もちろん無免許、石器時代のブラックジャックによる想像以上にハイレベルな手術の跡が発掘される


石器時代といえば、毛皮を身にまとった人々が「ヤバダバドゥー!」と叫んだり、沈む夕日をバックに巨大な骨付き肉にかぶりついたり、マンモスを追いかけてハングリーになったりするなどといった漠然としたイメージがあるかもしれませんが、もちろんこれは全部ポップカルチャーの中での話。

では実際の石器時代人はどんな生活をしていたのかというと、アニメのようにマンモスの鼻でシャワーを浴びたり石の車輪の車で通勤するということはありませんが、医療に関しては驚くほど現代的だったようです。7000年前の「名医」により腕の切断手術を受けた男性の骨が発掘され、石器時代の医療技術はこれまで考えられていたよりはるかに高度なものであったことが明らかになりました。

詳細は以下から。Stone Age amputee proves Neolithic medics more advanced than previously thought - Telegraph

Antiquity: Project Gallery

新石器時代初期の手術の痕跡は、パリの南70kmほどに位置するBoulancourt-Buthiersで発見された墓を発掘中の考古学者のCécile Buquet-MarconさんとAnaick Samzun氏、法医学者のPhilippe Charlier氏らにより発見されました。

発掘された男性の骨。体の左側を下にしひざを曲げた埋葬姿勢は典型的なものとのことです。高齢で、珍しい副葬品とともに埋葬されているため、コミュニティの中で尊敬される立場にあったと考えられます。


発掘されたのはヨーロッパの狩猟・採集民族が農耕を始めたLinearbandkeramik時代に生きた男性の骨で、左の前腕と手の骨が欠落していました。各種の検査により上腕骨がひじの上の位置で切断されていることが判明し、科学者たちはこれを「意図的かつ成功した切断手術」だと判断したとのことです。

切断部の写真。


マイクロトモグラフィー(断層撮影)による立体図。


発掘された骨(左)と現代人の上腕骨(右)の断面図の比較。黄色い点線が切断された位置にあたります。


当時の石器では上腕中心に近い骨が細い部分で切断する方が簡単で合理的と考えられますが、そもそも切断が必要になった原因である外傷(転落や戦闘、動物からの攻撃によるものと考えられます)の位置を利用したためこの位置になったと推測されるそうです。

切断後に成長した皮質骨(表面の密度の高い骨)の厚さから、男性は手術からの回復後に少なくとも数カ月から数年間は生きたと推測されるとのこと。また、切断部位からの感染の形跡は発見されなかったことから手術は衛生的で無菌に近い環境で行われたと推測され、左右の上腕骨の太さや密度などの比較から、左腕の切断後に残った上腕部は萎縮(いしゅく)も石灰化もせず動いていたことが示唆されるそうです。

手術ではチョウセンアサガオなどの植物を麻酔として用い、切断後はセージなどの殺菌作用のある植物で消毒した可能性が高いと専門家たちは考えているとのこと。「医療行為を専門の職業とした現代のような『医師』が存在したかどうかはわかりませんが、手術を行った人々に医学的知識があったことは明らかです」と考古学者のBuquet-Marconさんは語っています。

新石器時代のヨーロッパで頭部穿孔手術が行われていたことは以前から知られていたそうですが、腕や脚の切断手術の成功例としては今回発掘されたものが最古の部類に入るとのこと。発掘された骨の状態のよさと最新の医用画像技術により、石器時代の医療技術・医学知識がこれまで考えられていたよりはるかに高度であったことが証明されました。

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