取材

「日本市場が特殊であることは理解している」、世界最大のSNS「Facebook」の日本向け戦略を聞いてきました


世界最大手のSNS「Facebook」が行ったプレス向けの懇親会において、日本法人の代表に就任した児玉太郎氏がFacebookの現状と日本でどのようにFacebookを普及させていくのかという展望を語りました。

日本ではSNSというとmixi(ミクシィ)が主力というイメージが強く、近年ではTwitterが一気に広く浸透しましたが、どちらも匿名での登録が可能なサービスであり、実名登録が基本のFacebookとは大きく異なります。


児玉氏は日本市場が特殊であることを踏まえた上で、「日本向けのサービス」を発表する予定があることを明かすなど、同社が日本での普及に向けて戦略的に動き出していることを明かしています。

日本市場攻略を目指すFacebookの今後の展望を知る手がかりは以下から。 Facebook」のカントリーグロスマネージャー(日本法人代表)に就任した児玉太郎氏が登場、まずは「Facebookとはそもそも何?」という部分から説明が始まります。


Facebookとは友達や家族、同僚などの仲間同士のオープンなコミュニケーションを促進することを目的としたウェブサイトで、スライドに描かれた「ソーシャルグラフ」と呼ばれる実世界の人々とのつながりを通じて、日常のできごとから旅行やイベントの思い出などを共有するもの。Facebookにはインターネットに接続することができるパソコンや携帯電話、スマートフォンから誰でも無料でアクセスでき、信頼できる環境で友達や知り合いと交流することができるようになっている、とのこと。


「Give people the power to share and make the world more open and connected.(人々が簡単に情報をシェアし、オープンでつながりのある世界を構築できる環境を提供する)」というのがFacebookの「グローバルビジョン」。Facebookが世界をつなげるのではなく、世界中の利用者が主体となってより便利に効率よくつながることができ、より楽しくさまざまな出来事を共有する手伝いをするのが目標だそうです。


Facebookは2004年にハーバード大学の学生向けに作られたサービスで、このころから実名での利用がベースとなっていたため、自分の友人知人のアカウントを発見する楽しみから瞬く間に広がっていったといいます。

2004~2005年から、日記や写真、スケジュール管理などの公式アプリを公開。2006年には「ニュースフィード」が公開され、これによって自分のアカウントの周辺で起こっている最新情報をまとめて表示してくれるようになりました。また、これまでは大学生しか利用できなかったFacebookがオープン登録を始めたのもこの頃。

2007年5月にはFacebookプラットフォームが開設され、開発者や企業がアプリケーション作成に参加可能に。2008年には英語圏をベースに勢力を強めていたFacebookが翻訳アプリをリリースし、翻訳には利用者であれば誰でも参加可能で、より自然な訳語に近づけていったそうです。

そして2009年3月には今まで即時性に欠けていたニュースフィードのリアルタイム化を実現しており、着実に進化を遂げています。


国・言語・人種の壁を越えてFacebookはどんどん利用者数を伸ばしてゆき、ついに2010年7月には月間のアクティブ利用者数が5億人を突破。


利用者の年齢分布の円グラフ。キレイに4分割されていて、あまり偏りが見られないのが特徴です。ちなみにこの中で最も高い成長率を示しているのは、赤色で示された35歳以上の部分だそうです。


ここからはFacebookでは何ができるのかが説明されていきます。


Facebook内で最も高い頻度で使用されているのは、「ホームページ」。日本では多くのサービスで「トップページ」と呼ばれている部分です。中心に配置されているのが「ニュースフィード」で、Twitterのタイムラインに近い感覚で友人の更新状況などについてリアルタイム更新がされていきます。


次いで利用が多いのは各アカウントのプロフィールページ。各アカウントに対して表示・非表示の設定が可能で、この例で言えば表示されているプロフィールは児玉氏の友人のもので、内容はその人が児玉氏に見せてもよいと判断した内容のみが表示されています。この辺りの機能はmixiなどの国内SNSで利用したことのある人も多いのではないでしょうか。写真や動画へのコメント、掲示板への書き込み、リアルタイムのチャットなどがこのページからできるようになっています。


Facebookは携帯電話やスマートフォンにもすでに対応しています。表示されているのはiPhoneアプリのホーム画面なのですが、モバイル=スマートフォンという認識なのか、携帯よりもスマートフォンに力を入れているのかちょっと気になるところ。


プライバシー設定画面から、友達、友達の友達、すべてのユーザーなどのカテゴリごとに、どこまでの情報を開示するかを設定することができます。また、親友や同僚、幼なじみなど、人間関係をグループ分けして詳細設定をすることもでき、「幼なじみには見せるが同僚には見せない」などといった設定もできるということです。実名登録であるため、何もかもがオープンなイメージの強いFacebookですが、この辺りのプライバシー設定は細かく可能となっています。


次に、ユーザーはFacebookで何をしているのかという内容です。


毎月300億件以上のコンテンツ(自分の近況や見つけたリンク、ブログやノート、動画などのあらゆる共有可能なもの)が利用されています。また、10億以上ものチャットが毎日やりとりされ、10億枚以上の写真が毎月投稿されているそうです。各利用者は平均90ものコンテンツを何らかの形で投稿・共有しているのだとか。


毎月1.5億人以上の利用者がモバイルからFacebookにアクセスしています(パソコンとの併用含む)。60カ国以上のモバイルキャリアにFacebookのモバイルサービスを展開しているそうです。


70カ国語以上の言語で展開されており、世界で30万人以上が翻訳プログラムにボランティア参加しています。どの訳語が採用されるかは投票によって決定するので、翻訳経験やスキルを問わず誰でも参加可能。


5億人以上のFacebook利用者のうち、半数以上が毎日アクセスしていて、毎日3000万人以上が平均130人の友人に自分の近況を投稿・共有。全利用者を合わせると毎月700億分もの時間がFacebook上の活動にあてられています。また、70%以上の利用者が米国外に居住しているということで、アメリカ発祥のサービスながら各国に広がりを見せているようです。


特定のブランドやアーティストのプロフィールをファンが作成して楽しんでいたのを受け作られた「ファンページ(Pages)」という機能も多く利用されています。各人平均80件のファンページに登録しているそうです。


世界中で100万以上の企業や個人開発者がFacebookアプリの開発に着手。利用者の内70%以上がこれらの企業などが開発したアプリを使っていて、現在50万以上のアプリが公開されています。また、世界中のホームページの内100万サイト以上がFacebook プラットフォームを活用して自社サイトのソーシャル化を図っているそうです。


最後に、世界でこれだけ急成長を遂げてきたFacebookが、これから日本でどんな展開をしていくかということが発表されます。


Facebookは2010年2月に日本にオフィスを開設し、地に足の着いた展開を目指すことにしたそうです。米国本社の特に優秀なエンジニアたちを着任させ、日本の環境を肌で感じ、ユニークなモバイル事情を含めて受け入れられる機能や仕様を、米国本社と共同で開発するとのこと。日本の開発者や企業にFacebookプラットフォームを活用してもらえるよう支援を行うとのことです。


この日までに日本向けに行った対応・開発が発表されます。「Facebookスポット」はスマートフォンに内蔵されたGPSを使って今自分や友人がどこにいるかを共有するサービスで、米国に次いで、世界で2番目に日本で公開されました。


iPhone用のFacebookアプリや各種スマートフォンのブラウザから利用できる状態となっています。


日本独特の携帯電話やスマートフォンへの対応も視野に入れており、すべてのキャリアの多くの機種で問題なくFacebookが利用できることを確認。アカウント登録時のプロセスを日本人になじみ深い流れに変更したり、日本ではもうあまり使われていないショートメッセージを前提として機能を撤去、絵文字対応を進めるなど、より日本のユーザーが自然に利用できる環境を整えているところだそうです。また、日本のユーザー向けに特別に企画した機能の開発を進めており、近日中に発表する予定ということです。


以下、質疑応答の時間にされたやりとりです。すべて児玉代表が回答しています。


・日本でも実名での登録を貫くのか?

日本においても実名ベースであることは変わりありません。日本が特殊な市場であることは分かっていますが、コアになっている考え方を変えるつもりはないです。

・日本でのプロモ―ション計画は?

将来についてはまだ計画はありません。まずFacebookをお客様に経験していただいて、そのすばらしさを経験したお客様がさらに人を呼んでくるのが鉄板というか、大切なプロセス。必要に応じてPRをするかもしれませんが、中心となるのはご利用いただけるサービスや機能、使い勝手などの体制作りで、それを1番大切に考えています。

・日本での利用者数の伸びはどのくらいか?

目標数字は日本および韓国の個別の数字となりますが、Facebookではこれらの数値は公開していません。しかし確実に成長しています。そして、多くのみなさんに利用してもらう準備をしているところです。

・実名主義を日本に浸透させるためにどうしていくつもりか?

実際にこれからどのように展開していくかは考えていくところですが、日本のみなさんの使っているものの中にも実名ベースのサービスもたくさんあります。その中でFacebookとその利用場面が合致すれば、実名ベースのサービスのすばらしさを感じてもらえるのではないかと考えています。

・アメリカ版との使い勝手の違いは?

数字として示せるものはないが、Facebookの写真や動画などをインタラクティブに共有する機能が使われている。日本でもそういう風にお客さんに使ってもらいたいし、もっと便利さを感じてもらいたい。写真にタグをつけたり、イベントを計画したりグ、ループを作ってそこで情報共有をする。単純に近況をアップする以外にも利用方法があるのだが、日本ではまだそこが十分に浸透していません。そこが米国との違いだし、まずはその部分を知ってほしいです。

・今後日本での普及に向けてエンジニアを増やすなどの方針はあるのか

スタッフに関しては非常に流動的で、必要に応じて採用し体制を構築していくつもりです。成長に必要であれば採用しますが、一気に人を増やすということはありませんし、現在も少数精鋭で運営しています。

・企業がFacebookを使いたい時に日本では窓口があるのか

現在、ほとんどの企業の方と問題なくお話している状況で、窓口は用意しています。

一連のプレゼンテーションを受けて、やはり1番気になったのは「日本のユーザー向けに特別に企画した機能の開発」という部分で、これがすでに日本では盛んに使われているSNSやTwitterなどのサービスからシェアを奪うきっかけとなるのかどうか、今後の動向が気になるところです。

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in 取材,   ネットサービス, Posted by darkhorse_log

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