メモ

稼げば稼ぐほどハッピーになれるのは年収650万円まで、それ以上だと幸福感は収入に比例しない


プリンストン大学の調査により、世帯年収が7万5000ドル(約631万円)以下の人では収入と「喜び」や「満足感」といった感情は比例するのに対し、7万5000ドルを超えると「稼げば稼ぐほどハッピーになれる」というわけではなくなってしまうことが明らかになりました。

この7万5000ドルという額がどうやら「仕事のストレスや仕事につぎ込む時間の長さ」と「稼いだお金で買える物や体験」が相殺しあうようになるしきい値となっているようです。

After $75,000, Money Can't Buy Day-to-Day Happiness
https://www.medicinenet.com/script/main/art.asp?articlekey=119440

仕事に打ち込んで年収1000万を稼ぐようになっても年収630万円の人より幸福になれないのなら、仕事を頑張る意味がなく不毛なのではないか、と思ってしまいますが、これはあくまで「日々感じる生活に対する満足感や幸福感」の話であって、自分の人生全体を自己評価したときには、例えば年収12万ドルの人は年収7万5000ドルの人より自己評価が高く、年収16万ドルの人は年収12万ドルの人よりさらに「人生に満足している」と答えるそうです。


研究を行ったプリンストン大学で経済学と国際関係論を専門とするAngus Deaton教授は、「幸福という言葉は、広い意味を持つことを考慮する必要があります。自分の人生を全体として見たとき、うまく行っていると評価できるという意味での『幸福』がある一方で、今この瞬間の心理状態はどうか、日々の生活で心の満足を得られているかという意味での『幸福』も存在します。後者の意味での幸福度は年収7万5000ドルを超えるとそれ以上稼ぐようになっても向上しないのですが、前者の意味での幸福、人生に対する自己評価は、高所得者層だけを見ても、収入と比例して上がっていくのです」と語っています。

米国科学アカデミー紀要に掲載された研究では、2008年と2009年に45万人のアメリカ人を対象に世帯収入や調査前日の感情の状態、人生や生活に対する自己評価を調査したGallup-Healthways Well-Being Indexのデータを用い、2種の「幸福」と収入の関係を調べました。

その日の心理状態という意味での「幸福」と、人生に対する満足感という意味での「幸福」というのは異なるものだ、とDeaton教授は述べています。例えば、調査を受けた前日はたまたま上司にしかられたり、スピード違反で切符を切られたため気分がふさいでいたが、人生全体にはおおむね満足している、という人もいれば、調査を受けた前日には友人や家族と出かけたり、楽しいことがあったので良い気分だったが、人生について評価してみると満足しているとは言えない、という人もいるはずです。

その2つの「幸福」のどちらが重要かというのは哲学的な問題で、個人の価値観によって異なるだろう、とDeaton教授は述べています。「それはとても難しく、深い問題で、どちらの幸福も重要です。いまこの瞬間に悲しい気分の人にとっては、その人の人生が全体としてうまく行っているとしても、それで悲しみが紛れるというわけではないのですから」

これまで多くの社会科学者や心理学者が「幸福度」の測定方法を模索してきましたが、今回の研究は「いまこの瞬間の幸福感」と「自分の人生全体を幸福と思うかどうか」という2つの側面を切り離して分析することにより、長い目で見た幸福度は高所得者であっても収入とともに上がり続けるが、日々感じる瞬間的な幸福度は、年収7万5000ドルを境に収入が増えても上がらなくなるという、興味深い結果を得ています。

この結果はこれまでに収入と幸福の関係について調べたさまざまな研究結果とも合致していて、アメリカに限らず「収入は、一定の額に達するまでは幸福度に影響するが、ある額を境にそれ以上稼いでも幸福度は上がらなくなる」という傾向がさまざまなデータから示唆されているそうです。

参考までに世帯年収7万5000ドルというのがどの程度の収入なのかというと、2008年のアメリカの世帯年収の平均は7万1500ドルであったのに対し、中央値は5万2000ドルだったとのこと。ごく一部の億万長者が平均値を押し上げているというわけなので、中央値を重視して考えてみましょう。

「貧困層」と呼ばれるのが世帯年収が中央値の半分未満、つまり年収2万6000ドル未満の層であることを考えると、年収7万5000ドルというのはその約3倍。生活に困ることなく比較的裕福な暮らしができる収入、例えば子どもを私立の学校に入れることができたり、ローンを組んで住宅を購入することができる収入、といったイメージでしょうか。日本では2008年の世帯所得の平均は556万2000円、全世帯の中央値は448万円となっているので、中央値との比から計算すると、アメリカでいう年収7万5000ドルというのは日本でいう年収646万円程度となりそうです。

また、「病気」や「離婚」といったネガティブな出来事の心理的影響は、所得が低い人の方が高所得者と比べ同じ出来事から受けるダメージが大きく、逆に週末のレジャーなどの「気分転換」や「ちょっといいこと」からどれくらい元気づけられるかというと、高所得者の方が低所得者より同じ出来事からより多くの幸福感を得られるという傾向も明らかになったそうです。

「あらゆる側面で、貧しい者にとって人生は厳しいのです」とDeaton教授は語っています。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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