「エコ灯油」を火吹きの大道芸人が使う知られざる理由、普通の灯油にはないメリットの秘密とは?

(by Mark Heard)【注】この画像はイメージです

石油ファンヒーターや石油ストーブなどは火力が強く、エアコンよりも急速に部屋を暖めることができるため、冬の寒い夜や早朝には非常に重宝します。ですが、着火時や鎮火時、燃料補給時に漂う灯油の独特なニオイをなんとかしたいと悩んでいる人もいるはず。

そこで使えるのがこの「エコ灯油」。開発した昭和シェルによると、灯油の臭気濃度が従来の灯油の180分の1まで抑えられており、意識していない限りほとんど知覚できないレベルになっているとのこと。

これだけでもかなり便利なのに、石油ファンヒーターだけでなく、大道芸人の人たちにも大人気なんだとか。そこにはエコ灯油の持つメリットが隠されていました。知られざるエコ灯油の秘密は以下から。
ファンヒーター専用灯油 エコ灯油:昭和シェル石油株式会社
http://www.shell-ecotoyu.jp/index.html
【注】大道芸におけるエコ灯油の使われ方は本来の利用目的ではなく、昭和シェル石油が推奨するものではありません。ファンヒーター以外の利用は危険ですので決して行わないでください。

これが昭和シェルのエコ灯油。通常の灯油はホームセンターなどでポリ容器を購入して給油してもらうのですが、エコ灯油は最初から一斗缶に入った状態で販売されています。


ちなみにこれは一般的な灯油。容器は近くのホームセンターで購入。


再びエコ灯油。下から見ると迫力があります。


正面。


側面にはファンヒーター専用であることが記載。


石油ストーブなどで利用してはいけないらしい。


後ろはこんな感じ。地域・数量限定と記載されていますが、現在はインターネットで全国どこでも購入可能。


上から見るとこんな感じ。


口の部分。プロテクター・ローヤルキャップ・ポリ中栓でしっかりとキャップされています。


まずはプロテクターの取り外し。まずはプロテクターの細くなっているところをつかみます。


そのまま思い切って引き上げると……


このようにプロテクターが外れます。


続いてローヤルキャップ。キャップの中央部分を親指で押し込むと、


このように簡単に外れます。


最後にポリ中栓。内側の輪をつまんで引き上げるだけ。


開封。


中身を確認するためにエコ灯油と普通の灯油を小皿に移してみました。


どちらも無色透明。


左右入れ替えてみたが見た目での判断は難しい。


肝心のニオイは無臭というわけではありませんが、一般的な灯油と比べるとニオイがないといってもいいレベル。ニオイに敏感な人で無ければ、鼻を近づけないと分からないくらいまでニオイが抑えられていました。かすかに感じるニオイも灯油とは別種のもので、「ちょっと甘い香りがする油」という感じ。普通の灯油よりもべたつきも少ないため、これなら灯油注入時に手や服などについてしまっても、すぐに洗えば全くニオイが気にならないはず。

これだけではエコ灯油の実力が分からないため、実際に火をつけてみることに。本来はファンヒーターで利用するのですが、燃えている様子がよく見えないので、布に染みこませて着火してみました。左がエコ灯油で右が一般的な灯油になっています。普通の灯油の方から何やら黒い煙が……。
YouTube - エコ灯油と一般の灯油の着火実験


消火。一般の灯油の方は火を消した瞬間にとてつもないニオイが漂ったものの、エコ灯油の方はほぼニオイが無い状態。これがファンヒーターを消したときのニオイの差になると実感。


器が冷めたところで、どのようになっているのか確認。一般的な灯油の方はすすで真っ黒。


一方、エコ灯油の方は多少すすがついて黒くなっているものの比較的キレイ。


並べてみると一目瞭然。ファンヒーターで利用するときは灯油に直接火をつけて発火させるわけではありませんが、これだけ差があるということはエコ灯油は一般の灯油よりも燃焼性が優れていると言えそう。


実際にニオイや火をつけた時の状態でエコ灯油が一般の灯油よりも優れていることは分かりましたが、一般的に暖房器具として利用されているのは石油ファンヒーターよりもエアコンの方が多いはず。そこで、昭和シェルに石油ファンヒーターの現状と、ほかの暖房器具にはない石油ファンヒーターの利点などを聞いてみました。

GIGAZINE(以下:G):
Shellエコ灯油は「ファンヒーター専用燃料」ということなのですが、石油ファンヒーターの利用率は暖房機器全体の何パーセントになるのでしょうか。

昭和シェル(以下:S):
暖房機器全体での利用率は把握していないのですが、灯油暖房機器の中では60%の利用率になっています。店頭で置かれている灯油暖房機器の80%がファンヒーターになっており、ファンヒーター以外の灯油暖房機器の姿が減ってきている状態です。

G:
全国的に見て、どの地域で多く石油ファンヒーターが利用されているのでしょうか。

S:
日本では北海道・東北・北陸といった寒冷地が多いと聞いています。寒い地域では火力が強くないと部屋がなかなか暖まらないので石油ファンヒーターを重宝していただいているのかもしれません。

G:
確かにファンヒーターをつけるとすぐに部屋が暖かくなりますよね。では日本以外でも寒い国で石油ファンヒーターが使われているのでしょうか。

S:
実は世界で灯油を暖房に利用する文化があるのは日本と韓国だけなんです。どういう経緯で日本と韓国だけにとどまっているのかよく分からないのですが、ヨーロッパやアメリカでは暖炉や軽油が利用されており、灯油はジェット燃料としてしか使われていないようです。

G:
これまでの話から石油ファンヒーターは北海道や東北地方で多く利用されているということなのですが、東京や大阪などの都心部で利用するメリットというものはあるのでしょうか。

S:
石油ファンヒーターが持っているメリットとして最も大きいものは、急速に部屋を暖めることができるということですね。これは石油ファンヒーターがエネルギー密度の高い液体燃料である灯油を燃焼させているからです。エアコンのような電気で熱を作り出す機器は瞬間的に大量の熱を発生させることができず、部屋が暖まるまでに非常に時間がかかります。また、火力発電所で発生した電気が過程の電化製品に届くまでにエネルギーの65%もロスしてしまうため電気が環境にやさしいとも言いにくいのです。

G:
石油ファンヒーターのメリットは「とにかく早く部屋を暖める」ということなんですね。

S:
そうなんです。エアコンが取り付けられている家庭でも、まず石油ファンヒーターで部屋を暖め、十分に室温が上がってからエアコンに切り替えると非常にエコで経済的なんです。エコ灯油であればわざわざ灯油を買いに行かなくても玄関先までお届けするので手間も省ける上に、ニオイも少ないので部屋の中でも保管しやすくなります。

G:
なるほど、まずは石油ファンヒーターで瞬発的に部屋を暖めて、その後はエアコンで室温を維持するという感じなんですね。石油ファンヒーターといえば、着火・鎮火時に漂う灯油のニオイが思い浮かぶのですが、そもそも灯油はなぜニオイがキツイのでしょうか。

S:
においがする「芳香族」といわれる成分が含まれているためです。灯油は原油を原料にして作られているのですが、エコ灯油は天然ガスを合成して液体化したもの「GTL(Gas
To Liquids)」を主成分としているため芳香族をほとんど含んでいません。

臭気濃度の相対比較値を表した図。


臭気指数を比較した図。


エコ灯油利用者の8割以上がニオイの少なさを実感。


G:
GTL技術が、実際にエコ灯油で利用されたのはいつごろからなのでしょうか。

S:
2002年にマレーシアのGTLのプラントを紹介されたのが最初になります。そこで日本と韓国しか灯油を暖房に使っていないので、「日本で使ってみるか」という流れで開発が始まりました。最初は軽すぎるなどの問題があり実用化にほど遠いできだったのですが、3年ほど調整してやっと商品として提供できるレベルになったという感じです。現在商業用プラントでは潤滑油やGTL軽油なども生産しており、実証実験として東京都交通局(都バス)にGTL軽油を採用していただいています。

G:
エコ灯油開発に際して最も苦労したことは何でしたか。またマル秘エピソードがあれば教えてください。

S:
エコ灯油は新規事業推進部の中でたった2名で担当しているんです。今でも苦労は絶えない状態ですが、特に最初は消防法による規制や流通関係でかなり苦労しました。エコ灯油も危険物なので宅配してもらえる業者がほとんど無かったんです。また、これまでガソリンスタンドを通しての販売しかしておらず、ネット販売するにあたり、社内に「直接お客様に販売する」という文化が無かったため社内説明・システム対応に追われました。

G:
エコ灯油自体の質問に戻りますが、古いタイプの石油ファンヒーターで利用することはできるのでしょうか。

S:
石油ファンヒーターであれば旧式のものでも問題ありませんが、エコ灯油の性質上すすが出にくく、炎が高くあがっても気が付かないという可能性があるので、芯式ストーブでの利用は不可としております。

G:
「すすが出にくい」という特長が石油ストーブでは使用できないという理由なんですね。

S:
そうなんです。

G:
消費者として最も気になるところになるのですが、通常の灯油と比較してエコ灯油を使った場合に消費者側のコストは低くなるのでしょうか

S:
実は熱量ベースで言うと安くはならないんです。逆にたくさん使う寒冷地ではコストが高くついてしまう場合があります。エコ灯油の利用状況を調べたところ、実際にエコ灯油を使っている人は2%程度で、価格の手ごろさから従来の灯油を利用し続けている人が多いのが現状なんです。しかし、エコ灯油は手間がかからずニオイも抑えることができるため、一度使ってもらえば次から使い続けてもらえるくらいの価値はあると思います。

G:
確かに一般的な灯油と比べてかなりニオイが抑えられていますよね。他にも「べとつきが少ない」「劣化しにくい」「燃焼性がよく、硫黄含有量が少ない」といった特徴が上げられますが、「これまであまり公開していないけど、実はこんなところで評判がいいよ」といったエピソードがあれば教えてください。

S:
実は大道芸人の方々に喜んで使っていただいているんです。大道芸では火を噴いたり火の輪を使ったファイヤーパフォーマンスを行う場合があるのですが、今までの灯油は全身すすだらけ、観客の人もすすまみれになって「風呂に入らせろ」などのクレームが多かったらしいんです。しかし、エコ灯油を使い始めてからそういったことが無くなったということで、大道芸人さんの間で広まっているらしいですよ。
【注】大道芸におけるエコ灯油の使われ方は本来の利用目的ではなく、昭和シェル石油が推奨するものではありません!ファンヒーター以外の利用は危険ですので、決して行わないでくださいね!

G:
意外なところで広まっていたんですね。

S:
初めて聞いたときは驚きましたよ。

G:
去年までは首都圏の一部の地域でしか販売されていなかったのですが、なぜネット販売で全国展開しようとしたのでしょうか。

S:
地域限定のみの販売だとエコ灯油は消えてしまうと思ったからです。それまで100人のうち2人しか売れなかったのですが、「全国を見たときに何人いるんだろうか」と思い全国展開に踏み出した次第です。また、ネット販売によってエコ灯油の全国のマーケットを知りたいという意図もありました。まだ流通の問題が残っていますが、将来的には全国の特約店(ガソリンスタンド)を巻き込んで、エコ灯油を盛り上げていきたいと考えています。

G:
お忙しい中ありがとうございました。

S:
これから冬本番に突入し急激に気温が下がってきますが、部屋が暖まるまで待っていられない時に石油ファンヒーターにエコ灯油を入れて利用すれば、快適に冬を越すことができるかもしれません。

ファンヒーター専用灯油 エコ灯油:昭和シェル石油株式会社

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in サイエンス,  動画,  広告, Posted by darkhorse_log