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「2万8000円でWikipediaに記事を作ります」という宣伝業者が登場、Wikipediaの信頼を揺るがす大問題に


GIGAZINEに届いた複数のタレコミによると、オンライン百科事典「Wikipedia」に2万8000円でページを作り宣伝を請け負うという業者が現れて問題となっているようです。

Wikipediaは誰でも編集できるシステムになっていますが、宣伝目的のページ作成は禁止されており、また、対価を得てのページ作成も禁止行為となっています。この業者は「宣伝くん」というサービスを提供し「自分ではなかなか作れなかったWikipediaページを2万8000円で作成代行します」と謳うなど、正面からルールを破って複数企業のページを作成しており、Wikipedia内で大激論が繰り広げられています。

一体何が問題になっているのか、詳細は以下から。
■「宣伝くん」とは?

Wikipediaの記事作成代行を行っているのは、東京都渋谷区初台にある株式会社代行企画。場所はこのあたり。

大きな地図で見る

同社の会社概要を見ると、設立は平成16年(2004年)4月、事業内容は「インターネット広告代理業」となっています。

今回大きな問題となっているのは、この代行企画が行っている「宣伝くん」というプラン。プランの内容は「依頼した企業のページをWikipediaに作成する」というもので、代金は2万8000円。編集などにかかるランニングコストは不要で、複数のページを作成する場合は1ページ追加ごとに1万円で実施。

申込フォームでは「ウィキペディアには投稿を管理する管理人がおり掲載内容を削除される場合があります。」「即時削除の対象(1週間以内の削除)になった場合はご契約金額の50%のご返金をお約束しております。」という記載があり、たとえすぐ削除されてしまっても代行企画は1万4000円を得ることができるようになっています。1週間以上経過してから削除された場合は返金してもらえないようです。

よくある質問では、「ウィキペディアの特性上、御社様のページに第三者からの謝った内容などの書き込みがある場合がございます。その際宣伝くんが無料で修正致しますのでご安心下さい。」(原文ママ、おそらく「謝った」は「誤った」の誤変換)とあり、実際、「宣伝くんが御社様のページ内容文を保存していますので、内容を書き換えられた場合でもすぐに対応出来ます。」と即時修正が可能であることを示しています。しかし、これはWikipediaで利益のない行為であると指摘されている編集合戦につながる可能性が大です。

また、「出来れば宣伝くんで代行してもらった事は内緒にしたいんだけど。」という質問に対しては「もちろん御社様のご都合に合わせたスタイルで守秘義務を守ります。」という返答がなされています。

■Wikipedia利用者の反応

(by E.L.A)

実際には、このような宣伝行為に怒ったウィキペディアン(Wikipediaの熱心な利用者たち)によって「受託宣伝記事」というページが作成され、どこの企業がお金を支払ってページを作成してもらったのかが一覧で暴露されています。


Wikipedia:コメント依頼/受託宣伝記事 - Wikipedia

Wikipedia内で「宣伝くん」の活動が最初に報告されたのは2009年11月5日(水)。ある記事の修正をしたウィキペディアンが記事投稿元IPを精査し、宣伝行為が行われたことに気付いたのが発端でした。ただ、気付いたのがこのタイミングだっただけで、実際は8月ぐらいから宣伝記事の投稿が始まっていたようです。

Wikipedia:削除依頼/山一屋 - Wikipedia

上記の報告を受けて「『Wikipediaページ作成代行』をうたう広告宣伝会社」としてウィキペディアンたちの中で情報が共有され、この問題が認知されていきました。

Wikipedia:井戸端 - Wikipedia

激怒したウィキペディアンたちからは

ウィキメディア財団に連絡して(アメリカから法的な警告文書を送付するような)対応をしてもらうのが一番だと考えます。

対価を得て記事を作成する行為としてはこれとは別にWikipedia:ダウムグローバル百科事典Wikipedia:ソウル市知識共有プロジェクトで韓国語版ウィキペディアに記事をアップしたら抽選で賞品を差し上げますと言う企画がありました。しかし、Wikifyもしないでアップされているものがあったため修正が大変でした。Wikipedia:ソウル市知識共有プロジェクトに至っては広報まがいの記事もあり削除依頼に出す羽目にもなりました。今度参加する団体に対しては執筆者に対する賞品供与の禁止と広報の禁止を提案したぐらいです。

問題点は、「宣伝を目的としていること(Wikipedia:ウィキペディアは何ではないか違反)」、「内容を書き換えられた場合にすぐrvすると断言していること(Wikipedia:Three-revert rule違反メリット参照)」あたりでしょうか?強烈ですね。

結局は広告目的=金銭目的でしょう。金銭が目的の場合、ウィキペディアのコミュニティが大切にしている「対話」や「共同作業」が不能になります。札束を求める相手には札束しか通じません。

以上が合成されると、ウィキペディアは信頼を失い、マトモな読者は訪れなくなります。宣伝業者の巣窟と化し、スラム化します。まだ不況は始まったばかり、業者の侵略も始まったばかり。ウィキペディアは甘くないという認識が広がれば、業者は他所に行くでしょう。厳しい態度を示すのは「今」だと思います。わずかな削除の手間を惜しむべきではありません。

特に『宣伝くんが御社様のページ内容文を保存していますので、内容を書き換えられた場合でもすぐに対応できます』という宣伝文句はWikipediaの編集ルールに明確に違反した行為を展開してくる可能性を感じさせます。

いみじくも、今回の件でGoogle等のスコアリングシステムのせいで、ウィキペディアのタイトルというのは、広告業者の商取引の対象になりうるという事例が示されたわけです。

というような指摘がなされています。

「代行企画」自体もWikipediaに記事が作成されていましたが、既に削除依頼が出されています。

Wikipedia:削除依頼/代行企画 - Wikipedia

■結論

(by sosij)

結論として、海外の本家Wikipediaではこのような行為は迷惑行為・スパム行為として認知され、対策プロジェクトが発足しています。

Wikipediaの井戸端でも書かれていますが、本家Wikipediaでは既に一定の見解が出ており、Wikipedia設立者自身がこの代行企画と同じ事をした企業をブロックしていて、有償での投稿については否定的な見解を述べています。

「対価を得て記事を作成する行為 」について参考まで。英語版でもかつてMyWikiBizなる企業が同じようなことをしてJimmy Wales氏直々にブロックされたことがあるようです。また、Jimmy Wales氏はen:Wikipedia:Requests for comment/Paid editingにおいて有償での投稿について否定的な見解を述べています。日本語版にはありませんがenwpのガイドラインen:Wikipedia:Conflict of interestでは投稿で利益を得ることは中立性を損ねるので強く避けるべきであるとされています。

Wikipedia設立者、そしてウィキペディアンたちが述べている通り、このような業者の行為は許されるものではありません。普段は編集はしない一利用者であっても、Wikipediaを構成するユーザーの一人には変わりないので、宣伝記事を見つけた場合は積極的に修正することでよりよい事典が提供されるということを忘れないで使用したいですね。

ちなみに、これ以外にまだ活動がバレていない業者はどれぐらいいるのでしょうか……。

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in ネットサービス, Posted by logc_nt

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