燃料電池の低コスト化へ大きな一歩、プラチナ触媒の650分の1の価格で同程度の発電効率を得られる新触媒


水素やメタノールを燃料として発電する燃料電池は、携帯電話から自動車まで今後さまざまな用途への応用が期待されています。しかし、現在実用化されている多くの方式の燃料電池では、高い発電効率を得るためには電極触媒として非常に高価で希少な金属であるプラチナ(白金)を使う必要があり、実用化と普及への大きな障壁となっています。燃料電池の値段の4分の1はプラチナ代とも言われるそうです。

そんな中、ケース・ウェスタン・リザーブ大学の化学者たちが、プラチナの650分の1の価格で同レベルの発電効率を得られる新触媒を開発し、燃料電池の低コスト化へ大きな一歩となるのではないかと期待されています。

詳細は以下から。Cheap catalyst made easy

ケース・ウェスタン・リザーブ大学の化学工学者Liming Dai教授らは、PDDA(ポリ塩化ジアリルジメチルアンモニウム)という強い電子求引性を持ったポリマーでコーティングすることにより帯電したカーボンナノチューブが、燃料電池の電極における還元反応の触媒としてプラチナと同程度の発電効率を発揮し、かつそれ以外の要素(触媒作用の持続性など)ではプラチナに勝るとすら言えることを発見しました。論文はJournal of the American Chemical Society米国化学会誌)に掲載されています。

Dai教授らはこのポリマーでコーティングされたカーボンナノチューブをアルカリ電解質形燃料電池のカソード(還元反応が起きる電極:燃料電池の空気極)の触媒として使用し、同一の燃料電池でプラチナ触媒を使用した場合と同程度の発電効率を得られることを確認しました。Dai教授らは今後さまざまな要素の最適化を行うことによりさらに発電効率を上げることも可能だと考えているそうです。

炭素内の電子が電子吸引性ポリマーによって表面に引きよせられ、正電荷を帯びると、アルカリ電解質形燃料電池のカソードで起きる水と酸素の還元反応(2H2O+O2→4OH-)の触媒として作用します。


また、このカーボンベースの新触媒はプラチナと異なり燃料中の一酸化炭素に反応しすぐに活性を失ってしまうということもなく、メタノール燃料を用いた燃料電池では、イオン交換膜を透過したメタノールがアノード(酸化反応が起きる極:燃料電池の燃料極)側からカソード側へ浸透し、カソード側でもプラチナ触媒により反応してしまい発電効率を下げるという「クロスオーバー現象」にも影響されないという利点があります。つまりプラチナ触媒より安定していて、高い発電効率を長期間保つことができるのです。

資源量が限られているプラチナは現在1kgあたり6万5000ドル程度(約526万円)で取引されているのに対し、PDDA水溶液にカーボンナノチューブを数時間漬け込むだけで作ることができるというこの新触媒は、原価込みで1kg100ドル(約8100円)で製造でき、燃料電池に限らず今後さまざまな還元反応の効率的な非金属触媒として汎用性があるのではないかと期待されています。


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in サイエンス, Posted by darkhorse_log