メモ

「iPad vs 雑誌」、iPad上の電子書籍市場が抱えている問題点とは?


鳴り物入りで登場した割には日本語圏がすっかり置き去りにされており、いろいろと出版社やらなんやらが大わらわで電子書籍に取り組み始めた効果もいかほどのものなのか疑問符を呈さざるを得ない……というような感じになっているわけですが、そういえばアメリカでは一体どうなったのでしょうか?

というわけで、雑誌に絞ってアメリカの電子書籍市場の実態を見てみた詳細は以下から。
iPad vs Magazines | Printing Choice


現時点でアメリカにて発行されている雑誌は全部で1133誌。アメリカ国内での雑誌の総売上は45億ドル(約3837億円)。2010年7月時点で公式にiPad向けアプリを提供している雑誌は40誌となっています。


ちなみに、最も売れている雑誌(ニューススタンドという新聞や雑誌を販売するキオスクのようなもの経由)は「Reader's Digest」で1ヶ月に800万部。最も定期購読者数の多い雑誌は「AARP」で2400万部。一方、iPadで最も売れている雑誌は「WIRED」で1ヶ月に9万5000ダウンロードとなっています。

そして最大の問題が価格。リアル雑誌とiPad用の電子書籍とその両方を出しているケースで見てみると、「TIME」はリアル雑誌が1部4.95ドル、年間購読が20.00ドル。iPadでは1部が4.95ドルということでリアル雑誌と同じ価格なのですが、年間購読では割引がなく、254.00ドル、つまりリアル雑誌よりも234ドルも高くなります。これと同じ問題がほとんどの雑誌で発生しており、原因としてはiPad上のiBooksがまだ「定期購読」という販売モデルに対応していないため。そのため、毎号購入せざるを得ない、というわけです。


なお、「WIRED」の場合は一番最初のiPadでの売上数はニューススタンドで売られたリアル雑誌の数を上回りましたが、ニューススタンドで売られたもの以外も含めると印刷版全体の総合計部数の13%に匹敵する数がiPadでダウンロードされたとのこと。かなりの割合です。


対して爆死したのは「GQ」で、最初のiPad版のダウンロード数はわずか365回となっています。


アメリカの雑誌業界は45億ドルの売上を印刷されたリアルの印刷版雑誌で得ており、iPadの電子書籍1部あたりの価格「4.99」ドルで計算すると、iPadでは実に9億回もダウンロードされないと割に合いません。あるいは、雑誌の場合は1部売れるごとに25ドルの広告収入も発生するため、現時点でのiPad所有者全員(2010年4月から6月末までで300万台が売れている)について、4.99ドルの電子書籍を一人あたり54回ダウンロードさせるのであればなんとか業界全体が現状維持できるそうです。


なんというか、電子書籍が雑誌のメイン市場となるのはまだまだ先のことになりそうな現実です……。

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in メモ, Posted by darkhorse

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