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認可外のガン治療薬を使ったとして保険会社が支払いを拒否、残された家族のもとに16万ドルの請求書が届く

(by Jeremy Johnstone)

イリノイ州の病院で、胃ガンで苦しんでいた患者が亡くなりました。彼の治療には他のガン治療薬として認可されながらも胃ガンへの効果は認められていない薬が使用されていたため、保険会社はその治療費支払いを拒否、患者の妻のもとに16万ドル(約1450万円)の請求書が届いたそうです。このように認可を受けたのとは別の病気に対して薬を使うケースはレアなケースではなく、そういった時でも保険会社が支払いを拒否することはないのだそうですが、いったいこのケースでは何が起こったのでしょうか。

詳細は以下から。
Failed cancer treatment doubly painful for widow -- chicagotribune.com

ホセ・サンチェスさん(49)は2009年1月にイリノイ州ザイオンにあるCancer Treatment Centers of America(CTCA)に運び込まれました。すでにこの時点で回復の見込みはなく、胃ガンで余命数ヶ月だという診断が下りました。


サンチェスさんの妻ファニー・ゴンザレスさんが加入していた保険会社Blue Cross and Blue Shield of Illinois社に「治療費が保険でカバーされるのか」と尋ねたところ、数日後にCTCAから「保険会社から治療してOKという許可が出た」と夫婦を祝う連絡が入ったそうです。1月から4月まで、サンチェスさんは積極的治療を受けました。当初は治療の効果が見られたそうですが、それも長くは続かず、5月21日にサンチェスさんは亡くなりました。この頃までに、Blue Cross社からは最初の判断を否定する連絡が来ていたそうで、サンチェスさんの死後も連絡は続きました。

ゴンザレスさんとサンチェスさん。


サンチェスさんの治療に使われたのはアバスチンという薬。アバスチンは大腸ガン治療薬としての認可は受けているものの胃ガンに対しての有効性は実証されていないため、どんな場合でも支払いを拒否しているというのがBlue Cross社の見解で、その結果、CTCAはゴンザレスさんに治療費16万1601ドル50セント(約1450万円)の請求書を送りました。

ゴンザレスさんはパニックに陥ってシカゴトリビューン紙の「What's your Problem?」に助けを求めました。ゴンザレスさんも亡くなったサンチェスさんも、アバスチンが胃ガンに有効ではない薬だとは聞いていなかったそうで、ゴンザレスさんは「衝撃の連続よ……もしもこんな状況になるなんてわかっていたら、アバスチンの使用なんて受け入れなかったのに」と嘆き、「こんな巨額のお金、とても支払うことができないわ」と破産して無一文になることを心配しているそうです。

CTCAのアン・マイズナー社長兼CEOはゴンザレスさんの心配は理解できるとして「我々もご家族に多額の請求を負わせる意図はないのです」と語りました。アバスチンについては、胃ガンに対しては「OLU(Off Label Use:本来認可された用途とは別の病気に対して使用すること)」だったことを認めつつも、そういう使い方は一般的だったと説明しています。

ガンを前にして医者の持つ対抗手段は限られた数になるため、保険会社はOLUでも支払いをするそうです。また、CTCAでは事前承認をとらないというポリシーもあることから、サンチェスさんのケースでCTCAの医者はアバスチンの使用を前もってBlue Cross社に確認しなかったとのこと。これについては「管理の負担を考えると(OLUの事前承認を取るのは)悪夢ね」とマイズナーさんは語りました。

6月になって、CTCAの看護師が改めてBlue Cross社にアバスチンも保険適用してくれるよう頼む手紙を出したそうですが、Blue Cross社は拒否したそうです。その後、Blue Cross社はゴンザレスさんとの連絡を絶ち、彼女が巨額の支払いに苦しんでいることを理解しなかった、とマイズナーさん。シカゴトリビューン紙の問題解決人がゴンザレスさんの事例がどうなったか尋ねたところ、CTCAの代理人は、ゴンザレスさんが財政援助を受けて支払いを行うか、それとも16万ドルの請求の一部を放棄するかというオプションがあると説明。マイズナーさんによるとすでに話は進んでいるそうで、このように家族が支払いできないため請求の一部を放棄するということが時々起こるのだと正直なところを語りました。

ゴンザレスさんは現在在宅ケアの仕事に就いているそうで、問題解決人は数週間後にこの問題がどうなったのかチェックするとしています。

ちなみにアバスチンは日本においては結腸・直腸ガンの治療薬として中外製薬が製造販売承認を受けており、大腸ガンや非小細胞肺ガンで臨床効果が見られているそうです。加齢黄斑変性症に対しても症状進行を止める効果が期待されていますが、保険適応はないとのこと。(ベバシズマブ - Wikipedia)

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in メモ, Posted by logc_nt

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