コラム

真のアルファブロガーになるには何をすればいいのか?


本日、NHKのクローズアップ現代にて19時半からアルファブロガー特集を放送していたわけですが、その影響で早速、「アルファブロガー」で検索したときに1位に来るサイトが一時的に落ちてましたね……恐るべしNHK。内容自体は「忘却防止。 - NHK クローズアップ現代『“カリスマ”続々登場!ブログ新時代』 を観ました」にうまくまとまってます。

で、アルファブロガーとは何かというと「多くの読者に読まれている、影響力のあるブログの書き手」ということになるわけですが、この「GIGAZINE」や「痛いニュース(ノ∀`)」、あるいは「アキバBlog(秋葉原ブログ)」などのようなブログ形式のサイトで絶大な読者数と影響力を誇っていたとしても、なぜか「アルファブロガー」とは認定されないらしい。

というわけで、そもそも誰が誰をアルファブロガーとして認定しているのか、一体どういうことを書いていればアルファブロガーになれるのか、そういったことをもろもろ見てみましょう。
■誰がアルファブロガーを認定しているのか?


結論から言うと、「FPN」の企画「日本のアルファブロガーを探せ」によって選出されたブロガーが日本ではアルファブロガー、ということになっています。以下にそのアルファブロガーのブログ一覧が見やすい形で掲載されています。

アルファブロガーとは - はてなダイアリー

つまり「日本のアルファブロガーを探せ」で選ばれないようなブログは日本ではアルファブロガーたりえないわけです、残念ながら。


さすがに選出する側もこの点に問題が何もないなどとは考えておらず、主催者自身もブログでいろいろと意見を書いています。このあたりは既存のメディアと違ってネット的な側面がよく出ますね。

アルファブロガー投票企画を終えて : tokuriki.com

というわけで、日本だけの特殊事情みたいなアルファブロガーの決め方ではなく、そもそもの発祥の地である海外における定義で見てみると、本来の意味でのアルファブロガーを改めて知ることができます。

■アルファブロガーの定義


以下の記事が非常に簡潔にニューズウィークの書いていた内容を訳してまとめてくれています。

ネット世論・ネットのトレンドを生み出すアルファブロガー [絵文録ことのは.]2004/12/23

誰にも雇われていない。誰にも任命されていない。自分のウェブログを始めるには、安価なソフトウェアツールと、何か言うことがあればいい。ウェブの組織化されていないおしゃべりの中から、最も鋭い声が飛び出すだけのことである。

要するに、全世界的にはもともと「無名のものをメジャーにするネット世論への影響力を保持しており、個人によって書かれているブログ」を書いているブロガーがアルファブロガーということのようです。日本のようにたとえそれが投票ベースであったとしても、イベントなどで選ばれるようなものではないらしい。自発的かつ自然に読者が集まり、「あいつはアルファブロガーだ」と認められていくというような感じです。

このようなネット世論の形成を担う「真のアルファブロガー」は日本のようにお上からのトップダウン方式、シャワー効果に慣れ親しんだ一国家一民族の文化ではあまりお目にかかれない現象です。だから日本では「誰かがこのような形で認定して選んだのだ」という方法が受け入れられるというわけですね。先のFPNによるアルファブロガー探しイベントが定義づけになったりするなど、このあたりはちょっと日本は特殊かも。

■真のアルファブロガーのブログ更新術とは?


また、同じく「ネット世論・ネットのトレンドを生み出すアルファブロガー [絵文録ことのは.]2004/12/23」には、アルファブロガーという生き物になるにはどうすればいいかについて端的に書いてあります。もともとはニューズウィークの記事内容です。

上位層に割って入るためには、頻繁にブログを更新することによって、群衆の気まぐれなレーダーの目にとまるようにしなければならない。他のブログへの膨大なリンクを張り、プロフィールを充実させ、内部リンクの機会を増やさなければならない。そして、書いていることについては強い意見を持っていなければならない――情熱がよいブログに必要だ。こうすることはとにかく時間を食う。Scobleは毎日ウェブログを書くのに2時間を費やし、さらに新しいアイデアや気の利いたソフト新作を調べるために3時間、他のブログを読む。「頭のいい新人とか、新しいクールなWindowsアプリを発掘する最初の人になりたいんですよ」――それでもブログで名声を得られる保証はない。

実際に個人としてGIGAZINEを始めた当初がどんな感じだったのかは過去にそこら中のインタビューでも答えているのですが、大体最初の4年間は月曜日から金曜日まで1日3本ずつ書いてました。やはり更新する数は重要な要素ではないかと。もちろん時間もかかる日はかなりかかってました。

とは言っても名声が欲しかったわけではなく、当時の個人ニュースサイトの流れに乗っていたわけでもなく、孫ニュースサイトのような位置づけでもなかったわけで。理由は、単純に誰とも馴れ合わなかったため。相互リンクなど申込もしなければ申し込まれもせず、掲示板は置かず、誰ともコミュニケーションせず、アクセスカウンタも置かず(だからキリ番ゲットも何もそんなイベントは発生しない)、ただただ黙々とネット中のあらゆるニュースサイトなどを巡って情報を収集しては毎日飽きもせず同系統のニュースをまとめて「要注目」の記事を書いていき、時々自分の意見や予想をメモの代わりにくっつけて書いていくという、誰かに読まれることなど全く考慮していない、それはそれは恐ろしくストイックな更新スタイルでした。そういう意味では、今も基本的に変わっていません。自分のやりたいことをやるためには他人の視線も評価も気にしない、それがきっと真のアルファブロガーへの第一歩。

あと、GIGAZINEは編集部体制になってからも全員がよくよく考えると世間一般で言うところの「アウトサイダー」な人間オンリーなのもポイントかと。先ほどの定義から考えるとアルファなブロガーはネット世論を形成するだけの威力を持っていることになりますが、往々にしてそういう人はネット世論という流れの中には存在しておらず、その流れを端から見ることのできる客観性という意味での「アウトサイダー」であるわけです。だからこそ、確固たる自分の意見をブログで主張でき、アルファブロガーたりえるわけですね。そういう視点で言うと「GIGAZINE」はブログ形式のニュースサイトなので、誰かが言ってましたが「情報の流通を担っている」アルファブロガー的なブログサイト、というのが正しいですね。

要するに、GIGAZINEとか一般的なマスメディアとか通常の数多くある個人ブログなどはこの「情報流通」の途中過程で重要な役割を持っているわけです。ネット的には「インフルエンサー」と呼んだりします。以下の記事が図解入りで非常に詳しく、そしておもしろい。

シナトラ千代子 - 「アルファブロガーは無理でもインフルエンサーならまだ間に合う」という考え方

■アルファブロガーの影響力


アルファブロガーは言うなればネット世論における「発信点」みたいなものであり、その周囲には多数の一般的な個人ブロガーが存在しているわけです。アルファブロガーの書いたブログの記事が、読者である多数の個人ブロガーにとって興味深いモノであれば、ネット中に次々と波及していくことになるわけです。この効果を狙って既存の企業はアルファブロガーを優遇することでいろいろと宣伝してもらおう、広告塔になってもらおう、あるいは商品やサービスを紹介してもらおうと考えるわけです。しかし、影響力を制御することは難しい。

アルファブロガーへのインタビューは慎重に at ブログヘラルド

権力のある人や、エリート、そして有名人とのインタビューを実施するのは簡単なことではない。しかし、彼らと「ブロガー」との間には決定的な違いがある。ブロガーはオーディエンスと直接コミュニケーションを取ることができるのだ。大部分のブロガーの場合、意のままに操れるオーディエンスの数は非常に少ない。しかし、カラカニス氏のように、1万人あるいは10万人、そこまでいかなくても数千人規模の購読者がついている一流のブロガーもいる。

影響力を必ずイイ方向に向かわせることができないのであれば、企業にとっては意味が無く、デメリットしかないと見なされてしまうので、安易に考えるのであれば「お金を払ってアルファブロガーに宣伝してもらおう」、と言うことになるわけです。

つまり、影響力をお金でコントロールするわけです。あるいは、試供品を無料であげる、何かの便宜を図る、などなどの直接的、あるいは間接的手法でコントロールしようとするわけですね。そうなるともちろん問題が発生します。

■アルファブロガーをコントロールしようとする動き


クローズアップ現代でも後半は主にこの企業からのアルファブロガーに対するアプローチについて時間が割かれており、以下のような事件が取り上げられていました。

ウォールマートのFlog(やらせブログ)事件にみるメディアとしてのブログ - nikkei BPnet

要するに心温まるハートウォーミングストーリーな企画をネットのブログとしてやっていたわけなのですがそれが実は「某あるある」レベルのやらせであることが発覚してしまい、ブランドイメージが傷つきまくった……というわけ。日本流に言うと「炎上」ですね。

記憶が確かならばこの炎上という表現、もともとは2ちゃんねるのニュース速報板などで過去に頻繁に起きていた「祭り」においてスレッドの加速が弱くなってきたときに、新しい情報や事実がもたらされて再び活気が取り戻されていく様子を「燃料」投下のような感じで表現したことから始まり、その燃料があまりにも多くなっていってもう一体どうすれば事態が収拾されるのかすらわからない状態を「炎上」と呼んだことに起因しているはず。ブログの場合はコメント欄へ主に批判するような内容のコメントが大殺到する状態のことを指しますね。

アルファブロガーのコントロールというのは昔から行われており、「アメリカでは選挙でアルファブロガー30人に金を払って情報をコントロールしようとした事があった」らしいですし、日本でも主に「クチコミマーケティング」ということでいろいろと展開されています。結局のところ、クチコミの対象となる商品やサービス自体に潜在的な魅力と可能性がない限り、クチコミではヒットしないのですが……そのあたりの長年の理論と理屈で必ずヒットさせるために生まれたのが現代の「広告」や「広報」なので、そういう視点で考えると既存のクチコミマーケティングというのはむしろ「退化」していると言っても過言ではないですので要注意。洗練されるまでにはさらなる血のにじむような修練と研究が必要なのではないかと。

■アルファブロガーの有効活用


現時点では企業がアルファブロガーに注目する理由は単に「コストの安い宣伝媒体」という側面のみであり、それ以上でもそれ以下でもないわけでして。ハイリスクハイリターンな側面も「安いコストで当たれば費用対効果は抜群!」という一種ギャンブルめいた感覚で行われているわけですね、まったくもってむちゃくちゃです。

実際にアルファブロガーを有効活用する場合、宣伝や広告と言うよりも「マーケティングリサーチ」という側面に注目した方がいいのではないかと。注目をとにかく一時的にでも集められるのであれば、そのときにいろいろな意見が出てくるはずであり、そういったものを集約して商品やサービス開発に活かし、できあがったものを再度アルファブロガー経由でネットに露出させて様子を見てさらに改善する……というようなWeb2.0の「ベータ版」リリースのようなアプローチで考えた方が、アルファブロガーにとっても読者にとっても企業にとってもベストな姿なのではないかな、と考えるわけです。

マイクロソフトなどは実際にそういう使い方をしてますね。

MSがWindows Liveをアルファブロガーに紹介、ブロガーの感想は? - @IT

マイクロソフトが招待したのは、ITmediaオルタナティブブログやCNET Japanのブロガーのほか、マーケティングや海外のオンラインサービスなどさまざまな分野に関するエントリを行っているブロガー約10人。 Windows Liveについては「それぞれのサービスは既存の他社のサービスとあまり変わりなく新鮮味は感じないものの、今後どのように差別化し利用者を獲得していくのか」という感想が多かった。

マイクロソフトは差別化について、特に全てのサービスのユーザー体験を統一していくことを強調していたが、一方で利用者の獲得については、まだ戦略や具体的なプランを外部に語る段階にはないようだ。

MSN事業部は、アルファブロガーに対するWindows Liveの説明会を継続して行う考え。Windows Liveは今後半年以内に多くのサービスが正式版として開始される予定。

もしかしたら来年あたりには「アルファブロガー」という定義そのものが消えてしまっていたりする可能性もなきにしもあらず……。

■真のアルファブロガーになるには何をすればいいのか?


以上の諸々から考えて以下のような結論に達しました。

1.たくさん更新する

2.その中で自分独自の意見と真実を上手に書いて表現していく

3.他者からどんなに非難されようが批判を受けようが人格攻撃されようが無視して書き続ける

4.来たるべき注目される時、すなわち「運」が向いてくるまで上記3つを行い続ける


当たり前のことばかりなのでたぶん1から3まではなんとかできるはず。でも「4」まで耐えられる人、あるいはそういう機を逃さない人になるというのは想像を絶するほど大変なことなのではないかと……。

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in コラム, Posted by darkhorse

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