10代の子どもの運転に不安がある親向けに、保険会社が車載カメラを提供

「免許とりたての10代のころはなかなか1人で運転させてもらえなかった」「助手席で親がうるさかった」という人も多いかもしれませんが、「子どもの運転は不安」という親心は世界共通のようです。

アメリカの保険会社American Family Insuranceが、10代の子どもがいる自動車保険加入世帯へ向け、道路状況と車内の様子を同時に撮影する車載ビデオカメラ「DriveCam」を提供するプログラムを導入し、好評を得ています。

詳細は以下から。Tiny video camera that records teenage drivers is hit with parents | Mail Online

日本でも10代の若者の交通事故は多く、「子どもが免許をとったら保険料が高くなった」と嘆く両親も多いかもしれません。16歳から運転免許を取得でき自動車で通学する高校生も多いアメリカでは、10代の無謀運転は深刻な問題となっていて、2003年には10代の若者5230人が乗用車事故で死亡、45万8000人が負傷しています。

両親が同乗しているときに10代のドライバーが事故を起こす割合は、1人で運転しているときや友人を乗せているときと比べ圧倒的に少なく、「親が見ているときは安全運転だけど、見ていないところでは羽目を外してしまう」という子どもが多いようです。

カリフォルニアで開発された「DriveCam」は、バックミラー裏に設置し前方の道路状況と後方の車内の様子を撮影する車載カメラで、車内の音声も同時に録音します。American Family Insurance社の「Teen Safe Driver Program」では、10代のドライバーがいる世帯の自動車保険加入者へ向け無償でこのカメラを貸し出しています。

「両親による子どものプライバシーの侵害なのでは」と感じる人もいるかもしれませんが、撮影された映像は常に保存され両親に提供されるというわけではありません。カメラが「衝突」「急ハンドル」「急ブレーキ」「急加速」などにより事故や危険運転を検出した場合にその前後10秒間（計20秒間）の映像をDriveCamの分析センターへ送信し、センターでは事故原因の分析やアドバイスなどを添えて「Teen Safe Driver Program」参加者専用のサイトへアップロードします。両親やドライバー本人は、その世帯専用のサイトへログインすることによりビデオ映像を見ることができ、家庭での安全運転教育に生かすことができます。

つまり、子どもが危険運転をするとその前後にしゃべっていたことなども含めて両親に見られてしまうのですが、安全運転をしているかぎり映像が保存されることも両親に見られることもないというわけです。それ自体も子どもにとって安全運転を心がける強い動機となりそうですが、実際にプログラムに参加し自身の危険運転の映像を見ることになった子どもたちからは、「運転に自信を持っていたけれど、ビデオで見ると自分の運転の駄目なところに気付かされ驚いた」「その時はわたしのせいじゃなく向こうが悪いと思っていたけど、後で客観的に映像を見るとわたしが悪いとわかった」などという声が挙がっていて、自分の運転を客観視させられることによる教育効果は高いようです。

2006年にアイオワ州の54世帯が参加しプログラムを試験的に導入した際には、プログラム開始後9カ月で子どもの危険運転が録画される頻度やその場面の危険度スコアは平均70％下がったそうです。また、プログラム開始時に50％だったシートベルト着用率は6週間でほぼ100％になったとのこと。

実際に「DriveCam」で撮影された危険運転の映像を以下から見ることができます。

YouTube - DriveCam: Teen Driving Rules to Live By

安全運転のルールその1：シートベルトは必ず着用すること。

交差点を直進する際、左からくる車との衝突を避けるため急ハンドルを切った少年。

シートベルトを着用していなかったため、助手席へ投げ出されてしまいます。

ルールその2：同乗者にもシートベルトを着用させること。それが本当の友情というものです。

楽しくドライブしていたカップルですが……

なんと車が横転する事態に。女の子が乗っていた側が下になっていますが、無事だったのでしょうか。

ルールその3：マルチタスクはせず運転に集中すること。

運転中にリップを直す少女。

前方の車両に危うく追突しそうになり、慌てて車線変更。

ハンドルを取られいったん路肩へ出てしまい、道路に戻ろうとしたところでトラックに頭から突っ込みそうになります。

携帯電話でしゃべりながら雨の日の交差点を行くドライバー。

左折して入った車線で、右後方から来た直進車と接触してしまいます。

「Oh, shit！（くそっ！）」と言う声も録音されているので、言葉遣いに厳しい両親ならそこも注意されてしまうかもしれません。

ルールその4：車間距離は十分にとること。

車間距離が詰まってきて、助手席の友人が「Look（気をつけろ）」と声を上げますが……

直後に追突。幸い2人ともシートベルトは着用していたようです。

ルールその5：周辺視野を信用せず、首を振って周囲をよく見ること。死角に車が潜んでいる可能性があればワンテンポ待つこと。

信号のある交差点を左折しようとする少女。日本の右折と同じ感覚です。

対向車線に停止していた車に隠れて、直進車が来ていました。

接触してしまいます。

ルールその6：飲んだあとやマリファナを吸ったあと、疲れきっているときなどに運転するのは絶対にやめましょう。

目を閉じて完全に寝ているように見えるドライバー。

中央分離帯のランプに突っ込んでしまいました。

なお、これらの映像は若者やその両親が「安全運転の大切さを広めるために共有したい」と公開に同意したもので、DriveCamで撮影された映像がプログラム参加者の同意なく公開されることはないとのことです。