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取材

日本からFacebookのようなサービスは生まれてくるのか、夏野剛×中村伊知哉×慶應生トークイベントレポート


マーク・ザッカーバーグと彼の仲間たちが、いかにして世界最大のSNS「Facebook」を作り上げていったのかを描いた映画「ソーシャル・ネットワーク」が2011年1月15日に公開されます。

この映画の上映会が慶應義塾大学で行われ、メディアデザイン研究科教授でmixiの社外取締役も務める中村伊知哉さん、政策メディア研究科特別招聘教授でドワンゴ取締役の夏野剛さんを招いてのトークイベントが行われました。

Facebookと同じSNSであるmixiに関わる中村さん、そしてかつてNTTドコモでiモードを作り上げた夏野さんは、この映画やザッカーバーグにどのような印象を抱いたのでしょうか。
全米初登場No1映画『ソーシャル・ネットワーク』試写会&トークイベント~iモード×Facebook 先駆者に学ぶ,これからの社会~ #SoFlat

会場となった慶應義塾大学。


中村伊知哉(以下、中村):
アクションでもサスペンスでもない映画ですが、非常にスピード感と疾走感のある映像で、音楽もキレていて、2時間まったく飽きない映画でしたね。夏野さん、今日は「とくダネ!」お疲れ様でした。今の映画をご覧になっていかがですか?


夏野剛(以下、夏野):
面白かったですね。この映画を、IT系ビジネスをやったりサービスを使っている人、何年かの間にサービスが大きくなっていくのを見てきた人が観る印象と、ITに疎い人が観た印象は全然違うんだろうなと思います。オジサンたちは「こんなの全部フィクションだろう」と思うんです。でも、僕らからすればすごいリアリティに溢れていて、特に僕も一度会社を潰しているので、すごくよくわかります。


中村:
僕自身、10年前にはMITにいて、5年前にスタンフォード大学にいたので、映画に出てくる光景が懐かしいなと思いましたね。

夏野:
パーティーシーンしか覚えてないですよ(笑)

中村:
なんかよくわからない元気があるんですよね(笑) すごくリアリティがある。映画として見れば、監督のデビッド・フィンチャーは「ファイトクラブ」も作っていて、二重人格者のパラレル世界を描いていますが、本作もザッカーバーグの多面性を描いていて、何が真実かは分からないけれどいろんな人から多様な見方がなされるという、黒澤明の「羅生門」、あるいは「12人の怒れる男」みたいに、起こっていることは一つだけれどいろいろな人によって見え方が違う世界を描いています。
本物のザッカーバーグがfecebookを作る上で起こったことや、携わった人たちの思いはどうだったんだろうなと。ザッカーバーグはこの映画を観て「本当に正しいのは服装だけだ」と言ったそうですが、ザッカーバーグについて、みなさんなりのイメージを持っていると思いますが、どうでしょうか。

そもそも会場にはどういった人がいるんでしょうか。慶應の関係者の方が半分ぐらい?(会場、半分ぐらい挙手)仕事をしているという人は(会場まばらに挙手)少ない……就職が決まったという人は?(会場の多くが挙手)けっこう多いみたいですね。その中でSNSに行く人は?(会場まばらに挙手)いるねえいるねえ。就活中?起業したい人?起業もしなければ就職もしないという人は?(ほぼ挙手なし)ほとんどいないですね。Facebook使っている人は?(まばらに挙手)全員というわけではないみたいですね。夏野さんのGREEを使っている人は?(これもまばらに挙手)あんまり使ってないね。モバゲーやってるのは?

夏野:
mixiは?(多くが挙手)多いですね。ニコ動は?(多くが挙手)

(会場笑)

中村:
今日はニコ動もUstもない、最近のライブとしては珍しいイベントですね。SNSをほとんどPCでやってる人は?モバイル版?ああ、やっぱり日本だなあ(モバイル版の方が挙手が多かった)。
ではまず最初に、ザッカーバーグの人物像に向けた話をしていきましょう。飯塚さん、どうぞ。

慶應生代表、左から経済学部3年の飯塚勇太さん、メディアデザイン研究科2年の吉牟田陽平さん、商学部4年の伊藤久史さん。


飯塚:
IT企業系を中心に就活をしている飯塚です。映画のザッカーバーグは本物にしゃべりとか顔がすごく似ているなと思いました。そして、経営者ではなく生粋のプログラマー、職人みたいな人なのだなという印象を受けました。夏野さんがiモードをつくったように、ザッカーバーグもFacebookを作ったと思うんですが、事業を1から作るというのはどういう気持ちでやるのかなと、そのあたりの話をうかがえればと思っています。

夏野:
たぶんこのザッカーバーグという人は、僕がiモードを作る前にやっていたころの心境に近いのかなと思いますね。目前にある面白いことにエキサイトしてどんどん作っていく、目の前でものが動いていく、これが楽しいんです。最初はこれで途中まではうまくいったんですが、途中から上手くいかなくなってしまって……。
大企業の中で新しいものを作るというのと、何も無いところに自分たちのお金を突っ込んでオウンマネーで作る、ダメになったらすべての生活が破綻しちゃうというところでやるパターンと、あると思うんです。そこで、起業家は偉い、大企業に入るヤツはリスクをとらないと言われるのは大嘘で、大企業に入れないから起業家やってるってヤツが、起業家の中の8割くらいいるんですね。こういう人は大企業にいたって、起業したって、大きな仕事はできないですよ。

起業するかも知れないし大企業に入るかも知れないけれど、とにかく大きな事をやりたいという人、もしくはミッションとしてやらなきゃいけないことを持ってるって人が、起業家には2割ぐらいいると思うんです。六本木でモテたいと言うより、世の中を良くしたいというひと。世の中良くしたいって言うとカッコ良すぎるかもしれないですが、なんか世の中を面白くしたいって人。ザッカーバーグは両方持ってますよね。目先の面白いことやりたいし、こんなのがあったらもっと面白いよねというのを。映画に出てきたウィンクルボス兄弟はナンパのことをメインで考えてましたけど、ザッカーバーグはもうちょっと広い視野で、もともとクラブ制とかっていうのがリアルであったのを、ネットでやれればみんな喜ぶよね、という考えだった。これはちょっと次元が違うことです。

僕が2回目にドコモでiモードを立ち上げたときは、せっかくドコモで新しい仕事をするんだから、このプラットフォームをめいっぱい使って、とにかくでっかく世の中にインパクトを与えたいと思いました。だから、auがどうするとか、KDDIがどうするとか、当時のJ-PHONEがどうするとか、そんなのもうゴミみたいな話だよ、と。それよりも、生活を一変させるようなことをしたいよねと思っていました。そのためには、自分たちだけで抱え込んでるものを、もちろんビジネスのためにはそういうのも必要なんだけど、ある部分はオープンにしてやっていく必要がある。でっかいことやりたい、みんなの生活に大きな変化を起こしたいというモチベーションが強かったんですね。そのせいでお金が全然手元に残らなくて……。Facebookは2兆5000億みたいな話がありましたけれど、Facebook自体は数百億円ぐらいしか利益を生み出していないんですよね。

中村:
夏野さん、お金持ちになっていないんですか?

夏野:
なってないですねえ。去年のiモードは1兆5000億稼いだんですよ。

中村:
その1%ぐらい貰えたらいいですね。

夏野:
いいですねえ。1%で150億だからねえ……0.1%、0.01%でもいいな。まあしょうがないですね(笑)


この映画を見ればわかる通り、誰が一番Facebookにコントリビューションしたかってことです。マーク・ザッカーバーグって人は中心にいたかもしれないけど、あの時にウィンクルボス兄弟に会わなければ、あの発想はないんですよ。そういう意味ではやっぱりパクってるよね。あと、エドゥアルドが最初のお金を出さないとそもそも話が動いていませんよ。誰がFacebookを作ったの、というと、必ずしもザッカーバーグひとりではない。

中村:
ザッカーバーグは成功したアントレプレナーですけど、ほかにはマイクロソフトのビル・ゲイツ、アップルのスティーブ・ジョブズ、Googleのセルゲイ・ブリン、ラリー・ペイジとかいますけど、そういう人たちと比べて、どういうタイプに見えましたか?

夏野:
これはちょっと今日の話とズレるかもしれませんが、この映画を観ていて思いを馳せると、日本とアメリカの違いが出ていて、アメリカのベンチャーが立ち上がるのが早いのは、1に人材、2にお金、なんです。

すごいアイデアを持っている創業者が企業を立ち上げるとき、ファンドや創業者をつなぐショーンみたいなやつもいっぱいいるんですよ、若いころに何かを成し遂げたヤツが。そういうヤツがファンドからも尊敬を受けていたりして、この作品でもいきなり50万ドルの投資が出てますけれど、そういう資本がまず入ってきて、その後50億ドルっていうお金が入ってくる、そういう風にバーン、バーンとお金が入ってくる。資本が入るとき、お金を入れる側は経営がきちんとしていて欲しい、だから役割を上手く変化させていくんです。

創業者だからって経営の才能がある訳じゃない。創業メンバーだからって、その後の会社に必要かというと……というのがある。創業の才能もあって、企業をでっかくしていく才能がある人間というのもいます。ただまあ、100人に1人ですね。なので、うまいかたちで、資本が入るときにプロフェッショナル経営者が入ったりして、人材を入れ換えていくんです。映画で言うと、エドゥアルドが最初にいて、そのあとにショーンが入ってきて……というようにどんどん違う人間が入ってくるんですね。

同じことはグーグルにも言えて、もしセルゲイとラリーがずっと経営してたらもっと早期に潰れていたと思います。そこにエリック・シュミットがプロフェッショナル経営者としてかなり早い段階で入ったわけで、それが大きかった。会社が成長段階から人材とお金が供給されるんです。

対して、日本はこの映画のころ、2000年代前半に上場した企業の経営者は、ほとんど変わらずにそのままいるんですよ。モバイル関係の経営者みんな知ってますけど、経営者としてふさわしいのは1割ぐらいですね。あとはみんな交代したほうが会社が大きくなる。2000年代前半に上場したベンチャー系モバイル企業は、今の方が時価総額高い企業の方が少ない。アメリカだったら株主がうるさいので、もうとっくに創業者はハッピーリタイヤしているはずなんです。というところで、社会システムという面から見ても、日本とアメリカの環境の違いがよく出ている。

中村:
ビジネスの話が出てきたので、吉牟田さんからビジネスについて。

吉牟田:
夏野さんに聞きたいんですが、FacebookというSNSは、フレンドスタートかMySpaceとかもある中でなぜこんなに成功したのか、ということが気になるんですが……。どうして他のSNSを抑えて5億人ものユーザーを集められたのでしょうか?

夏野:
SNSはどれだけ急激に人が膨らむかというところで、イニシャルのスタートアップが重要という特性が決まっていて、MySpaceは立ち上げは早かったけど、何か発信したいものがある人が集中して使うというところがあり、当時のSNSはそういうブログの延長線上にあるようなものが多かった。マイノリティ発信者に対してフォロワー的な人がつくというのが主体だった。

Facebookのすごいところは参加者主体なところです。友達が多いヤツ、少ないヤツ、いろいろいるけど、それぞれ自分たちが楽しめる。実世界の人間関係とほとんど同じなんです。ユーザー同士がかなり対等な関係でスタートしていて、ハーバードからスタートしましたけど、自分が発信しなくても自分のページさえ開いておけばいろいろな楽しみ方があるという世界を作ったんですね。

中村:
faecebookや他が出てきてますが、twitterがあってgoogleがあってappleがあって、これからもっと大きくなるぞと思っている会社はありますか?

夏野:
Facebookて面白い例だなと思っているんです。APIとかオープンで、Facebook上でアプリをしてるのはジンガ(Zynga)ですが、そちらのほうが売り上げが何倍もでっかくって、企業価値も高いんです。ただ、ジンガはユーザアクティビティの95%をfaceobookに依存している。ビジネス的には全部自分でやった方が良いって思うんだけど、それをオープンにしているために、ジンガが傾いても他が出てくればいいじゃない、という状態。いわゆるプラットフォーマーだけれど、既存のプラットフォームは価値がほとんど上に取られているという矛盾構造の中で、Facebookはたぶん長く残るなと。

中村:
Googleにも言えることですが、マネタイズしないという点。映画の中でももめてましたけど、Facebookはお金をどうするか、マネタイズという点ではいかがでしょうか?

夏野:
ジンガがFacebookに依存しているのは、いつでもそのビジネスモデルが展開できるから。
Googleは広告システム以外の課金システムは上手くしていないので、広告出稿システムとしては成功しているけれど、それ以外SNSとかやっても上手くいかないですよね。新しいものがバンバン出てくるというのがアメリカの強みですね。twitterも4年前にはなかったですからね。

中村:
日本からは出てきませんかね?

夏野:
手前味噌ですが、ニコ動は結構いけると思っているんですよ(笑)ニコ動というのはYouTubeとUstreamとtwitterを一緒にしたようなものなんです。これはけっこういけるんじゃないかとね。ただ、日本からいくためには人材とお金、この二つがきちんと供給されない限り、きちんと企業側も受け入れない限り、スピード感について行けないですよね。


中村:
かつてソニーや任天堂も世界に出て行ったりしましたが、iモードは世界に出て行けなかった。何が違いますか?

夏野:
まず、iモードが世界に出て行くことはあり得ないんです。NTTドコモという通信企業が作っているからです。それを「なんでiモードは世界に出て行けなかったか」っていうのは、そもそも商売のカテゴリを間違えている人が言っていて、ドコモの最大のモデルは通信料なんですよ。通信料収入を世界で上げるためにはマジョリティ買収しかなくて、それをなぜやらなかったのかというのはやるべきだったと思いますが。金はあって技術はあるのに、怖かったからやらなかったんです。そういう意味で、iモードがなぜ世界展開しないのかという話で言えば、ドコモがドメインカンパニーだからで、端末を売るだけでは儲からないからやらないんですよ

中村:
多くの人はiモードが日本の中でもこんなにドカンといくとは思わなかったと思うんですが。

夏野:
僕は1997年のころから「そうか、ケータイがあった!」と思ってたんですね。当時、ドコモ社内にも成功すると思うヤツがいなくて、そのいなかったおかげでiモードを自由に作れたんですよ。たとえば、501iとか、機種名のあとに「i」がついているのは、当時BMW328iっていう車に乗っていたんですが、「iってかっこいいなー」と。それでついてるんですよ。

中村:
そんなんで社内通ったんですね(笑)

夏野:
社内には説明しないですよ(笑) 社内にはもう「これはiモードのiです」って。

中村:
SNS話に移りましょう。伊藤さんはSNS会社に行くと?

伊藤:
夏野さんにお聞きしたいんですが、Facebookが日本でも流行ってきていて、僕も最近使っています。Facebookはこのまま日本のSNS業界を変えるのではないかと言われているんですが、どうなんでしょうか。あと、日本のSNSは海外で戦っていけるんでしょうか。

夏野:
SNSに純化しているものはFacebookだけじゃないですか? ソーシャルアプリというものはみんなでゲームをやるとか、どちらかというとゲームプラットフォーム。Facebookはリアルネームで、本物の人間関係がある人はますます面白い。日本発のSNSは匿名のものが多く、リアルな人間関係とイコールというのは高校生ぐらいまでで、大学以上になると匿名で、もうひとつの自分がアバターとして存在している、というSNSです。

Facebookは実名じゃないと面白くないんです。出身高校、出身大学とかを入れれば入れるほど面白い。そういうのを入れると、どんどん「この人、友達じゃない?」とかって教えてくれる。それがけっこう当たっていて、実名じゃないと、Facebookの楽しさは全然分からない。これはちょっと日本のSNSと違う。だから、ダイレクトな競合はしないのではないかと思っています。

中村:
先週の金曜日に、DeNAの南場さんに僕の授業に来ていただいたんですが、Facebookとは全然ビジネスモデルが違う、と。

夏野:
それは、もし比べるならFacebookとジンガをあわせなければダメなんです。DeNAっていうのはソーシャルアプリとして儲けるのが基本にあって、その基本の中に広告収入とかがあるんだから。

中村:
日本のDeNAでもGREEでも、そういうのが海外に出て行ってビジネスする目はありますか?

夏野:
メディアの方が気付いていなくて意外なんですが、いま日本で一番元気な会社はDeNAとGREEです。この二つは、基本ガラケー上でビジネスをやっているんです。スマフォ、あるいはPCじゃないんです。ここの強みは、海外にそのまま持って行くのはつらいです。日本はガラパゴスみたいに言われますが、コンテンツプロバイダにとっては成功しているんですよね。一方、海外ではコンテンツ課金は失敗しているんです、キャリアが40%とか50%とかぐっと取っちゃうから。だからなかなか華開かない。そういう中に、日本のやり方をそのまま持って行くだけでは成功しない。

中村:
世界的にチャレンジするみたいなことを日本もやっていった方が良いと思うんですが、そこで大学の違い、映画でも出てましたが、夏野さんはペンシルヴァニア、そういうアメリカの大学と日本の大学の違いはありますか?

夏野:
慶應で言うのも何ですが……僕はペンシルヴァニアの経営大学院にいってたんですが、MBAのカリキュラムの一つとして「インターネットがどのようにリアルビジネスに影響を与えるか」という授業が94年にあったんです。94年というと、その年の12月にアメリカでYahoo!が立ち上がり、初の商用ブラウザ「ネットスケープ」が出てきた年です。そこで僕がたまたま授業を取っていたから人生が変わっちゃった。

ただ、それはビジネススクールだから、テクノロジーとしてのITではないんです。映画ではたまたまコーディングができるからと言うことで突っ走っていきましたが、実際は総合力が必要なんです、技術は一要素であって、いろいろな知見からやっていかないといけない。94年にその授業があったのはでかかった。僕が29歳の時ですね。

中村:
ザッカーバーグがfaecebookを作ったのは19のときですよ。当時は何してましたか?

夏野:
全然わかんない。当時は早稲田にいましたから。あ、僕、早稲田ですよ(笑)中村さんは、京大ですって。

中村:
じゃあ、会場から質問を取ってみようかな?

会場:
リアルとかネットとかソーシャルって、今後のコミュニケーションのあり方ってどうなるのでしょうか?

中村:
でっかいこと聞きますね。どうでしょう?

夏野:
みなさんのケータイの発信履歴と着信履歴とメールって、リアルで一番会っている人との履歴が多かったりすると思うんです。ぼくはテレコミュニケーションのジレンマと呼んでいるんですが、Eメールとかケータイメールとかいつでもどこでも連絡取れるということで遠いところの人とコミュニケーションを取れるためのツールと言われてますが、実際には彼女とか彼氏、ダンナとか奥さんとかとコミュニケーションするのが爆発的に増えているんですね。つまりリアルな人間関係があって、バーチャルな人間関係もあって、大部分は重なってる。FacebookなんていうリアルネームのSNSでは両方とも重なっている。

つまり人間ってそんなに行動のパターンは変わってないんだけど、どんどんコミュニケーションのやり方だけが変わっている。これは僕はいいことじゃないかと思っている。匿名性を利用して犯罪っぽいことが起きているのはよくないですが、それをいかに排除していくかは社会が慣れていくプロセスの中で上手くやっていくので、ぼくは楽観的に見ています。この人とコミュニケーションしたいというのがすぐに叶う、ハッピーな社会になっていくんだなと。これは人間にとって基本的にはハッピーなこと。ただ社会がきちんと適応していかなくちゃいけない。

中村:
ネット、ケータイが本格的に普及したのはここ15年です。それまでリアルな世界でやっていたことがネットでできるようになった。これからの10年は、逆が進んでいくんじゃないでしょうか。つまり、バーチャル空間でできることがリアル世界に貼り付いてきて、もう僕はモバイル機器は消えていって、こういう空間で繋がるようになるのではないかと思ってるんです。

そうすると、「こういうテクノロジーとか新しいビジネスが起こるんじゃないか」と言われていることは、すべて起こると思う。たとえば生産者側から消費者側へのパワーシフトっていうのがすでに起こりました。ザッカーバーグは学生です。本来は消費者である学生、ユーザー側が新しい世界を作っちゃう。便利になっていく中で不便なものは消えていく、CDショップが消えたり、そういうダイナミックな変化がどんどん起きていく。電子商取引は今、1兆8000億くらいなんですが、リアルの商取引は135兆円くらいあるんです。まだ2%しかデジタル化していない。残り98%もどんどん進んでいくでしょう。

一方で楽しいことは増えていくけれど、困ったことも増えてきて、それをどう解決するかなと。そのあたりはぼくらではなく、みなさんの空想力が試されます。

最後に、会場にこれからどうなるか聞いてみましょうか。パッケージCD、紙、書物とかなくなると思う人は?まだまだ残る?(後者の挙手が多めか) 日本の中で、ベンチャー企業がどんどん増えてくると言う人は?大企業こそが強い社会だという人は?(会場ほぼ半々ずつ挙手) これは半々くらいか。世界の中で日本の産業はこれから高まっていくという人は?勝てなくなっていくという悲観的な人は?(後者の挙手が多い)…多いな。

夏野:
チャンスはあるけど、このままじゃダメだなという人は?日本には人、モノ、金、技術、すべてあります。日本だと、まずは新入社員を配属してほっとくじゃないですか。時間余るじゃないですか、すると、日本の新入社員は一生懸命仕事を探し出すんですよ。そんな国、ないから(笑)。アメリカだったら指示がなければ帰っていいと考えますから。教育の水準がどうだとか言われますが、そんなことはない。日本には勤勉な人材がいるんです。

金もあるんですよ。個人金融資産が1400兆、企業の中にあるのは200兆円、あわせて1600兆円。国内で全ての資金がまかなえるんですよ。そのうち国債発行が900兆円ですが、まだ700兆円ありますから、相当なものですよ。

そして技術がある。新しいアイデアがいっぱい出てきて、どんどん立ち上がってくる。そして要素技術がけっこうある。匠の技みたいなノがいっぱいあるから。

でも、ないのは、リーダーシップなんです。これから大企業に入る人はご愁傷様です。これからあなたたちが入る企業の役員は、消費者以上に自社の製品を分かっていません。30年も同じ釜の飯を食っている人だけで役員会が構成されていますから。世界ではそんなのありえないんですよ。今まで世界に出て行けたのは、国として成長力があったからであって、ある意味でラッキーです。

いま国としての経済成長力がないので、差別化とか、ヘンなことをしないといけない。ザッカーバーグみたいな変な人を雇わなくちゃいけない。僕は日本を再生させるためには孫正義さんをNTTの社長にしなくちゃいけないと思ってるんですが、ああいう普通の人じゃない人が企業の経営者に出てくると、日本も再生する。変な人が社長をやっているところはチャンスです。

中村:
ひっくり返して言うと、リーダーシップが出てくればまだまだ日本にはチャンスがあると。会場の学生でなにか言い残したことがある人は?

会場:
次に面白いことしますかね? ザッカーバーグは。

夏野:
これからの人生、ヤツは暗いね、この映画のままだと(笑)。人生における成功に必要なのは、70%は運だと思うんですよ、同じ才能と努力をしても、運がなければダメなんです。何回かトライすると分かるけど、1発目で成功すると分かんないんで。ザッカーバーグは生きていくのに十分なお金を稼いじゃったので、本人としてはこれからの人生は面白くないかも知れない。……わかんないけどね。これから急に面白いもの見つけるかもしれないし。アフリカで難民を救う活動に目覚めるかもしれない。あるいは慶應にマーク・ザッカーバーグ記念館を作るかもしれないし。ちなみにこの会場を寄贈したのは京大出身の方(藤原洋)です(笑)。慶應の強みですね。他の大学からお金と知能を集められる。

飯塚:
僕は9月にシリコンバレーに行ってきまして、見てるとけっこうあっちのサービスが日本人でも作れそうなものなんですね。僕はすごくニコ動とか大好きなんで、ここにいる人間が10年後とか、世界に通用するサービスを作っていけたらな、と思ってるんですが。

夏野:
今やるんだよ、今! 10年後っていうと言い訳になっちゃうんですよ。アイデアがあるんだったら今やる、ないんだったらもうチャンスはない!

飯塚:
じゃあ今からやります!(笑)

吉牟田:
映画の中で、Facebookが100万人突破して花火挙げたりしてましたが、ああいうのいいなって。ああいうのを経験したいですね。

夏野:
100万人というのはiモードだとサービス開始から半年後ですが、オフィスはあんなすごいところじゃなかったねえ……。社内から「まぁ、すごいね」って言われたぐらいで、日本とアメリカの違いは大きいね。オッサンたちは分かんないんですよ、なにがすごいか。100万人はすぐにいけます。

伊藤:
僕はSNSに内定して、4月から行くんです。ここでは世界展開無理だって言われたけど、なんとかして世界でやっていきたいな、と。

夏野:
あ、ちがうちがう。絶対に戦えないと言っているんではなくて、日本の携帯をベースにしたモデルではやっていけないというので、会社として戦えないということじゃない。

伊藤:
ありがとうございます。

中村:
というわけで、これにて終了でございます。

(会場拍手)


友人や同僚、知り合いと交流を深められるSNS「Facebook」はハーバード大学で学生向けに作られ、今やユーザー数は5億人、創業者であるマーク・ザッカーバーグ氏は世界最年少億万長者となっています。夏野さんらが語ったとおり、なかなか日本から世界に通用するモノが出てきていませんが、この映画のように、突然とんでもない天才が見たこともない何かを作り出してくれるかも知れません。

IT業界の人は必見、そうではない人もぜひ見て欲しい映画です。

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