ブルーな気分だと世界が灰色に見える、人類共通の現象を科学的に実証


色に結び付けられるイメージは言語や文化によりさまざまで、例えば「環境に優しい」ことを「グリーンな」と表現する文化と「ブルーな」と表現する文化、「葬式」に「黒」を結びつける文化と「白」を結びつける文化、ポルノ映画を「ピンク映画」と呼ぶ文化や「ブルーフィルム」と呼ぶ文化があったりもします。

しかし、言語や文化、時代や作者にかかわらず、絵画や写真などの視覚芸術では「憂うつ」や「絶望」が暗い色で描かれるのは世界共通。憂うつな時に「世界が灰色に見える」「すべてが色あせて見える」というのは単なる詩的表現ではなく、実際に人間の目は、鬱(うつ)な時にはコントラストの違いに対する感度が低くなり、目に映るものの明暗の差が縮まり中間色が増えた「グレーな世界」を見ているそうです。

詳細は以下から。Why does everything look gray when you feel blue?

Seeing Gray When Feeling Blue? Depression Can Be Measured in the Eye of the Diseased

鬱(うつ)や不安を感じている人に、カラーチャートの中から自分の気分を表す色を選んでもらうとグレーを選ぶ場合が多いことが、実験ですでに明らかになっているそうです。日本語では「暗い気分」「明るい気分」という表現もありますが、文化や言語にかかわらず「うつ」と「グレー」が結び付けられるのは、うつな人間の目には実際に世界がグレーに見えるという生理学的な現象に基づいているのかもしれません。

フライブルク大学のLudger Tebartz van Elst博士らは以前の研究で、うつ病患者は色のコントラストに対する感受性が低くなっていることを発見していました。

「コントラストが高い」というのは一番明るい白と一番暗い黒の差が大きいということ。下の画像のGIGAZINEロゴのコントラストは左上が最も高く、右下が最も低くなっていますが、コントラストに対する感度が低くなると、健康な人なら色の違いを見分けられるコントラストでも文字が読めなくなってしまいます。


つまり、うつな時には暗い部分と明るい部分の差に鈍感になっているので、極端に言えば「白も黒もみんなグレーに見える」ということになります。健康な時にはこのように見える白と黒も……


うつな時にはこんな感じであまり差がなく見えるのかもしれません。


「その人にとってこの色がどう見えているのか」という主観的認知のうつ病患者と健康的な人との間での違いを客観的に測定するため、Biological Psychiatry誌に発表された最新の研究では、Van Elst博士らはパターン刺激による網膜電図(PERG:Pattern Electroretinogram)を用いたとのこと。

実験では大うつ病性障害の診断を受けている患者40人(うち薬物治療を受けている患者20人、受けていない患者20人)と、対照群の健康な成人40人を被験者として、うつ病患者と健康な人の視覚コントラスト感度の違いを両眼のPERG測定により分析しました。

その結果、薬物治療を受けているか否かにかかわらず、うつ病患者は健康な人と比べ視覚コントラスト感度が劇的に低かったとのこと。また、うつの症状が重い人ほど網膜の反応が低く、うつの度合いとコントラスト感度との間に有意な相関も見られたそうです。

晴れた日の真夏のビーチも、重度のうつ病患者にとってはどんよりと陰鬱な光景に見えているのでしょうか……。


健康な人とうつ病患者のコントラスト感度の違いは、測定結果の電気生理学データを1人分だけ取り出してみても、ほとんどのケースで測定結果がうつ病患者のものか健康な人のものか的確に判断できるほどとのこと。受信者動作特性解析(ROC解析)では特異度(病気にかかっていない場合に検査結果が陰性になる確率)が92.5%、感度(病気にかかっている場合に検査結果が陽性になる確率)が77.5%だったとのことで、患者の主観に頼る部分の多いうつ病診断において、PERGが新たな客観的な指標となるかもしれないと期待されています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log