真偽判断に役立つ「ウォーターエネルギーシステム」に対する各報道陣からの質疑応答いろいろ、そして現時点での結論


水から電流を取り出すことを可能にした」という発表が本当ならまさにエネルギー保存の法則を打ち破る可能性のある永久機関、あるいはフリーエネルギー装置ができそうな勢いの「ウォーターエネルギーシステム」ですが、現場では各報道機関の人たちが代表取締役に山ほどツッコミを入れまくっていたので、そのやりとりを以下に列挙しておきます。

真偽判断に役立つ「ウォーターエネルギーシステム」に対する各報道陣からの質疑応答、そして現時点での結論は以下から(2008/06/13 1:32、特許の図を追記。2008/06/13 2:00、さらに追記。2008/06/13 9:54、日経の記事を追記。2008/06/13 11:35、ムービー追加)。
質問が殺到したのはこのムービーの直後です。まずはこの解説を聞いておきましょう。

「ウォーターエネルギーシステム」搭載電気自動車の説明


この直後からあふれだす疑問・疑念の数々、以下が質疑応答の中身です。

Q:水の蒸発した分だけを補給してやればいいと言うことか?
A:そうです。これに関しては水のリサイクルもしており、垂れ流すわけではなく、フィルタを通してもう一度使っている。

Q:蒸発していると言うことは温度が上昇しているということだと思うのだが、本体自体はどれぐらい発熱するのですか?
A:排熱はあります。80度までは上がることはあります。それ以上は上がりません。排熱ロスが全くないかというとそんなことはないので、もったいないといえばもったいない。もし家であればその部分で湯沸かしなどができます。

Q:水のタンクはどれぐらいあるのですか?
A:2リットルです。

Q:それで大体何時間ぐらい走り続けることができるのですか?
A:大体7時間ぐらいです。

Q:どのような水を使うのですか?
A:ものすごく極端なことを言うと、雨水でもいいですし、淀川(大阪に流れている川)の水でもいいのですが、今の装置の形状ではそこまでお金をかけていないので不純物が装置のいろいろなところに入り込んで障害を来す可能性があるので、今は不純物の入っていない水を使用しています。

Q:地球上から水が無くならない限り永久に電気を生み出す可能性のある技術ということですか?
A:そういうことだと、思います、はい。

Q:画期的ということですか?
A:水素燃料電池自体が相当画期的だとは思いますが、水素というものとエネルギーというものがなかなか結びつかないと思うのですがそれからすればそれほど大きな飛躍ではない、と。またメタノールダイレクト型の燃料電池というものはスタックに供給するという意味ではこれと非常によく似ているのですが、水素を取り出してからスタックに供給するのではなくて、液体をスタックに供給するという意味では先駆者もいますし、我々も基本的には同じような技術の流れの中から出てきたものだという風に思っています。

Q:燃料極側から酸素が出ますよね。その酸素を再循環するという仕組みは?
A:我々は酸素ではなくて空気から取り出しています。空気中の酸素と反応させています。

Q:反対側で水が分解するとO2(酸素)が出てきますよね。そのO2はそのまま出すということですか?
A:はい。もうそのまま垂れ流しています。

Q:北海道などで使うと凍るじゃないかという問題があると思うのですが。
A:不凍液を使います。不凍液というのはアルコール類が含まれていますよね。そうなるとメタノールダイレクトの世界と極めて近くなるということで、可能だということがすぐにご理解いただけると思います。

Q:触媒反応だと水から水素を取り出すというのはなかなか難しいと思うのですが、何を工夫されたらそのようなことができるのか?
A:水から水素を発生させる反応というのは、もう100年以上前から6つぐらい化学式は知られております。何か新しい化学式を発見したわけではありません。それ以上は企業秘密です。先ほど記者の方にもお話ししたのですが、1~2年程前の製品でアクアフェアリーというのをご存じですか?NTTさんとあるベンチャー会社さんが作られたもので、携帯電話の充電用に作ったもので、水を供給すれば発電するというものだったのです。原理的には極めてよく似ておりまして、それは水にアルミ粉末を主体としたティーバッグのようなものを入れて水素を取り出すわけですね。30時間ぐらい経つとティーバッグのこしが抜けてしまうのでまた取り替えてくださいというしろものだったんですよ。基本的な考え方は同じようなものです。

Q:実際にこれはフルで何リットル入って、何キロ走行できるというものなのですか?
A:なくなるまでまだ走行したことがないです。そこのところはわかりません。補給しなければ2時間くらいです。2時間の間でどのくらい遠くまで行けるかというのは、例えば高速道路に乗って時速60キロでずっと走ったら、たぶん2時間そのまま走れると思います。ただ、街中でストップ&ゴーを繰り返した場合ですとやや難しいのが、止まっている間は電気をほぼ使わなくてそれでいいというのがあるのですけど、発進するときにはまた使うので、普通の市街地走行した場合に燃費がいいのか悪いのかというのはわかりません。

Q:この自動車を作るのにいくらかかったのでしょうか?
A:全部含めて1000万円ぐらいです。別の記者さんから一体いくらで売れるんですかというのがあったのですが、答えとしては電気自動車を作っているメーカーさんがどれだけコストダウンできるのかというのにかかっています。目標としては一つ50万円以内、できれば20万円以内、車両価格の10分の1ぐらいにしていきたいなと考えています。

Q:50万円の時の出力は500ワットぐらい?
A:500ワットですね。

Q:1キロワットだと倍?
A:いや、1キロワットだと大体太陽光発電で68万円ぐらいなんですよ。それ以下でないと市場での価値がない。我々の目標は1キロワット50万円以内。ただ500ワットで言えば20万円ぐらいにしたい。

Q:特許を取ったりとか、学会に発表したりだとか、学術誌に発表したりだとかそういうことはしないのですか?
A:特許は申請しております。ただし非常に悩ましいのが我々としてもブラックボックス化している技術の部分がありまして、そこを開示するのかどうかというのは会社として非常に悩ましいところではあります。

Q:まだ発表されたことはない、と?
A:発表していません。そういう意味では今回が初めての発表です。プライベートにいろいろな利用会社様にご覧いただいたということはあります。

Q:これは提携していく会社というのはもういくつか決まっているのですか?
A:決まっておりません。むしろ我々は電力を供給する装置のところに特化しておりますので、この自動車を作りたいと思っているわけではありませんし、家電製品を作りたいと思っているわけでもありませんので、そういったメーカー様の領域を侵すことなく協力関係を築いていきたいと思っています。また、従前から協力していただいている海外のメーカー様などとお話しを進めている部分もありますので、そちらも大事にしていきたいなと考えております。

Q:もしこれが量産になったら御社が量産するのですか?
A:さっきご覧いただいたコアのスタックの部分のさらにコアな部分は弊社で生産を続けると思っております。具体的にはMEA(膜/電極接合体)の部分は弊社で生産する、と。セパレーターですとか、ガワとか、周辺装置とかは弊社で生産する必要性はないです。

上記質疑応答が行われた際の様子は以下のような感じでした。文章化する際に一部省略したりしているので、より正確性を求める方はこれらのムービーを参照してください。

ウォーターエネルギーシステム質疑応答1


ウォーターエネルギーシステム質疑応答2


ウォーターエネルギーシステム質疑応答3


GIGAZINEからは以下の2点を質問しておきました。

Q:水を常に供給し続けるとして、24時間365日稼働した場合の寿命はどのくらいでしょうか?
A:約5年と考えています。しかし、まだ開発機が出来て2年も経っておらず、実際のテストは継続中なのではっきりと数値ではないのですが、基本的に部品については市販されている物を使用しているため、その部品の寿命を元に予想しています。

Q:使用する水に関しての質問
A:水質に関しては、フィルターの問題。基本的にはH2Oがあれば良いため、極端なことを言えば「海水」でもOK。ただし、現在はコスト面などの問題でフィルターに重点を置いていないので、純度の高い水を使用している。

なお、現在はジェネパック社のサイトにはないのですが昨日まではプレスリリースのページに「press_20080612.pdf」というのがあり、今回の発表は民主党・無所属ネット議員団のまちづくり部会長「中川隆弘」議員と環境農林部会長「森みどり」議員も出席していました。

これが説明会のプログラム


また、発明者については以下のように記載されていました。


テキスト化して引用するとこんな感じになります。

発明者プロフィール

ウォーターエネルギーシステム発明者
株式会社ジェネパックス取締役会長
末松満(スエマツミツル)

1943年2月13日
1961年04月大分県立安心院高等学校卒業
1961年04月八幡製鉄株式会社入社
1973年12月八幡製鉄株式会社退社
1976年05月遠赤外線の研究開発に着手
1980年04月ウォーターエネルギーシステムの研究開始
1985年04月埼玉県工業技術研究所と遠赤外線の共同研究開始
1987年08月家庭用循環温浴器開発
1993年04月株式会社ゼクセルと蓄熱マットを共同開発
日産ディーゼル、いすず自動車、日野自動車に販売開始
1994年04月ガスタービン発電機の開発開始
1995年05月省エネルギーモーターの開発開始
1996年02月水循環式汚物処理装置の開発
1996年06月廃棄食品の包装材分離装置の開発
1996年07月低温乾燥機の開発
1996年10月包装食品の包装材分別車の開発
1997年08月電気トラックの開発
2004年06月ウォーターエネルギーシステム(WES)による発電に成功

このウォーターエネルギーシステムなるものを発明した張本人の「末松満」氏ですが、「お茶の水女子大学」の冨永研究室のサイトにある掲示板にて特許を調べた人がいるようです。

[26134] 特許公開公報

[26145] 調べてみました

[26149] 単なるゴマカシです

[26150] 後を絶たないですね>燃料電池モドキ

ちなみに、実はデモ中にこのようなことが起きていました。

最初はぴかーっと光っていたのですが……


途中で光らなくなった。あれ?


点検中


つなぎなおしても点灯しない


しかしメーターは相変わらず動いている、わけがわからない


メーター部分だけ拡大


もうあきらめた。なんというトラブル……。


あと、実際に「水電池」というものが存在していますが、今回のモノとはまったく違っており、既に市販されています。

第19回 「水電池」の巻 - ECO JAPAN〈エコジャパン〉 - nikkei BPnet 環境ポータル

本日の一品 水を入れると発電する水電池

水からエネルギー!? - ワールドビジネスサテライト/ WORLD BUSINESS SATELLITE : テレビ東京

ちなみに本件とは全然関係ないのですが、各メディアがこぞって大々的に報道した「携帯にアダプターをさすだけで携帯がIP電話化し、どこにいくらかけても月額固定4500円!」という騒ぎが以前にありました。この際にはTBSがニュースの森やNEWS23などで「この技術は不可能である(疑問が残る)」と報道して訴えられて裁判になり、最終的にはこの謎のアダプタを作ったと主張する会社の負債額は20億円超になって自己破産、この騒動の張本人であるJM-NET実質経営者・大場武生被告は東京地裁初公判にて起訴事実を認め、株の転売益15億円のうち、半分を暴力団組長らへの借金返済へ充当していたという事実が明らかになりました。

今回は上記JM-NETの際のようにこの技術に関する投資を会場ですすめられたり、あるいはそのような儲け話は一切無かったのですが、もし本当にそのような都合のいい触媒が実在し、なおかつ安定物質である「水」をこのように分解することが真に可能であるならば、まぎれもなく「世紀の大発見」なので、すぐに学会の権威を呼び集めて検証してもらってお墨付きを得た後、第3者が検証可能な形にしてから発表すべきではないでしょうか。現時点では内容にあまりにも疑問点が多すぎるため、残念ながら「疑似科学」扱いの領域を脱し切れていません。本当に地球の未来と環境のことを考えているのであれば、その「企業秘密」の触媒などの部分を明らかにして欲しいものです。それらが明らかになるまでは残念ですが「ウォーターエネルギーシステム」を信じることはできません

2008/06/13 1:32追記
読者からのタレコミによると、以下のPDFファイルに今回の「ウォーターエネルギーシステム」の特許出願内容が書いてあるそうです。

http://kantan.nexp.jp/pat_pdf/A/2006/14/2006244714.pdf

【課題】常温下で、燃料として純水を用いて発電を行うことのできるウオーターエネルギーシステムを提案すること。

【解決手段】ウオーターエネルギーシステム1は、一般的な燃料電池と同様に、そのセルが、触媒2を挟み、燃料極3と酸素極4が対向配置された構造となっている。燃料極3として、ゼオライト、コーラルサンドおよびカーボンブラックの微粒子粉末の焼結体に白金が担持されたものを用いており、酸素極4として、ゼオライトおよびカーボンブラックの微粒子粉末の焼結体にルテニウムが担持されたものを用いている。純水5を燃料極3に供給し、酸素極4に空気を送り込むと、常温下において発電する。

それを示したのがこの図。


そしてポイントはこの文章。

図に示すように、ウォーターエネルギーシステム1 は、触媒2 を挟み、燃料極3 ( アノード) と酸素極4 ( カソード) が対向配置された構成のセルが、多数個直列に接続された構造となっている。図において一つのセルのみを示してある。燃料極3 には、純水5 が直接に供給され、そこに含まれる水素が触媒によって、水素イオンとマイナス電子に電気分解される。他方の酸素極4 には外部から空気が供給され、そこに含まれている酸素が触媒により、水素イオンと還元反応して水が生成される。生成された水は不図示の回収路を介して、燃料極3 の側に循環させるようになっている。

そのほかのものは以下に。

かんたん特許検索 -- 検索結果一覧

2008/06/13 2:00追記
テレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」でも紹介されたようです。

水で走る自動車[08/6/12] - ワールドビジネスサテライト:テレビ東京

YouTubeでも見ることができます。

YouTube - 水だけで走る電気自動車?・・・


また、大阪府のホームページの「経営革新支援法経営革新計画」にて今回のウォーターエネルギーシステムと思われるモノの製造販売について書いてありました。

経営革新支援法経営革新計画承認企業(平成16年11月)

2008/06/13 9:54追記
フジテレビのめざましテレビ内にてこのウォーターエネルギーシステムが紹介された模様。また、日経エレクトロニクスが以下のページで記事にしています。

「水と空気だけで発電し続けます」,ジェネパックスが新型燃料電池システムを披露 - グリーン・カー - Tech-On!

2008/06/13 11:35追記
読売テレビの「ニューススクランブル」と思われる番組でも以下のような感じで放送されたようです。水の色が……。

YouTube - ちょッwwwスゴい!水で走る車を発表!究極のエコカー☆

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in 取材,  動画, Posted by darkhorse