サイエンス

「ネズミのしかめっつら度」が痛みを測る新たな基準となるかもしれません


痛みの基準というと、かつてチェーンメールによって広まったジョークである「ハナゲ」を連想する人もいるかもしれませんが、実際の医療現場においては乳児の痛みは泣き方や動きの観察などにより、子どもでは表情やボディランゲージの観察(FLACCスケールなど)や問診により、大人では問診やアンケート形式(BPIMcGill Pain Questionnaireなど)の自己申告などにより判断されています。

マギル大学ブリティッシュコロンビア大学の研究により、マウスでも人間と同様に、感じている痛みの度合いが表情に表れることが明らかになり、表情から痛みを段階評価する「Mouse Grimace Scale」というスケールが開発されたそうです。これは実験動物の処遇の改善に役立つほか、より優れた鎮痛剤の開発にもつながると期待されています。

詳細は以下から。'Mouse grimace scale' to help identify pain in humans and animals

「表情」は人間(特に乳幼児)の痛みを評価する基準として広く用いられていますが、人間以外の動物が痛みを表情にあらわすかというのは、これまで一度も系統的に検証されたことがなかったそうです。


マギル大学のJeffrey Mogil教授らと、ブリティッシュコロンビア大学Kenneth Craig教授らによる研究では、穏やかな痛刺激にさらされたマウスは人間と同様に不快感を表情にあらわし、痛みの度合いにより表情が変化することが明らかになりました。論文はNature Methods誌に掲載されています。

「痛み」の研究は実験動物、特にマウスなどのげっ歯類に担う部分が大きいため、実験動物の感じる痛みを正確に測定できるようになれば、人間の鎮痛薬の開発にも大きく貢献するはずです。また、生物医学的な研究の現場から実験用マウスの不必要な苦痛を取り除くことにも役立つほか、一般的な動物医療の向上にも影響するだろうとMogil教授は述べています。

マギル大学の痛覚遺伝学研究所のMogil教授らは、痛刺激を与える前と痛みを経験している最中のマウスを撮影し、画像を分析しました。マウスに与えられた痛刺激は、げっ歯類の痛覚感受性のテストで世界で広く使われている炎症性のある薬液の注射などで、マウスが経験した痛みのレベルは人間で言えば頭痛や指の炎症といった、アスピリンやタイレノールなどの市販の痛み止めで簡単に治まる程度の穏やかなものだったとのことです。

その後マウスの画像は、乳児や言語によるコミュニケーションが不自由な人の痛みを表情により評価する分野を専門とするブリティッシュコロンビア大学のCraig教授らのもとへ送られ、マウスの痛みを評価するスケールが作成されました。この「Mouse Grimace Scale(マウスしかめっ面スケール)」では目の閉じ方・鼻のふくらみ・ほおのふくらみ・耳の位置・ひげの位置という5つの要素に点数をつけ評価するとのことです。

なお、今後の研究では、マウス以外の種にもこのスケールが適用できるか、外科手術後にマウスに投与される鎮痛薬が一般的な投与量で実際に効果的なのか、マウスはほかのマウスの痛みの表情に反応するか、などを検証していくそうです。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
かゆい所をかくとなぜ気持ち良いのか、長年の謎が解明される - GIGAZINE

モルヒネより安全で効果がある鎮痛剤を開発中 - GIGAZINE

「動物病院にかかるお金がない」として自分で飼い犬に手術を行った男性、動物虐待で起訴 - GIGAZINE

アジア人が人の表情を読むのが苦手な理由が明らかに - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.