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「RAIDを過信してはいけない」、データのバックアップやRAID復旧についてHDDのプロに聞いてみた


複数台のハードディスクを組み合わせて利用することで、万が一ハードディスクが故障してもデータを失わずに済むといわれる「RAID」は、企業のシステムに広く用いられているだけでなく、最近では市販の外付けのハードディスクにも採用されており、個人でも使う機会が増えてきました。

これらのシステムを利用してテラバイト級のデータを保存しているデータ量が大きければ大きいほど、故障すると大量のデータが失われてしまう危険性があるわけですが、どの様にバックアップをするのがいいのでしょうか。

より確実にバックアップをとるコツや、万が一の際にはどう対処すればよいのかを、過去1万台以上ものRAID復旧の実績を持つデータ復旧専門会社「日本データテクノロジー」の内部に潜入し、技術者の方々にいろいろと聞いてきました。

詳細は以下から。データ復旧|PC・サーバー・RAID機器のハードディスク復旧ならデータ復旧.com

日本データテクノロジーの入居しているビル。東京・銀座にあるため、官公庁の集まる霞が関や大手企業の多い中央区、港区、千代田区などからもアクセスがよいので持ち込みも多く、ちょうど取材中にもサラリーマン風の男性が来社していました。


3階にある日本データテクノロジーの入口。内線電話で要件を伝えます。


それでは中に入ってみましょう。ドアは静脈認証でロックされたセキュリティの高いもの。


また、退室時も静脈認証が必要となっており、入退室の時間を把握することでさらにセキュリティを高めています。


また、社内の20数ヶ所に設置された全27台もの監視カメラによって人間の動きも監視しており、情報漏洩を防ぐための施策が徹底的になされています。ある一定の場所ではなく、人間の導線を全てチェックし情報漏えいを防ぐために徹底されているとのこと。


取材ということで申請してカメラを持ち込みましたが、基本的にUSBメモリや携帯電話など、情報漏洩につながりそうなものは一切持ち込めません。


社員ではなく、外部の警備会社のスタッフが常駐しています。定期的に交代するため、警備の内容がいい加減になるということもありません。撮影中に従業員らしき人が何人か通りましたが全員がセキュリティチェックを受けていましたがその厳しさは空港並みで、「普段からこれだけチェックが厳しいと通常営業に支障が出るんじゃないか?」と思えるくらいです。


ジョン・エフ・ケネディ空港にも同型のものがあるという金属探知機の中をくぐるのですが、感度が非常に高いため、ポケットの中のものからベルト、靴まで全てこのようにトレイに出してからボディチェックが行われます。


オフィスはこんな感じ。1フロアーにデータ復旧技術部門、カスタマーサービス部門、総務部門の全てが配置されています。銀座以外に支店を出さず、この1フロアーに全てを集結させることで、スピード対応を可能にしているそうです。


机には引き出しがないので、紙の書類を保存しておいて盗まれる可能性はゼロ。安全です。また持ち出しできるノートパソコンも基本的には利用されていません。


ここからが復旧技術エリア。棚の上や、手前に見える段ボールは、復旧が完了して無事、持ち主に戻される機器です。


見学者はこの緑のエリアを歩いて行くことになります。


カーペットの色で土足可のエリア、土足不可のエリア、静電防止スリッパのエリアを区別しています。


よく整理された工具や梱包材など。定位置での管理が作業のスピードやミスの防止に大きく貢献しているといいます。


RAID機器が保管されている棚。家電量販店でよく見かけるようなものがいろいろとありました。


新モデルと旧モデルのTeraStationが仲良く修理を待っていました。販売台数が多いこともあって、tarastationは復旧依頼の常連だといいます。


復旧が終わった機器類は別の棚で、静電気防止用のエアパッキンにくるまれて置かれます。


多くの依頼を受ける中で、珍しい機器が持ち込まれることもあるとか。これは2007年頃にリリースされたメーカー製の水冷デスクトップPCでしょうか。


大量にストックされているデータ返却用の外付けHDD。復旧依頼をした8割の人が外付けHDDでの納品を希望するそうで、作業台の下には、大量にデータ返却用の外付けハードディスクがありました。容量もいろいろとそろっていて、まるで家電量販店の一角のような光景。


持ち込まれたハードディスクは、まずここで初期診断を受けます。


データがとりあえず読めそうなら論理障害復旧エリアへ。ハードディスクの移動を最小限に抑えるために、ここの機器にハードディスクを接続したら作業はリモートで行ないます。


Macのディスクを復旧するためのマシンも完備。


少しでも診断・復旧時間を短くするため、社内の各セクションにこのような数量表示板があり、今どこにどれだけのタスクが溜まっているのか随時確認できるようになっています。


RAID復旧エリアでは、16台のハードディスクで組まれたRAIDストレージが復旧作業を受けていました。ハードディスクが多ければ多いほど故障の要因が複雑になり作業は大変になります。過去には24台構成のRAIDを復旧させた実績があるそうです。


実際の作業風景。バイナリエディタを4つ表示させてセクタの内容を表示させているようでした。


「具体的にどういうことをしているのですか?」と聞いてみたところ「データをつなぎ合わせて吸い出すというよりも、間違って書き込まれた内容を書き直している感じです」とのこと。膨大な量のデータですが、壊れた場所は「長年の経験があるのでピンとくる」そうです。RAID復旧は経験値が絶対に必要だということで、復旧率だけでなく、復旧のスピードにも影響するそうです。


カスタマーサービス部門は復旧部門のすぐ隣にあるため、技術的な問い合わせについても即座に対応することが可能となっています。


そして、復旧エリアの一番奥にあるのが物理障害に対応するクリーンルーム。中にはドナー部品用のハードディスクが1700個以上、基盤が数百単位で保管されています。多くの部品をストックしておくことが、物理障害の復旧率とスピードに大きく影響を与えるということです。


実際にハードディスクのケースを開けてヘッドの交換などを行い、データを読み出せるように復旧させています。


入室の際は作業服に着替えてエアシャワーを浴びるなど、ホコリ対策も徹底。半導体工場ほどのクリーンさは要求されないとはいえ、かなり手間がかかります。


今回は特別にクリーンルームの中に入れてもらいました。制電仕様の作業服と帽子、そしてマスクを着用が必要です。


クリーンルームに入る前に、エアシャワーで身体についた埃を吹き飛ばします。


スタッフ1人あたりの作業デスクはこれくらいの大きさ。物理復旧の心臓部ともいえるところです。空気が乾燥している上にハードディスクの発する熱で思ったよりも暑い空間となっていました。ここで12時間作業することもよくあるそうです。


実際に作業している様子。機械的に故障してデータを読み出せないハードディスクは、ここでヘッドやPCB(制御基盤)などのパーツ交換を行なうことで、データを読み出せる状態に戻されます。初期診断依頼をした際、郵送でなく機器を直接銀座に持ち込むとクリーンルームの外からこの様子を見ることができるそうです。


データの読み出しに成功したら、別のハードディスクに全セクターをコピーしてクローンディスクを作成し論理復旧作業にかかります。最近は大容量のハードディスクが増えたため、このコピー作業にはかなり時間がかかってしまうそうです。


こちらは交換部品のドナーハードディスクを保管しているスペース。使用頻度が高いものだけがここに1700台ほど置かれています。


様々なサイズ・メーカー・型番のハードディスクが用意されています。またビルの地下にも巨大な倉庫があり、普段から部品のストックを作っているとのことでした。


例え同一メーカー・同一型番のハードディスクでも、製造時期によっては微妙に制御基盤が違うためストックはかなり大量になります。


また、同じハードディスクといっても部品の形は様々。分解するにあたっても「あるネジを締めてから他のところを緩める」など、各社各様に様々な手順・方法があるようです。復旧の数をこなしていく中で培った技なので、社員の方によると「恐らく製造メーカーでもそこまで知らないんじゃないでしょうか」とのこと。


室内の方が気圧が高く空気が外に流れていくので、外からのホコリは入ってこれないようになっています。


データの読み出しに必要なハードディスクは、交換前のオリジナルパーツとともにここに保管しています。

■RAIDの原理と復旧の状況について

日本データテクノロジーの技術者の方に、ハードディスク復旧について色々お伺いしました。

左から、論理復旧担当の西原氏、RAID担当の趙氏、物理復旧担当の岩谷氏


GIGAZINE(以下、G):
まずは基本的な質問ですが、どうしてRAIDを利用したハードディスクの復旧は難しいのでしょうか。

日本データテクノロジー(以下、日):
簡単に言うと、RAIDとは複数台のハードディスクを組み合わせて、PCから1台のハードディスクに見えるようにしてデータを保存する仕組みです。単体のハードディスクだと、壊れた場合でも復旧ソフトなどで比較的簡単に直るのですが、RAIDについてはファイルシステムの知識やRAID本来の情報、アルゴリズム、サイズなどを把握していないと直すことができないというところがあって、普通のハードディスクの復旧より難しいところがあります。

G:
現在よく使われているRAIDのレベルとしては「RAID 5」や「RAID 10」などがありますが、なぜこれらが主流となっているのでしょうか?

日:
RAID 5は最小3台のハードディスクを使いますが、2台のハードディスクの情報を計算した計算式の答えの情報がもう1台に保存されています。もしも3台の中の1台が壊れてしまっても、残りの2台の情報から逆算して復旧させることができます。

RAID 0だと1台壊れた瞬間にすべてのデータが使えなくなってしまうのですが、RAID 5だとそのまま使うことができるので、大きな会社でもRAID5を利用しているところは多いですね。また、BUFFALOさんの「TeraStation」やI・O・DATAさんの「LANディスク」といった、RAID 5を利用した外付けハードディスクがかなり安価で出回っているのも、RAID 5がよく使われている理由だと思います。

G:
個人で扱うデータ量が最近大幅に増えてきていますが、このように大容量化したことで復旧サービスを行う上で何か変化はありましたか?

日:
RAIDに関して言うと、かなり時間がかかるようになってしまいましたね。ハードディスクの容量が増えたことで、さきほど言った計算の量も増えてしまうので。

物理復旧の観点からは、ヘッドの本数が増えたことで障害が発生しやすくなっているというデメリットはありますね。また、当社では物理復旧したハードディスクのクローンを作ってから抽出作業を行っているのですが、そのクローンディスクを作る時間も延びてしまっています。

■大容量時代のバックアップのとり方は?

G:
ところで、数百ギガバイトとなるとDVD-R換算で100枚以上とものすごい量になってしまいますが、専門家からみて、一番いいバックアップ手段というのはどんなものがあるでしょうか?

日:
うーん、そうですね……実は、フロッピーディスクの復旧のお問い合わせも結構あります。当社では対応していないので、「すみません」というお答えになってしまいますが。同じハードディスクの中にバックアップを作られる方がいらっしゃいますが、これもあまり意味がありません。

確かに論理障害が起きた場合、ハードディスクのパーティションを区切っていれば、復旧の確率が非常に高くなります。1つのパーティションの中にフォルダ分けしてデータを保存している場合は難しいのですが、論理的にパーティーションを区切って、例えばCドライブのデータをDドライブにバックアップしていれば、Cドライブの復旧の可能性は非常に高くなるんです。

ただ、物理的に壊れてしまうと当然アウトなので、別のハードディスクにバックアップを取るのが一番ですね。

G:
では、手軽なのは光学メディアになってくるのでしょうか。

日:
そうですね。あと、みなさん保存する際のファイル形式はあまり重視されませんが、市販されている外付けのハードディスクというのは、MacでもWindowsでも使えるようにという観点からFATというファイルシステムでフォーマットされているんです。

ただ、FATはあまりデータ障害に強くないんですよね。詳しい方は買ってすぐにご自分でNTFSというファイルシステムにフォーマットしてから使うのですが、ほとんどの方は知らずにFATのまま使っています。その状態で障害が起こったり、間違えてフォーマットしてしまうと、復旧がかなり難しくなってしまいます。NTFSの方が復旧の可能性が高いので、まず外付けハードディスクを購入したら、まずフォーマットし直して欲しいですね。

G:
個人では難しいとは思いますが、DATなどのテープストレージなんかはどうですか?

日:
テープメディアは熱や湿気には弱いですから、保管の方法にもかなり左右されると思います。

■RAIDを使ったバックアップをとる時のコツについて

G:
それでは、個人でRAIDを組んでバックアップサーバーを立てたいと思った時に、もっとも気をつけるべき点というのはありますか?

日:
昔は大容量のハードディスクが無かったので、RAID 0やRAID 5を組んで容量を稼いでいたのですが、今は大容量の単体のハードディスクが安く手に入ります。なので、今ならRAID 1かRAID 10の方が向いているんじゃないかと思いますね。RAID 0などでは物理的に壊れてしまった場合にも復旧が難しくなってしまいます。大容量ハードディスクが一般化した今、あえてRAID 5を組む必要はないかもしれないですね。

G:
では、RAIDを組んで安心するよりは大容量のハードディスクを使用した方がいいのでしょうか。

日:
持ち込まれるRAIDの故障はほとんどが論理障害ですが、RAIDを構築していない、単体の2TBのハードディスクなどのほうが復旧は簡単な部類になります。同じ論理障害でも、単体のハードディスクの方がきれいにデータをお返しできる場合が多いですね。なので、趣味でRAIDを組みたいなどでなければ、単体ディスクをお使いいただいた方が、お返しするデータのクオリティを高くできます。メディアの数が少なくなればなるほど故障する確率も低くすることができますし。

物理復旧の観点から言うとRAIDを組むとしたらミラーで組むのがいいでしょうね。RAIDに頼るよりはツールで定時にバックアップを取るように設定して別のディスクに保存する方が確実かもしれません。

G:
ハードディスクは新しければ新しいほどメリットがあると考えてもいいのでしょうか。

日:
大容量ハードディスクの場合、プラッタあたりの容量が増えて、ヘッドの本数が減ってきているので物理障害の確率は以前よりは低くなっていると思います。もちろんその分回転速度が上がったり、ヘッドの先が小型化していったりしているので、そういうところで劣化しやすいという部分はあるかもしれません。


日:
それから製造されたのがここ1年~2年くらいのハードディスクというのは手に入りやすくて、部品の交換もしやすいんです。部品自体の精度も上がっているので、交換をした場合の成功率も非常に高くなります。それ以上前のものになっていけばいく程、部品の希少性が上がって、交換が難しくなります。また部品の質も悪いので、交換しただけで成功するかというとそうは言えないんです。だから、長い間同じハードディスクを使って物理障害を起こすよりは、3~6年に1度交換した方がいいですね。

■RAID復旧の思わぬ落とし穴

G:
市販のRAIDディスクと自分で組んだものではどちらが信頼性が高いのでしょうか。

日:
組む人の知識にもよるんですけれど、そんなに差はないと思います。市販品には主にUNIXで組まれたRAIDが搭載されているので、UNIXの知識がある方であればそれと同じような組み方になると思います。

G:
これから暑い季節ですが、ハードディスクが壊れやすい時期というのはあるのでしょうか。

日:
長い休み明け、特に夏場なんかはお問い合わせは多いですね。

連休明けは非常に多いです。特にサーバー系は連休1日あるいは2日目あたりのお問い合わせが多くなりますね。1日はどうにかならないかと対処を考えて、結果として弊社にお問い合わせいただくのだと思います。たとえば三連休明けの日には、夕方くらいから法人様のサーバー系のお問い合わせが多くなるのではと予測することができます。

これからの時期で言うと、お盆は気をつけていただきたいです。お盆休み明けはお問い合わせが非常に多い時期なので。ビルのオフィス停電も多いですし、雷害の可能性もありますから。

G:
ハードディスクのトラブルが多いのはやはり夏場ということになるんでしょうか。

日:
そうですね。気温が高くて機器が熱を持ってしまうということもあるんですが、長期休み明けに出社してみると、オフィスが浸水して故障してしまったというお問い合わせもありました。ほかにも「休みで会社に人がいなかったために、サーバーの温度管理ができていなかった結果壊れてしまう」といった事例が多い時期ですね。

G:
もし市販のRAIDディスクが故障した時は、どのようにすればいいのでしょうか。

日:
お客様の中には商品のマニュアルに「新しいハードディスクに入れ替えて再構築すると直る」と書かれている通りにされる方もいますが、その状態で当社に復旧の依頼をいただいても、成功させるのがかなり難しくなってしまいます。

なので、市販のRAIDが組まれているハードディスクが壊れた時は、こういった作業をせずに専門家に頼んだ方が、復旧の可能性が上がると思います。

G:
マニュアル通りに作業することでかえって復旧しづらくなるというのは意外ですね。

日:
RAIDの再構築(リビルド)自体に成功してはいるので、データの保存はできるようになりますが、元のデータがぐちゃぐちゃになってしまって、見られなくなるんですよね。そして、新しいデータを保存していくと、古いデータが上書きされてしまってどんどん復旧不可能に陥ってしまいます。

G:
それはかなり恐ろしい状態ですね……

日:
特にRAIDを使っている方は「RAIDだったら大丈夫だろう」と安心して、あまりバックアップを取っていない場合がほとんどなので……弊社に持ち込まれている市販のRAIDの数を見ていただければ、「必ずしもRAIDだから信頼できるということはない」と分かっていただけるかと思います。

G:
そういうお話を聞いてしまうと、RAIDで保存しているからといってもまったく安心できませんね。

日:
おそらく「RAIDは安全」というイメージが良くないんじゃないかと思います。RAIDを構成しているハードディスクの1台にエラーが出ていても、交換しない方も結構多いみたいです。「安全と言われているし、データもちゃんと見られているから、エラーが出ていても気にしていなかった」といった風に。そうしているうちに2台目のハードディスクもダメになってしまって、弊社に持ち込まれるというのも結構多いですね。

RAIDの中に搭載されているハードディスクは基本的に同じ時期に製造されたものなので、1台壊れると近い時期にほかのハードディスクも壊れるんです。稼働時間も製造時期もパーツも同じなので、数珠つなぎのように次々と壊れてしまうことが多いですね。

G:
確かに「RAIDならとりあえず安全」というイメージを持ってしまっているかもしれません。市販品を買ってきて使ってみようとなって、安全だと思っていたのに壊れてしまったらかなりつらいものがありますね……

日:
大手量販店なんかで「半永久的に大丈夫です」と言って売っているようなのですが、何をどうすれば半永久的に大丈夫なのかを伝えきれていないようなので、余計に安心・安全というイメージが先行してしまっているんでしょうね。

■RAID・ハードディスク復旧の「都市伝説」について

G:
自分でがんばって対処したことが事態の好転につながる可能性はあるのでしょうか?フリーソフトでも「RAID復旧が可能」だとしているものもありますが……。

日:
フリーソフトに関しては利用しない方がいいです。中身の情報が書き換わってしまうことがあるので、おすすめはできないですね。それで直ったら「運が良かったんだな」と思いますが、それでかえって悪化してしまう可能性が高いので。

ソフト名はちょっと出せないんですが、お客様がご自分でフリーソフトにかけて、オリジナルのハードディスクを上書きをされてしまったケースがあるんです。これはかなり苦労しましたね。ただデリートされただけとか、フォーマットされただけのデータは基本的に復旧可能なんですが、そこに上書きをされてしまうと可能性がほぼゼロになってしまいます。

G:
自分で何とかするという部分で、木槌でコンコンと叩くと回るようになるという都市伝説を聞いたことがあるんですが、これは本当ですか?

日:
理屈としては分かるんですよ。モーターの軸が回っている段階で衝撃を加えて軸が運よく外れて、回転するという。ただ、またロックしてしまいますね、ヘッドを傷つける可能性もありますし、当然おすすめはできません。


G:
さらに迷信めいたものでは冷蔵庫の中にハードディスクを入れたら直るというものもありますが。

日:
PC上のチップが熱のせいでエラーを出したり、ヘッドの精度が下がったりして、動くようになるというのは、これも理屈の上ではわかります。ただ、これは一次対処なので、その段階でデータを抜き出さないといけませんし、たまたまうまくいっているだけで突然壊れるという可能性もあります。

温度変化が大きい時は、お問い合わせも増えますので、あまり冷蔵庫に入れて急激な温度変化を与えるのは考え物だという意見もあります。自分たちも復旧した後にクローンを取る作業をする時は、かならず基盤を冷やすようにファンに乗せています。実際それくらいやらないと、復旧している段階で壊れてしまうことも十分考えられるんです。

■RAID復旧の現状とは

G:
日本データテクノロジーではRAIDのトラブルについてどれくらいの件数を取り扱っているのでしょうか。

日:
単体のものを含め年間4万台(台数ベース)なのですが、それはRAIDなど複数台ハードディスクを使う案件も入っていて、単一のハードディスクでも個人で複数台持ち込まれる方もいらっしいます。件数では全体の10%くらいだと思います。個人のお客様のRAIDの持ち込みもかなり増えてきていますね。最近はRAIDの外付けディスクや、市販パソコンでもRAIDが組まれているものがあるので、それを使っている方も多いですね。

G:
RAIDの復旧について、平均してどれくらいの時間で完了させることが可能なのでしょうか。

日:
地方から現物を持ってこられて、その日の内に持って帰りたいというお客様もいらっしゃるので、早いものだと当日中にお返ししています。

かなり早いケースだと、納品まで30分という案件もあります。ただ、お客様自身がデータがどこにあるのかピンポイントで分かっていて「全部復旧するのには時間がかかるのは分かっているから、このフォルダだけどうしてもすぐほしい」というご相談だったので、短時間で作業が可能だったんです。この時は夜の10時半ごろに持ち込みでご来社されて、すぐに診断に入ってデータが出そうだと分かりましたので、必要なフォルダのみ抽出してお渡ししました。残りのデータも、2日後に納品することができました。

G:
1分1秒の予断を許さない「緊急事態」として、突然連絡してくるユーザーがいそうな気もしますが、営業時間などはどうなっているのでしょうか。

日:
「1秒でも早く1つでも多くのデータを復旧する」という精神から、365日営業となっています。電話対応は朝8:00~夜9:00まで、お持ち込みの受付は朝9:30~夜8:30までですね。

G:
クライアントのRAIDに関する知識も関係してくるんですね。

日:
どのデータがどこにあるのかというのを覚えていらっしゃると、復旧もしやすいですね。やはり「すべてのデータを復旧してほしい」というと、どうしても時間はかかってしまいます。

G:
日本データテクノロジーではいったいどのレベルのRAIDまで対応しているのでしょうか?

日:
どのレベルのRAIDにも対応しています。最近出てきたZFSのRAID 6に関しても対応できます。

G:
通常のハードディスクの場合と比べて、RAIDの復旧は何が大変になりますか?

日:
やはり一番難しいのは、ディスク自体を取り替えたり、ディスクの入っている順番を入れ替えたりしてお客様がご自分でなにか対処してしまった場合なんです。そうなってしまうと「元のディスクが入っていた順番」を検証する作業などが加わってしまうので、非常に時間がかかってしまいます。

あと、他社に出された後で弊社に持ち込まれるケースも多いですね。弊社ではまずクローンを取ってからそれに対して作業を行いますが、技術力のない会社に出してしまうと、元のハードディスクをいじられて、変な風に組まれてしまうこともあります。そうなってからご依頼いただくと、かなり復旧は難しくなってしまいます。

RAIDに限りませんが、人為的に手が加えられたシステムって見た目で分かるんですよ。「この壊れ方はないだろう」というような様子になっているので。例えば、先月あった物理障害のご依頼なんですけれど、ハードディスクの中のプラッタが逆に入っていたことがあったんです。

G:
プラッタが逆だというのは見れば分かるんでしょうか。

日:
見た目で何か変化があるわけではないんですが、分かります。その時のハードディスクは1枚プラッタのもので、片面にしかデータが書き込まれていないディスクでした。それが裏返しになっていたので立ち上がらなかったんです。裏返しにしてみたところ、起動情報を読み込んで立ち上がって、そこで判明したんです。

しかもそのプラッタはご依頼された方のものではなく、まったく別の人のものだったんですよ……論理復旧をしてみたら、お客様にはまったく覚えのないスペイン語のデータだったんです。なので、おそらく他社さんで作業した段階で、部品として使ったハードディスクのプラッタを間違えて入れてしまったんでしょう。

G:
他社で修理されて復旧しなかったハードディスクの依頼を担当されるということは結構多いのでしょうか。

日:
ありますね。お客様から「別のところに出したけど直らなかった」とご依頼いただく形です。複数社で見積もりを取る法人のお客様も多いので、弊社で診断に出した上で他社に修理に出して、それでダメだったのでまた弊社に持ち込まれるということがありました。

それで見てみると、最初の診断で見た時と明らかに状態が違って、人為的に手が加えられていて復旧が大変でした。最初の段階でご依頼いただけていれば簡単に直ったはずなので、これはつらかったですね。

G:
それはかなり怖い事例ですね……

日:
そういうこともあるので、本当に緊急で重要なデータは出すところを選ばないと、直るものも直らなくなってしまうんです。そういうケースは件数としては相当数ありますね。

物理障害でも結構こういうトラブルは多いですね。実際には開封作業が必要の無いものでも開封されてしまっていることもあるので……。本当はファームウェアの障害だったので開封しなくても直ったものが、他社さんの作業で開封されてしまったために直せなくなってしまうという可能性もあります。ヘッドの位置が少しずれただけでも認識しなくなるということもあるので、なるべく未開封の状態で弊社に持ち込んでいただけるとベストですね。ヘッドを交換していた場合でも、ねじの締め具合やフタの開け具合で開封しているかどうか分かってしまうんですね。他社さんで「何もしてません、診断だけです」と言っているところでも、実際にはフタの裏のシールが剥がれてしまっていたりするので、難しいですが技術力のないところに出さないよう、気をつけた方がいいですね。

また、ハードディスク内蔵型レコーダーのようなものだと、筐体が生きていないと復旧はなかなか難しいですね。それから別の事例だと、RAIDのLANディスクに暗号がかけられていて、弊社に持ち込まれたのがディスクのみで、筐体をメーカーに送った時に基盤を交換されてしまって、その基盤でないと暗号が解除できなくて大変だったことがありました。暗号化されているものに関しては、すべてまとめて送っていただくのが一番確実ですね。

G:
これまでの事例で一番復旧に苦労したRAIDストレージはどのようなものですか?

日:
一番時間がかかった案件では、24台構成のRAIDが持ち込まれたことがあります。数も多かったんですが、2年前くらいに出てきたZFSという新しいファイルシステムを使っていたので、まずZFSとは何かというところから調べていきました。お客様の状況と同じ環境を作って、わざとダミーのハードディスクを壊して、どの情報がおかしくなっているのかという点を調べる実験を繰り返して、やっとZFSがどんなものか分かるようになってから、24台のハードディスクすべてのクローンを取って分析し、最終的に直していったんですね。この案件はきちんと直してお返しすることができました。


G:
お客さんと同じような環境を作って実験するというのは、かなり時間がかかりそうですね。

日:
そうですね。この時は調べるところから数えて10日間ほどかかりました。弊社では研究に力を入れているんですが、この辺りが弊社の強みとも言えますね。特にZFSに関しては気合いを入れて研究しています。研究にはある程度の資金と人員がかかってきますし、復旧を進めながら同時並行で研究をしていかなくてはいけないので、その辺りの余力がある会社さんはあまり多くないんじゃないかと思います。

今復旧させている16台構成のRAIDも、お客様が持ち込まれたものと同じものを16個買いそろえました。同じ型番で合わせてクローンを取って、筐体も買ってきて、そこで同じ環境を作ってはじめて研究ができるものなんです。ちなみにハードディスクは、ご依頼の当日に秋葉原まで走って買いに行きました(笑)

G:
同じハードディスクを16台もよく見つけてこられましたね。

日:
部品の担当者がいますのでその人に探してもらいました。もちろんこの事例は運がよかったというのもありますが、日ごろから部品は大量にストックしたり、卸の方とも接点を持って「この型番の何が欲しいので探してください」とお願いしたりしています。海外からも部品を購入していますね。

さきほどの話でもそうですが、ハードディスクは年月を経るごとに希少性が高くなっていくので、購入ルートを広げていかないと、本当に直らなくなってしまうため、早急に取りかかっている部分です。

G:
そこまでするのは、なかなか普通の人には難しそうですね。

日:
部品に関してはただ見た目を合わせればいいと言うわけでもなく、適合するかどうか確認しながら探すことになります。ノウハウの蓄積があってこそですね。

G:
ちなみに、買ってくる段階で「危ないハードディスク」というのは分かるものなのでしょうか。

日:
今は調査をしているので「この型番は壊れやすい」という情報を持っています。

■RAID・ハードディスクの復旧業者を選ぶポイントとは?

G:
お話をうかがっていると、業者を選ぶのがかなり困難を極めそうな印象を受けるのですが、何か見極めのポイントはありますか?

日:
対応件数などの実績の部分を見ていただきたいなというのはありますね。

それから「お客様の声」のコーナーを見ていると、分かってくることもありますね。イニシャルでぼかされていたり、個人で発注しているのに法人のような復旧内容が書かれていたり、業者さんご自身で書いているんじゃないかと思われる文のものがあったりするので、そういう会社さんは避けた方がいいかなと思います。弊社では動画を使ったりお客様に写真をいただいたりして、本当の声だというのを伝えられるよう工夫しています。

G:
かなり専門的な知識をもった人間が必要だという印象を受けますが、研修や教育制度について教えていただければと思います。


論理に関しては過去の蓄積のマニュアルベースでの研修は入った時からやっていて、海外から講師を招いたりもしています。ちょうど今日も1人先生がいらしていて、OJT(On-the-Job Training)ベースのものと座学ベースの研修をやっています。


G:
研修は入ってから一定期間行うんですか?それとも定期的に行っているんですか?

日:
定期的に行っています。入ってからすぐは、物理担当の場合はまず症状を診断する練習から始まって、それができるようになったら部品交換の練習をして、全メーカーのハードディスクを解体してから組み直して正常に動くかどうかというテストをし、それができて初めて物理の復旧作業に携われるんです。その中で部品交換できるようになったら並行してファームウェアの実習が始まって、ファームウェアの解析テストに受かると、実際のファームウェアの障害復旧もできるようになるんです。

ファームウェアについて勉強したいということになったら、ファームウェアに強い人を探してきて、あるメーカーに強い人が必要だということになったらそういう技術者を探そうということになるので、実際は強化したい分野ごとに講師を捜してきている感じですね。

そういった技術導入は年に数回やっていて、先生に来てもらったりこちらから行ったりして、実際に2週間くらい修理から離れて講習をやっているような感じです。

G:
そういうハードディスクの権威というのは世界に何人くらいいるんでしょうか。

日:
特に学会であるとかコミュニティがあって集まってやっているわけではなく、各個人独自に開発研究をされていますね。

G:
言い方は悪いですが、刀鍛冶のような前時代的なところがありますね。

日:
当然、RAIDの復旧にも適性はあって、応用力の世界なんです。教えてもできない人はできないです。

RAIDの技術があっても、結局応用力がなくて直せなかったりすることもおそらくあります。例えばリビルドしてしまって構成が変わっている場合、どうやって最初の構成情報を取り出していくかというところが肝になります。経験値が大切ですね。

数をこなすとただハードディスクがカタカタ言っているという風にしか見えない状態でも、ヘッドの障害ではなく、ファームウェアに問題があると分かったりしますから。

G:
ハードディスクのメーカーも、そういった情報を収集しているのでしょうか?

日:
いや、ないと思います。想像ですが、製造している人がどんどん入れかわっていきますよね。ファームウェアを組んでいる人も、何年かごとに変わっていくと思うので。今の情報は分かると思いますが、昔のファームウェアの情報構成を教えてくださいと言っても、たぶん分からないんじゃないかと思うんです。

G:
ここまでのお話を聞いていると、直せないはずのものを直していくのがデータ復旧という感じですね。

日:
本来はそうですね。直す前提に立って作っていないので。

メーカーさんには「直す」という概念がおそらくないでしょう。「直す」という定義がデータ復旧サービスとメーカーさんとではかなり違うんですね。メーカーさんはただ使えないものを使える状態にするのが「直す」ということで、こちらはデータを残したまま使えるようにするのが仕事なんです。だから同じ「直す」という行為でも、まったく意味合いが異なります。

弊社ではかなり復旧が難しいと認識しているスクラッチ(ひっかき傷)も、メーカーさんなら使える状態に戻すことはできるでしょう。ただ、そこにあったデータは帰ってこないと思います。プラッターを入れ替えてファームウェアを書き換えれば、元のデータはともかくとしてハードディスクとして作動はするようになりますから。

ホームページ上に講師として載せていますが、実際にハードディスクを作っているメーカーさんの方に研修していただいたりもしているんですけど、びっくりしますよ。「作っても直せるものじゃないんだよ。そもそも、ハードディスクは直せるように作っていないから」とおっしゃるんですね。もともとハードディスク開発の研究段階にも携わっていた方なのですが、そんな人でも「直せないよ」とおっしゃいます。私達はいろいろなところから集めた情報を弊社で集約して、「この技術とあの技術を組み合わせれば直るんじゃないか」というようなやり方をしています。

G:
お客さんへの対応、特にヒアリングで最も気をつけていることは何でしょうか。

日:
一番気をつけているのは、専門の言葉を使わないようにすることです。あと、お客様の状況を正しく認識することですね。例えば「パソコンが立ち上がらない」といった言葉から状況を正しく探っていかなくてはならないし、しかもお客様に分かる言葉でご説明しなくてはいけません。弊社の電話対応をしている者は「専門用語を使わずにどれだけお客様から状況をヒアリングするか」ということは心がけています。

特に個人のお客様だと、女性がかけてくるケースの方が多いんです。おそらく弊社の情報なんかを調べたのは旦那様で、電話をかけるのは奥様だったりするのではないかと(笑)そうなると、奥様に理解していただけるようにご説明しなくてはならないので、なるべく分かりやすい言葉でお話するというのが一番です。

逆に、企業のシステム担当の方からお電話をいただいたら、その方に合わせてお話をしなくてはいけないですし。お客様に合わせた言葉選びをして対応させていただいている部分はありますね。

G:
さまざまなお客さんから問い合わせが来ると思うのですが、顧客の機密情報についてはどのように守っているのでしょうか。

日:
基本的にはお問い合わせをいただいて、機器をお送りいただく段階で、弊社の方で「機密保持誓約書」というのをお送りしています。お持ちこみのお客様にはその段階でお渡ししています。どうしても中に入っているデータのことをお伺いすることがありますし、実際に診断の段階でデータが見えてくることもあるので、書面をお渡ししているんですね。

また、データを持ち出せないように、金属探知機などでUSBメモリはSDカードのような小型の情報記憶媒体は持ち込めないようになっているんです。

監視カメラも社内全体で27台設置しています。万が一のことがあっても、どこからどういう経路で情報が出ていってしまったのかということを全部把握する仕組みになっていて、その辺りはかなり徹底してやっています。静脈認証で入り口の解錠を行っているのもそのためですし、それらはすべてログが残っていますので、おかしな動きが見られると呼び出されます。

G:
業務に当たられる中で復旧できなかったケースもあるかとは思うのですが、お客さんに「100%復旧が可能」という誤解を受けないように何か工夫していることはありますか?

日:
まず、診断には時間をかけていますね。初期診断の時に、ありとあらゆる方法を使って、開封をしない状態でどれだけ症状を特定できるかということに時間をかけてやっています。音を聞いてキズがあるような感じがしたら、その段階で「キズがある可能性があります」とお伝えしますし、フォーマットやデリートをされているものに関しても、スキャンをかけて情報が出るかどうかある程度調べています。

実際、開封してプラッターを見て初めてキズがあるかどうか確認できる場合もありますが、診断の段階である程度つぶしていくことは心がけています。


G:
専門家が手を尽くせば必ず直るのではないかというイメージがありますよね。

日:
そういうところは確かにありますので、弊社ではヒアリングに非常に時間をかけています。「再起動を何回しましたか?」といったようなことまで、お客様が何をしたか逐一聞いていくんです。

データの上書きが進んでしまう場合もあってあまり良くないので、再起動の回数や他社さんに出したかどうか、ほかに何か試したことはあるかといったことをヒアリングさせていただいて、その段階で考えられる状況をまず先に説明します。電話の段階で、ヒアリングベースでは今の症状ではこういう原因が考えられるということをお伝えします。

その段階で弊社で復旧した実績があるかどうかということを確認して、基本的に実績のあるものしか送っていただきません。お客様から「無理でもいいからとりあえず見てほしい」と依頼されるケースもたまにあります。しかし、持ち込んだりしていただくだけでも時間や労力がかかるので、基本的には復旧できる可能性のあるものしかお受けしていませんね。

G:
復旧にかかる費用というのはどうやって決められていくのでしょうか。

日:
価格に関しては、一番最初の電話の段階で症状をヒアリングして、いただいた情報から概算して提示しています。ただ、それも難しいところで、お客様から100%の情報を引き出し切れることはあまりありません。値段に響くのではとご心配されて、他社さんに出したり、ご自分でされた対処などについてお伝えいただけなくて、届いた機器を見てそれが判明するということもあります。

実際に送っていただく、もしくはお持ち込みいただいて診断し、その段階で直る見込みの立ったもののみ、しっかりとした見積もりを出します。もちろん見積もりの段階で、お客様が思っていたより値段が高かったということは、弊社に限らずデータ復旧サービスにかかわる企業でしたら多くのところであることだと思います。

弊社では自社で修理を完結させていて、海外に出したりはしないので、その分早く安く直しています。ただ、状況によってお値段は変動してしまうので一概に安いとは言えませんし、先ほど申し上げたように技術研究に投資をして、弊社でしか直せない技術を持っていたりするので、そういう部分で高くなってしまうことはあります。

一般的に直せるようなものではさほど高額にはならないはずです。部品がそれなりに出回っているようなものであればすぐに対応ができますし、価格も極端に上がったりはしないのですが、部品の検索だったりとか、海外から持ってくるとかいう手間がかかってしまうと、お値段に反映されてはきます。

G:
トラブルはやはり価格決定のところで起きるのでしょうか。

日:
安く復旧できるというイメージが強いのかもしれません。技術などを駆使して、かなりコストをかけてやっていることだという認識を持っていただくまでに至っていないんでしょう。

実際、お客様にどこまで理解していただけているかというのにもよります。理解していらっしゃる方だと、「それくらいかかりますよね」と納得していただけますし。法人様のご依頼が多いのは、こういうところにも関係しているのかもしれません。個人ユーザーの方は値段を見て、安く表示している他社さんに行ってしまうこともあるのですが、法人様にはきちんとご説明すると納得いただけて、依頼をいただけるという結果になるのだと思います。

G:
ちなみに、値段に一番響いてくる要素というのは何かありますか?

日:
やはりスピードは一番関係してきますね。多くのお客様を抱えている中で、特に最優先で作業にかからなくてはいけないので、持ち込み当日に復旧して返してほしいと言われてしまうと、それなりにかかってしまいますね。その次に関わってくるのは復旧の難易度です。

G:
難易度というのは主観的な部分も多いと思うのですが、社内マニュアルなどはあるのでしょうか。

日:
そうですね。これまでどれだけ成功しているのか、どんな症例があるのかというデータベースをもとに決定します。あと、最近技術を導入して、弊社独自の技術領域で修理できるようになったようなものはどうしてもお値段に跳ね返ってきますし、なかなか手に入らないハードディスクの修理なんかも同様です。

G:
昔よりも安く復旧できるようになったという機器はあるんでしょうか。

日:
過去に実績のある症状はどんどん安くなっていると思います。直るということが分かっていますし、部品検索の効率も上がっているので、あらかじめ仕入れてある部品で済ませることができます。直す技術も身についてきていますので、早く復旧させることもできるようになっています。

■今後の展開について

G:
最後になりますが、ハードディスクの復旧からRAIDの復旧まで、サービスが進化していますが、今後はどのような展開を考えていますか?

日:
物理部分では、ハードディスクが大容量化していく中で、ファームウェアの高性能化・複雑化が進んでいるので、ファームウェアの障害というのが非常に多いのですよね。そのため、メーカー単位でファームウェアの解析を行って、高難度のファームウェアへの対応を考えています。

新型がどんどん出てくると、ファームウェアの形状が似ていても内容が若干変わってきますので、そこに対応しないと直せるものも直せなくなってしまいますから。論理部分は今後新しいファイルシステムが現れない限り、大きな動きはないかなと思います。


G:
マイクロドライブやSSDのような小型の機器への対応は考えられますか?

日:
SSDは技術的には復旧可能な体制です。しかし、サービスの設計が整っていないので、どの段階でサービスを開始するかというのはタイミングを見ている状況です。我々は業界トップなので、対応できないものがあるというのもお客様にご迷惑をかけてしまいますから。

ただ、だからといってメインのハードディスクをおろそかにするわけにはいかないので。ハードディスクだけは絶対に他社さんに負けません、という形ですね。

G:
ありがとうございました。

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in 取材,   インタビュー,   ソフトウェア,   ハードウェア,   広告, Posted by darkhorse_log

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