サイエンス

万里の長城の強さの秘密、中国四千年の伝統を支えるもち米入りのモルタル


万里の長城をはじめ、中国に数多く残る石積みの歴史的建造物の強さの秘密は、石と石のすきまを埋める建材として使われたもち米を含む特殊なモルタルにあるそうです。歴史的建造物の修繕において、現在もこの米入りモルタルに勝る建材はないだろうと専門家は語っています。

詳細は以下から。Revealing the ancient Chinese secret of sticky rice mortar

Study of Sticky Rice−Lime Mortar Technology for the Restoration of Historical Masonry Construction - Accounts of Chemical Research (ACS Publications)

歴史的建造物の修復の際は石積みの目地材に使われるモルタルの補充は不可欠ですが、修復工事の際のモルタルの配合によっては補強の目的を果たさなかったり、建造物をさらに傷めてしまうことにもつながります。そのため、建造時のモルタル技術を深く理解し、適切な補充材料を作り出すことは文化遺産を保護するため非常に重要です。

石橋の修復工事の様子。


浙江大学の物理化学科長Bingjian Zhang教授らは、古い建造物から採取したモルタルの試料をヨウ素デンプン試験などの化学的手法や示差走査熱量測定X線回折測定走査型電子顕微鏡などの計測的手法で分析しました。その結果、それらの古いモルタルは特殊な無機有機複合材料であり、無機成分の炭酸カルシウムと有機成分のアミロペクチンから成ると判明しました。

アミロペクチンはもち米独特の粘りを生む成分で、うるち米(普段食べている米)のデンプン中には80%含まれるのに対し、もち米のデンプンは100%がアミロペクチンです。Zhang教授らは約1500年前の中国で、石灰モルタルにもち米のスープ(かゆ)を混ぜることでこのモルタルが作り出されたと考えています。

食べてもおいしいもち米ですが、日本でも古くから使われてきたデンプン系接着剤など、工業材料としても広く用いられてきたようです。


世界のモルタルを見てみると、ヨーロッパでは石積みの目地材として紀元前2450年ごろから単材料の石灰モルタルが使われはじめました。その後より強いモルタルを求め人類はさまざまな材料をモルタルに混ぜ、試行錯誤を重ねてきた歴史があります。古代ローマでは凝灰岩(火山灰)・レンガを砕いた粉・陶片などのポゾラン(水酸化カルシウムと反応し不溶性の化合物をつくるシリカ質混合材)を混ぜた水硬性モルタルが登場し、ヨーロッパから西アジアにかけて広がりました。

しかし、凝灰岩などの天然資源の不在からか、古代中国では水硬性モルタルの技術は発達しませんでした。そのかわりに中国で生まれたのがもち米入りのモルタルで、これはおそらく世界初の無機有機複合材料のモルタルだろうとのことです。もち米入りモルタルは墳墓や城壁から貯水槽まで、さまざまな重要な建造物に広く使われ、古代中国の都市計画を支えました。

万里の長城の目地。ここにももち米入りモルタルが使われているのでしょうか?


Zhang教授らは、当時のもち米入りモルタルを再現し、歴史的建造物の修復に用いることができるかを探るため、さまざまな比率でもち米を混合した石灰モルタルをテストしました。その結果、もち米由来のアミロペクチンが加わることによりモルタルの物理的性質、機械的強度、適合性(ほかの物質と混ぜたときの安定性)が著しく向上することがわかりました。また、アミロペクチンはモルタル中で炭酸カルシウムの結晶化の抑制剤として働くことも明らかになりました。炭酸カルシウムの結晶の成長がコントロールされることによって小さな結晶が密にある構造となり、これがもち米入りモルタルの優れた性能を産んでいると考えられます。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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