サイエンス

これまで不明だったダーウィンの病気についてその内容が判明、ピロリ菌などに感染していた可能性も


「進化論」で世界を驚かせ、自然科学の歴史に偉大な足跡を残したチャールズ・ダーウィンですが、彼がその晩年に悩まされ、ついには死に至る原因ともなった病気について、いったいそれがどんなものであったのかがこれまではよく分かっていなかったのですが、近年の医学の進歩により、その原因と症状が判明しつつあるようです。

詳細は以下から。Solving Darwin's Medical Mystery - WSJ.com

ダーウィンは1809年にイギリスに生まれ、1882年に病没しました。その人生の間、彼は何度も激しい腹痛に襲われ、ひどいときは食事のたびに嘔吐を繰り返していたそうです。当時、イギリスの名だたる医師たちがダーウィンを診断し、乳糖不耐症鉛中毒心気症統合失調症などの病名が挙げられましたが、病気を治癒することは出来ませんでした。


このダーウィンの病気について、現代医学の見地から再検証を行ったトーマスジェファーソン大学医学部の胃腸専門医Sidney Cohen医師は「(ダーウィンの)生活の歴史を見ると、(彼の症状を)単一の病気に還元することはできません」とし、「私は彼が複数の病気にかかっていたと考えています」と述べ、ダーウィンがピロリ菌などの病原体に感染していた可能性を指摘しています。

ピロリ菌の画像。胃の中の尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解することで、発生したアンモニアで局所的に胃酸を中和し、胃の中で生存することができます。


ダーウィンの病気についての再検証は、毎年メリーランド大学で開催されている、歴史上の人物の未解決の病気に関するカンファレンスで行われました。このカンファレンスでは過去に、アメンホテプ4世が遺伝性女性化乳房症(アロマターゼ過剰症)であったと考えられることや、コロンブスが晩年に苦しんだ関節炎は、彼が新世界から持ち帰ったオウムからの感染によるものだとする指摘を行っています。

歴史上の人物の病気に関する記述は、医学的な知識を持たない人の手で記録される場合が多いもので、紀元前の人物などに比べるとダーウィンの病気に関する記録はかなり近代的なものになっていますが、それでも当時はまだMRICTも無い時代だったため、Cohen医師はその病気を見極めるために、ダーウィンのさまざまな写真や彼の著作、またその家族についても調査する必要があったそうです。

その結果、Cohen医師は「まず、周期性嘔吐症候群(CVS)については確実だろうと見られます。これは長年に渡って彼が苦しめられた症状の多くを占めています」と語り、CVSがダーウィンの病気のひとつとして確実に存在したであろうことを指摘します。CVSはアセトン血性嘔吐症とも言われ、多く幼児期に発症する病気で、原因不明の嘔吐を引き起こし、数十年にわたって症状が続くこともあるそうです。

しかし、CVSだけでは直接の死因となった心臓疾患を説明することができません。これについてCohen医師は、1835年にダーウィンが南アメリカのアンデスにいたころ、現地の虫からシャーガス病に感染したのではないかと指摘しています。シャーガス病はサシガメを媒介としてヒトに感染し、心筋炎、心肥大などの心臓障害を引き起こすもので、何年もの潜伏期間を持つことからもダーウィンの症状に合致します。

サシガメの一種。ヒトなどから吸血する種もあり、シャーガス病感染の媒介となります。


また、シャーガス病の感染は、ピロリ菌の感染も誘発していることが多く、ピロリ菌は胃や十二指腸に潰瘍を起こすことが知られており、これも嘔吐や腹痛の原因となっていたのではないかと考えられるそうです。

メリーランド大学のカンファレンスでは他にもアレキサンダー大王やナイチンゲールについての再検証も行われており、今後も毎年このカンファレンスは続いていくとのこと。そのうち歴史上の人物の持病や死因について驚くべき発見があるかもしれません。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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