星野之宣の宇宙叙事詩「2001夜物語」を3Dアニメ化した「TO(トゥー)」、一夜限りのプレミア上映会レポート


星野之宣のSFマンガ「2001夜物語」から第13夜「共生惑星」と第15夜「楕円軌道」を3Dライブアニメで映像化した「TO(トゥー)」が12月から発売されます。それに先立って、10月2日(金)からDVDのレンタルが始まったのですが、この映像をぜひ劇場で見たいという声が多く、また世界30カ国以上からも上映のオファーがあったということで、今回特別にTOHOシネマズ六本木ヒルズで一夜限りのプレミア上映会が実施されることになりました。

上映前には、「TO(トゥー)」の曽利文彦監督と、「鉄コン筋クリート」のマイケル・アリアス監督によるクリエイター対談も行われました。

詳細は以下から。


ということで、六本木ヒルズにやってきました。


会場はTOHOシネマズ六本木ヒルズ。


折しも東京国際映画祭開幕の前日ということで、あちこちで映画祭に向けた準備が行われていました。ジェームズ・キャメロン監督の「アバター」は8月に公開された15分の特別試写とはまた別のバージョンが上映される予定。


「TO(トゥー)」は10月からレンタルが始まっており、12月にはBlu-rayとDVDの発売が始まるが、世界30カ国以上から上映のオファーがあったため今回のようなプレミア上映会の機会が設けられました。上映会前に曽利文彦監督と、友人で「鉄コン筋クリート」のマイケル・アリアス監督によるトークショーが開催されました。


司会:
お二人は昔からの知り合いだと聞いていますが、どういった経緯で知り合ったのですか?

曽利文彦(以下、曽):
マイクとは15年ぐらい前に始めて会いました。当時マイクは日本に来てCGソフトウェアとかの仕事をしていて、自分はTBSのCG部にいて、そこにマイクが遊びに来て挨拶したのがはじめです。仕事で何か一緒に作ったりということはないけれど、会って話をしたり、「ピンポン」を作ったときもいの一番に来てくれたり、ずっと仲良くしています。


司会:
そのことは覚えていますか?

マイケル・アリアス(以下、マ)
覚えてます。僕が曽利さんの現場を見せて頂いたりして、「ピンポン」の初号試写では、当時「鉄コン筋クリート」を作ろうと考えながらも作業が進んでいないころで、「曽利さんに先にやられた」っていうのがショッキングでした。曽利さんが「TO」みたいなアニメと実写の融合した作品を先に導いてくれて、これからもどういった作品を作るのか見てみたいですね。


司会:
お二人とも、松本大洋作品を作っているという共通点がありますが、お互いにアドバイスとかはありましたか?

マ:
ないですね。そもそも、作っているというのを知らなかったから、いきなりできちゃったみたいな感じです。

曽:
クリエイターとしては一般の人と同じ目線ではダメなんでしょうが、マイクの作品を見て「これはすごい、面白い!マイク、こんなことできるんだ!」って思いましたね。

司会:
お互いにお気に入りの作品はありますか?

曽:
まず「鉄コン筋クリート」は欠かせません。友人のマイクが作った作っていないというを抜いても、すごい作品だと思います。

マ:
(曽利さんの)監督デビュー作で申し訳ないですが、「ピンポン」はすごい。同じ松本大洋のファンである曽利さんが動かしてくれたというのが嬉しいですし、そのあと曽利さんが作っているものもみんな気になっていて、今回の「TO」は特に2回連続で見たほど好きです。


司会:
映画論を語ったりはするんですか?

曽:
あまり一緒に話をすることはないんです。「ベクシル」の時も対談に来てくれたり、「鉄コン筋クリート」の時はSTUDIO4℃の現場にお邪魔したりして苦労を知ってるし、戦友みたいなところはありますが。日頃仲良くしている訳じゃないけど、どこかつながっているという気がします。

司会:
お二人は実写もアニメもやられているという、日本ではあまり多くないタイプの方だと思いますが、それぞれに演出論や作品へのアプローチというのはありますか。

マ:
実写もアニメも、制作する側としての違いはありますが、監督としてやっていることは同じです。いろいろなスタッフ、大家族みたいな集団に自分の感性を投げかけて、アイディアを取り入れたりする。自分が関わった作品は大勢で作るモノだったので、よく「映画は監督のもの」っていうけど、監督の仕事は一つの仕事にすぎないのではないかと思います。最終的には監督の責任になっているけれど、一つの社会でモノを作り上げていく感じ。

自分が築いてきた監督論があるとしたら、自分も曽利さんも現場上がりだから特撮もCGも自分の手で触って作ることが身についているので、自分でファインダーをのぞくことも、特殊メイクを触っていても、CGモデルを動かしていても、それが楽しいから映画監督をやっているって感じです。決して監督しかやらないということもなく、むしろ、現場で作っていられる、色々なことをやれるというのがハッピーなので、たとえプロデューサーでもCGアニメーターでもなんでもやりたいとおもいます。曽利さんも監督をやったりプロデュースをやったりしているので、似たような匂いを感じますね。

司会:
曽利さんも、現場で率先して撮影をしたりするとか。

曽:
そうですね。マイクと同じで、作品は一人で作っているものではなくて、今日見てもらう「TO」も何十人ものスタッフと一緒に作り上げたモノだと思います。その中で、誰かが先頭に立たないといけないということで、先頭という立場にいることは光栄で嬉しいことです。何でもやるからスタッフに嫌がられたり、要らない口出しをして怒られたりしますけれど、ずっと作っていたいという気持ちはプロデューサーになっても同じです。

司会:
本日は「TO」の上映会なので、この作品についてお話を伺っていきます。「TO」を作るに当たっての経緯や、3Dライブアニメがどんどん進化していっているというのが見ていてわかるのですが、作る側はどういうところを目指しているのかとか、お聞かせください。


曽:
3Dライブアニメを「アップルシード」「ベクシル」とやってきましたが、映画として世に送り出すのは労力もかかるし色々大変。もう少し自由にものづくりができるスタンスでチャレンジしたいと思いました。企画はもともと30分×4本ぐらいのテレビシリーズということでスタートしたんです。星野之宣先生の原作は、20数年前に初版を手にしたときから「これはすごい、もう映画じゃないか」と、将来映像の仕事をやって企画を出せたらこの仕事をやりたいと思っていてて、ようやく念願がかなったというところですね。テレビシリーズの話が来たときに、「二〇〇一夜物語しかない」と思ったんです。そういう思い入れのある作品だし、3Dライブアニメと作品の舞台である宇宙とは相性がぜったいいいと思い、タイミングなどをはかった上で、今が「TO」として送り出すベストタイミングだなと思いました。

司会
先ほどマイケル・アリアス監督が「TO」が好きだと仰いましたが、どのあたりが好きですか?

マ:
映画らしいエンタテイメントだというところですね。「ベクシル」の時に曽利さんと話をしたんですが、「ベクシル」は僕にとってわかりにくい話だったんです。いろんなことを考えながら見ていないと置いて行かれるような気分で。ところが「TO」はそうじゃなくて、自分が高校生のころに読んでいたSF小説のような、単純にワクワクしてノっていけるアドベンチャー感のある作品なんです。なおかつ、奥行きのある映画らしい絵作りがされているし、音響もよくて音楽がかっこいいし。

司会:
3Dライブアニメでは前作の「ベクシル」と比較するのが分かりやすいと思うんですが、今作で力を入れた部分はどこでしょうか?

曽:
やっぱりキャラクターですね。キャラクターはとても難しくて、フォトリアルなものを求めているわけではないので、「アップルシード」、「ベクシル」と来て、まだ模索を続けている段階なんです。CGをどうやったら違和感なく受け入れてもらえるかというのは課題で、あまりにもリアルすぎても気持ち悪いかもしれないし、アニメにしてしまうんだったら手描きアニメにかなうわけもないので、差別化して別ジャンルとしてやっていきたいという思いは強いですね。


司会:
たしかに、曽利さんの3Dライブアニメは全く違うところでの勝負になっていますね。

曽:
ハリウッドでやっていることを追いかけるだけじゃつまらないから、日本独自、我々でしかできないスタイルを追い続けたいとクリエイターとして思いますね。日本のセルアニメの凄さをわざわざCGに置き換える意味は、個人的には無いと思っているので、そこに踏み入れることは考えていなくて、逆に3Dアニメでしかできない作品を作れれば幸せだなと思っています。普通のアニメだとデフォルメが効く2Dアニメにはかなわないので、そうではなくてデフォルメせず、普通の人間ドラマとしてアニメーションを描ける手法として3Dライブアニメを追いかけていて、そのホップ・ステップ・ジャンプの「ジャンプ」にあたるのが今回の「TO」ですね。


司会:
「ベクシル」ではフェイシャルキャプチャを行いましたが、本作ではどうですか?

曽:
全部手付けのアニメーションで、顔に関してはアニメーターが描いています。もちろん、モーションキャプチャはしていますが。モーションキャプチャの演出は実写映画と同じなんです。それがアニメの演出としてできるとやりやすいし、嬉しい。なぜモーションキャプチャかというとこれは時間短縮や予算の問題ではなくて、自分の方法論として一番イイからです。でも、顔はやっぱりアニメーターが丁寧に手付けしていくのが一番感情が入りますね。


司会:
日本らしいと言えばそうですね。「TO」の発売日は12月頭と言うことで、ちょうど曽利監督もアリアス監督も働いていたジェームズ・キャメロン監督作品(アバター)もロードショーされる頃ですが、あちらは見ましたか?

マ:
「アバター」ですね?ビデオクリップとかしか見ていないけれど、構想の時から噂を聞いているので、けっこう期待しています。キャメロン監督は何を作ってもいいと思いますよ。

曽:
マイクは「アビス」の時からやっているんですよ、それがビックリですよね。自分が1996年に「タイタニック」のCGアニメをやっているころに、ちょうど「アバター」のプリプロが始まっていて、「こんなのできるわけないよね」なんて言っていたんですが、アレができたんだ…と。もの凄く長いこと作業していたので、すごく楽しみですね。もう、あそこまで行くと執念ですよね。

司会:
「アバター」が10年以上かかったのなら、日本でもそういう作品をやるのならそろそろ構想を練らないとダメでしょうか。

マ:
「TO」も、曽利さんが原作を読んでからできるまで20年経ってるから、実際に作り込みが始まっているかとかは別問題ですね。自分が原作だと、考えたストーリーと長く一緒にいると思い入れもできてきて色々見えてくるモノもあるので、その時間は無駄ではないと思います。「アバター」も、想像では当時の技術では実現できないからちょっと待とうというところはあっただろうし、それがやっと熟して見られる作品になったというのがすごくスペシャルだと思います。

司会:
このさき作ってみたい作品というのはありますか?

曽:
企画しているものとか、技術的に国内ではまだ厳しいものとか、「まだ動けない」というのはいくつかあります。そういうものを映像として実現するにはまだ早いから、できるのは10年先になるかもしれないけど、そこまで執念でやり続けるつもりです。

司会:
VFXに関しては日本でもだいぶノウハウが溜まってきてると思います。今後日本でも3Dにこだわらず、表現に対して手法を選べる大作が来るのでしょうか。

曽:
実写はアニメよりお金もかかるし、苦労も多いです。なかなかタイミング良く作品を作るのは難しいですが、こういう3Dアニメであれば思いを持って臨めばある程度スケールの大きいものができるから、実写でできないフラストレーションをぶつけられるというのはあるかもしれませんね。

司会:
なるほど。本日はありがとうございました。


「TO(トゥー)」の場面写真は以下のような感じ。曽利監督がこだわったというキャラクター描写はもちろん、スケール感が桁違い。


「TO 楕円軌道」「TO 共生惑星」は好評レンタル中。また、12月18日(金)からはBlu-rayとDVDが発売されます。


© 星野之宣・双葉社/「TO」製作委員会

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