずっとやってたんですか?

都:
小6のころ、ノートに物語的なものを書こうとしたことが……。自分はあまり絵が描けなかったので、箇条書きではあるんですが、ものを書き始めたのはその時からですかね。

G:
書こうと思うようになったきっかけとかはあるんですか?

都:
漫画家になりたかったんですよね。で、なんかの本を読んでたら、漫画家はネームというようなものを書く。まず最初にノートに物語を文章で書くってあって、それで文章に書いた感じですね。

G:
それから、書くペースっていうのはほぼ毎日書いてたんですか?

都:
いや、ばらばらでしたね。当時、部活とかも忙しいし、受験とかもあったりして途絶えた期間もいっぱいありました。毎日続けてるって感じではないですね。思いついた時にガーッって書いてた感じ。

G:
今のこの道に進もうって決意したきっかけは?

都:
麻枝さんに言われたんですよね。今はもうないんですが、かつて麻枝さんがやってたサイトがあって、そこの掲示板の常連の痛い信者をやっていたんです(笑)

その時、麻枝さんが突然「シナリオライターを目指そう!」って言い出したんです。「なんで!?」って言ったら「君、まだ若いし、芽があるから」みたいなことを言われて。その時の「芽がある」というのは、掲示板のテキストぐらいはまともに日本語が書けるというレベルだったと思うんですが、それを何か勘違いしてしまったのか、「じゃあ俺がシナリオ書いてやろう」と。物語を作るのは好きだったし。この業界でライターやろうって思ったきっかけはそれですね。


G:
ライターをやろうと思って、何か特別にしたことはありますか?

都:
全然なにもしてません(笑)多分……普通の作家さんぐらいか、それ以下です。普通に物語を書くといってもペース的にはそんなに多くもなかったし。ただ、物語は最後まで完成させるというのが一番大事だと思うんですけど、その数では結構な量だと思います。

G:
やは、作品というのは最後まで完成させてナンボですか?

都:
途中までなら誰でもできるんですよ、特にシナリオ、文章書きというものは。いかに風呂敷を畳んで最後まで終えられるっていうことが大事だと思いますね。面白い部分だけ書いて終わりっていうのでは自分が楽しいだけで終わってしまう。「起承転結」のきっちりしたものが面白いからその形が正しいとされているわけで、だからきちんとそれを仕上げられないと、面白くはないし。

G:
きちんと仕上げられるようになったのっていつ頃ですか?

都:
逆にいうとなんか……完結しなかった作品ってほとんどないですね。

G:
おお!すごいですね。

都:
あ、すいません。ちょっと嘘つきました(笑)小6のころのやつとかは完結しなかったですね。

G:
でも、中学生ぐらいには完結させられるようになっていたんですか?

都:
そうですね。

G:
おおお、すごいですね。

都:
中学生のときに書き始めたのは、高校1年になってようやく終わった、みたいな内容ですけど。

G:
それでも完結できるんですね……もう、最後らへんの質問なんですけれども、先ほど途中あたりで聞いた中で、今はまだ成長途中ってことだったんですが、自分で書いてて成長したって感じるときってあるんですか?

都:
実感はないですね。既に完成されているかもしれないですが、実はまだ上があるみたいな感じということで。

G:
上には上があるみたいな?

都:
そうですね。基本的にもう作家ってここだってとこないと思うんですよ。もう満足したって人間って、世に出て認められて初めてそこで満足したみたいなことを言う人もいるだろうし。作り続けている限りは、一生満足しないと思います。

G:
最後の質問です。今後の予定、今後の野望、やりたいこと、次はこれにチャレンジするみたいなものはもうあるんですか?

都:
自分企画ですかねぇ……ただあのー、「魔法少女まどか☆マギカ」ってやってるじゃないですか。あれとなんかネタ被ってるっぽくて……

G:
先にやられたって感じですか?

都:
あれはねぇー……仮にほむらちゃんがループもので帰ってきて変えようとしているって話だったら、ちょっとまずいなぁ……(笑)やっぱりこう、今作家を目指している人は早めにデビューしなきゃ出されるぞっと。やっぱり同じことを考えている人って必ずいるので。そうはいっても、ループもの・タイムスリップものってありふれたものなんで切り口次第だとは思いますけどね。印象被ったらやだなぁ……
(注:インタビュー当時、「魔法少女まどか☆マギカ」はまだ放送中で、ほむらが何周も世界をループしていることは判明していなかった)

G:
なんか、マクロスの河森監督も同じこといってましたよ。

都:
嘘!?(笑)

G:
(笑)
お話、ありがとうございました。

企画・原案の樋上いたるさんインタビューに続きます。

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