サイエンス

年間約100万人を死に至らしめる病・マラリアの治療薬製造技術がさらに進歩、クソニンジンの遺伝子を利用


熱帯・亜熱帯地域に広く分布する感染症であるマラリアは、1年間に約100万人もの死亡者を出す脅威の病として、いまだ世界100ヶ国以上で流行しています。

従来の治療薬はクソニンジンという植物を1年以上かけて育てて抽出する方法が取られていたのですが、今回開発された方法を使うと植物の育成状況によらず素早く製造することができ、しかもコストも低くなるということです。

マラリア治療薬の新しい製造方法は以下から。Malaria Drug Breakthrough Made | Care2 Healthy & Green Living

カナダとアメリカの研究者は、毎年およそ100万人を死に至らしめているマラリアの治療に効果の高い化学薬品をより早く、安く生産するために新しいプロセスを開発しました。


数種類のマラリア治療薬で主成分とされているアルテミシニンは、長らく原料となるキク科ヨモギ属の植物・クソニンジンから成分を抽出する方法が取られており、それが確実で効率的であると長らく信じられてきました。

クソニンジン自体は、アジアやアフリカでは種を植えたりしなくても自然に生えてくる草なのですが、これを育てて抽出可能な段階まで育てるのに1年以上かかるため、時間がかかり難しかったとのこと。

しかし新たに薬の原料となっていたクソニンジンの遺伝子を分析し、酵母の中にその遺伝子を組み込むことで、植物からの抽出という行程を経ることなく、研究室でアルテミシンを作り出すことに成功したそうです。

従来はクソニンジンを育てる必要があったため、マラリア治療薬を必要な時にすぐ作ることができず、不足してしまうこともありましたが、新たに開発された生産方法を用いることで、アルテミシンの生産量は2倍となり、従来より早く製造することが可能となるとされています。

このプロジェクトが開始された2004年にはマイクロソフト社の創業者であるビル・ゲイツ氏の慈善団体「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」から4000万ドル(約36億7000万円)の援助を受けたほか、大変有益な研究を完遂するための費用として、1000万ドル(約8億1700万円)以上の補助金が交付されました。

研究成果に対してカナダのGary Goodyear科学技術大臣は「マラリア治療薬の生産に関するこの新しい開発は、この病との戦いにおける主な発展を象徴します。この発見は、健康に関する研究でカナダの世界のリーダーとしての地位を強め、信頼できる手頃な解決策を提供するでしょう」と述べています。

近年ではマラリアの症例の約90パーセントがサハラ以南のアフリカ大陸で確認されており、5歳未満の幼児の主な死因となっているほか、治療が成功して子どもが生還したとしても、脳にダメージを受け、貧血などの後遺症が残る可能性もあるなど、将来の教育やビジネスのチャンスを制限しているそうです。

この研究結果はマラリアが流行していない国々と比較してマラリアが流行している国々は経済的に厳しい状況にあることを示しているもので、マラリアが社会に深刻な影響を与えることを浮き彫りにするものとなっています。

製薬会社のサノフィ・アベンティスは、今回のプロジェクトによって生み出された治療薬を、アフリカで無料配布することを予定しているそうですが、この発見によって、マラリアに苦しむ人々が少しでも少なくなることを願うばかりです。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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