グーグルは今のままでは日本人の人生を変えることはできない


先日、NHKスペシャル「グーグル革命の衝撃 ~あなたの人生を“検索”が変える~」を見ていたのですが、その中で毎月約7600ドル(約92万円)の収入を得て、大学をやめ、仕事を探さず、AdSenseだけで生きているというケースが出てきました。

が、日本で同じ事をしようとしても現時点では無理です。

というわけで、NHKの取材が取りこぼした真実を以下に書こうと思います。
◆AdSenseだけで生活できるのか?

まず海外でAdSenseだけで生きている人がいるというのは本当です。

ですが、1クリックあたりが平均して日本円で40円。大体ざっと調べてみると、1クリック当たりの単価が米国では最大で日本の約10倍。つまり、NHKの番組で出てきたような生活をする人というのは日本では実際のところ、ほぼ無理です。同じアクセス数を誇って、同じクリック数であっても、日本では収益が大体10分の1ぐらいにしかならないということです。このことはいろいろなブログでAdSenseについて書かれている記述を読めば分かると思います。AdSenseだけでなく、Amazonとかいろいろなアフィリエイトを組み合わせたとしても、それぞれの収益率(あるいはクリック率)がどうしても下がるため、結果的に総合計は上昇しません。この事実は、以下のクリック単価の高いキーワードの見つけ方を応用して調査すれば明らかになる事実です。

Google Adsenseでクリック単価の高いキーワードの見つけ方 - GIGAZINE

つまり、日本では「AdSenseだけで生活する」というのはかなり不自然な発想であると言っていいでしょう。しかし、米国では可能なのです。うらやましい限りですね……。GIGAZINE級のアクセス数でも実際問題として、無理です。GIGAZINEはワーキングプアです。ぶっちゃけ、今のアクセス数の10倍~100倍ぐらいまでさらにアップしないと会社としては極めて苦しいのです。

◆上位15位以内どころか、もっと上位でないと存在しないも同じ

番組中では検索結果のトップ5、最低でも上位15位までに入らないとそのページは存在しないも同じだ、という話がありましたが、日本の場合はトップから第3位までとそれ以下では絶望的な差があります。1位と2位、2位と3位も極端なまでに差があります。そのため、海外では10位以内に入ると収益が急拡大しますが、日本ではさらに上位にまで入らないと急拡大はしません。これは実際にGIGAZINEの取引先のうちのいくつかの会社や個人事業主がまさにこのパターンでした。

この根拠となるのは検索結果を見る場合の人間の視線移動、「F字理論」と呼ばれているもので、以下のページで解説しています。NHKで紹介されたのもコレと同種の研究結果です。これを読めば、上位以外はほぼ無視されているのだということがよく分かります。日本ではどうもさらにこの傾向が顕著なようです。

ウェブページを見る目の動きは「F」パターン - GIGAZINE

また、日本でも検索結果について最適化する企業というのは存在します。GIGAZINEでもインタビューしたことがあります。

SEMを得意とするネット広告代理店「アイレップ」に行ってきました - GIGAZINE

◆コンテンツマッチはさらに前へ

さらに番組中で検索の内容と連動するAdSense・AdWordsの効果について触れられていました。これはたとえば、アサガオというフレーズについて検索した人にアサガオの種の広告を出せば、クリックされる率が飛躍的に上昇するという理論に基づいた方式です。以下のページでGoogleが解説しています。

Google AdWords: ラーニング センター アドワーズ広告の利点

これは確かにGIGAZINEでも過去、AdWordsへ実際に実験として出してみたところ、劇的な効果を上げました。コンテンツマッチしない方式の広告と比較して、最大で30倍のクリック率の差があり、費用対効果ではさらにその差は上昇します。

しかし、GIGAZINE上で実験した限りでは、AdSenseよりもGIGAZINEロゴの右横に出すバナー広告の方がAdSenseのさらに10倍のクリック率を弾き出しました。これは、AdSenseが文脈に対してマッチさせているのに対し、GIGAZINEの場合はサイト自体のイメージ、つまり興味を引く面白い広告であればあるほどクリック率が上昇した、ということです。文脈に一致するのも大切ですが、広告自体のおもしろさというのも重要だとGIGAZINEでは認識しています。そのうち、Googleのコンテンツマッチ方式は、サイト自体の内容とマッチさせる「サイトマッチ」とでも言うべき精度を誇る日が来るのかも知れません。

なお、このバナー広告の方が時としてコンテンツマッチ方式よりも効果を上げるという現象は、GIGAZINEだけでなく、大抵の大手サイトがそうらしいです。大手プロバイダのポータルページやYahoo!のトップにバナー広告を出す方が日本ではまだ費用対効果が高く、短期決戦型のキャンペーンでは特に有効と言うことです。これにプラスしてAdWordsのような方式も組み合わせているのが現状です。

◆日本ではヤフーの方が強い

それはそうと、日本でGoogle AdSenseのクリック単価が上昇しないのは、参加する企業が他国と比べればまだ少なく、結果としてオークション方式のクリック単価が上昇しないためです(競争が行われないと単価は上昇しない)。

この原因は、日本においてはヤフーが検索市場で第1位であるという事実が背景にあります。そして、そのヤフーの検索結果に広告を出す方が儲かる(コストパフォーマンスが高いという意味であって敷居が低いという意味ではない)という事実があるためです。ヤフーの検索結果に合わせて広告を出す方式は以下のサイトで解説しています。Google AdWordsと同じく、一般のユーザーでも広告を出すことは可能です。

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そして、「日本においてはヤフーの方がシェアが上」という事実の前に把握しておくべき事があります。それは米国での状況です。今回のNHKの番組では米国が取材の主な舞台となっており、米国におけるGoogleの市場シェアは2006年12月で47.3%、Yahoo!は28.5%、MSNは10.5%です。

comScore Releases December U.S. Search Engine Rankings

対して日本では以下のようになります。ページビューでいくと1桁違っており、ヤフーの方が圧倒的に一位。2006年3月の検索の国内利用率はヤフーが64.5%、Googleは34.7%。ほかにも、いろいろなポータルサイトの方がページビューはGoogleよりも上だということがよく分かります。

ネットレイティングス株式会社-プレスリリース

Yahoo!がGoogleより人気の日本、なぜと頭をひねる - @IT

ヤフーが一体どれだけのページビューを誇っているのかは、以下のヤフー自身による「媒体資料」を見れば一目瞭然。1カ月あたり1億1000万のユニークユーザー数と、1日で12億のページビュー。あまりにも巨大なのです。

Yahoo! JAPAN -広告商品と料金のご案内

◆なぜGoogleは今まであらゆるメディアの長期取材を受け付けなかったのに、NHKの取材は受けたのか?

このことから、「なぜGoogleは今まであらゆるメディアの長期取材を受け付けなかったのに、NHKの取材は受けたのか?」という理由が見えてきます。上記の結果を見れば分かるように、現在、Googleはほとんどあらゆるジャンルにおいて世界ではトップ近くになっているのに、日本ではあの「Yahoo!」にはばまれ、まともに進出できていないためです。つまり、Googleにとってはどうしても日本進出の足がかりとして知名度を上昇させる必要があり、そのために「NHK」という日本全国津々浦々に放送されるテレビ局の特集として番組が一本組まれるというのは非常にメリットのあることだ、というように判断したのではないか?と推測できます。

要するに、NHKの特集番組風に解釈するのであれば、グーグル自身が「今のままではグーグルの検索によって日本人の人生を変えることはできない」と認識しているのではないか?ということが推測できるわけですね。

このことから、おそらく2007年はグーグルが日本に本格的に進出する元年になるのではないかと予想されます。

さて、グーグルの日本における次の一手は何になるのでしょう?期待大。

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in ネットサービス,  コラム, Posted by darkhorse