コラム

「美少女ゲーム・アニメをする人は心を破壊され、人間性を失っているので規制すべき」と主張するトンデモ請願が参議院に


日本の参議院に「美少女アダルトアニメ雑誌及び美少女アダルトアニメシミュレーションゲームの製造・販売を規制する法律の制定に関する請願」というものが出されており、この内容があまりにも吹っ飛んでいるので現在、ネット上にて大騒ぎになっています。

この請願を出したのは民主党の円より子議員と下田敦子議員で、受理年月日は2008年5月14日となっています。

一体どのような内容になっているのか、そもそも「請願」とは何か?という詳細は以下から。
請願情報を出したことが以下のページから確認できます。
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/seigan/current/l133.htm
※キャッシュ


内容の詳細は以下のようになっています。
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/seigan/current/2525.htm
※キャッシュ

 街中に氾濫(はんらん)している美少女アダルトアニメ雑誌やゲームは、小学生の少女をイメージしているものが多く、このようなゲームに誘われた青少年の多くは知らず知らずのうちに心を破壊され、人間性を失っており、既に幼い少女が連れ去られ殺害される事件が起きている。これらにより、幼い少女たちを危険に晒(さら)す社会をつくり出していることは明らかで、表現の自由以前の問題である。社会倫理を持ち合わせていない企業利潤追求のみのために、幼い少女を危険に晒している商品を規制するため、罰則を伴った法律の制定を急ぐ必要がある。
 ついては、美少女アダルトアニメ雑誌及び、美少女アダルトアニメシミュレーションゲーム製造及び販売規制の罰則を伴った法律を制定されたい。

「表現の自由以前の問題」ということは、憲法を無視すると言うことと同義なので、根本的に論外な主張なわけですが、注目すべきはこの主張が現役の女性議員2名から行われてしまったという事実。既にネットの各方面で大騒ぎになっています。

美少女アダルトアニメやゲームの規制嘆願が提出される | デジタルマガジン

エロアニメやエロゲを規制しろと国会に請願が出された :にゅーあきばどっとこむ

ニュース超速報! 「美少女アダルトゲーム・アダルトアニメを楽しむ人は、人間性破壊されてる。少女殺害にもつながるので販売規制を」…民主党議員が請願

痛いニュース(ノ∀`):「美少女ゲーム(エロゲ)・アニメを楽しむ人は、人間性失ってる。少女殺害等に繋がるので販売規制を」…民主党議員が請願

特に2ちゃんねるではニュース速報+を中心に山のようにスレッドが立って書き込みが爆増しており、現時点で確認しただけで1万4000以上もの書き込みが行われています。
2ch検索: [美少女アダルトゲーム]


そもそも「請願」とはどのような制度なのかというと、このようなものです。

請願の提出
http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/seigan.htm

 請願は、憲法に定められた制度で、国民が国政に対する要望、苦情等を直接国会に述べることのできるものです。日本国籍を持つ方及び日本国内に在住の外国人の方であればどなたでも提出することができます。

では誰でも提出できるのかというとそうではなくて、以下のような条件があります。

 請願書は、議員の紹介により提出しなければなりません。したがって、提出に関する具体的な手続は、議員ないし議員秘書が行います。

このようにして提出された請願は審査され、採択すべき請願と不採択とすべき請願に分けられます。流れとしては下図のようになります。

請願の提出から採択・内閣送付まで


このような請願を出すこと自体が認めらているのもまた「信条・表現の自由」であるのに、それを「表現の自由以前の問題」と断じていることから、請願の内容自体にかなりの論理の飛躍が見られ、この論法で行くとあらゆるものが規制対象になってしまいます。というか、既に18才未満購入禁止ということで規制されている市場なので、事実誤認も甚だしい。これ以上の規制というと、製造禁止・販売禁止・単純所持禁止などのレベルでの「規制」ということになります。

一体どこの団体がこの2名の議員を利用してこのような非常識な請願を出したのかが気になるところです。


ちなみに、なぜこのようなとんでもない請願でも議員が受け付けて提出してしまうのかというと、今回のような「私の考えに賛成しなければ敵と見なす」という方式自体に秘密があります。今回の場合で言えば、一般的に「美少女ゲーム」と呼ばれているゲームのユーザー層と議員自身の支持者層とは重なっていないことが明白であるため、「美少女ゲームユーザー層」および「美少女ゲーム市場」を犯罪者予備軍と決めつけて敵に回すことで、美少女ゲームの存在自体に嫌悪感を持っている有権者からの指示を引き出そうという狙いがあると思われます。

整理すると、以下のような流れになっていると予想されます。

美少女ゲームやアニメに対して不快感を持っているある団体

請願書作成

円より子議員と下田敦子議員の両名とつながりがあるため、この両議員を経由して提出


つまり、ある特定の議員を支持して支援していると、たとえとんでもない主張であったとしても、その議員の不利益にならない限りは国会に対して請願を提出する程度の行動は起こすことが可能である、ということです。

この「請願」という仕組み自体について、今回の請願を提出した円より子議員のブログに興味深い説明が行われています。

参議院議員 円より子 Blog - ● 「請願」ってご存知ですか?

請願は、選挙での投票と並び、国民が政治に対する意思表明をできる貴重な機会ですが、国会議員の紹介が必要だったり、なかなか採択されない、また採択されてもその実現のために具体的な方策が採られることが少ないなど、憲法の理念に沿った制度になっているかは、議論の余地があると思います。

日本では議員の口利きによる特定のグループの利益だけが図られ、その見返りとして政治家は献金と投票を期待するという不透明な政治システムが長く続いてきました。誰でも請願を通じて国会に苦情を訴え、これが公の場で議論されるようにすれば、透明で開かれた政治が行われると思うのですがいかがでしょうか。

「誰でも請願を通じて国会に苦情を訴え」ることができるという点ではすばらしいシステムですが、濫用されれば今回のようなケースもありうる、ということに気づいて欲しいものです。あるいは、円より子議員は自身のブログに書いてあるように、「献金と投票を期待する」わけではないため、どのような請願であってもとりあえず国会に出してくれる……ということなのかもしれません……それはそれで問題ですが。

なお、最終的にはこのような請願内容は「好き」「キライ」の感情論であり、どちらかというと「生理的嫌悪感」に属するものであるため、それをもって国会に請願するという行為自体が非常識の極みです。

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in メモ,   アニメ,   ゲーム,   コラム, Posted by darkhorse

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