「ドリームクラブ ゼロ」発売延期の真相か、シナリオ制作費未払いの件についてTeam N.G.Xにインタビュー


12月30日より発売予定だったXbox 360用ソフト「ドリームクラブ ゼロ」発売延期が発表され、お詫びの動画が話題を呼んでいますが、発売延期の原因となったかもしれない問題が浮かび上がってきました。

GIGAZINE読者からのタレコミによると、PCゲームソフト、コンシューマゲームソフト等のシナリオ制作を手がけている有限会社エヌジーエックス(Team N.G.X)が、「ドリームクラブ ゼロ」のシナリオ制作を委託されて実際にシナリオを制作したものの、制作費の一部が未払いとなっており、現在法廷で係争中だということでした。

これに関する詳しい状況を確かめるため、Team N.G.Xの代表である安能真さんにどういうことになっているのか、お話を伺ってきました。Team N.G.Xに対するインタビューの詳細は以下から。シナリオ制作会社 Team N.G.X
http://ngx.jp/


◆ドリームクラブとは?
ピュアな心の持ち主だけが入店できる大人の社交場「DREAM C CLUB」の会員となり、店で働く「ホストガール」との恋愛をすることが目的の恋愛シミュレーションゲームです。2009年8月27日にディースリー・パブリッシャーより第1作目「ドリームクラブ」が発売され、初日の売上本数が2万3000本を突破。2007年1月に発売されたバンダイナムコゲームスの「アイドルマスター」を超える初日販売本数を記録した人気タイトルです。

今回問題となった「ドリームクラブ ゼロ」は、「ドリームクラブ」の続編にあたり、前作の約半年前を描いた作品となる予定でしたが、いったいどんな事情で法廷にまで持ち込まれる争いが生じてしまったのでしょうか。

GIGAZINE(以下、Gと省略):
今回、読者からのタレコミでこんな事態になっているということを知ったのですが、一体どのような状況なのでしょうか。

有限会社エヌジーエックス 安能 真 代表(以下、NGXと省略):
自分の周辺でちょっと話をしていた程度なのですが、その中で「ネットニュースに話してみれば?」と言ってくれた人がいて、僕は「呼ばれたら行くよ」と答えていたのですが、その仲間のうちの誰かが連絡してくれたのかもしれませんね。

有限会社エヌジーエックス 安能 真 代表。事案が事案だけに今回は同じ代表らしい格好で答えてもらうことになりました。


G:
かなり前から問題になっているとのことですが。

NGX:
こうして問題になったのは2010年3月です。僕自身、ライター歴が20年なのですが、ここまでの状況になったのは初めてで、かなり戸惑っています。参っていると言ったほうが正しいですね。

G:
まずはシナリオ制作会社としてのTeam N.G.Xについてお聞きしたいと思います。最初は個人的にシナリオ制作をしていたのですか?

NGX:
もともと僕は雑誌のライターをやっていたんですが、その時にライター集団でゲームの攻略本の編集をやっていたんです。その後、シナリオを書くのに特化した人間だけを集めて、シナリオメインでやるようになりました。会社の形を取っていますが、これはある会社と仕事をするときに法人化する必要があると言われて有限会社にしたもので、中身は数人が集まったライター仲間のグループみたいなものです。

G:
クレジットとしてTeam N.G.Xの名前はあちこちで見るんですが、こうしたインタビューにはあまり出ていませんよね。

NGX:
基本的には裏方なので、あまり出ませんね。グループなのでTeam N.G.Xって名前をつけたんですけど、ゲームのクレジットで「Team N.G.X」って出ると個性が感じられなくなるって言われたことがあって、名前を出せるものは出すようにしています。

G:
ドリームクラブ自体は、1作目が2009年の8月に発売されていますが、1作目にも関わっていたのですか?

NGX:
1作目は一切関わっていません。僕たちが担当したのは「ドリームクラブ ゼロ」のシナリオの仕事として契約したものだけです。「ドリームクラブ ポータブル」というのがPSPから出ていますが、これも前作の移植なので僕たちには関係ありません。


◆係争のポイント

NGX:
お話できる部分からまとめていくと、まず現在訴訟を行っていること自体は事実です。契約金の未払いが主な係争事項になっています。係争の主なポイントをまとめてしまうと、次のふたつです。

まず「シナリオを書いた分のお金が払われていない」。これがひとつです。今回は制作会社がタムソフトで、少なくともシナリオ関連の制作はタムソフトがすべて行っているはずです。販売はディースリー・パブリッシャーで、制作と販売が別の会社で行われる形ですね。タムソフトとディースリー・パブリッシャーの関係がどうなっているのかは分かりません。僕のほうからディースリー・パブリッシャーに連絡をしたこともありません。それ自体は一般的なことで、実際の契約は制作会社のタムソフトと行い、連絡もディースリー・パブリッシャーとではなく制作会社のタムソフトと行います。


次に、「係争中のシナリオがタムソフトからディースリー・パブリッシャーに納品されてしまった」ということです。お金を貰っていない状況のテキストの著作権自体はまだこちらに所属しているものですよ、とこちらでは主張しているんですが、その係争中のシナリオが入っているソフトを、ディースリー・パブリッシャーが発売するという発表をしてしまった、という状況で、かなりびっくりしています。

この2つが主な係争のポイントかな、と思います。

◆シナリオ制作を契約した経緯

G:
契約金の未払いについてですが、通常はどのタイミングで契約金をもらうものなのでしょうか? 書く前にもらうのでしょうか、それともすべて終わってからになるのでしょうか。

NGX:
うちではクライアント側の都合に合わせています。今回の件では2009年11月末の時点で半金を支払っていただき、終了時にもう半分を支払っていただくという形でした。現在は1度目の支払いが行われて、半金が支払われているという状態ですね。

G:
シナリオ自体は完成しているわけですか?

NGX:
完成自体についてもモメているんですが、その途中で支払についても問題が発生し、お金が払われていない状況ですね。

G:
支払いについてのトラブルはなぜ発生したんですか?

NGX:
契約時の話までさかのぼるのですが、まず2009年9月に「2.5MBの仕事を」(=シナリオを書いたテキストファイルのファイルサイズが2.5メガバイトという意味。日本語の全角1文字で2バイトなので、2.5メガバイトは大体262万1440バイト、約131万文字という膨大な分量のシナリオとなる)ということで依頼がありました。締めが(2010年)3月末ということで、半年で2.5Mというのはけっこうギリギリの量なんですね。この内容で見積を作ってくれと言われました。この時点では「新しいソフトの仕事である」ということと、「続編なので前作シナリオから流用して使える部分がある」ということしか分かっていませんでした。

まず、「総シナリオ量は約4MBだが、2MBは前作シナリオを流用する。バッファ(余裕分)500KBをもって、書かなければいけないシナリオ量は2.5MBだ」という話をされました。4MBで半年は無理ですが、2.5MBであれば、スタッフを総動員すればなんとかなるな、という計算でお仕事を受けたわけです。

G:
なるほど、その時点ではこの案件が「ドリームクラブ ゼロ」だということは分からなかったんですね。

NGX:
分かりませんでした。この見積で契約したのですが、前作からの流用分が無くなってしまったんですね(=前作のシナリオから一切流用しないでくれということになった、ということ)。前作のテキストが約3.5MB。今回はキャラクターが3人増えるので、だいたい1.3倍になります。そうすると4.5MB。主人公と女の子の会話シナリオを使い回して、足りないところを僕らが埋めていって、結果的に作る量は2.5MBということだと思っていたんですが、途中から全部新作ということになってしまいました。それで「全部僕らがやるんですか?」と聞いたら、「そうです」ということで、やることになりました。

・当初の予定
総シナリオ量:4MB
前作の流用可能量:2MB
Team N.G.Xの新規作成量:2.5MB(0.5MBは余裕分)

・ドリームクラブゼロだということが判明してから
必要になるテキスト量:4.5MB
前作のテキスト量:3.5MB(このうちからいくらかを流用する予定だった)
Team N.G.Xの新規作成量:2.5MB(流用できない分を作るはずだった)

しかし実際にはこの3.5MBから流用してはならないということになり、「途中から全部新作ということになってしまいました」ということで、ゼロからすべて新規でシナリオを書き起こすことになり、以下のようになった。

・ドリームクラブゼロの仕事の本当の実態
必要になるテキスト量:4.5MB
Team N.G.Xの新規作成量:4.5MB(流用できないので全部ゼロから新規で作ることになった)

NGX:
少し話が戻ってしまうのですが、見積を提出した時点でタムソフトから「見積りの容量を超えた際には別途料金で追加発注となる、と記載してください」と言われました。その時点では作業量が増加したときについても対応してくれる、気を使ってもらえてありがたいことだと思い、その指示のまま書いておいたのですが……。


◆契約金トラブル

NGX:
この業界ではライターからお金の話ってほとんどしないんです。シナリオの量もどのくらい増えるのか分からないし、後でまとめて請求しようと思っていたんです。2010年3月、シナリオが終わるめどが立つ段階に入り、計算で4.5MBくらいになることが見えてきました。それで実際にタムソフト側へ確認をしてみると、「そんなのお前が水増しすればいくらでもできるだろ」と言われました。口調も本当にそんな感じで「なに言ってんの?」って急にタメ口になり、会社同士で話している口調じゃないなという感じでした。そこでまず最初のトラブルが発生したわけです。

タムソフト側としては、シナリオの増えた分は僕らが勝手に増やしているという話になっているんですね。追加発注分となるのであれば、僕らが先に見積を出すのが当然という主張をしているんです。追加発注が行われるべき時に追加分の見積を出してこなかったのだから、最初の見積の金額でやるべきだ、ということですね。でも、そもそも流用をやめたのは僕らじゃありませんし、それが契約書に書いてあるなら気付きます。

追加でシナリオの量が増えること自体はよくあるんですよ、「ちょっとエンディング長くしようよ」とか言われることとかもあるので。それでも増えるのは大まかに言って前後10%くらいのものです。そんな時のためにバッファ、余裕分が契約金には含まれていますし、大概はプラスマイナス10%ぐらいだったら追加でお金をくださいなんて事は言ったりはしません。けど、今回のは1.8倍なんですね。(=当初は2.5MBを新規作成する予定だったが実際には4.5MBを新規作成することになったため)2MBというのはすごい量ですよ(笑)

G:
そもそも2.5MBでギリギリだったのに、がんばって「足りない分を埋めて4.5MBになります。金額はこれぐらいです」と言ったら怒られた、ということですか……。

NGX:
シナリオ制作のペースは後半になるほど上がっていくものなので、3月12日の時点で最終的にタムソフト側へ提出したものは3.5MB強でした。その時点ではまだ決まってない仕様がたくさんあったんですよ。

G:
シナリオがかなり進んだ段階でもまだ決まっていないものがあるんですね。

NGX:
結構たくさんありますよ。例えば「温泉イベントがある」ということは(2010年の)年明け前後に聞きました。それ以前はそういうイベントがあるのか無いのかも分からなかったんです。分からない以上、そういうシーンは書けないですよね。

例えば3月12日時点で決まっていなかった仕様としては、まず、みんながコスプレをするイベントがあるようなのですが、これも仕様は決まっていませんでした。次に、エンディングの種類が一種類増えたんですが、何が起こるのか、どういう流れにするのかが未定で、グッドでもバッドでもないエンドが欲しいということだけしか決まっていませんでした。誕生日に特別な会話が起こるイベントも、どういうルールで始めるのか分かりません。髪型が変わって登場するという話は聞いていたんですが、これの仕様もまったく無い状態でした。

お店の中以外の背景も確定はしていませんでした。お店以外にどこに行けるのか、はっきりとは分からない状態です。また、主人公はアルバイトをしてお金を稼ぐんですが、アルバイトの内容は何なのかが分かりませんでした。主人公が女の子に触れるタッチイベントも、どんな状況で起こるか、ゲーム的な仕様がゼロでした。メインストーリーのほかにサブイベント的なものもあるようなのですが、これも進行ルールが判らない。また、通常は主人公がお店に行って女の子を選ぶんですが、先に女の子に誘われる同伴デートみたいなものも欲しいということでしたが、これも「ある」ということしか分からず、どこでどんな会話をするかが分からない状態。指名の女の子が来る前に一瞬だけヘルプで女の人が来てヒントを言うんですが、これの仕様もゼロ。

これらが3月12日の時点で決まっていなかったものです。

G:
これではほとんどシナリオが書けないというか……ゲームの開発のペースというのはこういうものなんでしょうか?

NGX:
僕らのほうは決められた日取りの中でできるところをやるしかないのですが、これはさすがに発売は延期するんじゃないか、とは思っていました。

それより以前、1月19日時点でのメモを見ると「登場人物の名前が決まっていなかった」と書いてあります。新キャラ3人の名前はこの時点でまだ仮名なんですね。それと、プレゼントをあげたり買い物に行ったりするんですが、そのための買い物系のアイテムはひとつも決まっていませんでした。あとエンディング、ラストイベントなのですが、この時点ではそれがどこで起こるのかが決まっていません。お店なのか、どこかに呼び出すのか……これでは書けないですね。

この状況で、タムソフト側の主張は「Team N.G.Xがシナリオの締切を再三延期させている」ということになっています。

G:
実際にシナリオの締切延期は行われたんですか?

NGX:
シナリオを1月末までに完成させるというのは、9月の時点での約束ではあったんです。ただそれは当然、プロットなり前後の仕様が固まっていたらという条件でのことです。3月時点で決まっていない部分については書けないですよ。こういう状況なのに、タムソフトは3月の時点で(音声の)収録のブッキングを取ろうとしているんです。この状況では(まだ決定していない部分が多いので)絶対に収録し直すことになるので、収録は延期したほうがいいです、という話をしました。僕からそんな話、普通はしないんですが。それなのにタムソフトの主張では、僕らのせいでシナリオが遅れに遅れた、ということになっているんですね。

G:
シナリオ以外のところが一体どう進んでいたのか気になるところですね……。

NGX:
そうですね。こういった状況の中で、3月12日に決まっていない部分について相談しに行ったところで、金銭的に払う気がないという話が出てきたんです。「こっちがピザを1枚頼んだのに、お前が2枚持ってきただけじゃないか」と言われました。会議をするというよりも、けんか腰ですよね。

G:
むちゃくちゃですね。


◆裁判に至るまでのやりとり

NGX:
その後のことなんですが、「いったん作業を止めてください、一度話し合いの場を持ちます」と言われて、3月12日以降に「ドリームクラブ ゼロ」のシナリオは書いていません。この時の停止命令自体が取り消されていない、という状態です。

その後、タムソフトの担当者が(タムソフトの)社長と会って話をしてきたということで、3月16日に僕がタムソフトに行って打ち合わせをしたんですが、結論としては「追加のお金は出せない」ということでした。しかも「今ここでやめるのであれば、当初の契約分も満額は払えない」という話もされました。

G:
最初の契約の分量はすでに超えているので、その分はもらえないとおかしい気がするのですが……。

NGX:
11月末時点で半金を払ってもらってるんですが、残りの半金は払わない、と。「全部書き終えて当初の金額をもらうか、現在の段階でやめて半金で終わるか」の2択しかないというんです。

ここで急にタムソフトが新たに出してきた主張があって、「シナリオの出来が悪いから、金は払えない」と言ってきたんですよ。「修正に手間がかかっているのでその分を考慮して欲しい」ということでした。契約書に「修正指示があった場合は10営業日以内に修正を行う」という記載があり、こちらからはシナリオを10日に1回のペースで提出して、タムソフトの担当者から修正指示を受け、その修正を反映させたものを送って……と何回も何往復もするやりとりをしていたのにですよ。そういう状況があった上で、3月半ばを過ぎてから「お前らのシナリオが悪いから金を払わない」と。

G:
今まで何を修正してきたのか、という話ですね。なんだかどんどん向こうの言い分が変わってきましたね。

NGX:
この段階での話し合いは「その2択はできませんので、こちらでも対応を考えます」ということを、僕らからは回答して終わりました。これはもうなにか落としどころを考えなきゃダメな状況になっているな、と。

まず修正の部分について、こちらとしては恋愛もの系ギャルゲーというジャンルは慣れたものですし、圧倒的に出来が悪いということはないだろう、と考えました。タムソフトの担当者は2年目の人だったんですが、この人の修正指示が100%正しいわけではなかったし、出来が悪いというのも言ってくれればなんとかなりますが、言いもしないで今になって出来が悪いから金を払わないというのはないですよ。そこで妥協案として提示したのが「追加で書くことになった2MB分について、1MB分のお金をください」ということでした。お互い1MB分だけ泣くという形で、なんとか世に出そうと。こちらもやったからには世に出したいですし。

ですが、結果としては「無理」という回答でした。そしてタムソフトから言われたのは「最終金の精算に入っていいですか?」ということです。今までTeam N.G.Xがやった仕事としてタムソフトが判断した分の金額が提示されました。半金よりは少しだけ多かったですが、当初の契約金額よりは全然少ない金額です。「これを飲むかどうか連絡をください」ということで、これは無理だということになりました。

G:
当初の分よりどれくらい少なかったんですか?

NGX:
タムソフトが言ってきた最終金の内訳は、テキストで簡単なものでした。3月7日に提出した分が最終提出となって、合計3.54MB。このうち、タグ容量0.77MBを削ったものが2.77MB。さらにその中で「精査済みシナリオ」、つまりチェックが終了したものが、1.84MB。そこにカッコがついて「90%の成果物と相当」とされています。これに加えて「弊社ライターによる補正作業、シナリオチェック、雑談の20%、エラー修正(雑談の10%に相当)」という内容で、それらを削られたものが1.1MB。「未精査シナリオ」が「50%の成果物と相当」ということで、これを足すと1.57MB。1.57MBから、11月分に払われた半金分1.25MBを引いた分が0.32MB。0.32MB分の金銭は払っても良いということでした。

※タムソフト提示金額の内訳
全体:3.54MB=0.77MB(タグ)+1.84MB(精査済)+0.93MB(未精査)
精査済:1.1MB=上述の1.84MB×0.9(90%相当の成果物と判断)-0.556MB(補正作業、シナリオチェック等)
未精査:0.47MB=上述の0.93MB×0.5(50%相当の成果物と判断)

総作業量は1.1MB+0.47MB=1.57MB
1.57MB-1.25MB(11月支払済)=0.32MB(追加費用分)

NGX:
説明を足していくと、「タグ」は0.77MBとありますが、この「タグ」とされているものはコメントアウト部分で、キャラ名や表情指定、ヒロインがどの程度の好感度か、などの指定です。これはタグじゃなくてト書きですね。これが無いと「誰が」「どんな状況で」喋っているのかが判らなくなり、シナリオとして成り立たちません。

G:
それをTeam N.G.Xが制作した分量から削ると言っているわけですね。

NGX:
はい。次に「精査済みシナリオ」。まずシナリオをチェックするのはタムソフトです。チェックをしたことで90%相当の分量になる理由は分かりません。さらに「弊社ライターによる補正作業、シナリオチェック」について、まずタムソフトはこれについて修正指示を出していません。修正指示を出さず、勝手に修正したから減額するよ、ということですね。修正指示を出さないで減額っていうのがもうめちゃくちゃなんですが、1.84MBから計算したら、30%は552KBですから、全角で約27万文字を「弊社ライター」という人が修正したことになります。

次に「未精査シナリオ」が50%相当の成果物だと言っていますが、これはタムソフトがチェックしていないから半額という衝撃の内容です。このメールを送ってきた時点で、3月7日から2週間経過しているので、タムソフトのチェック義務期間は終わっています。その間に修正依頼が僕に来ていないので、シナリオにエラーが無いということになるはずなんですが……。

このような状況がある上で、この算出書で「0.32MB分なら払えますよ」というメールをいただきまして、これはもうどうしていいのか分からなくなり、様々な人に相談したわけです。こんなにも下請けライターはなめられていいものなのかと。

もめ事になるとTeam N.G.Xとしてのイメージが悪くなっちゃうよ、という話もあったんですが、これはもう第三者を経由しないと解決しないという結論になりまして、弁護士に相談してみたわけです。

そして、弁護士を通して4月に内容証明郵便、書留と送ってもらい、タムソフト側の弁護士との会談もしてもらったのですが、タムソフトは譲歩の様子がなく、仕方なく裁判所に解決を依頼するべく訴訟を起こした、というわけなんです。

ここまでの大事になったのは、20年やってきて初めてです。僕は基本的には朗らかな(笑)人間で、別にどこにでも噛みつくというわけではないんです。ここだけはちょっと強めに言わせてください。すぐ裁判を起こすアメリカナイズされた狂犬集団と思われると仕事に差し支えますので(笑)。

G:
最終的なトータル、3.5MB分というのは、ゲーム全体の中でどのくらいの割合なんでしょうか。

NGX:
最終的な提出分は3.54MBで、だいたい全体の8割強に当たると思います。


◆裁判の状況

NGX:
その後、2回目の裁判が11月12日に行われました。判決が出るまではものすごく長くかかるそうで、最終的に満額もらえたとしてもたぶんマイナスになってしまいます。こちらから裁判所に書類などをまとめて送ったのが8月で、1回目の裁判が10月です。口頭弁論というやつですね。この時点では、こちらからの訴状に対して向こうからの反論が来たので、1ヶ月以内に返答を書いてくださいね、というだけで、1回の裁判は平均3分で終わります。しばらくは1ヶ月に1回、こうした書類のやりとりで終わるようです。民事なので、弁護士同士でしか出廷しないのが一般的らしく、僕も1回目だけ行ったんですが、やることもないので以降は弁護士に任せています。

G:
シナリオを書く人にとっていい結果が出ればいいなと思いますが、この後の流れはどうなるんでしょう?

NGX:
通例では、しばらくこの往復が続いた後で、裁判所はたぶん和解勧告を出すことになるだろうということでした。その和解勧告に乗れば終わるし、乗らなければ判決が出るまで続くという話です。期間としては1年半から2年だそうです。

G:
その間に、予定通りであればゲームは発売されてしまいますね。

NGX:
そうですね……。裁判所に提出されたタムソフトの答弁書にはこう書いてあります。被告というのがタムソフトで、原告というのがTeam N.G.Xですね。「被告は原告の作成したシナリオを一部については修正して使用していることは認めるが、被告は本件契約の代金を既に半額支払っているのであるから、原告のシナリオを使えるのは当然である」。これはけっこう衝撃的じゃないですか?(笑)

G:
半額払ったら使っていいんだっていう(笑)

NGX:
これがもしルールとして社会の当然なのであれば「100円払うから書いてよ」と言っておきながら、「50円払ったからもういいでしょ」というのができますよね。しかも「どこを使うかは俺が選ぶけどね」という話です。例えばタムソフトも、11月の時点でいったん支払っているので、それ以前に納品したシナリオを使っているというのならまだ分かるんですが、「半額支払っているから使えるのは当然だ」って書いてあるわけですからね。

G:
世の物書きが泣きますね。

NGX:
「手付け金を払ったら自分のもの」なわけですからね。もうひとつは、この状況になっているシナリオを、タムソフトにとってのクライアントであるディースリー・パブリッシャーに納品していることです。うまい表現が浮かびませんが、ディースリー・パブリッシャーも被害者なんじゃないか、という状況でして。

G:
ディースリー・パブリッシャーとしては、Team N.G.Xとは特に連絡もしていないので、納品されたシナリオがどうやってできあがってきたのか、把握していないわけですよね。

NGX:
把握していないと思います。確認はしていないので分かりませんが。

G:
把握できていないのだとしたら、ディースリー・パブリッシャーとしては、シナリオが完成したということで送られてくれば使いますよね。

NGX:
タムソフトがデベロッパーで同時にパブリッシャーでもあれば別なんですが、こんなグレーなものをそのまま納品しちゃうというのはちょっと……。その後のことを考えていなかったのかな、と思います。著作権関係でも争いがある創作物を、ほかの会社に納品してしまっているわけですから。

G:
契約の部分の話だけかなと思ったら、著作権にも絡んでくるんですね。

NGX:
そうですね。ただ裁判で主張できるのは1つだけなので、今回は「お金をください」が僕らの主張なんですね。

G:
ゲーム情報サイトなどで新情報が公開されて会話シーンが出たりしていますが、この会話内容はTeam N.G.Xが制作したものになっていますか?

NGX:
いくつかは僕らが作成したシナリオが100%そのまま使われていたのを確認しました。まあ「画面は開発中のものです」から、最終的にはどうなるのか僕にはもう判りませんが。また、お店の外の背景とか、デートっぽいセリフとか、僕は知らない情報もあったので、その後に決まり、書かれたものだと思います。あと、女の子からメールが届くイベントについては、収録が関係無いから、その他の部分が終わった後に空いてる時間でやろうよということになっていたので、関わっていません。それはけっこう初期のほうで話が出ていまして、今回のキャラ設定だとメールイベントの分は2.5MBからあふれちゃいそうだから、タムソフトの社員が「この部分はうちのスタッフでやるか、別料金でやってもらうかになると思うんだよね」という話もしていました。この時点では、超過した部分は別料金という思考がまだ残っているんですよ。それを信じていたら急に払えないと言われた感じですね。

G:
そもそも一番最初の金額が出ないというのが信じられないという気がしますが。

NGX:
裁判だからということもあるかもしれませんが、けっこうむちゃくちゃな答弁をやっていますね。例えばシナリオのチェックは契約書のほうで「10営業日以内に検査を行い定める期間までに再納入する」と明記されています。これをわざわざ書くところは逆に珍しいんです。当然チェックをするのは義務なんですが、これについて触れたところ、タムソフト側は「シナリオが全部マスターアップして終わったものを見るのが検査である」という言い分なんですね。完成していないから検査のしようがない、ということですね。それまでの段階でもチェックをしていないと完成しないんですが、言い分を変えてきているんです。

まあそのようなことをやっていますが、モメているテキストが発売されることになってしまって、どうしようかなぁという感じですね。

G:
発売すること自体は止めようがないんでしょうか。

NGX:
ディースリー・パブリッシャーにもどんな認識があるのか聞いてみたい気持ちもあるんですが、裁判中に相手方の近しい所と接触するのはあまりよろしくないことなのだそうです。知っててやっているという感じはしないんですが……。

G:
発売してから「実は裁判で係争中でした」となったら困りますからね。

NGX:
GIGAZINEに載ったら、もうちょっとメジャーなことになるのかな、と。


◆現在の心境

G:
現在の心境についてはいかがですか?

NGX:
個人的な心情としては、係争中のシナリオをそのまま売ってしまうというのが許せないですね。全部書き直したというのであればともかく。さすがにタムソフトの思惑を詮索することはできないですけれども、たぶんシナリオが遅れていたのも、内部で連絡が滞っていたかどうかで、全部僕らのせいになっていったんじゃないかな、と思います。ディレクターの人とかが、自分の仕事が遅れたりチェックが遅れたりしてるのを、「あいつらが遅れたからだ」みたいに言っていたんじゃないかなと。まあそれも予想でしかないのですが。

3月12日に来た強硬な口調だった人は渉外担当のちょっと偉い人だったんです。その人は、きっと話をまとめに来ていたんだと思うんですよ。向こうはこちらの都合でシナリオが遅れたと思っているから、僕が平身低頭で来るだろうという前提で話している感じだったんですが、こちらとしてはただ打ち合わせに行っただけなんです。そこで気持ちの行き違いがありなんとなく感情的になったところで、その人としては状況の詳細を何も知らない状態でこちらから「お金を下さい」って言われて、「それは払えない」という話になったのかもしれません。これを説明すれば、その辺の状況も分かってもらえるんじゃないかと思うんですが……。そのように考えたとしても、ディースリー・パブリッシャーに納品してしまった理由はまったく分からないですね。

G:
盗作をしていた小説が廃刊になったという例がありますが……。

NGX:
そうですね、ただ、タムソフトの答弁書では「権利はこちらのものだ」という主張で、こちらは「まだ権利が残っている」という主張でぶつかっているところなんですよね。

G:
「なぜディースリー・パブリッシャーに納品したの?」と聞いたら「権利がこちらにあるから」という答えが出るわけですね。

NGX:
ええ。ただそこは今モメているところですからね。少なくとも、中小企業庁に話を聞いてみたら、その状況であれば権利はTeam N.G.X側にもあるはずだ、という話は口頭ですがいただいてますし、担当の弁護士もそう言っています。最低限この件で「権利は我々にある」と主張すること自体は違法ではないと思いますね。裁判で思いっきり負けたら笑っちゃいますけど。

G:
これで負けてしまったとしたら、ゲーム業界に限らず文章を書いている人みんなが困りますよね。

NGX:
「途中で量が増えたけど、何も言ってこなかったんだからお金払わなくていいでしょ」ってことが、100%通っちゃうわけですからね。ボイスの制限で100KB、200KBで動くのは仕方ないと思いますし、ある程度の融通は利かせますが、今回のようなレベルで増えたものに対して「そもそもお前らの出来が悪いから払わない」、しかも「半額払ったから使うのは自由だ」となっちゃったらもうね。

G:
ほかの業界のことかと思っていたら、他人事じゃなかったですね。

NGX:
僕は元々はフリーライターでして、ゲーム雑誌で仕事をしたこともありますが、最初に3ページ書いて「やっぱり7ページにして」って言われたから7ページ提出、終わってみたら3ページ分しか払われなかった……なんてことはさすがにありませんでしたから。「お前が勝手にページを増やしたんだろ」と言われても、ライターがページの割り振りをするわけではないですから、どうしようもないです。そういう状況だと思うんです。

G:
これほどの内容だと、なぜ話題にならないのか、という気がしてしまいますね。もしこの件を聞かなければ「『ドリームクラブ ゼロ』が出たよ」で終わっていましたから。

NGX:
僕らも自分で発信することはしませんでしたからね。例えばNGXのホームページで「今裁判してまーす!」みたいなこと書かれていたらイヤですよね(笑)

G:
そうですね。今日は興味深いお話をありがとうございました。

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