自分が病気になったとき、患者に勧める療法とは別の選択をする医師が多いことが判明


ある病気に対し「つらい副作用とひきかえに命が助かる確率が高い」治療法と、「副作用が少ないものの死亡リスクが高い」療法という2つの選択肢がある場合、患者にアドバイスを求められた際には前者を勧め、自分が同じ病気になった場合には後者を選ぶ医師が多いということが、アメリカでプライマリーケア医師(かかりつけ医・一般開業医)約1000名を対象に行われた調査により明らかになっています。

詳細は以下から。Doctors May Choose Different Treatment For Themselves

デューク大学の行動科学者で医師のPeter Ubel教授とミシガン大学の行動経済学者Brian J. Zikmund-Fisher教授らは、アメリカのプライマリーケア医師940名を対象とした調査で、「治療法を決めかねている患者にアドバイスをする場合」と「自分が病気となったと仮定して治療法を選ぶ場合」で医師たちの選択にどのような差があるかを調査しました。論文はArchives of Internal Medicine誌に掲載されています。

調査では「大腸癌シナリオ」と「鳥インフルエンザシナリオ」という、ともに「副作用が大きいが死亡リスクが低い処置」と「副作用が少ないが死亡リスクが高い処置」の二者択一のオプションが用意された2つのシナリオを設定し、調査対象者の医師をランダムに「患者にアドバイスを求められた場合」と「自分がその病気となった場合」という仮定に振り分け、どちらの療法を選ぶかという質問をしました。

その結果、「大腸癌シナリオ」について回答した242名の医師のうち、「自分が大腸癌となった場合」と仮定して質問された医師では37.8%が死亡リスクが高い療法を選んだのに対し、「患者にアドバイスを求められた際に勧める療法」を質問された場合には死亡リスクが高い療法を選ぶ医師は24.5%だったそうです。「鳥インフルエンザシナリオ」について回答した698名の医師では、死亡リスクの高い療法を選択する割合は、自分が治療を受ける場合には69.8%だったのに対し、患者にアドバイスする際には48.5%だったとのことで、両方のシナリオで患者に対しアドバイスする場合と自分が罹患した場合に選ぶ治療法に有意な差が確認されています。

Ubel教授らが過去に行った調査では、患者の立場からは、麻痺(まひ)となることや人工肛門を使うことになったとしても、「死ぬよりはよい」と考える人々が多いことが明らかになっています。この観点からは、「副作用があっても命が助かる確率が高い療法」が「正しい選択」ということになり、患者にアドバイスを求められた際に客観的に判断すれば死亡リスクが低い療法を勧める医師が多いというのは、多くの患者の価値観や希望にかなったことです。

しかし、自分の身に置き換えて考えてしまうと、日々医療現場で患者にとっての副作用のつらさを目の当たりにしていたり、延命治療にかかわる金銭的な事情を知り尽くしていたり、職業的葛藤を抱えていたりする医師たちは、バイアスがかかった判断をしてしまう可能性があるようです。

実際にその医師本人が病気となり自分が受ける処置を選ぶ際には、本人の価値観や意志を尊重するなら、「副作用が少ないが死亡リスクが高い」選択をすることを周囲が否定することはできないかもしれません。しかし、重篤な疾患が発見されかかりつけの医師から専門医に紹介された患者が、セカンドオピニオンとしてかかりつけ医にアドバイスを求めるといった場合には、「どちらの療法を選ぶべきでしょうか?」「あなただったらどういった治療を受けますか?」といった質問の仕方によってそのアドバイスの内容が左右されたり、その医師本人が致命的な疾病を抱えているといった状況の場合にも、自分の身に置き換えて考えてしまうことによりアドバイスの内容が左右されてしまうといったことも考えられ、結果的には患者の価値観にそぐわない選択を勧めてしまうことにつながるかもしれません。

患者にアドバイスを求められた医師たちの心理をより深く解明することは、困難な決断を迫られた人々が時と場合に応じて専門家に的確なアドバイスを受け、後悔しない賢明な意志決定を行うことにつながるのではないかとUbel教授らは考えているそうです。

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