人気マジシャンが1950年代にCIAに伝授した極秘スパイテクニックの数々


観客の目の前でコインやハト、時には人物までも「消して」みせたり、虚空から花束を取り出したりするマジシャン秘蔵のトリック。その鮮やかな手並みはスパイ活動に使えるはずだと考えたCIA(アメリカ中央情報局)は、冷戦のさなかの1950年代に、プロのマジシャンJohn Mulholland氏に依頼し、手品を応用した極秘テクニックの数々を伝授されたそうです。

Mulholland氏が執筆したスパイマニュアルは1973年にすべて破棄されたと考えられていて、CIAが手品を学んだということ自体が都市伝説だと考える局員も多かったのですが、元CIA局員のRobert Wallace氏は2007年に情報公開された機密文書のなかにこのマニュアルを発見し、スパイ技術の専門家でCIAのアドバイザーでもあるKeith Melton氏とともに「The Official CIA Manual of Trickery and Deception」という本にまとめています。

詳細は以下から。When the CIA tried its hand at magic - The Boston Globe

Mulholland氏は当時複数の著書がありニューヨークを中心に活躍していた人気マジシャンで、マニュアルでは、スパイテクニックを実行することになるCIA局員は「Performer(演者)」、演者があざむくことになるターゲットは「Spectator(観客)」と呼ばれます。例えば「観客がタバコや葉巻、パイプを取り出したら即座に、演者はポケットからマッチブックを取り出し、マッチを1本破き、火をつける用意をして構えます。これらの動作はすべて、友好的で礼儀正しいふるまいとしか見られないため、演者は堂々と行うことができます」といった具合です。

マッチブックにピンを隠してある場合は、左の薬指のつめで取り出すことができ、その動きは物理的にはマッチブックで隠され、心理的には相手のタバコに火をつけるというオープンなしぐさにより隠されています。また、小さな錠剤を隠してある場合には、相手の口元までマッチを持っていく途中で、手が相手のグラスの上を通った際にさりげなく落とすことができる、とアドバイスされています。

Melton氏とWallace氏による、Mulholland氏のスパイマニュアルを紹介した本「The Official CIA Manual of Trickery and Deception」はこちら。

The Official CIA Manual of Trickery and Deception


Mulholland氏がCIA用に手品を応用したスパイテクニックのマニュアルを書いたのは1950年代、なりふり構わぬスパイ戦争とも言える東西冷戦の最中で、Melton氏とWallace氏は、タバコの箱に隠されたシアン化物の毒銃や、セント・バーナード犬に変装してにせの動物病院へ運び込まれたエージェント、本物の陰嚢(いんのう)の上から装着するラジオ入りの人口陰嚢、座薬のカプセルの中に隠された極小のピッキング道具など、ソ連とアメリカの両陣営が使ったスパイ映画顔負けのトリックの数々も紹介されています。それに比べると、Mulholland氏の伝授したトリックの多くは、手品師の基本的な身のこなしや手さばきのテクニックを使って物を隠したり受け渡ししたりする方法や、ステージ上での助手との合図を応用した通信手段など、地に足のついたもののようにも思えます。

「The Official CIA Manual of Trickery and Deception」では、Mulholland氏がCIAに伝授したテクニックが、イラストを交えて紹介されています。これは手品の「ノコギリ」で使う箱を応用し、改造された車の燃料タンクに隠れて東ヨーロッパから脱出したスパイ。


こちらでは、ミネラルウォーターのボトルを運ぶケースの中央に、人が隠れるための空洞が作られています。


靴ひもの結び方で「情報がある」「ついて来い」「連れが1人いる」などといった情報を伝達できます。


秘密のサインには、首の後ろをかくことも有効です。遠くからでもよく見え、自然なしぐさですが、首をかいている人を偶然見かけることはほぼないからです。


さりげなく机から書類を拾うには、ロウをつけた本を置き、持ち上げることが有効です。


拾った書類をももに当てて片手で折る方法や、本ごとほかのエージェントに渡す方法も説明されています。


「観客」を油断させるには、キリッとした表情をしないことが有効。というわけで、「マヌケに見える方法」も伝授されています。顔の筋肉を緩ませ、目の焦点を合わせないようにするとよいそうです。


前述のマッチに隠された錠剤を使って酒に薬物を入れるテクニックに関して、この本の序文を書いている元CIA副長官のJohn E. McLaughlin氏は、「我々が知る限りでは、このテクニックが実際に使われたことはない」と述べています。しかし、Mulholland氏のスパイマニュアルは被験者の同意を得ずにLSDなどの薬物をCIA職員や軍人、精神障害患者などに投与していたMKウルトラ計画の一部だったとのことで、ソ連のスパイ相手に使われたことがなかったとしても、実験のためにこうしたテクニックが使われたことがなかったとも言いきれないのではないでしょうか。

・関連記事
犬のフン型発信器から暗号作成機まで、スパイが使ったひみつ道具10選 - GIGAZINE

最も奇妙なスパイ道具ベスト10 - GIGAZINE

CIAが発電所に対するサイバー攻撃を警告、実際に停電が発生した都市も - GIGAZINE

つまようじを消す「魔法」を使った教師がクビに - GIGAZINE

誰でも簡単にできる名刺を使った手品のムービー - GIGAZINE

0

in メモ, Posted by darkhorse_log