サマータイムや昼の打ち水は節電効果なし、産総研が節電対策の効果を測定

by nofrills

東日本大震災に伴う福島第一原発の事故などにより、この夏は電力不足が予想されています。すでに各企業・自治体などが節電対策としてさまざまな対策を発表していますが、多くの企業が導入しているサマータイムや地域のイベントなどで行われる昼間の打ち水は電力消費の低減にはつながらず、かえって消費を増やしてしまうことさえあることが、産業技術総合研究所の発表により明らかになりました。

また、電力需要が供給をオーバーした際に行われる可能性のある計画停電についてもシミュレーションが行われ、大がかりな手段を取っているにもかかわらず、総合的に見ると効果が薄いという結果も発表されています。

産総研:主な研究成果 夏季における計画停電の影響と空調節電対策の効果を評価

独立行政法人 産業技術総合研究所(以下、産総研)安全科学研究部門の井原智彦研究員と玄地裕研究グループ長は、夏季の計画停電やエアコンを中心とした各種の節電対策が、最大電力需要や室内温度などに与える影響・効果を調査しました。

電力の需要は産業・業務・家庭といった3部門の積み上げであるにもかかわらず、個別の部門での節電対策の評価しか存在せず、足し合わせた状態で本当に節電になっているかどうかが懸念事項となっていたとのこと。そこで、各部門の電力需要を足し合わせても節電になるかどうかの検証が行われることになりました。

気温が著しく高くなり最大電力需要が予測される日は、電力需要のうち空調(エアコン)が3割を占めると予想されていることから、猛暑日を対象に、空調需要が見込まれる業務(事務所)・家庭(戸建住宅、集合住宅)の2部門の電力需要を同時に評価しました。ただし、電力需要が気温に依存しない産業部門は除いてあるとのこと。

電力需要の計測シミュレーションに用いられた「AIST-CM-BEM」は、気象や街区構造によって変化する気温・湿度と空調需要を計算可能で、空調の排熱による気温上昇、そして気温上昇と湿度変化に伴う空調電力需要の増加のフィードバックを考慮できる数値モデル。このため、猛暑日には3割以上を占めるといわれる空調需要を推定でき、各種の空調節電対策の効果について街区構造による変化も評価できるという特徴を持ちます。


シミュレーションを行うのに必要なのは「上空の気象条件(数百m以上)」と「都市の街区構造の情報」。計算領域は東京23区および多摩地域の一部を約500m×約500mの区画に分割し、そのうち建物が存在しない区画などを除いた3162区画と設定。気象条件は、最高気温35 度以上の猛暑日であった2007年8月5日の条件を適用しました。

シミュレーションの対象となった3162区画の計算対象領域を図示したもの。


こうした計算条件と数値モデルを用いて、比較の基準となる「節電対策を行わない基準シナリオ」、そして「仮想的な計画停電シナリオ」の下での最大電力需要や屋内外温度を算出し、同時に各種の節電方策を導入した場合の最大電力需要の削減効果(節電効果)を測定しました。

その結果、計画停電における3時間輪番停電 (20%削減相当) を想定したシナリオでは、停電中に屋内に蓄えられた熱を除去するために復電後一斉にエアコンがフル稼働となるので、家庭ではかえって電力需要が増大しました。そのため、業務と家庭の合計で見ると、最大電力需要削減は9%にとどまることとなりました。

3時間輪番停電シナリオの電力需要グラフ


身近な節電行動の評価についても同様に測定していきます。「窓から差し込む日光を遮断」した場合、家庭では7~8%、業務では3%の節電効果がありました。「通風換気」については、最大電力需要日では35度を超えるため換気できる条件にはありませんでしたが、気温が下がってくる16時以降に行った場合に効果がありました。

エアコンの設定温度は住宅平均が24.5度・事務所平均が26度なのですが、それぞれを28度に引き上げると、家庭では6~10%程度、業務では2%の節電効果がありました。しかし、これはすべての住宅・事務所が引き上げた場合の数値なので注意が必要です。


朝夕の打ち水は局所的に暑さを緩和させる効果があるものの、昼間(13時ごろ)に大規模に打ち水しても節電効果は小さいことが分かりました。昼間の大規模な打ち水は大きな蒸発を招く一方、水蒸気が拡散できないために、湿度の上昇の方が気温の下降よりも数値が高くなってしまい、最大電力需要はわずかに増大してしまう結果となりました。

by stumayhew

サマータイムの導入を想定し、すべての人々が生活時間を1時間前倒しすると、14時の電力需要が抑えられる一方、帰宅によって16時に家庭での電力需要が増加し、業務と住宅を合計した最大電力需要は引き上げられる可能性があることが判明。逆に1時間後ろ倒しした場合は、15時にわずかに電力需要が増加しますが夕方には減少するため、他の対策と組み合わせれば有効な手段となる可能性があります。


家庭では「窓から差し込む日光を遮断」「通風換気」「エアコン設定温度の引き上げ」という3つの節電対策を、業務ではこれらに加えて機器・照明の節電も追加すれば、15%の節電が達成できるとのことなので、オーソドックスな行動を行った方が効果は高そうです。

今回の内容は節電が求められる時期がすでに訪れていることからサイト上で緊急発表されたもので、ブラッシュアップした詳細が2011年7月22~24日に茨城県つくば市で開催される「第6回日本ヒートアイランド学会大会」で発表されるそうです。

上記内容の各項目についてさらに細かく解説した内容は下記リンクから読むことができます。

夏季の計画停電の影響と空調(エアコン)節電対策の効果(速報) - 持続可能な社会実現に向けた評価研究部門 | 産総研 AIST RISS

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in サイエンス,  メモ, Posted by darkhorse_log