サイエンス

1人でやるより仲間とやる方が危険、共同摂取により覚醒剤の効果が増強され依存しやすくなる


医療用途以外での覚醒剤(かくせいざい)の使用はどこの国でも犯罪であり、自分のためにも周囲の人々のためにもそもそも手を出さないことが一番ですが、自分で覚醒剤を購入し1人でいる時でも覚醒剤を使用するという依存者も、初めは仲間に誘われて手を出してしまったというケースが多く、覚醒剤摂取はほかの多くの薬物乱用と同様に、社交的側面を持つ行為です。仲間とともに使用することが多いというその摂取環境が、より人々を覚醒剤に依存させやすくしているかもしれません。

慶應義塾大学で行われたマウスを使った実験により、仲間とともに摂取した場合には単独で摂取した場合と比べ覚醒剤の効果が増強され、耽溺(たんでき)や依存への危険性が増すことが判明しています。


詳細は以下から。覚醒剤は仲間と摂取するとより危険 ~マウスによる実験で明らかに~ :[慶應義塾]

慶應義塾大学文学部心理学研究室の渡辺茂教授は、マウスを用いて社会的要因が覚醒剤に及ぼす効果を検討し、覚醒剤の効果は仲間との共同摂取で増強され、耽溺や依存への危険性が増すことを示しました。「Drug-social interactions in the reinforcing property of methamphetamine in mice」と題された論文はBehavioural Pharmacology誌22巻3号に掲載予定です。

実験ではまず、マウスを白・灰色・黒の3区画からなる実験箱に入れて、どの区画にどのくらい滞在するかを測定しました。次にメタンフェタミン(ヒロポン)を注射して、ある区画に閉じ込め他の区画に行くことをできなくし、翌日には生理食塩水を注射して別の区画に閉じ込めるという処置を繰り返した後、再び3つの区画を自由に移動できるようにして滞在時間を計りました。その結果、覚醒剤を注射された区画への滞在時間が長くなり、マウスが覚醒剤を好きになってしまったことが示されました。

次に、社会的要因が覚醒剤に及ぼす効果をはかるため、同じケージにいる仲間と一緒に覚醒剤の注射を受けるようにし、同様の実験を繰り返すと、覚醒剤注射の区画での滞在時間がさらに長くなったそうです。これはつまり、社会的促進によって覚醒剤がもっと好きになってしまったということです。

さらに、自分が覚醒剤の注射を受ける時には仲間が生理食塩水の注射、自分が生理食塩水の注射の時は仲間が覚醒剤の注射を受けるようにすると、前述の社会的促進は見られなくなったとのこと。また、興味深いことに、自分は生理食塩水の注射を受け、覚醒剤を注射された仲間と一緒にされた区画への滞在時間は少なくなることも判明し、これは覚醒剤を注射されていないマウスは覚醒剤を注射されたマウスと一緒にいることを好まないことを示唆するそうです。

人間でも、覚醒剤を乱用するようになった人からは覚醒剤を使わない友人が離れていき、「覚醒剤仲間」とのみ付き合うようになるため、より強い依存が形成されていくということが起きているのかもしれません。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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