病院で死ぬか家で死ぬか、最期の日々を過ごす場所が残された家族の精神的健康に大きく影響


癌(がん)で亡くなる人とその看病をする人を対象とした調査で、病室やICU(集中治療室)で亡くなる患者は自宅で在宅ターミナルケアを受けながら亡くなる患者と比べ、終末期のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)が低いことが明らかになりました。

これはそもそもQOLの向上を主眼とした在宅ターミナルケアのあり方を考えると当然とも言える結果かもしれませんが、亡くなる場所は患者本人だけでなく、遺族の精神的健康にも大きく影響するということも判明しています。自宅で亡くなった癌患者の遺族は病院で亡くなった患者の遺族とくらべ、PTSD(心的外傷後ストレス障害)となる確率が1/5となるそうです。

詳細は以下から。Study Finds Where Patients Die Affects Quality Of Life And Mental Health Of Caregivers

「癌患者が亡くなる場所は、本人にとってだけでなく、看病する家族にとっても非常に重要です。今回の研究結果は、病院で死を迎える患者を減らし在宅ホスピスを普及させる努力が、患者の終末期のQOLを向上させるとともに、死別の反応として家族が精神疾患を患うリスクを軽減させることにもなると示唆しています」と、ハーバード・メディカルスクールDana–Farber Cancer Instituteの講師で今回の論文の主執筆者であるAlexi A. Wright医学博士は語っています。

Wright博士らは聞き取り調査の手法で、342名の進行癌患者とその看病をする人々を対象に患者のQOLと看病者の精神的健康について研究しました。患者は研究への参加から死亡までの期間(中央値4.5ヶ月)追跡調査され、患者が死亡した直後にWright博士らは死の直前2週間のQOLを評価しました。看病者については、研究への参加時と、患者の死亡後6ヶ月に精神的健康状態を評価されました。

その結果、患者と看病者の双方にとって、最期の日々をどこで過ごすかというのは非常に重要ということがわかりました。病室やICUで亡くなった患者は在宅ホスピスの患者と比べ大きな身体的・精神的な苦痛を味わいQOLが低かったほか、看病をする家族も、患者が病院で亡くなった場合は自宅で亡くなった場合と比べPTSDとなるリスクが5倍だったそうです。

具体的には、病院で亡くなった患者を看病していた遺族は21%がPTSDを発症したのに対し、自宅で亡くなった患者の遺族の場合は4.4%だったとのこと。また、ほかの何事も手に付かなくなるような強い悲嘆が長期間続くProlonged Grief Disorder(遷延性悲嘆障害)となる割合も病院で亡くなった患者の遺族では21.6%だったのに対し、自宅で亡くなった患者の遺族では5.2%だったとのこと。

研究者たちは患者自身のQOLが最期の日々を過ごす場所に影響されることは予期していましたが、患者の死を悼む過程での遺族の精神的健康にこれほど大きく影響するというのは予想外だったそうです。今回の研究結果は、患者の死後看病者が精神疾患を患うリスクと患者の死の場所との関連を示した初めてのものとのことです。

Wright博士らは、医師と患者と看病者との間で「どう人生を終えるか」をじっくり話し合うことや、患者教育を向上させることを含め、病院で死ぬことを選ぶ患者を減らす複数の方策を提案しています。

「どこでどのような治療を受けて末期の日々を過ごすかが自分のQOLに与える影響や、あとに残していく愛する人々に与える影響について知っていれば、実りのない延命治療などを避けるためあらかじめ意思を表明しておくといった、違った選択をする患者も出てくるかもしれません」とWright博士は述べています。

今後は、患者は自分の予後について完全に理解しているかや、患者と医師が化学療法を含む治療を止めると決断するときにはどういった要素が絡むのかなどといった、患者と医師のコミュニケーションや意思決定について調査していく予定とのことで、Wright博士は「進行癌患者のおよそ70%が予後を知りたがりますが、自分が死につつあることを自覚していると報告するのは末期患者のわずか3分の1です。もし患者が自分の予後についてよく説明を受けていて、さらなる治療に反応する可能性の低さを理解しているなら、違った選択をし、違った結果が出るものでしょうか?わたしたちはそれを探りたいと考えています」と語っています。

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