取材

大阪ガスサービスショップを家の中に入れてはいけない


上記写真は実家の2階台所にあるガス給湯器のコンセントなのですが、既にちぎれかかっています。しかもさらに調べてみると「明らかに何者かが故意にカッターで切った」形跡だったことがわかりました。これは外壁塗装の業者が塗装前に発見したもので、「このまま放置していると漏電して危険、火事になりかねない」ということで教えてくれたもの。そして、この発見の直前に「大阪ガスサービスショップ」が「ガス設備点検巡回」に来て、この給湯器を触っているわけですが……。

一体どういう点検をしたらこうなるのか、「大阪ガスサービスショップ」と「大阪ガス」に尋ねてみたところ、驚愕の事実が明らかに。実は「大阪ガスサービスショップ」は大阪ガスのロゴと名称を使っているのですが、「大阪ガス」ではなかったのです。そんなバカな。

というわけで、「大阪ガスサービスショップ」と「大阪ガス」に何をしたらこんな事になるのかといった点も含め、いろいろと聞いてみました。
まずこれが発見直後の状態。ぱっと見ると単純に何か筋がついているだけのように見えますが……。


実際にはこうなっています。中にある細い芯の線だけで支えられており、むき出しの状態でした。当然ながらここは風雨にさらされる場所なので、このまま放置しておくと火事などの原因になるのは時間の問題だった可能性があります。


現場はこんな感じ。このままだと危険なのでコンセントは抜いてあります。2階のベランダにあるのですが、1階が通常の家の天井高よりもはるかに高く、外部から侵入するのは至難の業というのもポイントです。


さらによく見ると、パイプの外装もこのようにして切断してあります。ガス給湯器の点検をして気づかないわけがない。


というわけで、コンセントは取り外し、パイプの方は応急処置を施しました。もう少しで大惨事になるところ。


調べてみると、この直前に「大阪ガスサービスショップ」が点検に来ていることがわかりました。来る前には以下のようなはがきが来ています。


右上にははっきりと「大阪ガス」と書いてあり、タイトルは「ガス設備点検巡回のお知らせ」。内容は太字で書いてあるように「ガス設備の保守点検<無償>」とあります。実家ではこれまでの何十年間にもわたって年に1回程度、この「保守点検」が行われていたため、「またいつもの点検だろう」ということで、やってきた点検員を家の中に入れて点検してもらったという次第です。その際に「何かガス器具の不備が起きたらすぐ私にご連絡ください」ということで名刺をもらったそうです。

ところが先ほどのはがき画像、よく見ると「大阪ガス」ではない。一番下には「大阪ガスサービスショップ」と書いてあります。そう、実は「大阪ガスサービスショップ」は「大阪ガス」ではなかったのです。

大阪ガスサービスショップ
http://www.ogssa.com/

事業内容は以下の4つ。

・「住まい」のリフォーム(システムキッチン、システムバス)
・ガス機器の販売、修理
・ガス栓工事、内管工事、工事設計施工
・転宅時のガス栓の開閉お申し込み受付


このうち、「ガス栓工事、内管工事、工事設計施工」と「転宅時のガス栓の開閉お申し込み受付」が大阪ガス委託業務。それ以外は関係ないわけです。そうであるにも関わらず、ガス機器の販売時などにも「大阪ガス」のマークや名称を使用しているというのが実態。もちろん制服や自動車などにも大阪ガスのマークが入っており、ぱっと見ただけでは大阪ガスなのか大阪ガスサービスショップなのかどうかはほとんど見分けが付きません。


そしてこの際に渡している「名刺」ですが、調べてみると、点検後などに故障した際、この名刺の本人に電話することによって、その人のノルマ達成に貢献できるとのこと。名刺を渡して連絡が来れば販売担当者になり、販売担当者になるとこのノルマを満たすため、一件ずつ決められた「サービス収入」がもらえるそうです。例えば点検後にコンロを売ればその売り上げの一部が入るという仕組みで、歩合制に近く、基本売上目標なども設定されているそうです。

要するに、大阪ガスサービスショップ社員が「自分で点検し、あとで故障するようにして、故障したら自分に直接電話させる」というマッチポンプが可能な状態である、ということです。そのため、「点検」と称して、人の家の中に「大阪ガス」の代紋で侵入し、実質的には「営業活動」を行うことも可能、というわけ。どこか少し壊れているだけで修理せずに「全部交換ですね」と言って全交換するケースが後を絶たないのはこの仕組みのためです。

どれぐらいこれが紛らわしい行為なのかを説明するため、「大阪ガスサービスショップ」と「大阪ガス」の名刺をいろいろ集めてみたので見てみましょう。

これは大阪ガス。


左上に大阪ガスのマークと名称が入っていますが、これは大阪ガスサービスショップです。大阪ガスではありません。


左上に大阪ガスのマークが入っていますが、これも大阪ガスサービスショップ。大阪ガスではありません。


左上に大阪ガスのマークと名称が小さく入っており、これは大阪ガスです。


これは大阪ガスサービスショップ。しかしよく見るとこれも大阪ガスのマークがあるため、事情を知らない人への信用度は高い。


このように、ぱっと見ても、何も知らない人はほぼ確実に、

大阪ガスサービスショップ=大阪ガス

だと思いこんでおり、試しに実家の所属している町内会全員に今回の件を聞いてみたところ、全員が「大阪ガスサービスショップ=大阪ガス」だと思いこんでいました。そのため、これまでも苦情が多く発生しており、たびたび問題になってはいるのですが、大阪ガスに改善の様子は無し。

つまり、大阪ガスサービスショップというのは、地元の電気屋さんのようなもので、いわば「地元のガス屋さん」のこと。それが大阪ガスとの委託契約によって「大阪ガスサービスショップ」と名乗っているだけという話。そのため、マンションや町内会によっては大阪ガスサービスショップ自体を出入り禁止にしているケースもありました。

また、NHKや各民放などにこの件について過去に報じたことがあるのかどうかを電話で聞いてみたところ、「過去に問題行為として番組で取り上げたことは何度もあるが、新情報がないのでもう取材予定はない」とのこと。つまり、もう数十年にわたって今回と同じような問題行為が繰り返されているらしい。なぜこのような長期にわたって問題が放置されているのでしょう……?

そこで大阪ガスサービスショップに今回の件(=点検後に電源コードがちぎられていた件など)について聞いてみたところ、なんとこの点検を行った当事者(=名刺をわざわざ渡してくれた人)は「家庭の事情により実家に戻ったため先月末に退社」したとのこと。なんというタイミングの良さ。しかし電話して聞くことは可能だというので、大阪ガスサービスショップが当人に電話で聞いたところ、「電源コードを切ってはいない」とのこと。では一体誰が切ったのでしょうか。なお、別の人に聞くと「先々月で退社した」とのこと。あれ、先月なのでは?一体どうなっているのでしょう?

仕方ないので、ブランドロゴとでも言うべき「大阪ガス」のマークと名称の利用を許諾している以上、「大阪ガスにも監督責任があるのでは?」ということで、ここまでの経緯を説明するため、今度は大阪ガスの人に来てもらいました。いい加減な発言をされると困るので事前に「録音する」と申し入れており、録音されて公開されることに同意しないのであれば来てもらわなくても大丈夫ですと伝えてあったのですが、ちゃんと来てくれました。

大阪ガスの販売促進グループ統括責任者が来て、問題の電源ケーブルを見て「これは自然にちぎれたものではない」ことを確認している様子。つまり、大阪ガス自体が「故意に刃物で切断されたもの」である点については認めています。


この際、先ほどの「ガス設備点検巡回のお知らせ」のハガキについて、これは何なのかと聞いてみたところ、大阪ガスから見れば「ガス設備点検巡回のお知らせ」は「販売活動」であると断言。

要するに、こういうことです。

・「40ヶ月又は3年に1度、ガス漏洩検査を行わなければならない」ので検査している法定検査は「大阪ガス」が担当
・それ以外の「ガス設備点検」は大阪ガスサービスショップが「販売活動」として担当


つまり、このハガキは「販売活動」、一般的に言うところの営業活動のご案内だった、というわけ。しかも大阪ガスとは関係ない。何それ……?


また、今回のような苦情などを「専門にクレーム処理する部署がない」ため、なんと今回は販売促進グループ統括責任者が担当しているとのこと。

つまり、「ガス栓の開通はどうすればいいですか?」とか「お風呂のお湯が出ないんですけど」というお問い合わせに対して対応する部署はあるが、今回のような客からの苦情などについては専門部署や共有する部署がない、と。なるほど、改善しようにも改善できない仕組みなわけです。今まで「大阪ガスサービスショップと大阪ガスが違うモノなのに見分けが付かない、紛らわしい、なんとかしてほしい」という要望が通らず、まったく改善しなかった理由がようやくわかりました。現場で処理されてそれで「終わり」だったため。なおかつ、今回来てくれた販売促進グループ統括責任者が、この大阪ガスサービスショップにいろいろな販売方法や販売活動を指導している立場。なんという説得力、これでは何を言ってもまるでムダ……。

さらに大阪ガスの人いわく「現行犯であなたは見たわけではない」、と。つまり、「犯人は大阪ガスサービスショップではない、おまえらだろう?」ということを暗に含めて主張し始める始末。そんなことを言い始めたら元も子もないと思うのですが……。なので、こちらも「警察を呼んで指紋を調べるとか、そこまでしないとだめなのか?」と主張。もうどうしようもない。2階の台所の給湯器は2階のベランダにあるのですが、1階の天井高が普通の家よりもかなり高く、誰かが侵入してきて切断するのは非常に難しいレベル。そのため、「実家にいる者が犯人、お前の家族が犯人」ということを暗に主張し始めたようです。失礼とかいうレベルを超えています。

そして、上記のすべてについて事細かに資料などを出して説明し、文書による回答を求めた結果、以下のように8月20日、返信がFAXで来ました。


要約するとこうなります。

Q1:大阪ガスサービスショップが大阪ガスの名称とマークを使うのをやめさせて欲しい

A1:マーク単体での使用は認めていない。使用する際には必ず「大阪ガスサービスショップくらしプラス○○ガスセンター」という文言が必要。

実態:「大阪ガスサービスショップくらしプラス○○ガスセンター」という文言はないし、マーク単体で利用しているように見える


Q2:「ガス設備点検巡回のお知らせ」も必要ないのであればやめてほしい

A2:定期保安巡回(大阪ガスが実施する法定点検の一種)については問題ない

回答していない

Q3:大阪ガスサービスショップの元社員がやっていないのであれば「何を点検したのだ?」ということになるし、社員がやったのであれば言語道断、いずれにしても大阪ガスサービスショップの元社員と大阪ガスサービスショップの責任は免れないはずだがどうなるのか

A3:ガス機器販売について大阪ガスが大阪ガスサービスショップに対してノルマを設定している事実はない

実態:大阪ガスが大阪ガスサービスショップにノルマを課してはいないが、大阪ガスサービスショップは所属する社員などにノルマを課しており、そのノルマを達成するために今回のような「自作自演」「マッチポンプ」をしている可能性は依然として残っている

Q4:大阪ガスが大阪ガスサービスショップに業務委託契約していると言うが、どのような契約なのか?契約書を見せて欲しい。

A4:業務委託契約は事実。債務不履行などの問題が生じた場合には契約に基づいた適切な対応を行う。

契約書の内容は不明のまま、実態は不透明。

Q5:今回の大阪ガスサービスショップ元社員だが、あまりにも退社のタイミングが良すぎる。本当に退社しているのか。

A5:個人情報保護のため教えません

本当に退社したかどうかについては明示せず。

Q6:大阪ガスサービスショップの元社員が今まで点検と称して営業をしに行ったすべての訪問先について同じようにして電源コードが切られている危険性があるが、どうするのか?

A6:訪問記録は「まごころ診断カルテ」と呼んでいるが控えは保存していない。コンピュータにも記録せず廃棄していた。今回の件についても廃棄している。ただし、「現在」は診断内容をコンピュータに入力して記録している。

今回の件以前の内容については特別なもの以外残っていないので追跡不可能。誰がどこで何を営業したかは不明。そんなことがあるのだろうか。

Q7:大阪ガスに苦情を処理する部門がないようだがどうなっているのか?

A7:「お客さまセンター」が用件を承って担当部署が責任を持って応じている

全社的にこういった苦情が蓄積されて共有されているかどうかはやはり不明。文面を読む限り、共有されていないというのは本当っぽい。

ちなみに今回の件について、地元の消防署に「こういうことが原因で火事になったということはあるのか事例があれば教えて欲しい」と言ってみたところ、「大阪ガスさんのことはね……やめておいた方がいいよ、うん」ということで教えてもらえず。

最後に、消費者センターに聞いてみたところ、「こういう相談は毎年ある。大阪ガスにはこの件に関して申し入れを行うが、改善はしないだろう。事実、この件についてFAXで報告するように伝えたが8月27日現在、返答はない、無視されている」とのことです。

結論:大阪ガスが大阪ガスサービスショップに紛らわしいロゴとマークの使用をやめさせない限り、今できる自衛策は「大阪ガスサービスショップを家の中に入れない」ことだけです。

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続「大阪ガスサービスショップを家に入れてはいけない」~警察に行ってきました編~ - GIGAZINE

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in メモ,   取材,   コラム, Posted by darkhorse

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