インタビュー

映画配給やグッズ販売を行う「クロックワークス」武智恒雄プロデューサーにインタビュー、DVDを1万枚所有していて部屋で雪崩が発生するも状況は確認できず



2008年1月から始まるアニメの本数は約30本と、昨年の同時期に比べれば多少減ってはいますが、それでもこの産業の元気さを感じさせてくれます。そんな中でも有名な作品といえば「涼宮ハルヒの憂鬱」「フルメタル・パニック!」、「がくえんゆーとぴあ まなびストレート!」などがありますが、これらの作品にプロデューサー・アソシエイトプロデューサーとして携わったクロックワークスの武智恒雄さんにインタビューを実施しました。

◆クロックワークスについて
クロックワークスの入ったビル。恵比寿駅から歩いて3分もかからず、とても交通の便がよいところにあります。


ビルの4Fがクロックワークスのオフィスです。


GIGAZINE(以下、G):
まずは会社についていろいろ伺いたいのですが、クロックワークスという会社はどのような会社なのですか?

クロックワークス・武智恒雄さん(以下、武智):
最初はレンタルのビデオメーカーからスタートしました。レンタルビデオ店にソフトを売って、例えば邦画で言えばVシネマだったり、洋画で言えばビデオ・ストレートと言われる劇場では上映しない作品を買ってきて、ビデオにして販売するというようなことですね。

G:
そんなところからスタートしたんですね。

武智:
発売第1回作品は、アカデミー賞男優のケビン・スペイシー主演の「ザ・プロデューサー」という作品でした。その後に発売しました「スティールシャークス」という潜水艦映画がビデオ・オブ・ザ・イヤーという賞を受賞し、かなり売れまして。そんな感じで細々とタイトルをリリースし、最初はレンタル販売を中心にして事業を展開していました。

G:
なるほど。

武智:
それからだんだん作品規模も大きくなり、次に配給業務も開始しました。その時に「CUBE」や「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」、「少林サッカー」という作品に携わる事ができ、会社が大きくなっていきました。

G:
有名な作品が多いですね。

武智:
その他にも、「アタック・ナンバー・ハーフ」というタイのオカマのバレーボール作品や、韓国ホラーの「カル」、かわいいクレイアニメーションの「チェブラーシカ」という作品も人気があります。

G:
なるほど、どんな作品なのか気になります。

武智:
アニメーションについては、2000年に「ジョジョの奇妙な冒険」のOVAを発売し、同時に「千年女優」の配給もやることになって、その時から業務が始まりました。

G:
アニメ部門はそこから始まったんですね。

武智:
当時、自分はハピネットという会社にいたのですが、「ジョジョの奇妙な冒険」が契機でクロックワークスに移ってくる形になりました。その後、「涼宮ハルヒの憂鬱」や「フルメタル・パニック!」等多くの作品に携り、今は製作委員会の中で「らき☆すた」や「みなみけ」「バンブーブレード」のレンタル業務を担当しています。ちなみに、自社のメイン作品はWOWOWで放送したTVアニメ「MOONLIGHT MILE」と、今年の2月17日に公開した劇場アニメ「ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド」です。

G:
2007年10月開始アニメをまとめた時、「MOONLIGHT MILE」が9月13日放送開始でトップだったので印象に残っています。

武智:
そういう流れもあり、今は「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」の配給もやらせてもらっています。

G:
なるほど。実写部門とアニメ部門は別個で動いているんですね。

武智:
はい、会社はその両軸で構成されています。

◆1万枚のDVDを持つ男
G:
噂で、DVDを1万枚ほどお持ちだということを聞いたのですが本当ですか?

武智:
正確に言うと…実は把握できていないんです。もともと映像が好きだったのと収集癖があったおかげで、ついつい集めてしまいました。自分が高校生の時にLDソフトが発売され始め、その時はやはり学生なのでほとんど買えず、将来大人になったら力いっぱい集めようと学生心に誓った事を覚えております。

G:
なるほど。

武智:
大学を卒業してハピネット(当時はビームエンタテインメント)という映像ソフトの流通会社に就職して営業に配属され、その時にDVDの収集がスタートしました。1997年の事で、ちょうどDVDが出始めた時期でした。当時は、洋画のワーナーや、アダルトのh.m.p.といったメーカーの数社しかDVDを出していませんでしたので、収集は楽でした。営業マンだったので、営業用にサンプルもたくさんあったので、余ったものをもらったりしていました。その後、製作の部署に移動し、その時には、他ライバルメーカーの商品をパッケージの参考の為に買ったりして、どんどん増えていきました。

G:
ほうほう。

武智:
それから、時代がDVD-BOX全盛期になり、個人的にスタートレックBOXなどの洋画TVドラマシリーズのBOXや、伊丹十三BOXなど、力いっぱいDVD-BOXを大人買いしました。

G:
もう細かい枚数は自分でもわからないぐらいですか。

武智:
そうですね。棚だけでなく、部屋の床に積んでいて、もう底の方なんて何があるかわからない感じです。先日も、ワゴンセールのDVDを買って帰ったら、既にそのDVDが棚にあって呆然としてしまいました。

G:
そんな大量のDVDがあって、ちゃんと中身を見る時間はありますか?

武智:
ぶっちゃけ、中身は老後の楽しみとして保存しています(笑)。気になっている作品は見ていますが、仕事が忙しいのでチェックが追いついていないのが現実ですね。ただ、必ずパッケージの装丁は全てチェックするようにしていますし、内容も、第1話は見ています。でも、シリーズ物だと2巻以降は未開封だったりしますが・・・…。

G:
ちなみに、毎月どのぐらい買ってるのでしょうか?

武智:
最盛期は、月に10万円ぐらい買ってました。特にDVDの黎明期は、毎月リリースされる商品数も少なかったので、ほぼ8割ぐらいは買ってたんじゃないでしょうか。

G:
8割!

武智:
その後、セールで廉価版がどんどん発売されるようになり、馬鹿らしくなってしまって、今はほとんど買わなくなりましたね。だって、1個5万円のとか10万円のBOXを買っても、半年後にはその半額に、翌年には更に半分の値段にと、あまりにもひどいです(怒)

G:
買うのを迷う人間からすると助かりますけどね。

武智:
買って1年で1/4って、株価かよって話ですよね。なので、今は発売されて安くなってからちょろちょろ買っています。それに、欲しいものはほぼ揃えてしまったので、買いたい物もほとんどなくなってしまいました(笑)

G:
なるほど、大人買いの成果ですね。

武智:
例えばスピルバーグの映画とかスター・ウォーズとかハリウッドメジャー大作のDVDはほとんど揃ってますからね。

G:
レンタル屋ができそうですね。

武智:
もうレンタル屋で儲かりそうですよ。同じマンションの人に貸そうかな。

G:
同じマンションの人も助かりますね。

武智:
自慢じゃないですけど、出始めの頃はハピネットとワーナーホームビデオ、アダルトメーカー数社、音楽メーカー数社ぐらいしかなくて、月に数十タイトルぐらいしかなかったので全部コレクションできていたんです。バンダイビジュアルの名作アニメシリーズなんかも全部持っていて、はじめの3年ぐらいは日本で一番持っていたんじゃないでしょうか。そこから毎月のDVDリリースタイトル数がどんどん増えてきて、さすがにコレクションしきれなくなりました。

G:
確かに、今は月にいったい何タイトル出ているのかわからないぐらい出ていて、どれを買えばいいのやらわかりませんね。

武智:
アニメだけでも月に150タイトルぐらい出ていて、洋画が100タイトルぐらい、邦画がそれよりちょっと少ないぐらい。そりゃ追いつかないですよね。

G:
放送中のアニメを調べたりすると、これが全部DVDになるのなら、どんな量になるんだと驚きます。放送のない地域の方には確実にDVDが出るので良いのかもしれませんね。

武智:
でも、今はYouTubeとかWebで見ればいいやというのもあるので…いい世の中になりましたよね。

G:
やっぱり画質にこだわる人や作品のファンは買うでしょう。

武智:
とりあえずYouTubeとかニコニコ動画で見てみて、あとでDVD買うという方法が取れるから良いですよね。昔は中身が見られなかったから、買ってみてだまされた!とかそういう世界だったんですけれど。

G:
それもアリですよね。

武智:
昔はそれでも良いけれど、今はとても把握しきれないぐらい作品があって、洋画だと3000円ぐらいで買えるけれどアニメは高いし、限定版だと1万円ぐらいしますからね。自分がアニメ作品を手がけていて何ですが……。月に多くお金を使える人でも3万円ぐらいだと思うんですよ。あと、みんなそろそろ部屋がいっぱいになってきているはずなんです(笑)

G:
なるほど、DVDの収納が大変ですね。

武智:
いろんなケースのサイズがあったりすると余計に収集が大変だと思うんですよ。昔は限定版とかよく買っていたんですが、最近は通常版で良いかな、薄いケースの方が良いや、とか考えますね。前は薄いやつより、大きくてゴテゴテしたやつの方がお得感があったんですが、今は薄い方が。

G:
収納は薄い方が助かりますね。

武智:
エイリアンの頭像とか、スタートレックBOXのプラスチックケースシリーズとか、昔のDVD-BOXシリーズは、結構場所をとります。

G:
家はどんな感じですか?

武智:
今、僕の部屋は8畳なんですが、入ると壁際にスチールラックが4つ、1段2列ずつDVDが置いてあって、それが1棚8段か9段ぐらいあります。それだけじゃ足りなくて、部屋の反対側に同じものが1つとCDサイズが1000枚ぐらい入る棚が1つあります。なおかつ、その後ろにビデオテープが山のように置いてあります。

G:
ビデオもあるんですか。

武智:
見ていないVHSを捨てきれなくて、それにビデオの前に棚を置いてしまったので動かしようがない、そういう状態になっています。一応、DVDが出たらVHSは捨てるようにしているんですが。最初のころはVHSが出て、LDが出て、だいぶ経ってからDVDが出るという順番だったので、最初にVHSを持っていて、DVDが出たら入れ替えていました。あとはDVD未発売のVHSしか発売していない物が積んだままになっています。

G:
スチールラックの後ろの方のものなんか、もう出せない状態なのでは…?

武智:
出せないですね。この前、部屋で雪崩が起こってました。すごい音がして、部屋を見に行ったのですが、見ても状態がよくわからなかったのでそのままにしてます…きっと崩れたんでしょう。もう時間がなくてチェックしてません。今、その棚の前に47インチぐらいの大きなテレビを置いているので、テレビを動かさないとわからないんです。

◆仕事の基本スケジュール
G:
ふだんの仕事のスケジュールはどんな感じですか?

武智:
だいたい10時から11時の間には出社するようにしています。今はTVのアニメ作品を作っているので、毎週スタジオ作業があって、アフレコ作業やダビング作業やビデオ編集作業で週3回スタジオに入っています。関わっている放送中の作品が5本あるので、最高5×3で毎週15回スタジオに入る計算になります。ただ、当然全部は行けないので自分がやらなければいけない作業に特化してやっています。ある作品の編集作業は、夜中の24時から始まって、朝6時ぐらいに終わって、そのままTV局へ納品するというような生活を送ってます。

G:
なるほど、大変ですね…

武智:
他に、企画やイベントや宣伝の打ち合わせが入ったり、DVDパッケージのジャケットデザインや雑誌の記事をチェックしたりといった仕事もあって、その後に接待で飲みに行ったりもするので、27時ぐらいに帰宅するということが多いです。

◆普段の食事など
G:
あちこち移動なさっているようですが、昼食は主にどこで食べていますか?

武智:
会社の周辺で取るのは週に1回ぐらいですね。恵比寿ではなくアニメ業界の中心地の新宿にいることが多いです。恵比寿のお薦めは会社の近くにあるイタリアンですね。美味しかった店の名刺を集めた、秘蔵のマイグルメファイルがあったりします。

G:
おお、それは便利そうですね。

◆伝説のエピソードや仕事であったすごい話
G:
仕事をやっていて出会った伝説のエピソードやすごい話はありますか?

武智:
それはいろいろありますね…。一番すごい話だと、TV番組で、放送の1分前にマスターテープを局に納品したなんて話を聞きました。

G:
うわあ…とんでもない話ですね。

武智:
自分の事だと、今年は最近毎月海外旅行に行ってました。もちろんプライベートだけでなく、仕事で行くこともありましたが。周りからは、うらやましがられるよりは、仕事しろと怒られましたが(笑)

G:
それは(笑)

◆会社PR
武智:
10月6日(土)から全国ロードショー中の「リトル・レッド レシピ泥棒は誰だ!?」はキャストに有名俳優や芸人さんが入っているので、ぜひ見に来てください。

◆今後の方針
武智:
洋画・邦画・アニメを問わず、制作に関わる作品を増やしていきます。出来るだけ企画から関わって行こうと考えてます。アニメーションも、原作物だけなく、オリジナル作品を作っていきたいですね。ハイクオリティでエンタテイメント性の高い作品を作れれば良いなと考えています。

G:
本日はどうもありがとうございました。

◆編集後記
インタビューを行った9月はちょうどクロックワークスの関わる「MOONLIGHT MILE」の第2シーズンが開始されるところで、とても忙しい時期だったにもかかわらず快く取材を受けて頂きました。やはり忙しい方だけあって、今はDVDをゆっくり見ている暇はないそうです。大量のDVDがあってうらやましいと思っていましたが、なかなかそううまくは運びませんね……。

クロックワークスが配給する最新作は「ヒトラーの贋札」。原作はアドルフ・ブルガーの「ヒトラーの贋札 悪魔の工房」で、監督はステファン・ルツォヴィッキー。出演はカール・マルコヴィクス、アウグスト・ディール、デーヴィト・シュトリーゾフら。2008年1月19日(土)から全国順次ロードショーとなっています。

株式会社クロックワークス - THE KLOCKWORX
https://klockworx.com/

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in インタビュー,   映画,   アニメ, Posted by logc_nt

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