インタビュー

無線LANコミュニティー事業の「フォン・ジャパン」に行ってきました


無線LANをみんなで共有することで世界中のあらゆるところからインターネットに接続できるようにしようと考えている「FON」、その日本法人である「フォン・ジャパン」へ取材に行ってきました。

激安の無線LANルータは採算がとれているのか、新型を出す予定はあるのかなどルータ本体に関することから、どのような職場環境で働いているのかなど気になるところを聞いてきました。
お話を伺ったのは株式会社フォン・ジャパンのチェアマン(最高戦略責任者)である千川原智康さんと、COO(最高執行責任者)であるニナ・ニックーさんです。

◆無線LANルータ「ラ・フォネラ」の現在と未来

GIGAZINE(以下、Gと省略):
早速ですが無線LANルータの「ラ・フォネラ」についてお聞きします。現在販売されているものは1台1980円と破格の安さだと思うのですが、本体だけで採算は取れているのですか?

千川原(以下、千と省略):
本体は台湾で生産しており、採算についてはトントンです。

G:
今年の4月14日に1万アクセスポイント記念ということで無料でルータを配布するキャンペーンを行っていましたが、どれぐらいユーザーが増えましたか?

千:
ルータの販売は9500台ありました。

G:
ということは、もし全部登録されていれば、一気に2倍近くになったということですか。

千:
はい、そうなりますね。現在、国内に1万8468箇所のアクセスポイントがあります。単純に比較はできないと思いますが、参考までに、公衆無線LANサービスと比較した場合、単一ブランドでは日本一のアクセスポイント数だと思います。

FONのアクセスポイントの位置が分かるFONマップ。緑のスポットが接続可能なポイント。


G:
FONが他の公衆無線LANサービスなどと提携する可能性はありますか。

千:
FONは住宅街に多いため、駅や公共施設など集客スペースで利用できるようになるローミングの可能性は、ユーザーの利便性向上を考えるとありえます。しかし、今、早急にローミングをしようと考えているわけではありません。FONコミュニティのユーザーが喜ぶような形でのローミングであれば、提供していきたいと考えています。

G:
新しい無線方式のIEEE802.11n対応などの、新型「ラ・フォネラ」が出る可能性はありますか?

千:
現時点では決定しているものはないですが、可能性はあると思います。

G:
では逆に既存のルータを「ラ・フォネラ」化するようなファームウェアの配布は考えているんでしょうか?

千:
これについても、現時点では決定しているものはないですが、可能性はあると思います。

◆新しいユーザーサービス

G:
日本のFONのサービスだと、現在は自分のアクセスポイントを無料開放することで他人のアクセスポイントも無料で利用できる「Linus(ライナス)」だけですが、海外のFONのように自分のアクセスポイントを開放せずに他のユーザーのアクセスポイントを有料で利用できる「Alien(エイリアン) 」の募集を始める予定はありますか?

千:
年内にはじめる予定です。

G:
そうですか。「Alien(エイリアン) 」が始まるとなると課金方法が気になるのですが、どういった感じになりますか?

千:
まだ検討中ですが、スタート時はクレジットカード払いになると思います。そこからは日本のユーザーに合った形でバリエーションを広げていきたいと思います。

G:
なるほど。では逆にアクセスポイントを提供したユーザーへの支払いはどういった方法で?

千:
海外では現在インターネットを利用した決済サービスのPayPalに送金することになっているのですが、日本でもそのままPayPalを使うのか、それとも違う形になるかはまだ検討中です。

G:
FONは開放型のアクセスポイントですが、「Alien(エイリアン) 」を始めた場合のセキュリティ面についてはどう考えていますか。

千:
セキュリティのリスクはネットワーク上に残る形跡から追いかけるだけではないと思っています。もちろんネットワーク上でも犯罪の痕跡が残るようになっていますが、例えば「Alien(エイリアン) 」が「Linus(ライナス)」のアクセスポイントを使って犯罪をした場合、その時間に「Alien(エイリアン) 」としてアクセスがあったという記録がスペインのサーバーに残ります。そうするとそのアクセスポイントのだいたい半径50m以内に居た人物である、といったように犯人を特定していくための情報の断片が沢山残るようになっています。

◆フォン・ジャパンでの仕事

G:
スペインの本家FONとフォン・ジャパンの関係はどういったものなのですか。

千:
フォン・ジャパンは本社であるフォン・ワイヤレス・リミテッドの100%資本の子会社なので、本社の分身ですね。本社の意向を日本で実現する。そういう組織です。

G:
どういった経緯でフォン・ジャパンで仕事をすることになったのですか?

千:
私の場合は出会い頭です(笑)。FONというビジネスを紹介してくれた人との出会いがあって今に至ります。フォン・ジャパンでこれまでのインターネットの歴史の中に無かったことを推進していきたい、というのが入社したきっかけです。

G:
1日の平均的なスケジュールはどうなっていますか?

千:
そうですね。朝10時から働き始めて、体力が続く限りですかね(笑)。

ニナ(以下、ニと省略):
スペインの本社とのオペレーションがある場合、向こうは日本時間で夕方17時頃から1日が始まるので、終わるのは夜遅くなることもあります。

千:
23時や24時まで働くこともあります。最近は落ち着いてきていますが、昨年12月のサービス開始当初は24時前に終わることがありませんでした。

フォン社内で仕事中の様子。


G:
昼食や夕食、休息時のおやつなどはどうしていますか?

ニ:
私の場合はコンビニが多いですね。外出がある時は14時にずれることもあります。夕方くらいになると各自がオヤツなどを適当に買ってきて食べたりしています。

G:
フォン・ジャパンで働く上で、「これはウチにしかない」といった自慢はありますか?

ニ:
個性溢れるメンバーが集まっているのですが、すごくチームワークが良いです。バックグラウンドから性格までみんな違っていてユニークなのですが、気が合うというか、非常に相性が良いです。

G:
和気藹々とした職場ということですか。

千:
そうですね。ハード面やソフト面に関しての自慢というわけではありませんが、これまでのインターネットの歴史の中に無かったことを推進しているというロマンをみんなで共有しています。新しいコンセプトを社会に表現していくことのドキドキ感ってあるじゃないですか。そういうドキドキが好きな人が集まっていますね、何故か(笑)。

G:
ああ、分かります。新しく面白い物を作っていると高揚感がありますよね。

千:
ええ。ネットでは知識やコンテンツなど色々な物を共有していく新しいムーブメントがありますよね。そういった中で世の中を便利にするため、インフラを共有していくというシェアリングエコノミーみたいなものを進める情熱を今のメンバーは持っています。

G:
仕事において苦労したエピソードや伝説的エピソードはありますか?

千:
毎日が苦労といった感じですね。冗談です(笑)。FONはスペイン発のグローバル企業なので、当然何をやるにしても日本とは文化・慣習・習慣が違うし、法律も違う。スペインと日本のネットインフラだって異なるし、ビジネスを立ち上げるスピード感も違っている。インターネットも一般で思われているほど自由な世界ではなくて、既存の法律に縛られたりと色々なことがあります。そうした違う環境の中で、どうやって創設者のマーティンが考えたコンセプトを日本のユーザーに満足してもらえる形で提供していくかを調整することに頭を悩ませることがあります。

G:
今は無線LANへの関心が高い方へアプローチしている感じですが、これから家庭に浸透させていくなどは考えていますか?

千:
もちろんです。その場合はサポートがさらに重要になってくるので、人材も厚くしていかないといけませんね。

◆FONが目指すのはWi-Fiの文化

G:
今後の方針や展開として考えているものは何かありますか?

千:
まずFONのFONたる所以は「個人がアクセスポイントを共有していく」というもので、それがまさしくFONです。あくまでも個人がインフラをシェアしていくというムーブメントを強くしていくことがベースです。その上でユーザーの利便性を考えると、やはりお店への展開になりますね。今後は、ふと立ち寄ったお店、毎朝通うお店などいろんなお店でFONが使えるような展開をしていこうと思っています。ルータを売ることはひとつの手段でしかなく、FONの目指すところはWi-Fiの文化を広げることなんです。

G:
なるほど、Wi-Fiの文化ですか。

千:
ええ、そこには3つポイントがあると思っています。まずひとつは無料サービスであること、もうひとつは相互扶助的な「シェアリング」という概念、最後にローカルな地域コミュニティへの浸透。これらがWi-Fiの文化をなす核になると考えています。今、先行してFONのメンバーになっている人に聞くと、「無料で無線LANが使えてインターネットができる、そしてそれがお互いのシェアリングの中で成り立っている」というところに魅力を感じて頂いているようです。こうしたユーザー参加型のプロジェクトであるからこそ、今後の展開についても常にユーザーの視点で考えていかなければならないと思っています。

G:
本日はお忙しいところありがとうございました。

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in インタビュー, Posted by darkhorse_log

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