サイエンス

生物のオスがカラフルなのはメスをひきつけるためだけではない


多くの生物はメスよりオスの方が鮮やかでバリエーション豊かな色彩を持っていて、チョウや鳥、魚の中にはオスを見れば見分けられるがメスでは見分けがつかない種も多数存在します。その理由はこれまで性淘汰によって説明されてきましたが、実はそれ以外にもオスがカラフルであるべき生物学的に重要なもうひとつの理由があるようです。

イトトンボを使ったカリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究により明らかにされたその理由とは一体どういうものなのでしょうか?

詳細は以下から。Why Do Animals, Especially Males, Have So Many Different Colors?

「ダーウィン以来、種によって『二次的な性的形質』、例えば鮮やかな色彩や大きな角などに違いがあると、生物学者たちは少なくとも気付いてはいました」とGrether教授。ダーウィンはこの多様性は性淘汰が原因だとしました。色彩や角などの特徴的形質が強くあらわれるほど異性をひきつけることができた、という説です。しかし、生物のオスの多様な色彩の理由はそれだけでは説明できないようです。


UCLAの環境学と進化生物学のGregory Grether教授とChristopher Anderson博士によるHetaerina属の数種のイトトンボを対象とした調査で、種による体色の違いは競争相手である同種のオスとライバルとならない他種のオスを見分けるためであると判明しました。この結果はProceedings of the Royal Society B: Biological Sciences誌の10月28日号に発表されています。

「戦うべきではない相手(他種のオス)を攻撃したり、逆に攻撃されたりするムダをなくすため、色や鳴き声、化学的合図(においなど)が多様化する方向へ働いたようです」とGrether教授。「Hetaerina属のイトトンボのオスは、近寄ってきたほかのオスが自分と同じ種であるか否かを、種による羽の色の違いにより判断していることがわかりました。また、この羽の色による識別はその2種のイトトンボの分布が重なっている地域でのみ行われているということも判明しました。これは、自然界で広く起こっているものの学術的には見過ごされてきた進化のプロセスの、最も明確な実証の一つです」

1973年にノーベル生理学・医学賞を受賞したオーストリアの動物行動学者コンラート・ローレンツ博士は、サンゴ礁に生息する魚類の劇的なまでに多様な色彩は、間違った種と闘うことを避けるための淘汰によるものではないか、と1962年に示唆しています。

「異なった種の異性との交配を避けるための淘汰があるように、異なった種の同性との闘いを避けるための淘汰もあると考えられます」とGrether教授。「ローレンツは、熱帯魚が近くに生息するものの競争相手とならない種を攻撃することに利点はない、と言いました。この考えは進化生物学の分野で相応の注目を受けることがなく、見過ごされてきました」

ローレンツ博士の着想は熱帯魚の体色の多様性について正確な説明とはならないかもしれないが、ほかの生物の種による体色の違いの説明となり得るだろう、とGrether教授は述べています。

「複数の種の生息域が重なる場所では、生息域が重ならない場所とくらべ、同種のオスと違う種のオスを見分ける能力が高まります」とGrether教授。研究者たちは1種のイトトンボしか生息しない地域で、その種のオスの羽をほかの種のイトトンボに似せて着色し、この説を検証しました。「イトトンボのオスは、別のオスの個体が自分と同じ種どうかを色によって識別し、この識別は複数の種が共存する地域で行われ、1種のみが生息する地域ではほとんど行われないことがわかりました。これは、色による種の識別能力がほかの種と闘うことによる淘汰の結果として発生したことを強く示唆しています」

「ローレンツが熱帯魚について主張したように、2つの種の間で闘争する必要がなければ、2つの種がお互いを見分けやすくなる方向へ進化は進むでしょう。例えば、種間の色の違いが強調されていくといったようにです。また、体色の違いはメスにとって自分の種のオスを見分けやすくもするでしょう」とGrether教授。イトトンボのいくつかの種は、複数種が共存する地域では一種のみが生息する地域にくらべ色彩の違いがより鮮やかにあらわれることも判明しました。Grether教授は「これは異種間の闘いを避ける淘汰または異種間の交配を避ける淘汰のどちらかで説明できるでしょう」としています。

今後の研究では、種の識別能力を持つ個体がどれくらいの割合で存在し、それらの個体は自分と同種のオスに対しより競争的に反応するのかどうかを明らかにしたいとのことです。異種間の闘争とその進化的影響はまだ十分に研究されていない科学的問題だ、とGrether教授は述べています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
男性の顔が魅力的かどうか判断するとき、女性はここを見ている - GIGAZINE

透明の羽根を持つ蝶「Greta oto」 - GIGAZINE

地球温暖化の影響で鳥も小さくなっている - GIGAZINE

進化を逆流、温暖化の影響でヒツジが縮んでいる - GIGAZINE

in サイエンス,   生き物, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.